なんやかんやで赤龍帝   作:黒鬼

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えー、どうもです。
作者渾身の番外編、お気に入り回です。
出来ればケラケラ笑って楽しんでいただけると幸いです。


今話のコンセプトは、一般人から見た主人公イッセーくんです。
原作組ですらドン引きの強さを誇る彼、一般人から見ればどうなんでしょう?
そういう感じで書いてます。
前編と後編に分かれますので、次回もお楽しみを。


では、ダラっと行っちゃえ。







番外編
『なんやかんやでヤンキー事情 前編』


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の上のタンコブ――、という言葉を知っているだろうか。

 

 

目障りなモノ、邪魔なモノ。

大抵は自身より能力や地位が上の人物に対して使う言葉なのである。

例えばライバル、例えば上司。

人それぞれ、この言葉に該当する人物がいることだろう。

 

 

とある街のとある少年。

その少年は、ある種の青少年達からそう思われている。

本人にはサッパリ自覚がない。

だが、彼の名は広く知れ渡っていた。

もちろん、彼にまつわる噂も一緒にである。

 

 

――五十人の不良を瞬殺した――

――ヤクザ組織を壊滅させた――

――着物を着た黒髪美女を彼女に持ちながら、他の美女美少女を取っ替え引っ替えしている――

 

 

恐ろしく強く、恐ろしく憎らしい。

彼らは少年に様々な感情を抱いている。

畏怖、畏敬、憎悪、殺意、多種多様である。

 

そう、彼らはヤンキー。 街に蔓延る不良達なのである。

ナメられては終わり、強い者こそがルール。

そんな業界で今を生きる彼らには、その少年は非常に恐ろしく、

手の届かない程の高みの存在であった。

少年を倒して名を売ろうという輩も少なくないが、

少年には敵わないと諦めて音沙汰の立たない様にする者も多数。

 

 

コレは、そんなヤンキーというジャンルに身を置く、青少年達の愛と勇気と青春のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アキラ、それが俺の名だ。

 

 

俺は自他共に認める生粋のヤンキーでもある。

髪を脱色し、明るい茶髪に染めてピアスも複数付けている。

ポケットの中にはバタフライナイフと金槌やドライバーなどが収納されている。

俺はヤンキー高校の生徒だ、しかもその高校は工業系。

先ほど挙げた得物は全て武器として使うのだが、

そこは工業系高校に通う生徒という肩書きを利用する。

工業系高校の生徒が実習に使う道具を持っている事に何の違和感があるだろうか?

この言い訳で数多の警察からの補導を掻い潜って来た。

そして俺の隣を歩く髪を茶赤く染めた男の名はマサシ、コイツもヤンキー。

 

 

この街には色んな奴がいる。

美男美女美少女、ヤンキー、ヤクザ、エリートなど、実に個性的な奴らが多い。

そしてそれらの中にはやはり上下関係が存在し、上位に属する者は色んな方面で有名である。

 

 

とまぁ、色々と説明口調で語ってみたが、要は掟やルールさえ覚えておけば面白い街なのだ。

 

 

「おいアキラ。 コージの野郎、いきなり俺ら呼び出してよ、一体何なんだろうな?」

 

「さぁ? ソイツァ奴が来てみりゃ分かんだろ。 ホレ、来たみたいだ」

 

 

テクテクと歩き、目的地である俺達の溜まり場へと足を運ぶ。

コージという俺達の仲間から呼び出しを受けたのだ。

『用は行ってから話す』

と言っていたが、エラく急である。

そして呼び出した本人も来た様なのではあるが、どうも様子がオカシイ。

フラフラとよろけている。

 

 

「お、おい。 どうしたんだ?」

 

「足元フラッフラじゃねぇかよ」

 

 

俺とマサシは、コージの肩を支えてやり話を聞く。

どうやら今回俺達を呼び出した理由に関係する様だ。

コージは最近ここいらに引っ越して来た新参者である。

誰か強い奴にでも喧嘩を売ってしまって返り討ち、というのが関の山であろう。

 

 

「見てくれこの顔! もうボッコボコにされたんだ!」

 

 

