なんやかんやで赤龍帝   作:黒鬼

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えー、今回の話は文字数多くて超大変でした。
そして来週は忙しいので更新できません、ご了承下さい。


今回と次回の話は、セリフと地の文の温度差を楽しんでください。



それではダラっと行こうや。





『なんやかんやで交渉開始』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろ時間です、もうじきお越しになるかと」

 

 

銀髪のメイドさんが俺に向かって言う。

場所は部室、時刻は放課後、俺とリアスちゃんはソファに座り、その他の部員は後ろで待機。

相手方との約束の時間まで後少しである。

リアスちゃんは緊張しているのか、険しい表情である。

固くなってもアレなので、俺はリアスちゃんの背中をさすってあげた。

こうすると落ち着くよね、俺も小さい頃はよく母にしてもらっていた。

偶に力が強過ぎて背中の皮を剥がれるかと思ったけど。

 

 

「ね、お水ある?」

 

「喉が渇いたのですか? それならばお茶を――」

 

「ううん、お茶じゃダメ、水が最適」

 

 

メイドさんが気を遣ってくれたのに申し訳ないけど、こればっかりは譲れない。

なぜならコレも作戦に含まれるからだ。

俺はメイドさんがコップについでくれたお水をグイっと飲み干す。

なるべく水分を摂取しておこう。

お茶じゃ利尿作用があるからね、カフェインとか入ってるし。

 

 

しばらく待っていると、部室にすごい勢いで炎が出現。

ねぇコレどういうトリック?

よく見ると魔法陣が床に展開されており、そこから火が出てるようだ。

そして現れたのは、金髪ヤンキー風のイケメンお兄さんと十数名の女の子達。

最近の中二病患者は登場シーンにも凝っているみたいだ、派手だねー。

 

 

「ふぅ、人間界は久しぶりだ」

 

 

あ、この人発言からしてダメな人だ。

常日頃の言動から中二に浸っているせいで、日常にも中二の影響が及んでるパターン。

中二病が治ったら黒歴史になる確率がオーバードライブ、欝になるなよお兄さん。

 

 

俺とリアスちゃんは立ち上がって一礼、そして俺は一歩前に出る。

こちらが呼び出したのだ、最初だけでも下手にでなければなるまい。

すると十数人の女の子の中の一人、

金髪の縦ロールな髪型をしたいかにもなお嬢様っぽい人が前に出る。

なるへそ、この人が俺の敵か。

コイツは油断ならなさそう、腹に一物抱え持ってる厄介なタイプだぞ。

そう瞳が語ってる。

 

 

『とんだ喰わせ者のようだな、相棒』

 

 

うん、手加減無用で攻め立てるしかない、隙を見せればこちらの足元を掬われそうだ。

一歩前に出た俺は、にっこり爽やかな好青年っぽい雰囲気を気合で醸し出し、

スッと右手を差し出す。

 

 

「どうも初めまして、リアス・グレモリーの交渉代理人を務めさせていただきます、

 兵藤一誠です。 本日は急な呼び出しにご足労頂き、ありがとうございます」

 

 

握手のつもりで出した手は、そのままスルー。

向こうさんも笑顔だが、握手をしないのは向こうの作戦の一つだろう。

「和解のつもりは毛頭ない」とでも言いたいのだろうか、

コレは白黒ハッキリつけるしかなさそうだ。

燃えるな。

 

 

「フェニックス家三男、ライザー・フェニックス。 そこのリアスの花婿様だ、人間」

 

「同じくフェニックス家、ライザー・フェニックスの妹、レイヴェル・フェニックスですわ。

 今回は横の兄の交渉代理人を務めますので、どうぞお見知りおきを」

 

 

ヤンキー風お兄さんは大胆不敵にこちらを見下した様子で、

縦ロールちゃんは可愛らしい笑みを浮かべながらお上品に。

てゆうかリアスちゃんも中二だけど、コイツらも相当だなおい。

家名がフェニックスってもはやギャグだろ、漫画かアニメでしか有り得ないだろ。

なんでこう、イケメンさんやら美人さんなのに中二病なんかになっちゃうんだろ?

美男美女の遺伝子に組み込まれちゃってるの?

神様が作った美男美女の弱点なの?

