なんやかんやで赤龍帝   作:黒鬼

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はい、お久しぶりです、番外編ですね。
この回は作者お気に入り回、ギャグというよりストーリーに凝ってます。
番外編をこれともう一つくらい書いて、第三巻の内容に入ろうと思います。

それじゃ今日も一日ダラっと行こっか。


番外編 2
『なんやかんやで梅の花』


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いいなぁ、綺麗だなぁ」

 

「だろう? しかし俺もこれほどのモノになるとは思わなかったぜ」

 

 

俺と匙は銭湯の湯船の端に腰をかけ、

匙の太ももに彫られた見事な梅の刺青を見ながら話していた。

 

 

匙の太ももには長い間、

匙自身が彫ろうとして断念した花札の枠の部分の半分が残っていたのであるが、

今回はその部分も利用して梅を彫ってもらったのである。

この見事なまでの梅の刺青を彫った男は俺達の知り合いの看板屋の息子で、

やはり絵が得意である。

そしてこの男は趣味で刺青を彫ってくれるのだ。

「趣味だから金は取らん」

という一見ウマイ話に聞こえるのだが、この無料というのが中々の曲者である。

この男の彫る刺青は当たり外れが大きいのだ。

剛強な風神雷神を彫ったかと思えば、カー○ルサンダースの様な仁王様を彫ったり、

美しい鯉を彫ったかと思えば、ナマズの様な龍を彫る。

 

 

その人の所に匙は行き、この男は頭を捻った。

近所のスーパーで買ってきたお茶漬けの袋を差し出し、

 

 

「これとまったく同じ梅を彫ってくれ」

 

 

と言ったのである。

見本となるモノを持っていき、同じものを描けと言われれば、そこは看板屋の息子なだけあり、

ハズレとはならないのではないのか、という匙の賭けが大当たり。

想像していたモノより遥かに見事な梅の絵柄が匙の太ももに浮かび上がることとなった。

 

 

「これでもうあのクソ野郎共にうだうだ言われることもねぇな」

 

 

匙はぺシッと刺青を叩き、一ヶ月前にこの銭湯で起きた出来事を思い出した様に呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一ヶ月ほど前、俺と匙はいつもの様にこの銭湯で湯船の端に腰掛けていた。

そしてだらだらと世間話でもしていたら、三人組の男が大声で話しながら浴場へと入ってきた。

その三人、背中に大きな刺青が入っているではないか。

別段変わった光景ではない、この街では刺青を入れている奴など数えるのが億劫なほどいる。

なにせ趣味で刺青を彫ってくれる奴がいるくらいだ。

朝早い時間から銭湯に行けば錦鯉だろうが龍だろうがお釈迦様だろうが、

はたまた天女か風神雷神まで見ることが出来る。

 

三人の男共は湯船につかり何かを喋っていたのだが、

しばらくするとその内の一人が匙の太ももを見て吹き出した。

その男は他の二人に耳打ちし、二人も匙の太ももを見てゲラゲラと笑い始めた。

最初は俺も匙も意味が分からなかったが、

三人の視線が匙の太ももにある途中止めの刺青に集まっている事に気付き、

俺は「なるほど」と納得し、匙は顔から血の気を引かせた。

 

 

「おいワレおっさん、何がそんなに面白いんだコラ」

 

「はっ? いやいや、何でもない何でもない」

 

 

男達は慌てて視線を落としたが、思い出したかの様に「ぷっ!」と吹き出し、

今度は肩を震わして大声で笑った。

 

 

「テメェら喧嘩売ってんのかコラァ!」

 

 

匙は大声で叫び、男達のいる湯船にじゃぶじゃぶと入っていった。

顔中に青筋を立て、拳をぷるぷると握りしめていた。

相当キレている証拠である。

 

 

「いやな、兄ちゃんの足の刺青があまりに見事なモンでな、ついつい笑っちまってよ」

 

 

真ん中の男がケラケラと笑いながら匙を馬鹿にし、

続いては右の男が匙の刺青を指差して言った。

 