コージはグイっと顔を突き出した。

こんな時、ブサイクは損である。

岩石が「まいった」と下を向くような元からのボコボコ顔は、ボコボコになっても分からない。

ムスッとして大魔神が虫歯を堪えている様な顔をしているではないか。

この男、普段からこんな怖い顔である。

顔の怖さだけで言えば天下一品。

これほど怖い顔を俺は今まで見たことない。

動物園のマウンテンゴリラが絶対にコイツとは視線を合わさない程の顔なのだ。

 

 

「で、どんな奴にやられたんだ?」

 

「匙元士郎って奴じゃないよな!?」

 

 

匙元士郎――、ヤンキー業界でもかなりの有名人。

『狂犬』という通り名が付くくらい恐ろしく強い奴だ。

あの『カズミ軍団』に一人で大立ち回りした程の強者である。

そんな奴に喧嘩を売ったのなら厄介だが、良くも悪くも匙元士郎はアッサリしている。

弱い奴には興味はない、その上しつこく絡まない男なのだ。

まだマシな相手だと言える。

他にも注意すべき男は大勢いる。

匙元士郎のツレである松田、元浜という奴らも要注意。

だが、いくらなんでも彼らだと限らない。

俺達のツレであるコージをシバいた奴の名を聞こうじゃないか。

 

 

「違う違う、そんなイカツイ名前じゃなかった」

 

「松田でも元浜でもないな?」

 

「ああ」

 

 

よしよし。

奴らではないのなら俺達でなんとかなりそうだ。

久々の敵討ち喧嘩だ、腕が鳴るじゃあないか。

 

 

「よっしゃ、後は任せとけ。 相手はどんな奴だ?」

 

「エライ馬鹿強い奴だったな」

 

「名前は分かるか?」

 

「えーと、確か……、『兵藤一誠』…とか言ってたなぁ…」

 

 

クラクラッと目眩がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人気のない展望台に「カシャン」という音が鳴り響く。

望遠鏡の隣の小さな白い箱に百円玉を入れた音だ。

 

 

「何なんだお前ら。 『兵藤一誠』って言った途端に汗かきまくって。

 おまけに展望台なんざ連れて来やがって……」

 

 

心底不審そうに聞いてくるコージ。

このバカ、引っ越して来て二週間だから知らないんだった。

 

――イッセーくん――

 

聞きたくもない名前を口にしたのはコージだ。

 

 

「な、な、何ィィィィィィィィィィィィィィィィィ!?」

 

「相手はイ、イッセーくんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 

コージが喧嘩を売り、ボッコボコにシバかれた相手があの『イッセーくん』だと聞いて、

俺もマサシも飛び上がってしまった。

そしてマサシは恐る恐る聞いた。

 

 

「ほ、本当に本物か?」

 

「本人がそうだって言ってたぞ」

 

 

青くなった目の下をさすりながらコージは答えた。

今度は俺が恐る恐るで聞く。

 

 

「そ、それで……、お前何て言って帰って来たんだ……?」

 

「え、そりゃあ…、『お前覚えとけよぉ!』って言ってやったけど」

 

「「バカタレがぁぁぁぁぁ!!!!!」」

 

 

俺とマサシは同時に声を張り上げ、世間知らずでおバカなコージの頭を左右から引っ叩いた。

絶対に言ってはいけない言葉である。

イッセーくんにド突かれて、「覚えとけ」はいけない。 ダメ、絶対。

忘れてもらうべきなのだ。

「ありがとうございました、忘れてください」とその場で忘れてもらわなければ後が怖い。

その上彼はお礼参りが嫌いだ。

「男なら一発勝負でしょ」というのが信条らしく、

彼に忘れてもらうか、コチラが忘れなければならない。

もしコージのバカの様に「覚えとけ」と言ったら「お礼参りに行きます」という風に聞こえる。

そうなれば彼はコチラに忘れさせようとするであろう、あの地獄の方法で。

 

 

――通称 除夜の鐘の刑――

 

 