 

 

「挨拶も終えたことですし、早速ですが本題に入らせていただきますわね」

 

 

二人がソファに座り、メイドさんが淹れてくれた紅茶を一口飲むと、

いきなり縦ロールちゃんが切り出してきた。

おいおい、随分とせっかちだ、世間話も一切無しか。

余程自信有りきと見える。

 

 

「まず始めに…、わたくし共としましては、此度の場を設けられた意図が全く理解しかねます。

 双方の親の決めた婚姻、こちらとしても異存はありません。

 ですが、リアス様には何やらお気に召さない点がお有りの様で……」

 

 

……上手いな。

出鼻を挫かれた、いきなり向こうさんの正当性を示唆された。

この流れだとコチラに言い分を言わせて、ソレを切り捨てて否定する気だ。

ちょっと不利だ、攻めを奪われた。

 

 

「こちらに異論反論があるのは当然でしょう。

 当人の意思を完全に無視して進められたお話です。 納得出来ないのは当然かと?」

 

「ですが異を唱えているのはリアス様だけです、兄の何処がご不満なのです?」

 

「まったくその通りだ。 

 家柄も釣り合いが取れ、容姿端麗、才能溢れるこの俺に何の不足がある?」

 

「そこなんですよ」

 

 

呆れたように言ってくるお兄さん。

しかし、彼が口を挟んでくれて助かった、向こうの弱点はお兄さんの様だ。

自分の良い所しか言わないという事は、自分の悪い所を省みていない様子。

ならばコチラが思っている悪い点を言いたい放題ということだ。

だって自覚が無いんでしょ、

なら他人から見た悪い点は否定できないよね、そういうことになる。

お兄さんはどうやら交渉事が不得手らしい、なるべくお兄さんに喋らせるようにしよう。

 

 

「いやね、実はお兄さんの素行調査をさせていただきまして。

 どうやらかなりモテていらっしゃるようで、

 あちらこちらで女性を引っ掛けておいでの様だ。

 しかし結婚というのは一人の女性を愛しぬくと世間に公言する誓いの儀の様なモノ。

 これでは浮気やら何やら、

 女性関係でリアスさんはかなりの苦労を強いられることでしょう。

 これではとても幸せを得られるとは思えません」

 

 

貴族といえども世間一般の価値観倫理観と無関係という訳ではない筈。

俺が今言ったのは一般論の一つである。

〝結婚とは女性の幸せである〟という言葉があるくらいだ。

俺の言い分も少しは効果があると期待したい。

しかし、俺の狙いはこの言い分での相手を打破ではない。

さぁ、針は仕掛けた。 食いついてこい。

 

 

「お言葉ですが、〝英雄色を好む〟とも言うでしょう?

 女性の数も男性の甲斐性です、それだけ懐が深く、器が大きいという証明になります。

 それに貴族では奥様以外に外の女性がいらっしゃるなど当然、

 謂わば暗黙の了解かと思いますが?」

 

 

掛かったっ。

 

 

「……なるほど。

 彼女の兄、現魔王ルシファー様は外に女性を持たれず、

 奥様一筋という美談をよく耳にしますが、そちらの言い分によりますと、

 彼は妻以外の女も見繕えない器の矮小なつまらない男だという事になりますが?

 いやはや、中々言いますね、とても俺にはそんな事口に出来ない。 

 しかし口は災いの元とも言います、言葉には気を付けた方がよろしいかと」

 

「そ、そんな事は言っていないだろう! こちらとしては有り得ない考えだ!

 人の揚げ足を取るのもいい加減にしろ!」

 

「わはは、お兄さんはどうやら日本語が堪能ではいらっしゃらないようで。

 こういう場合は〝揚げ足を取る〟ではなく、〝語るに落ちる〟と言うんですよ?」

 

 

にっこり笑顔で言ってやる。

さぞ悔しそうな顔で唇と噛み締めるお兄さん。

しかし縦ロールちゃんは大したモノで、何事も無かった様に紅茶を口にする。

縦ロールちゃんはこういう場に慣れてるのか、

それともこういう事に特化して教育されているんだろう。

なかなか縦ロールちゃんの方がしっぽを出してくれないので、

攻めにくいったらありゃしない。 でもだからといって、

リアスちゃんのお兄さんをダシにして相手を弄るのはもう止めた方がいいだろう。

メイドさんが親の敵を見るような眼で俺を睨んでる、怖い。

 

 

「まぁ、この様な掛け合いを楽しんでも仕方ありません。

 話の筋を戻しましょうか。

 そちら方としましては、この婚姻についてどうお考えで?

