2人とも付きっきりではないとはいえ師がいますからねぇ
【絶斗side】
ゼノヴィアと別れた俺はレイナーレさんに連れられ修行場に来ていた。その修行場は草が浅く生えている以外は何も無い広場だった。広場の周りは木に囲まれている
絶「・・・何故ゼノヴィアと別れて修行するのですか?初めて会った時は祐斗と一緒だったのに」
俺は疑問に思っていたことを蒼枒さんの分身体に聞いた。本体は昨日の続きをすると言ってた。どうやらまた戦うらしい
蒼「あいつは変態とは別の意味で力に頼りすぎている。というよりは技術なんて不要、力があればなドンナ相手だろうと倒せる、と考えているように見える。確かにその考えは正しいと言えば正しいものだ。神同士の戦いでは己の力を如何にして相手に押し付けるかが問題となる。だがそれは俺や師匠達での戦いの話だ。お前たちが力一辺倒で戦おうとするなんて無謀もいいところだ」
なるほど。確かに冥界でやり合った時もゼノヴィアは力ずくでデュランダルを振るってるようにも見えた。その破壊力は凄まじいが俺でも避け切れるほどだった。格上相手では全く通用しないだろう。その証拠に白音ちゃんはたった指2本で止めてしまった
蒼「そういう訳だ。ゼットにはそんな思想はないからレイナーレが相手だ。光力を使うが悪魔になっていないお前ならばすぐに死ぬこともない。たとえ怪我しても俺が治してやるから安心しろ。腕や足の1本2本、無くなっても治せる」
絶「マジですか!?アーシアの
レ「本当よ。私も何度も治してもらってるもの。正直私の見ていた世界って物凄く狭かったって思えたわ」
・・・神様ってほんとすげぇ。よく考えてみれば、そもそも
蒼「話はこれぐらいにして・・・始めろ」
レ「了解しました。全力でかかってきなさい!」
レイナーレさんは言い終わらないうちに両手に光の槍を作り出し、それを同時に投げてきた。イッセーや部長ならば不意打ちに文句を言うだろうが、蒼枒さんが本当に戦闘を行うであろうことを予想していた俺からすればこれぐらいはどうってことない。瞬時に出した《アミル・ガウル》で向かってくる槍を2つとも切り裂く。正直これぐらいならば余裕と思ったが
レ「・・・」
レイナーレさんを中心に8個の光の球体が円を描くように浮かんでいた。レイナーレさんが腕をこちらに向け伸ばすとその球体から槍が生成され、撃ち出された
絶「ッ!先ほどよりも数が多い!」
迎撃は無理だと判断した俺は横へと避けた。槍は俺のいた場所に次々と刺さるが、既に次の槍が発射され走る俺を追うように地面へと刺さっていく
絶「これじゃあ近づけない。はぁ!」
このままでは埒が明かない。そう判断した俺は《アミル・ガウル》から風の斬撃をレイナーレさん目がけて放つ。横薙ぎに放たれた斬撃は槍を消しながら進むが、レイナーレさんに当たる前に2つの球が盾のように並び、防がれてしまった。だが槍が無くなったことで一気に近づくことはできた
絶「なっ!」
縦切りに振り下ろした《アミル・ガウル》は再び球に防がれた。動きを止められた俺は一度離れようとするがそれよりも前にレイナーレさんが翼を広げ、俺を吹き飛ばした
絶「くっ・・・」
ダメージこそないがかなり距離を空けられてしまった。そして再び光の槍が発射される。俺はそれを避けながら次の手を考えていた
絶「(先ほど同じ手は使えない)なら、これでどうだ!」
レイナーレさんの手前に向かって斬撃を放ち巻き上げられた土や草で視界を遮る。これならば少しは隙ができるだろう。現に打ち出される槍の数が減っている。ここから回り込めば・・・
絶「(取った)」
相手はこちらが見えていない。『
絶「嘘だろ!!?」
完全に背後を取った。そう思っていたがレイナーレさんはこちらを見ることなく槍で《アミル・ガウル》を受け止めていた
絶「くそっ!」
払われ再び距離が空けられる。これでもダメか
絶「ならば最後の手だ」
成功するかはわからない。だが今はこれしかない。払わた俺は空中で体制を整え、自身の足元に空気で足場を作り、跳んだ。羽根で飛ぶには俺はまだ慣れていない。だからって今作り出している足場だって全て成功しているわけではない。3回に一回は失敗している。だが慣れない羽根でフラフラと飛ぶよりはずっとマシだ。失敗もある中、レイナーレさんの周りを高速で動き、側面から一気に仕掛ける
絶「・・・」
声は出さない。先ほどまでは止められ驚いたが仕掛けるときは自身の場所を知られないために静かに迫る。だが
絶「グッ・・・な、何故」
あと少しのところで目の前に槍が出現した。突如現れた槍に俺はなんとか避けようとするも、勢いをつけていため避け切れず左足を貫かれてしまった。バランスを崩し転がる俺に手を向けて槍を発射準備を終えるレイナーレさん。これまでか、と思われたとき俺たちの上空を何かが通り過ぎたかと思えば、目の前のレイナーレさんの姿が揺らぎ始め、消えた
絶「一体、何が」
バサリと音がした方を見るとレイナーレさんが黒い翼を出して着地していた
?「油断しすぎよ。動かないで空中にいるなんて的になるようなものにゃ」
絶「黒歌さん!」
木の間から現れたのは尻尾を揺らしながら歩いてくる黒歌さんだった
レ「すみません。制御のほうに集中してしまいました」
黒「相手が感知も何もできないからいいものの、貴女は気配を消すのも完全じゃないんだから姿を見えなくするだけじゃやられるにゃ」
レ「そうですね。分身で相手の意識を向けさせてましたが、まだまだ難しいです」
やはりというべきか。レイナーレさんの師は黒歌さんか
蒼「さて、こちらも治すか」
蒼枒さんが袖に手を入れながらこちらに向かてくる。俺のもとまで来ると袖から小さな瓶を取り出し、貫かれた足
に液体を振りかけた
絶「ッ・・・」
激痛に耐えながら自身の足を見る。穴の空いていた足はみるみるうちに傷が塞がっていき、完全元通りになった
絶「凄いな」
これじゃあアーシアの
蒼「さて、戦い方は良しとしよう。空気を固め足場にしたのも良い発想だ。だが相手が本体から入れ替わっているのに気づかないのはマズいな」
黒「そうね。まずは気の使い方からかにゃ?」
黒歌さんが蒼枒さんの隣に寄ると体を預けた。絵になるよなこの2人。それにしても上空か・・・気配も感じなかったがそれでも甘いのか
蒼「そうだな。剣からの力の使い方は少なからずわかっているようだし、別のことにするか」
絶「そんな一度に全てやるんですか?」
蒼「当然だろう。今は言うなれば種を撒いているときだ。すぐに強さを得るには1つの種を十分に成長させるよりも様々な種の芽を出させた方が早いからな」
絶「確かに。ですがそんな付け焼刃では使いものにならないのでは?」
広く、浅くは悪いことではないがそんな未熟な完成度では何か1つに秀でているものに覆されることも十分にありえる
蒼「確かにそうだ。だが1つだけを伸ばすのははっきり言って無理だ。お前たちは修めるべきものが多く、その上時間がない。本来ならば何年もかけて修行を行うべきだが、そんな時間をかけていたら身を護れず死ぬのが見えている」
そういうと黒歌さんを連れて木の傍まで下がった
蒼「さて、続きだ。今日は戦闘を重ねるだけ重ねろ」
黒「また身体に穴が開いても治すから安心して戦うにゃ」