【絶斗side】
ようやく俺たちは神殿の最深部にたどり着いた。そこには巨大な装置が壁に埋め込まれていた。その装置の中央にアーシアが貼り付けられ、その前には1つの椅子がこちらに背を向けて置かれていた
デ「やっと来たんだね」
ディオドラが高級感のある椅子を回転させ脚を組みながら出迎えた。その顔は何故かやさしげな笑みを浮かべていた
イ「アーシアァァァァアアッ!!!」
ア「・・・イッセーさん?」
イッセーがアーシアの姿を見て叫んだ。装置に捕らえられているアーシアの目元を見ると涙を流した跡があった。腫れ上がり方からして、かなりの量の涙を流したのだろう
イ「・・・ディオドラ、おまえ、アーシアに事の顛末を話したのか?」
イッセーの問いにアスタロトは口角を上げ、にんまりと微笑んだ
デ「うん。全部、アーシアに話したよ。ふふふ、キミたちにも見せたかったな。彼女が最高の表情になった瞬間を。全部、僕の手のひらで動いていたと知ったときのアーシアの顔は本当に最高だった。ほら、記憶映像にも残したんだ。再生しようか?本当に素敵な顔なんだ。教会の女が堕ちる瞬間の表情は、何度見てもたまらない」
ここまでゲス野郎だったとはな。これでも魔王を輩出している家の跡取りなんだよな。正確には跡取りだったが正しいか
デ「でも、まだ足りないと思うんだ。そう!アーシアにはまだ希望がある!それが君たちだ。特に君だよ、汚れた赤龍帝。君のせいで僕の計画は台無しになってしまったからね。あの堕天使が一度アーシアを殺したあと、僕が登場してアーシアを救い出し、その場で駒を与える予定だったんだ。途中までは順調だったのに君のせいで計画は大幅に遅れてしまった。けど、やっと僕の手元に帰ってきた。これでアーシアを楽しめるよ」
長い演説だったな。お陰でこちらも部長達の後ろで準備することができた。それに、イッセーの怒りも限界みたいだぞ
イ「黙れ」
『Welsh Dragon Balance Breaker』
イ「てめえだけは!絶対に許さねぇぞ!!ディオドラァァァァアアアアアッ!!!」
イッセーが赤い鎧を全身に鎧を身にまとった。赤いオーラが立ち上り、神殿が震えだす。一歩踏み出す毎にとその床はヒビが入っていく
デ「アハハハハ!これが赤龍帝か!すごい力だね!でも、僕もパワーアップしているんだ!オーフィスからもらった蛇でね!キミなんて瞬殺さ」
ゴォォォォォォ!と、イッセーは背中の魔力噴出口から火を噴かし急加速する。その勢いのままディオドラに接近したイッセーはディオドラの顔に拳を叩き込んだ
デ「がっ・・・あっ・・・なに、が・・・」
椅子に座っていたため碌に避けることもできず転がるディオドラ。ざまぁないな。だがこのまま殺されては任されたこともできなくなってしまうし俺も行くか
イ「瞬殺がどうしたって?」
デ「ぼ、僕は!現ベルゼバブを輩出したアスタロト家の次期当主だぞ!!それが君のような下劣な下級悪魔にっ!!」
多数の魔法陣が展開されそこから放たれる魔力の弾による豪雨。これで威力も伴っていたらよかったんだろうけどイッセーはそれを気にも留めずに接近する
デ「な、なぜだ!!僕はオーフィスから蛇を貰って力を上げたんだぞ!!僕の方が魔力が上の筈だ!!なのになんで!?」
イ「オラァッ!」
イッセーのフルスイングがディオドラにめり込み、床に巨大なクレーターを作り出した。そしてイッセーは倒れているディオドラの髪を掴んで無理矢理立ち上がらせた
イ「まだだ。まだこんなもんじゃねぇぞ!アーシアが受けた痛みや苦しみは、こんなもんじゃないはずだ!!!」
絶「イッセー。ちょっと殴るの待ってくれ」
イッセーの左腕を何とか止める。引いているからこそ止めれるがこれが殴っている途中だと俺では止めれないからな
リ「ゼット!?いつの間にそこに!!?」
祐「姿が見えなかった!?一体どうやって?」
ゼ「(なるほど。風で覆い、光を通さなくしたのか。相変わらず器用だ)」
イ「ゼット、邪魔しないでくれ」
デ「い、いいぞ!僕を助けろ!そうすれば「別にディオドラを助けるとか、そういうことじゃないからな。どちらかというと追い打ちをかける方かも?」なに・・・?」
俺は蒼枒さんから渡された細い木の箱を取り出すと言われた通りぐったりするディオドラの胴体に突き刺した。すると
デ「ぐぅっ!ガハッ・・・」