 当事者たるリアス・グレモリーさんの意思を無視してまで進められていることには?」

 

 

なんとか最初の流れを巻き返せたかな。

後はこちらが攻めまくればいい、相手の意見や言い分を完全に論破しきれば、俺の勝ちだ。

しかし縦ロールちゃんがそうそう許してくれないだろう。

向こうの言い分はある程度予想はついているが、モノは言い様だ。

返し辛い言い回しをされれば、コチラが劣勢になってしまう。

さぁ、どう出る?

 

 

「そうですね、では逆にコチラも質問させていただきますわ。

 リアス様は、純血悪魔の絶対数枯渇問題、並びにグレモリー家の後継の事につきましては、

 どの様にお考えで?」

 

 

いきなり切り札きりますか。

まぁ、この劣勢を覆すにはソレが最有効だろう、

しかし向こうの言い分は一通り対処法は考えてある。

でもここでも俺が出しゃばったら、

当事者であるリアスちゃんの言葉ではなく、俺の言葉になってしまい、

反論としての正当性が疑われる可能性が高い。

パッと見て目敏そうな縦ロールちゃんだ、そこら辺は見逃してくれるような相手ではない。

隙を見せれば斬られる、どちらもガード無しの一撃必殺技の応酬な戦法なのだ。

受けに入れば確実に負ける。

 

 

リアスちゃんとも綿密に話し合いと言う名の作戦会議で受け答えの予行演習はしているが、

やはりリアスちゃんも貴族、相手の懐を抉り込む様なエグい物言いは出来ない。

そこら辺は考慮済みでも、甘い答えを出せば厳しい。

ていうか、俺は基本リアスちゃんには言う事を指定や束縛していない。

「自分の思い感じたまま言って」と伝えてある。

その方がより相手の情に訴えやすい、俺はその援護射撃をすればいいのだ。

でもでも、あまりに生温い夢見がちな答えだけは止めてくれよリアスちゃん。

 

 

「純血悪魔の絶対数過疎については危機感を感じざるを得ないわ。

 私も純血悪魔の端くれ、深刻な問題だと理解をしている。

 でも、私は後継の話についてはまだ早いと思ってるの。

 悪魔の寿命は長い、そこまで生き急ぐのはどうかと思うのだけれど」

 

 

あ、ヤバイ、やらかしやがった。

このおバカさんめ、敵に塩を送って下さりやがったよ。

縦ロールちゃんはコレをみすみす見逃す様なクルクルパーではない。

キラリと眼を輝かせ、ここぞとばかりに言葉を発射してくる。

 

 

「あらリアス様、そのような事を仰っては事ですわ。

 純血悪魔絶対数問題とグレモリー家後継問題、

 そして本件につきましては深く密接しています。

 『純血悪魔の件は考えているが、後継に関しては軽視している』

 などとリアス様が考えていらっしゃるとすれば、

 コレは些か問題となりかねません。 なにせリアス様は魔王様の妹君なのですから。

 ただでさえマスコミはこの婚約に注目しています。

 もちろんわたくし共はリアス様が今後の悪魔界について深くお考えなのは理解しております。

 しかし、マスコミとはハイエナの様なモノ、

 リアス様にその意図が無くとも、曲解して大事に発展させ記事にしようとするでしょう。

 ですがリアス様のご実家は栄えある名家グレモリー家、

 あらぬ噂など立たないに越したことはありません。

 私の言っている意味、聡明なリアス様ならご理解いただけますわよね?」

 

 

ここで読者の皆々様に分かりやすい様に、

縦ロールちゃんの言った事を噛み砕いて説明してみよう。

 

※訳 

「おっと失言だったなお嬢様よ、名家の跡取りが純血でなくてどうするってんだ。

 その事ならこの婚約を受け入れるのが手っ取り早くて確実だろうがよ。

 この婚約にはこっちとアンタのトコの親の面子とかもかかってんだ。

 さっきのアンタの言葉はそんな社会的にも重要視されてる問題を軽んじてる発言とも取れる。

 アンタのこの失言をマスコミ関連に垂れ流して欲しくなけりゃあ、

 黙ってこっちの言う事聞きなゲッヘッへー」

 

といった所だろうか。

 

 

