なんやかんやで赤龍帝   作:黒鬼

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番外編完結。
次回からは第二巻の内容。

えー、ダラっといっちゃおうよ。






『なんやかんやでヤンキー事情 後編』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ひょっとしたら、ひょっとするかも………』

 

 

この予想はどうやら的中したらしい。

そう、偽物だ。

イッセーくんと喧嘩をしてコージが生きて帰れるわけないし、

コージは展望台で「違う」と言った。

どうやらイッセーくんの偽物が出回って、好き勝手している様だ。

舐めた真似をしてくれる。

どうやら本物の味という奴を、その偽物には是非とも味わって頂きたい。

ソイツのせいでコージは偽物と本物の両方の味を知ってしまい、

今も病院のベッドでうんうんと唸っているのだ。

 

 

俺やマサシは穏健派、

つまりはイッセーくんと敵対してもイイ事無いので諦めようという派閥に属する。

だからといって、偽物にまで偉い顔されるのは癪なのだ。

友達がやられたお返しに、本物をぶつけてやろう。

そう考えた俺とマサシは、とある人物にコンタクトをとった。

 

 

――仲介人(ブローカー) 元浜――

 

 

彼はイッセーくんの友達であり、イッセーくんを呼び捨てに出来る数少ない人物の一人。

そして彼の役は仲介人。

ヤンキー業界では圧倒的、

いや、絶対的武力及び権力を誇るイッセーくんとツテを持ちたい輩は腐る程いる。

イッセーくんがバックにいるというだけで、事を優位に進めることだって出来るだろう。

だが、それを規制、もしくは制限するのが彼、仲介人元浜なのである。

彼の匙加減一つで、イッセーくんと会えるか会えないかが決まるのだ。

だが、今回の件については大丈夫だろう。

自分の偽物が偉そうにしている、コレはさすがのイッセーくんも気分がイイものではない。

 

 

待ち合わせ場所の喫茶店、キチンとした服装で俺とマサシは待っていた。

すると、時間通りに男が一人入って来た。

メガネを掛け、知的そうな顔。

間違いない、元浜だ。

しかし、彼も呼び捨てにしてはいけない。

イッセーくんと一緒にいるだけあって、彼自身もとんでもなく強い。

もちろんイッセーくん程ではないが、俺達では逆立ちしても勝てない。

 

 

「ああ、お待ちしてました元浜さん」

 

「おお、悪いね待たせて」

 

「いえいえ」

 

 

俺達は立ち上がって頭を下げ、彼はいやいやと頭を振るう。

お互い社交辞令だと分かっていても、表面上は取り繕う。

交渉とはこういうモノだ。

 

 

「さて、いきなりだが、本題に入ろうか。

 俺を通してイッセーに会いたいのはどうして?」

 

「いえ、会えなくてもいいんです」

 

「……どういうことだ?」

 

 

ここで警戒されても厄介である。

別に隠す事でもないのだ、イッセーくんの偽物が現れ、好き勝手している(むね)を話す。

すると彼は、ニヤリと口元を緩ませる。

……この反応は……?

 

 

「俺も足取り探してたんだ。 幸いにも、イッセー自身はまだ知らない。

 それで? どこでその情報仕入れた? ソースは?」

 

 

どうやら興味津々の様子。 彼も探していたらしい。

聞くところによると、その偽物の正体は彼の知り合いらしい。

どうやらその偽物に『貸し』があるようだが、

全然懲りずにチョロチョロチャラチャラしているらしい。

 

 

「一回お灸据えてやらなきゃなと思ってた矢先にこれだよ。

 しかし、お前らの案は面白いな、うん。

 よし、そのやられたお友達の分まで俺が何とかしてやろう」

 

 

後はどうやってイッセーをあの馬鹿にけしかけるか……――。

とニヤニヤしながら考える元浜さん。

その偽物がいた場所、及び調べ上げた根城を教えると、

 

 

「三日後にまた此処に来い。 面白いもん見せてやる」

 

 

そう言って彼は満足気に帰っていった。

その笑みには何やら寒気を感じさせる何かがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三日後、場所は再び喫茶店。

俺とマサシと元浜さんの三人が、この前のテーブルについていた。

そして揃いも揃って、視線は店の外の向かいのビルに向いている。

この喫茶店の向かいのビル、その玄関には件の偽物男。

実はそのビルのオフィスが偽物男の根城なのだ。

 

 