いくつもの彼が執行する刑罰の中で、最もポピュラーなのがコレだろう。

その名の通り、忘れさせたい対象者の頭をコンクリートの壁か電柱に108回叩きつける刑である。

煩悩以外に記憶も消えるという優れモノ。

お求めの方はどうぞイッセーくんの所まで。

(※消える記憶の種類や度合いはその日のイッセーくんの機嫌や力加減次第なのでご注意を)

 

 

「そ、それで…、その目の下はドコでド突かれたんだ? 小指か鼻くそか」

 

「ゲンコツ5発くらい……」

 

「「嘘つけぇぇぇ!」」

 

 

俺達は再度声を張り上げ、左右からコージの頭を叩いた。

イッセーくんのゲンコツを5発も。

もし本当ならば、コージは今頃三途の川でシンクロナイズドスイミングをやっている筈である。

そんな事はありえない。

コージの青アザくらいならイッセーくんの小指デコピンか、

丸めた鼻くそが当たった程度で出来てしまう。

そんな御人なのだ。

デコピンでヤクザの額を陥没させた彼は、全身が兵器なのである。

 

 

「それほど難儀な奴なのか、イッセーとかいうガキは」

 

 

これほど言っても大胆発言。

おかしい。

俺とマサシはそう思い始めた。

考えてみれば、あの『狂犬』匙元士郎ですらイッセーくんには敵わないのだ。

イッセーくんと喧嘩して無事な奴なんて、後にも先にも彼の家族以外いないはずなのだ。

コレは……、ひょっとしたらひょっとするかも……。

そう思った俺達は面通しさせるために展望台へと来たのだ。

 

 

「おいコージよ、他所(よそ)では絶対に呼び捨てなんかするんじゃねぇぞ。

 若死にしたくなけりゃの話だが……」

 

 

ポンッとコージの肩を叩き、望遠鏡横に書かれた字を顎で指す。

 

 

――この望遠鏡で太陽と兵藤だけは見てはいけません。 目と体が潰れます。――

 

 

「……太陽と一緒か…。 溶けてしまうのか……?」

 

 

その文を読んで震えだすコージ。

イッセーくんを呼び捨てにしてはいけない。

してもいいのは家族か友達か、はたまた恋人くらいであろう。

もし俺達のような彼の知りえない奴が呼び捨てにしようものなら、

「イッセー? 親でもないのに呼び捨てすんなコラ」

と言ってド突いて頂ける事態になってしまいかねない。

彼がそう言った訳ではないのだが、もしそうなった場合が怖いので『くん付け』なのだ。

もはやコレは、この地区この街に住む生きとし生けるモノ全てが、

暗黙の了解という事で理解している。

〝触らぬ兵藤に祟りなし〟はみんなの合言葉なのである。

 

 

「バカを言え、太陽はジッとしてるが、奴は動くんだよ」

 

 

そんなやり取りをしていると、マサシが後ろから俺達に「そろそろだろ」と声を掛ける。

そう、そろそろなのだ。

休日には一番風呂に命を賭ける漢達、兵藤父子が銭湯目当てに大通りを来るのは。

本来なら帰り道で待っているのが一番だろう。

しかし、こちらから見えているという事は、向こうからもコチラが見えるという事だ。

何処の世界に血肉に飢えたライオンを望遠レンズも使わず、

肉眼で見る馬鹿なカメラマンがいるだろうか。

 

 

「来た来た来たぁ! 生きる伝説がご登場ォ!」

 

 

レンズの中の景色が急に引き締まったかと思うと、

兵藤父子が温泉セットを持って二キロ先に現れた。

周りの人達は彼らの為に道のド真ん中を空け、二人は堂々とその空けられたド真ん中を歩く。

チラチラと横目で彼らを見ている奴もいるが、

 

 

「何見てやがんだコラァ!」

 

 

二キロも離れているので聞こえるはずもないのではあるが、

何故か聞こえてきた兵藤父の怒号が周囲の目を散らす。

そしてその息子、イッセーくんは眠そうな目を擦り、テクテクと父親の隣で歩いていた。

が、その時であった。

 

 

「コージ、アレがイッセーくんだ」

 

 

望遠鏡を固定してコージに替わろうとした瞬間だった。

イッセーくんはキョロキョロと周りを見渡し、その次にはコチラを一直線に見抜いた。

 