 

「おい兄ちゃん、金が無かったのか根性が無かったのか、どっちだ?」

 

 

「どっちも無かったんだよ」と言ってやりたかったが、匙に絶交されては困る。

ツレを馬鹿にされるというのもあまり良い気分ではないし、その上俺達は男だ、不良だ。

舐められたままじゃ終われない、このまま引き下がれるほど俺は人間が出来てない。

それに加えて、

「そっちの兄ちゃんは刺青入れるだけの度胸は無さそうだしな、ははは!」とか言っている。

舐めた口利いてくれやがっている男の鎖骨の下には組の代紋の刺青が彫られているではないか。

恐らくは地元暴力団の幹部なのだろう。

しかもあの代紋、見たことがある。

確か兵藤家、特にウチの父に敵対の意思を持ってる組の一つで、

今度何らかのアクションを起こす計画を練っているという情報があった。

ヤクザとはあまり関わりたくない。

確かに喧嘩では負けはしないだろう。

だが裏の業界に生きるだけあり、様々なコネや情報網、裏稼業ならではの搦手を使ってくる。

その上しつこいのだ、大人数で家に来られたりしても困ってしまう。

だがあそこまで明らかに馬鹿にされて黙っているのでは、俺も匙も男が廃る。

 

 

俺は湯船の脇に置いていた風呂桶にそっと手を伸ばし、

桶の中に入れていたソリコミ用のカミソリを隠し持った。

そして三人組にゆっくりと近付き、こう言った。

 

 

「そんなに俺のツレいじめないであげて、それにしてもおっちゃんの刺青綺麗だね、見せて?」

 

 

俺はにこにこしながらこう言った。

兵藤一誠が丁寧な態度で近づいてきたら注意しろ、と最近は学校の授業で習うらしいが、

このおっさん達は俺の態度を見て雰囲気を更に軟化させ、

「おお、よく見てみな!」と気を良くして俺に背を向けた。

見事な仁王様が目の前に佇んでいるではないか。

 

 

「わぁ、見て匙、綺麗な刺青。 どうしてやるよ?」

 

 

匙にチラリとカミソリを見せてやる。

怒り狂っていた匙は俺の持つカミソリをジッと見た後、にやりと笑い……。

 

 

「切り刻んじまえ!」

 

 

そう叫んだ。

ぎゃー!という悲鳴と匙の高笑いが銭湯内に響き渡り、

湯船のお湯が赤く染まるまで俺はカミソリを振り回した。

悲鳴を聞きつけた組の部下共らしき男共が五人ほど浴場に上がり込んできたが、

ケラケラ笑われてフラストレーションが溜まっていた匙がシバき回したのであった。

 

 

 

 

 

 

「だけどなぁ、この梅の下に書いてある文字、何て読むんだ?」

 

「さぁ、分かんない。 エラく達筆で書いてあるから読めないや」

 

 

俺と匙は湯船に腰掛けたまま、匙の刺青に崩し文字で彫ってある言葉に首を傾げていた。

自分達で真似て書いてみたりしたがさっぱり分からない。

ミミズが這っているのか、それとも古代文字か、そう思うほどの達筆である。

 

 

「でも読めなくていいじゃん、あの三人組に見せてやりたいねぇ」

 

「いやいや、先に鯉のジジイだ。 あのジジイにこの梅を見せて二度と馬鹿言えなくしてやる」

 

 

匙の言っている鯉のジジイとは、左腕にそれはまぁ見事な錦鯉の刺青を自慢している老人である。

この銭湯にやってきては刺青をお湯の表面でうねうねと動かして見せ、

いかにも本物の錦鯉が泳いでいる様な演出を見せるのを生きがいとしているのだ。

腕の血管もピクピクとして、本物の鯉の様に見えるのは本当なので、

匙としては悔しいのだろう。

 

そんな事を匙と話していると、入口のドアがガラガラと開き、件のジジイが入ってきた。

 

 

「おお、ひっさしぶりじゃのぉロクデナシ二人組ィ!」

 