なんという奴だ、リアスちゃんの発言が少々、ほんの少し、極微量に軽率だったとしても、

人の揚げ足を取って脅しをかけるなんて。 もうホント最低だよコイツ、

人には超えちゃならない一線というものがあるでしょうがまったく。

しかもしたり顔で紅茶をお行儀良く飲みやがって。

にやりと笑った顔がまだちょっと幼さを残す、

子供がまるでイタズラに成功した時の様なあどけなくも可愛らしい女の子顔じゃなかったら、

今すぐブン殴ってふん縛って日本語の通じないダムの建設現場へと出荷するところだぞ。

 

 

『……最低過ぎる』

 

 

ああ、そう思うよねドライグ。

分かるよ、リアスちゃんは交渉事に慣れてないんだから、

もうちょっと手加減してくれてもいいじゃない。

ルーキー相手にガチで来るプロが何処にいるってんだこの女。

もし縦ロールちゃんが男だったら、

蹴り飛ばして腹切り裂いて新鮮な内臓と血液を闇医者に売り飛ばして、

儲けた金で南の島にバカンスに行っちゃうところだぞ。

 

 

「あのなリアス、俺は君の事を案じている部分もあるんだ。

 今更この婚談を破棄すれば互いの両親の顔に泥を塗る事になる。

 だが、この婚約が成立すれば先ほどレイヴェルが言った問題も含めて良い事尽くめだ。

 それに君は俺の事が嫌いかもしれないが、君は何故俺を拒む?

 俺は君を一目見た時、衝撃が走ったよ、『こんなにも美しい女性がいるのか』ってね。

 それから俺は君の事をいつも頭の片隅で考えてしまっっている。

 そしてある時気が付いた、これは……、君に恋をしているのかもしれないと。

 いや、もうコレは愛の域だ、俺はそう確信してる。 

 だから君も、少しは俺の事を考えてくれないか?

 それに、結婚から始まる恋もある、俺はそう思うな」

 

 

自分側が優勢にあると感じ、いきなりリアスちゃんを口説き始めたお兄さん。

口説き慣れているのは確かで、言葉一つ一つが上手い言い様だ。

だがしかし、ここはナンパの名所などではなく、斬るか斬られるかの交渉の場。

自ら隙を見せたなカスめ、一瞬の気の緩みが命取りとなるのが言葉の場というものだと、

その身に刻み込んでやろうじゃあないか。

 

 

「ほう? ではでは、結婚さえすれば二人の間には愛が芽生える自信がお有りで?」

 

 

俺の思惑にいち早く気付いた縦ロールちゃんだが、俺はお兄さんに質問した。

その質問に縦ロールちゃんが答えるのはオカシイ、質問はされた者が答えるのが筋だ。

しまった!、とばかりに表情を歪める縦ロールちゃん。

お互い、当の本人が足枷になっている様だね、

しかしお兄さんはリアスちゃんの比じゃないご様子。

だって自己顕示欲強そうだもんね、こりゃ扱いやすいや。

 

 

「ああそうさ、俺ほど魅力的な男もそういない、お前の様な凡男と違ってな。

 そして魅力的なのはリアス、君もそうだ。 君ほどの女がそういないのも事実。

 俺達だからこそ釣り合いが取れるとは思わないか?

 俺は君を全力で愛すさ、それはもう情熱的に。 それの何処が不満だと言うんだ?

 そしてこの俺にどう反論を吹っ掛ける算段を持っていると言うんだ人間?」

 

 

まだこのバカ口説いてるよ。

自分の状況を理解していないようだ、自分の陣地に地雷仕掛けてどうすんの?

しかも隠せてない様なデカイ地雷だ、利用されても文句は言えまいよ。

さて、何度も言うがモノは言い様なのである、捲し立ててやろうじゃないか。

 

 

「なるほど、そちらの言い分は分かりました。

 余程ご自分に自信がお有りなんですねぇ……。

 あなたの言いたい事を要約すると、こうだ。

 

『俺は家柄もルックスも権力も財力も武力も、どれを取ってもパーフェクト。

 そんな素晴らしい男たる俺に女が群がるのは当然だ、だからハーレムは致し方がない。

 しかし、裏を返せばそんなモテるイイ男の嫁になれるのだから君は喜ぶべきだ。

 君の気持ちなどどうでもイイ、俺は君の家柄の泊と魔王の義弟という立ち位置、

 そしてその豊満な身体を我が物に出来れば何の問題もない。

 互いの才能を持つ子供が産まれれば双方の両親も喜び、純血が増えて跡取り問題も解消。

 まさに良い事尽くめではないか、これに何の不満が有ると言うのだリアス・グレモリー。

 君の想いや気持ちなど何の意味も価値も持たないのだからここは黙って俺の女になれ』

 

 とまぁ、ざっとこんな感じですかね、こりゃ酷い」

 

 

「そんな事は言っていないだろう!? お前の曲解だ、勝手な思い違いをするんじゃない!