 

「どっかで俺を呼んだ奴がいるような……」

 

 

眠そうな目が空腹に耐えている肉食獣の様な目に変わり、

その恐ろしい瞳がレンズの中いっぱいに広がった。

 

 

――ピシッ――

 

 

レンズにヒビが入ったような音がした。

 

 

「ど、どうした!? まさか、目と目が合っちまったのか!?」

 

「いや! ギリギリセーフだ! なんとか合う前に隠れた!」

 

 

俺とマサシは思わず胸を撫で下ろした。

いくらレンズ越しといえども、イッセーくんと目が合ってしまえば人生アウトである。

自動追尾ミサイルの如く、当たるまでコチラに向かって飛んで来られては、死は免れない。

 

 

「ゆっくり、ゆっくりだぞコージ。 そーっと……」

 

 

望遠鏡を覗こうとするコージに、俺とマサシは口を酸っぱくして言う。

肉眼で点に見える筈のイッセーくんが大きくなっている気がした。

 

 

「ど、どうだ? お前をシバいたのはあの御方か?」

 

「ちち、違う! 全然違うぞぉ!」

 

 

隣の望遠鏡で確認すると、イッセーくんを倒して名を上げようとする、

ヤンキー業界過激派に属するチーマー達が速攻で血祭りにあげられていた。

どうやら彼に奇襲を仕掛けた様だが、またもや失敗に終わったらしい。

マサシはコージを望遠鏡から引き離そうとした。

が、コージはガタガタ震えながら固まっている。

 

 

「おいどうしたコージ、何見てんだ……?」

 

「目! 目がコッチ見て……! あわわわわわわわ………」

 

「バカ! そらせそらせ! 代わりに太陽を見ろ!」

 

「ダメだ、体が動かない……!」

 

「なにメンチ切ってんだコラ」

 

 

先程よりもイッセーくんの声がハッキリ聞こえた。

 

 

「コージ、俺ら先に帰るわ、バイバイ( ´ ▽ ` )ノ」

 

 

俺とマサシは飛ぶようにして展望台を後にした。

もっと…、もっと疾く走れ俺。

風だ、お前は風になるんだ!

 

 

コージのモノと思われる悲鳴を背に、俺達二人は今日、疾風と化した。

 

 

 

 

 

 

 







はい、いかがでした?
もう前回は後書きの感想が凄かったです、本編の感想書いてよ。
いやまぁ、ギャグ100%の話は書いてて楽しいですね、原作の話書くより楽しい。
次回の番外編は何にしよっかなぁ、悩みどころです。


えー、もうね、感想欄がロリコンで溢れかえってるよね。
完全無欠にヤバイ集団だよね、ホントもう終わってるよね。
おいもコレ世界の終末来た方がいいんじゃないの!?
一回リセットしてやり直したほうが世の為だよ!?
ノアの洪水再発を期待するばかりです。

あ、ノアといえば、作者最近はDグレの二次小説書きたいなぁなんて思ってみたり。
ジャンルは恐らくギャグでしょうね、うん、もうそれしか書けない。
まぁ、難しい話だからね、原作は。
作者の力量じゃキツイかな。

はいはい、質問答えますよぉ。
オーフィスちゃんの出番は?という事ですが、未定です。
黒歌は第二巻の内容に入ったら割とすぐに出てきます。
黒歌メインの濃い話が待ってますよ。

小説を書く時のコツを教えて、という事ですが……。
……そういうのって文章書くのが上手な人に聞くもんじゃないの…?
作者、ただでさえアッパラパーなんい……。
まぁ、作者の場合ですと、コンセプトをしっかりと立てることです。
この小説ですと、今までに無い一風変わったハイスクールD×D。
もう一方ですと、どこにでもあるテンプレ王道の展開のハイスクールD×D。
そんな感じですかね。

感想は後書きについてばっかりでしたので、特に弄れませんでした。
なので今回の後書きは軽めという事で、ここらで失敬させてもらいます。

次回は後編、爆笑してもらえたら嬉しいです。
飲み物を飲んでいる時にご覧下さい。
ではまた次回、さようなら。





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