チラチラと腕時計で時間を気にしている元浜さん。

 

 

「どうしました?」

 

「ああ、そろそろなんだ。 ほぉら、来た来た……」

 

 

元浜さんが偽物男の遥か後ろの方を指差す。

小さな影がだんだん大きくなって来ている。

辺りの空気が急に辛くなり、寒気がしてきて体が震え始めた。

まさか………。

 

 

その小さな影だったモノは一人の少年だった。

いつもはトロンと眠そうな眼をしているのだが、今日は違う。

研ぎ澄まされた日本刀の様な鋭い視線を携えて、その少年はやって来た。

 

 

「マサシくん、ご登場です」

 

「はいー」

 

 

イッセーくんだった。

日光の照り返しでアスファルトが熱くなり、ゆらゆらと蜃気楼の様になっていた地面。

だが、その蜃気楼も一瞬で消え去り、風も空気も止まっていた。

全ての景色がキュッと引き締まったかの様だ。

その中でイッセーくんの視線はビルの玄関に今も立つ、偽物男の後頭部を射抜いていた。

 

 

「あ、あの…、元浜さん……。 何であの御方はあんなにもご立腹で……?」

 

 

俺のもっともな質問に、マサシもうんうんと頷く。

俺達は身を低く屈め、頭よりも目の方が高くなるかの様に、喫茶店の窓越しに彼を覗き見た。

 

 

一歩、そしてまた一歩。

イッセーくんは偽物男に近づいていく。

 

 

残念なことに偽物男は俺達の様に『イッセーセンサー』が搭載されていないらしく、

未だビルの玄関に突っ立ったままである。 

悲劇である。

ここいらの正しい不良ならば〝イッセーくんは怖いもの〟だと体で覚える為、

生存本能がフルスロットルで稼働し、

急激な進化を遂げた後に『イッセーセンサー』が体内に生まれる。

 

このセンサーは非常に優秀で、イッセーくんのお目々から発せられる闘争本能及び敵愾心、

並びに、暇だから誰かをド突いて時間を潰そう、という心や感情、

思いつきなどといったモノに素早く反応し、

(ゼロ)コンマ数秒で、『逃げなさい、とにかく逃げなさい』という命令を体全体、

特に脚の方へ脊髄反射より早く出すのであるが、

悲しいかな、偽物男にはついていない様である。

 

 

――ジャリ――

 

 

さらに悲しいことに、イッセーくんが近づいて来た音で振り返り、

 

 

(なんだガキ、人様の顔を睨み付けやがって!)

 

 

といった顔でイッセーくんを睨み返してしまったらしい。

ピピッ!――という、

まるで戦闘機がレーダー内で獲物(ターゲット)をロックオンした様な音が聞こえた。

 

 

「アウト!」

 

「チーン!」

 

「ナンマイダブナンマイダブ」

 

 

喫茶店の中で俺達は偽物男に祈りを捧げた。

彼のご冥福を祈らざるを得まい、不憫過ぎて……。

 

 

「ホント洒落にならん。 結局、何でイッセーくんはあそこまでキレてるんですか?」

 

「いやぁ、この三日間濃密に調べてみたら……」

 

 

あの偽物はイッセーくんの名を使い、カツアゲや無銭飲食、

はたまた好みの女がいればイッセーくんのネームバリューだけで引っ掛けようとしたり、

それはもう好き勝手しまくったらしい。

完全に我が物顔でこの街を歩いている偽物に元浜さんは腹が立ち……。

 

 

「キッツーイお灸を据えてやろうって思ってな?」

 

 

偽物も止せばいいのに、「あん!?」と、イッセーくんの真正面へと向き直ってしまった。

イッセーくんはギロリと睨むだけで、言葉は発さない。

 

 

「噂を流してみたワケよ、ここら辺一体に」

 

 

――ハンッ、イッセーがなんぼのもんじゃい!

  そんなガキなんざキン○マ蹴り上げて体の中にタマ入れてやるっつうの!

  それでスカート履かせて第二の人生を送らせてやるわ!

  イッセーちゃん♡ってか!?