 俺がいつそんな事を言ったと言うんだ、ええ! 先程から発言に悪意が満ちているぞ!」

 

「いーや、あなたは確かにこう仰ったんだ。

 あなたがリアス・グレモリーの何を見ているか。

 それは家柄、コネクション、才能、そしてあなたのお眼鏡に叶うルックスとスタイル。

 謂わば地位や権力、女としての機能を重点的に見ている訳だ、これで愛とは片腹痛い」

 

 

そうなんです、さっきからリアスちゃんを見る目がいやらしいんですこの人。

完全に胸元に目が行っちゃってます、それは失礼というものですよ。

確かにリアスちゃんのソレは豊かですけどね。

ていうかね、後ろで待機してるオカ研部員の女子達にも目が行ってるよね。

もうお給仕してくれてるメイドさんのお尻も見てるものね。

婚約の話に来たのに他の女見てるとかナメてんのかおい。

さっきから俺の精神世界でも歴代赤龍帝の先輩方がご立腹だ。

 

 

『ナルシストはいらない、()()を出せ』

 

 

よーし分かった、後で皆殺しにしてやるから懺悔でも済ませておけ。

このシリアスな雰囲気を少しは考慮してください、ブレないにも程がある。

流石は変態、侮れない。

 

 

さて、ここからは俺の独壇場である。

今コチラに発言権が回っている、向こうは守りに徹するしかない。

お兄さんは失態をしでかした事にまだ気付いていないのだ。

ならば向こうさんのアイデンティティやら生き方やらを根本から否定しまくってやる。

故事付けでも屁理屈でもなんでもいい、

反撃の隙を与えないマシンガントークで攻め立てるべし。

 

 

「あなたは男女関係というモノを根本的に舐めている。

 ハーレムなんか囲って自己満足に浸る、完ッ全に自分本位な考え方だ。

 女性を蔑視してはいないでしょうね?

 周りに女を大勢侍らせて夜な夜な楽しむのは大いに結構です、

 俺達には全く関係ございませんのでどうぞご自由に。

 しかし嫌がる女性を無理やりハーレムに加入させようとするのは如何なものでしょう。

 自身達の出生率や現存数まで理由に持ち出し、回りくどくネチネチネチネチ。

 女というのは根本的に計算高い賢い生き物です、

 地位や権力を持っていてある程度のルックスの男に弱い。

 それは己の保身や待遇、風評を本能的に考えているからだ。

 そんな女にまんまと踊らされている男ほど惨めで醜悪なモノは無いのです」

 

 

ここは呆れたような口調で言ってやる。

いかにも馬鹿にしてます的な雰囲気を惜しげもなく醸し出すのである。

すると額にビキビキと青筋を浮かべながらお兄さんは反論してくる。

 

 

「……ハッ、女にモテないからって僻んでいるのか?

 それはそれは随分と物寂しい人生を送っているんだな人間。

 そんな疑心暗鬼では女も出来ないのは当然だろうよ」

 

 

反論じゃなくて嫌味だった。

 

 

「あなたが仰っているのは理想だ、現実ではありませんよ?

 女も現実に生きる生物だ、色々と打算で動きますよ。

 夢と現実との区別がついていらっしゃらないのなら、

 ここらでその夢、覚まさせてあげましょう。

 女というのは男より計算高い、昔から言うでしょう?

 〝男は女に溺れ、女は恋に溺れる〟と。 まさにその通り。

 男は女に入り浸りますが、女というのは男に恋をしている自分に酔うのです。

 だから今現在関係を持っている男より優良な物件が現れればアッサリと見限る、

 よく聞く話です。 あなたもそうならなければいいですね」

 

 

「交渉や話し合いとはズレてきていますわ、誹謗中傷はこの場には相応しくないかと」

 

 

決してモテないと言われてムキになったのではありません、断じて。

 

 

「それは失礼……、……えーと、あなたさっき何て仰いましたっけ?

 結婚さえすれば愛が生まれる?

 他の女を十数人囲いながらも、嫌がる女性を半ば脅しの様な方法で正妻として迎えて、

 その女性に対し、「俺ほど素晴らしい男の嫁になれるのだから、文句は無いだろう」――?