ディオドラが苦しみ出した。血を吐き出したため回避するがそれと同時に押し付けていた木の箱もディオドラの体から離れてしまった。マズいと思ったが、龍の形へと変わっていた箱の先は何かを飲み込んでいるようだった
デ「あ・・・か、返せ!それは、僕のものだ!僕の蛇だ!」
絶「じゃあ後はイッセーよろしく」
後のことはイッセーに任せておけばいい。ディオドラにはそれ程怒りも覚えてないし。ゼノヴィアたちの所に戻る俺の後ろではディオドラが悲鳴を上げていた
デ「ひぃ!がはっ!・・・痛い。痛いよ!」
イ「これが痛みだ!痛みを知らないから平気で他人を傷つける」
バキン、ゴキンと骨が折れる音や、カラッ、カラッ、コロコロと何かが床に転がる音が聞こえる。ディオドラはやめてと悲願するがイッセーはやめる気はない様だ
リ「絶斗!何をしてきたの?勝手に行動して」
絶「いや、ちょっと頼まれごとがありまして・・・」
ドゴンと音の方に振り返る。そこには壁に叩きつけられ、床へと崩れ伏すディオドラの姿があった。全ての腕や脚はあらぬ方へ折れ曲がり、少し前まできれいだった身体はボロ雑巾のように変わり果てていた
イ「2度と、アーシアに近づくなッ!次に俺たちのもとに姿を現したら!そのときこそ!本当に消し飛ばしてやるッ!!!」
ド「相棒。そいつの心はもう終わった。そいつの瞳はドラゴンに恐怖を刻み込まれた者のそれだ」
ドライグの言う通り、ディオドラの体はおびえるように震えていた
ゼ「?トドメは刺さないのか?」
イ「・・・こいつも一応現魔王の血筋だ。いくらテロに加担したからといって。殺したら部長や部長のお兄さんに迷惑をかけるかもしれない。もう十分殴り飛ばしたしさ」
ゼ「そうか」
リ「とりあえずアーシアを助けましょう。ディオドラのことは後でいいわ」
邪魔が無くなったところで装置のあるところへ皆移動した
イ「アーシア!」
ア「イッセーさん!」
イ「助けにきたぞ、アーシア。ハハハ、約束したもんな。必ず守るって」
イッセーはアーシアの頭をやさしく撫でている。安堵からか、アーシアは嬉し泣きをしていた。その間にアーシアを装置を外そうとイッセーを除く全員が手探りで作業をし始めたが
祐「・・・手足の枷が外れない」
アーシアを助け出すことができずにいた
リ「外れないわ!」
朱「こっちもです!」
ゼ「こちらもだ。全てダメか」
イ「俺に任せろ!」
イッセーの最大まで倍加したパワーでも枷はビクともしなかった。ならばと全員が別々の方法を試すが・・・
リ「ダメ!効かないわ」
朱「私も効果なしです」
祐「僕もだよ」
ゼ「くっ、デュランダルでもダメか。・・・いや、私の技量不足か」
滅びの魔力、雷光、聖魔剣に聖剣。全て効果なし。ならば
デ「・・・無駄だよ。その装置は神滅具所有者が作りだした固有結界のひとつ。機能上、一度しか使えないが、逆に一度使わないと停止できないようになっている。アーシアの能力が発動しない限り停止しない」
アスタロトは言葉少なくつぶやいた
ゼ「発動条件と、結界の能力は?」
デ「条件は僕か、他の関係者の起動合図、もしくは僕が倒されたら・・・結界の能力は枷を繋いだ者、つまりアーシアの神器能力を増幅させて反転すること」
絶「効果範囲は?」
デ「・・・・このフィールドと、観客席にいる者たちだよ」
効果的だな。回復の反転で相手を殺そうとするとは。ディオドラがやられても起動するとはイッセーの判断は正しかったな。さて、速いとこアーシアを助けようか。・・・成功するかわからないし褒められた方法じゃないけど
絶「イッセー。力がダメなら別の方法を試してみろ」
イ「ゼット!何か思いついたのか!?教えてくれ!!」
俺はイッセーに耳打ちする。そして俺たちが入ってきた方を向いた
イ「分かった!やってみるぜ」
後ろからBoost!Boost!と倍加の音が聞こえる。倍加が止まるとイッセーが叫んだ
イ「アーシア、ごめん。『
ア「キャアア・・・」
イ「やったぜ!」
どうやら成功したみたいだ。よかったよかった
デ「馬鹿な・・・!? あんな方法で破れるはずが・・・」
ディオドラの様子から俺たちでは解除できないものの様だった。何事も想定外はあるってことだ。そろそろ何か羽織ったりもしただろうと振り返ろうと思った矢先、まばゆい光が神殿内を照らした。急いで光のあった場所を振り返るとそこには何が起きたかわからず唖然とする女性陣とイッセーだけがおり
祐「・・・アーシアさんは?」
絶「どこに消えた?」
アーシアの姿がどこにもなかった