  逃げ回ってねぇで、俺様と勝負しやがれ、イッセーちゃん♡

  ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!――

 

 

「と、アイツが豪語してるっつう噂を」

 

 

元浜さんは偽物を指差し、もう片方の手で目を覆った。

イッセーくんは既に偽物の眼前まで迫っており、偽物は恐怖心からか、

「な、なんだコラァ!」と大声を張り上げていた。

 

 

「そりゃダメだ。 ただでさえ怖いのにスカートなんか履かせたら、余計に怖いぞ」

 

 

ゴクリと喉を鳴らし、俺もマサシも顔を手で覆った。

指の間からは至近距離で睨み合う二人が見えていた。

 

 

グイっと顔を突き出したイッセーくんは、

両方の手をポケットに入れたまま奥歯をギリリと噛み締めている。

ズワイガニを殻のまま食べても平気だと噂される奥歯である。

ああ、結構本気でキレていらっしゃる……。

 

 

「……スカート、履かせてみろよ」

 

「はぁ?」

 

 

会話はこれだけである。

偽物が悪い。

イッセーくんに対して「はぁ?」はイケナイ。 ホントダメ。

 

 

「耳、悪いの?」

 

 

言うが早いか、イッセーくんのオデコが突き出された男の耳にメリ込んだ。

ススメバチが刺そうと思ったら、針が折れてしまったオデコである。

金属バットで殴ったら、バットが曲がって折れてしまったオデコである。

伝家の宝刀、ダイヤモンドヘッドなのである。

 

 

――ひんっ!――

 

 

と男は白目を向いて、その場に崩れ落ちた。

 

 

「……一発で終わりか」

 

 

マサシがポツリと言った。

ところがどっこい、一発で終わってくれるほどイッセーくんは優しくない。

 

 

「起きろよ」

 

 

野犬の頭を撫でただけでその皮を剥いでしまったという黄金の握力を誇る手を伸ばし、

男の耳を掴んだ。

 

 

「聞こえない耳ならいらないよね」

 

 

そしてそのまま振り回し始めたイッセーくん。

十回ほど男の体が宙を舞い、色んな所に叩きつけられれば、

ビチッ!という不気味な音と共に、ボロ雑巾の様にビルの角まで飛んでいった。

イッセーくんの手には男の耳だけが残っていた。

 

 

「「ひえー」」

 

 

俺とマサシは思わず耳を手で覆った。

見ているだけで痛そうである。

元浜さんは軽快に笑っているが、俺達二人はただただ怯えた。

その後は偽物の仲間が数人現れ、相手がモノホンのイッセーくんだと分かると、

ナイフやらバットやらの武器を持ち出し始める。

やけに喧嘩慣れしてそうな雰囲気の男達。

どうやら下っ端ヤクザらしい。

するとあの偽物もヤクザなのだろうか。

 

 

男達はジリジリとイッセーくんとの距離を詰めると、一斉に飛び掛かった。

そして男達の持つ武器が容赦なくイッセーくんに直撃した――。

ら、良かったのであるが、

上司の為に毎日額に汗を流している男達と、

毎日他人に冷や汗脂汗を流させているイッセー様とでは、

有事の際の動きが違う。

イッセーくんが一瞬消えたと思ったら、男達が吹き飛んだ。

一人、こちらの方にブッ飛んできて、

見てみると気絶しているその男の頬にクッキリと拳の跡が付いている。

どうやらあの一瞬で殴り飛ばしたらしい。

ただ、あの御方は腕力も強過ぎるようだ、倒れている男の顎の骨が砕けてやがる。

口からコポコポと血が湧き出てきた。

 

 

「……な? イイお灸になったろ?」

 

「「いやいやいやいや……」」

 

 

俺はイッセーくんに捕まるくらいなら警察に捕まった方がマシだ、とマサシは真顔で呟く。

そりゃそうだ、警察だったら家裁で済むが、イッセーくんなら即死刑執行である。

そんな事を考えていると、元浜さんが不思議そうな顔を浮かべている。

 

 

「どうしました?」

 

 

そう聞けば、ん、と顎で外を差す。

男達が倒れている、ただそれだけ。

…………()()()()? イッセーくんは何処に?

キョロキョロと辺りを見渡してみるが、見つからない。

お帰りになられたのだろうか?