 寝言は寝て言ってくださいお兄さん。

 これほど言われてもまだ結婚したい、愛が生まれる自信があると言いたいのなら、

 どうやらあなたの脳ミソはイカレてるんじゃないかと、

 病院で診察していただくのをお勧めします。

 ついでに去勢でもしたらどうでしょう? 

 そうすればこれ以上あなたの下半身でしかモノを考えられない、

 無能な遺伝子を持つお馬鹿は増えない。

 中々の名案だと思いますが、反論はお有りです?」

 

 

一気に言ったから喉が痛いし疲れた。

基本俺のセリフって短いのが多いけど、俺も言う時は言うのですよ。

まぁ、わざとこういう嫌味な言い方にはしたけど、コレは効果覿面の様だ。

見たトコお兄さんは感情的な人っぽい、こちらが陰湿な嫌味でも言ってやればすぐ怒るだろう。

サラッと聞き流して他の視点での嫌味で返す、なんて高度な駆け引きは出来そうでもない。

 

こと話し合いの場において、相手の言葉に理屈や根拠なく感情で返してしまえば、

ソレは相手に言いくるめられ上手い具合に乗せられた、ということになる。

だって、もうお互い子供じゃないんだから感情私情は横に置いといて、

筋の通るようにお話しましょ?っていうのが話し合いなのだから。

 

だからこそあえて侮辱に侮辱を重ねて、お兄さんをブチギレさせる様な事を言いまくったのだ。

こうする事によってお兄さんがブチギレて躍起になって言い返せば、

痛い所を突かれたと自分でアピールしている様なもんだ。

でもちょっとやり過ぎたけど。

おいコレ完全に俺は目の敵にされるよね、貴族関係の後ろ盾でも探した方が得策かも。

まぁ俺の自業自得だけど。

リアスちゃん達には「俺が泥を被る」って言っちゃったし、後には引けなかったのです。

……いや、モテないって言われたからじゃないですよ?

 

 

でも、理屈っぽい理系の本やらこういう系の漫画やドラマ見て勉強するのは、

正解だったみたいだ。 リー○ル・ハイは最高でした、まる。

お顔を真っ赤っかにして怒り狂うお兄さん、

もう縦ロールちゃんは諦めた様で紅茶を飲みながら窓の外を見ている。

うん、お兄さんが一人で突っ走ってるもんね、

そりゃ巻き返しは無理だよ、ってかさせないし。

こっちの仕掛けた罠に全部引っ掛かってくれるご親切なお兄さん。

地雷原を目隠しして全力疾走するより凄いよアンタ、もはや勇者の域だと思う。

 

 

「ふ、ふざけるな! そんなものは詭弁だ、屁理屈だ!」

 

 

もう子供が駄々捏ねてるみたいなお兄さん。

その内、床で転げまわって泣くんじゃないだろうか。

最初はクールぶって俺に見下すような視線向けてたのに、これじゃ形無しだね。

ああ可哀想に、もちろん手加減などしてあげない。

 

 

「こちらの言い分が詭弁と言うなら、あなたの発言は人権侵害かと。

 当人の意思に関係なく婚約を進めようなど言語道断。

 まして屁理屈も立派な理屈に含まれます、

 キチンと筋の通ってこちらが納得できる反論が出来ないのなら、

 素直にこちらの条件を呑む事です」

 

 

人権侵害まで持ち出したら、向こうも黙るしかない。

〝郷に入っては郷に従え〟とも言うからね、ここまで論破されてまだ言い返したら、

それは反論ではなく、ただの言い掛かりとして処理されるのは分かってるんだろう。

 

 

『ルーキーとプロがどうとか言ってなかったか? 

 これはあまりに……、普通の男なら泣き崩れるレベルだぞ』

 

 

今のはお兄さんの失言と縦ロールちゃんの抑制不足のせいだ。

酷い脅しを吹っ掛けてくれた縦ロールちゃんには、

是非とも〝明日は我が身〟という諺を覚えて帰ってもらいたい。

 

 

「……条件?」

 

「ええそうです、条件です。 本来はそれ目的でお呼びしたのですから。

 先程はこちらの言い分の正当性を示させていただき、

 この婚談には少々問題があるという事もご理解いただけたと思います。

 ですが、もう事はここまで進んでしまっているのは事実、

 今更全て白紙に戻しましょうというのは無理がある。

 でしたらリアスさんとお兄さんとで、

 白黒ハッキリつけられる勝負事の様なモノをご両親方は用意されていらっしゃるのでは?」

 