 

ジジイはニヤニヤとしながらかけ湯を済ませ、

湯船に入るといつもの様に鯉をうねうねと泳がせ始めた。

そして匙に向かって挑発的に声を出す。

 

 

「ほぉれ、見てみぃ半端くん、生きとるじゃろ泳いどるじゃろ」

 

 

ジジイは匙の事を半端くんと呼んでいる。

刺青が中途半端だったため、略して半端くんというあだ名にしたそうだ。

こう呼ばれるのが悔しかった匙は、

だからこそこのジジイにいの一番に梅を見せたかったのであろう。

 

 

「おいジジイ、もう半端くんじゃねぇぞ俺ァ。 ほれ、見てみろ」

 

 

自慢げな顔でジジイの目の前に梅の彫られた太ももを差し出す。

さぁ、これを見て何か文句を言えるなら言ってみろ、匙の顔にはそう書いてあった。

匙の太ももにある梅を見て、ジジイは「…ほぅ」と息を漏らす。

確かに見事な梅なのだ、これで半端くんは卒業であろう。

 

 

 

「こりゃあ綺麗な梅じゃのぉ……、じゃけどな半端くん、なんでこんなもん描いたんな?」

 

 

 

ジジイは匙の梅の刺青の下の崩し文字を見て、怪訝そうな表情を浮かべる。

俺達はもしやと思い、ジジイに聞いてみた。

 

 

「ジジイ、この崩し文字読めんのか?」

 

「おお、読めるでぇ――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――梅干茶漬けってなんのこっちゃ?」

 

 

匙が泣き、俺が笑い、ジジイは首を傾げ、この日の銭湯も賑やかであった。

 

 

 

 

 

 

 

 






絵の下の崩し文字まで再現して彫ってしまったようですね。
匙くん可哀想です。

約50強の感想が送られてきましたが、感想ってなんだっけ?
よーく思い出してみましょう。
感想とは物事について思ったことや感じたことのことを指します。
例えば。
【一言】
お久しぶりで御座います。周りが変態ですか。・・・大変ですね。ところで話は変わりますが、大分お見えにならなかったので心配しました。お体は平気でしょうか?なんなら私が診察を・・・ゴホン。『なんやかんやで裏の顔』一誠が戦っている場面を考察している部分で、鳥肌が立ちました。やっぱりすごいですね。2次創作なのに、ここまで感動した作品は初めてです。変態に負けず、頑張ってくださいね。黒鬼様を愛する、変態より。

ちょっと最後の文章に多大な違和感を覚えたが、まぁそこは置いとこう。触れちゃダメだ…。
こういう本編について思ったこと感じたことを感想という。
しかしこの小説の感想欄に送られてくるもののほとんどが変態か信者か後書き、もしくは感想欄への感想である。 感想欄への感想って意味が分からんが、実在しているのだから仕方ない。

リアルでは慣れない環境下での大学生活にドロドロとした人間関係、感想欄を見れば作者の神器の設定を考えてたりする読者。いやそれ感想じゃねぇだろ、送るならせめてメッセージだろおい。
まともな感想に餓えています、心が荒んでしまったのか疲れてしまったのか……、どっちもか。

えー、読者の中の変態を神器に入れた話を書け、という意見は却下させていただきます。
入れたところで話の展開のさせ方がありませんし、話の脈絡がつきそうもありません。
作者の力量では無理と判断させてもらいました、せっかくのアイディアですが、すいません。

大学内では男子にお尻を触られました、「変態!」と叫べば「ありがとうございます!」と返されました。対処法が分かんねぇ!リアルですらこんな感じなので疲れてスランプ入ってます。

前回はデレたので、今回はツンツンします。
別にあんたたち読者の感想なんて欲しくないんだからねっ!勘違いとか止めなさいよね!
PCの前に座ってそわそわしながら感想待ってるとかしてないんだからねッ!(ぷいっ)

ってな感じでどうでしょう、ではまた次回、さようなら。

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