 

 

と思った矢先、体中に電撃が走った。

イッセーセンサー作動中なのである。

窓ガラスがピシッ!っと音を立て、後ろに強烈な存在感を察知。

無視など絶対に出来そうにない強大にして圧倒的なモノが後ろに居る。

 

 

「元浜、何してんの? コイツら誰?」

 

「おうイッセー。 コイツら、お前に喧嘩売った奴の仲間なんだって」

 

 

元浜さん、ニヤリとして言った。

喧嘩売った奴、コージのことだろう。

あながち間違っていない、間違ってはいないが、誤解を生むような言い方をしやがった。

これでは俺達がイッセーくんに敵対の意志があり、

闇討ち敵討ちの計画を企てようとしているとも聞こえる。

そして俺達が、まるでコージではなくさっきシバかれた男連中の仲間の様にも聞こえる。

 

 

「ふぅん」

 

 

恐る恐る、声のした方へ振り返る。

 

震えながら抱き合う俺とマサシの顔を、

返り血が顎から滴り落ちている獰猛な(ケモノ)が一匹、ジッと睨みつけていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







えー、アキラ達は最後はシバかれてません、一応顔見知りになった程度です。
番外編終わりましたねぇ。
次回からは第二巻の内容ですか、大変そう。

えー、感想数が激減してますね、〝今日の変態コーナー〟をしなくなったからでしょうか?
薄情だなおい!(泣)
お気に入り件数も1600を超えまして、感想数は1200超、
いつかお気に入り件数を感想で超えたいです。
これらの数値は読者の皆様のおかげです、ありがとうございます。
デ、デレてなんかないからね! 勘違いしないでよ!
なーんてツンデレ口調で言ってみたり。

質問に答えましょう。
「どういう基準でギャグを考えているのか?」
……基準!?
基準って……、どういうことでしょう……?
どの様に考えているかとか、どういうジャンルのギャグを書こうと思うかとか、
そんな感じでしょうか?
それならば、始めからギャグを言わせるキャラクターを濃く書いておくってな感じです。
普通とはズレているキャラを書いておけば、そのキャラにとっては普通でも、
周りからすればオカシイと思いますので、それがギャグになるんじゃないかなぁとか。
はい、調子に乗ってお答えしました、恐縮です。

番外編の後書きということなので、ここらで一つ、変わった事をします。
未だ生態が謎に包まれた我らが主人公、兵藤一誠について掘り下げます。
勉学面はちょっと良い止まり、クラスで一人はいる意外と頭の良い子レベルです。
その代わり悪知恵はとんでもなく働きます。
イタズラが三度の飯より大好き、まだまだガキですね。
お金も大好きで、お金を儲ける事自体を楽しんでいる節があります。
なので時偶ゲスな行動をしてくれます、とても正義の味方とは言えません。
戦闘力は未知数、素手でかなりの強さを誇るので、
ぶっちゃけ〝赤龍帝の籠手〟の存在意味が危ぶまれてます、ドライグ可哀想。
でも父母には負けっぱなし、勝った事ありません。
母はなんだかんだ言っても息子が可愛いので、父に喧嘩で負ければ、
イッセーくんはその腹いせに、母へ「父に虐められた」と言います。
母も意図は分かってはいますが、面白半分で父をシバきます、兵藤家の裏話でした。
こんなもんでどうでしょう?

第二巻の内容では、キャラ達がかなり頭を使う場面を書きます。
勉強面ではない賢さというのを書けたらなぁと思っております。
その為、結構ゲスい展開になるかも? 保証は出来ませんがドMの方は必見です。

そして最後に……、
【一言】
初めまして!とても楽しく読ませて頂きました!
私はこれだけの変態紳士諸君を集める事の出来る作者様のカリスマに驚きました。
どんな作者様方でも過去これほどまでに変態達を集めた事のある方は居ないでしょう。
少なくとも私は見たことが無い。
これからも変態紳士のまとめ役、教祖、洗脳著者、神、萌え要素、嫁として頑張って下さい。
私も陰ながら応援しています。
では、これからも益々のご活躍を楽しみに待っています!
-PS-
変態達に関してはもうこういう人種なんだって思って楽になってもいいんですよ?
それと胃薬置いておきますね。
あぁ、それと婚姻届けも、後は作者様の印鑑だけなので。
こんな変態に囲まれていてはいつか発狂してしまうだろうからね。
作者様は私が嫁として貰って行くよ?もちろん異論は認めない。
私はゆっくりと作者様を可愛がってあげたいんだ。
もちろんベッドの上でもそれ以外の場所でもね?



誰か助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!
作者、貞操と戸籍の危機!
ていうかね、みんな作者を変態のボスって言うけど、違うからね!(泣)
作者は普通です、ノーマルだもん!

はい、では次回からは第二巻。
最初の数話はギャグをブッ込んでいきます。
途中からクソ真面目な内容に少しだけなります。

ではまた次回、さようならです。

















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