 

そう、さっきまでのやり取りは前哨戦、本戦はここからです。

この婚約はオカシイぞ!って向こうさんに訴えかけ、こちらの言い分を理解納得させる。

そうする事によって、勝負事の時にリアスちゃんを有利な条件下で戦える様に、

謂わばハンデを取り付けてもらいやすくする為だったのだ、じゃじゃん。

嫌がらせ兼向こうの言い分論破におってこちらの正当性を掲げ、

こんな理不尽な婚約を取り付けたのなら、ハンデを貰って然るべきだ、

という流れに持ち込めば、非常に交渉がスムーズに進むのである。

 

 

さっきの俺の質問にメイドさんは一度頷き、言葉を紡ぐ。

 

 

「はい、お互いがお譲りにならない事は、

 旦那様もサーゼクス様もフェニックス家の方々も重々承知でした。

 なので、最終手段として、

 ライザー様とお嬢様とでの〝レーティングゲーム〟で決着をつけてはいかがでしょう?」

 

 

なるほど、そうきたか……。

ところで、〝レーティングゲーム〟ってなに?

 

 

『そこからか……』

 

 

相手を言い負かす事しか頭に無く、

肝心な所をサッパリ知らなかったイッセーくんでした、まる。

 

 

 

 

 

 

 






文字数約一万。
初めてだよ、こんな文字数。

【一言】
この話すごく面白いです!前に原作の方が千倍面白いと言ってましたがこっちの方が千倍面白いと思います。ずっと笑いながら読んでいました。あの、一言言いたいです。作者さんあなたは神ですか?外にでればストーカーなどの変態さん。家に帰れば変態のお兄さん。パソコン開けば感想欄に変態さん。はっきりいって同情します…まあ女じゃないんでなめ回すような視線などは浴びたことはありませんが。まあクラスから一人だけ除外されるというのはありましたが(笑)えっと…また面白い話が見れる事を期待して、楽しみにしております。作者さんもとい神様は変態さんたちに負けずがんばってください!

【一言】
初感想です。本文も面白いし、後書きも面白いし、もうギャグSSとしては自分の中でかなりのハイランクな作品で、次の更新が待ち遠しいです。これからも変態さん達の精神攻撃にめげないで頑張ってください!

【一言】
はじめまして、すふぃあと言います。今日見つけて、一気に全部読みました。とても面白いと思います!ウチの作品のオリ主君もかなりチート性能なんですが、お宅のイッセー君は中々……最強ですなw周囲が変態ばかりなのは僕にはどうしようもないですが、負けないでください!感想が入る=それだけの人が読んでくれてるってことですからね!そう悲観的にならずに生きてください、お願いします。次回の更新、楽しみにしてます(*´ω`*)

いやはや、光栄です、恐悦至極です。
面白いって言われるってのはやっぱり嬉しいです、そう、本編が。
後書きが面白いってもう言われ飽きちゃったよ、後書きは。

そして前回の話、結構批判とか来るかなぁと思ってました。
【一言】
一誠さんの言葉に賛成。勝ちたいならとにかくどんな手でも使うべき。リアス嬢とか婚約したくないくせに自分のプライドを優先しているだけにしか見えない。さらに言えば、リアス嬢は「正々堂々」、姫島は「卑怯」なんて寝言を言ってるし。そもそも悪魔が正々堂々とか卑怯とか何言ってんだ?相手を騙して陥れるのが悪魔なんじゃなかろうか?それに、姫島とか塔城なんて主の進退や仲間の命がかかっている場で自分の持つ力を隠して全力を出さないとか、自分の都合を優先しているようにしか思えない。それは卑怯だとかにならんのか?グレモリーは眷属に情愛が深いとか言うが、眷属からは実はそうでもなかったりするんでは?もしリアス嬢の乳がそんなに大きくなかったら、乳龍帝もそんなに惹かれなかった気がしてくる。


……非常に深いご感想でした、はい。
これですよ、これこそ感想というモノですよ。
本編についてここまでマジで考えて思ったことを書いてくださった方は、
初めてではないだろうか? ありがとうございました。

ええ、前話で来た感想は約50件。
久々に沢山来たなぁと思って感想欄を開いたら。

【一言】
はじめまして、ミスターキシドーです。
貴女様のこの小説をいつも楽しく読ませていただいています。ところで、少し話が変わるのですがこの小説の変態(神)達の貴方への崇拝はそれは某ナチスの司令官並のカリスマによって集まったのだと思います、ですのでもっと貴女様から近よっていくべきなのでは?と思いました。手始めにノーパンから始めてみましょう、そしてステップアップでノーパン黒タイツやその崇高なチッパイにたいしての黒ビキニ、そして最後は靴下のみを試してはいかがですか?私はもちろん、貴女様を慕う変態様(最高の人類)はそれを待っているはずです。ですので貴女様も一緒に変態という名の人類最強種に昇華しましょう!その日が来ること私は待ち望んでいます。
PS.もし、ノーパン黒タイツなどを試すのならいつでも読んで下さい、私は貴女様の忠実なる変態なのですから。あぁ、ノーパン黒タイツ・・・ハァハァ!
【一言】
フフ、フフフフフ、フハハハハハ、ハハハハハハハ
ハーッハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!!!!
残念だったな作者の兄よ!!それは、変態ではないただの熱血バカだ!我々変態はそんなカッチョいいもんじゃない 確かに、周りの目を気にしないだろう 糾弾されようが何されようが
己を貫くだろう!たがしかし!!!!!!!!根本的なところでちげぇんだよ!!!!!!!!
変態の真理は己の欲求を満たし、快楽を得て更なる欲求を満たすことを本懐とする!!
変態なのは構わないが(だからと言って近親相姦はダメ、ゼッタイ)そこを履き違えて貰っては困る!赤ん坊からやり直せ!未熟者めが!
ー本文の感想ー
今回の一誠きゅんメッチャカッコいいかっこよすぎてもっと好きになっちゃった////アァ、もっと…………もっとあなたを………か・ん・じ・さ・せ・て?
【一言】
一番安全であるべき家の中に一番の危険因子があるとは…黒鬼さんも苦労してますね。本当に大変な事になりそうなら私の家に来てくださいね?いつでもウェルカムですよ?ちゃんと助けてあげますからね?ちゃ~んと、ね? PS.やっぱ黒鬼様に似合いそうなのは堕天使エロメイド服が一番似合うとおもうんですよ。例えナイスバディじゃなくとも。あ、もちろん下はノーパンだよ?もしくはバンドエイド一枚だけとかね?後、個人的に身内間でのそういうものは変態のベクトルが違うと思います。
【一言】
更新お疲れ様です。お義兄さんの熱弁に全俺が泣いた。素晴らしい内容でした。これはもう作者さんも変態について理解するしかないですね。どうしても理解出来ずに納得も出来ない、そんな時は私の所に来て下さい。添い寝しながら、うとうとしてきた頭に刷り混み方式で理解出来るように朝までびっちり説明してあげます。朝起きればそこには生まれ変わった新たな作者さんがいるはずです。私達(変態)と一緒に変態道を極めましょう。そうすれば明るい未来が待ってるはずです。お義兄さんの扱いに全俺が泣いた。日常生活に支障がないのかって?大丈夫です。私の周りにはそれは凄い変態がいますから。真冬の寒い日にフンドシ一丁で好きなあの子に告白するような奴です。まぁ、振られましたけどね(笑)私服でフンドシを着てますし、正直私も引くレベルです。まぁ、自分より上に立ってる変態がいますから私なんてまだまだですよ。では、お義兄さんにベロチューされそうになって涙目(多分...)になってる作者さんを想像しながらさようなら。
【一言】
更新乙です。相変わらずこの作品はぶっ飛んでますね、色々と。作者さんのお兄さんの迷セリフかっこ良いですね(笑)変態として生きるのはとても難しいものなんですね・・・。あと、作者さんに「死んじゃえ!」って言われたお兄さん羨ましいです(笑)
【一言】
作者さんのお兄さん…最高に変態ですね尊敬します。作者さんのパンツ1ダースほどもらえたら俺は色々楽しむのに…てなわけで作者さんの半裸を想像しつつ次回を待ってます(`・ω・´)キリッ


いつの間に作者の持つ神器『変態創造』が、否、
禁手(バランス・ブレイカー)である『猛り狂う変態達の宴(クレイジー・クレイジー)』が発動したのだろう?
勝手に発動、暴走するんだから怖い怖い。
もうこの国はダメかもしれない、うん、きっとダメ。

という訳で前書きでも書いた様に来週はお休みです。
再来週にお会いしましょう、さよーなら。





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