【リクオside】
水着に着替えた女性陣も戻ってきたところで改めて蒼枒さんたちを紹介することに
夏実「へぇーこの人たちも妖怪なんだ」
リ「そうだよ。僕の幼い頃からの知り合いで、東雲蒼枒さんと黒歌さん。で、こっちが清十字怪奇探偵団会長の清継君、カナちゃん、夏実さん、紗織さん。高校は分れてしまったけど夏休みで集れたんだ」
清継「後2人いるんだけどどうしても予定がつかなかったからね。それよりも!リクオ君の他にも妖怪に出会えるだなんて!!!」
あー、やっぱり清嗣君が舞い踊ってる。高校に上がってからも全国の妖怪について資料を集めてるみたいだしその意欲は止まることがないなぁ
蒼「・・・ここにいるものたちは妖怪を認知しているのか?」
リ「大丈夫ですよ」
色々巻き込まれたりしてるから。
清継「貴方達はどんな妖怪なんですか!?今回の僕たちの目的である七人ミサキは現れるんでしょうか!!?」
蒼「近い近い。少し落ち着け」
暴走する清嗣君がメモとペンを手に蒼枒さんへと迫まっていた。蒼枒さんは手から木を生やして無数の枝で清嗣君を取り押さえていた
清継「何と!貴方は木を操ることができるんですね!!!」
蒼「あー、まあそうだな。木というよりは植物全般だがな」
清継「すごい!こんなすごい妖怪がリクオ君の近くにいただなんて!それじゃあ奥方の方は」
黒「私は猫魈・・・猫又の上位種と言えば分かるかにゃ?」
そういうと黒歌さんは2本に分かれた尻尾と耳を現にした
清継「猫魈・・・確か集めた資料の中にあったはずだが、載ってるのはかなり少なかったな」
黒「それもそうにゃ。山奥に隠れ住んでしたもの。人の目に入ることなんてなかったにゃ」
紗織「そのにゃ、っていうのは」
黒「癖にゃ」
紗織「癖・・・」
猫又でも語尾に着けてるのは滅多にいないからね。黒歌さんの妹もつけてないし
清継「それで!七人ミサキは「それなんだが」えっと、何か・・・?」
蒼枒さんが何か困ったように、呆れたような顔をして答えた
蒼「七人ミサキはここ高知県を初めとする四国地方や中国地方を主に彷徨っているし確かにここにも現れたこともある。だが会うことはお勧めしないな」
清継「な、何故です?確かに遭った人間は高熱に見舞われ、死んでしまいますがリクオ君もいますし対策していれば・・・」
蒼「確かに妖怪は死なないし十分な対策をしていればその1度ならば大丈夫だろう。だがその準備が足りない。皆それぞれ強力なお守りを持ってるようだがそれ1つでは到底足りないからな」
清継「そんな・・・ゆら君からもらったお守りなのに」
それほど強力な妖怪なのか、七人ミサキというのは。僕も甘く見ていた。蒼枒さんがいなければ、もしかするとみんな死んでいたかもしれない
蒼「あれは会うべきものではない。諦めることを勧めるぞ」
清嗣「・・・仕方がない。今回は諦めよう」
蒼「ほう。聞き分けが良いな」
清嗣「それもそうさ。下手に突っ込んで行って死ぬのはゴメンですから。できるだけ慎重にいきますよ」
黒「その割には結構無謀だったけどね」
清嗣「う・・・耳が痛いです」
僕も少し調べてみようか。妖怪だけでなく幽霊や怨霊についても
蒼「ま、今日は遊ぶが良いさ。妹たちも魚を持って海から戻って来るようだしな」
蒼枒さんが言い終わると同時にタイミングよく水柱が海から吹きあがった。みんなが驚く中、水柱の中から2人の女性が飛び降りると砂を巻き上げることもなく浜へと着地した
蒼「お帰り葉月、白音。捕まえれたか?」
白「はい、クロサギに鯛を何種類か。」
葉「あとイカと蛸、貝類を少々」
蒼「十分だろ。なら・・・」
何やら報告していた葉月さんたちはいきなり砂浜へと手を向けると円状に砂が盛り上がり石へと変わるとそこに薪が投げ込まれ、どこからともなく火がつけられ一瞬で焚き火が出来上がった。さらにそれらを覆うように結界が張られ外からは見えないようにされていた
蒼「よし、調理は黒歌に任せた」
黒「任せるにゃ!」
「「「「え、ちょ、まっ、えええええぇぇぇぇぇぇぇぇ」」」」
怪奇探偵団のみんなが驚きの声を上げた。まあ当然だよね。いきなり海から水柱が現れるは、そこから人が出てくるは、一瞬で焚き火が完成するし。本当に彼らは自由だな
その後、僕たちはごく普通に海を楽しんだ。ビーチバレーではペアがランダムになるようにくじ引きしたはずなのになぜか蒼枒さんと黒歌さんがペアになって抱き着いたり・・・
黒「蒼枒ー!」
蒼「黒歌!」
黒歌さんが調理した魚介類や持ってきた弁当に舌鼓を打ったり・・・
紗織「うまっ!これすごいうまい!」
カナ「本当!お店の料理みたい!!」
黒「にゃふふ。嬉しいにゃあ」
影に隠れていた黒田坊が白音さんに見つかったり・・・
白「そんなところに隠れてないで貴方も出てきて食べたらどうです?」
黒田「・・・やれやれ。しっかり気配は消していたのだが」
夏実「あ、笠のお坊さん!」
なかなか終わらないスイカ割りを見かねた蒼枒さんが目隠ししたままスイカを綺麗に16分割したり・・・
氷麗「目隠ししたままここまできれいに切れるなんて」
黒田「流石でござるな」
蒼枒さんたちにひっかき回されてた感もあるけど、みんな楽しめたようだしいいかな
【蒼枒side】
清継「く、もう時間か。名残惜しいが仕方がない。みんな帰る準備をしよう!」
もうそんな時間か。リクオ達は今日中に東京に帰るようだが大丈夫か?どのような方法で帰るかは知らないが
清継「だが僕は諦めないぞ!次こそは噂の妖怪を突き止めるんだ!」
その熱意は感心するがあまり土足で歩き回らないほうが良い。妖怪、霊にもそれぞれ縄張りもあるし礼儀、対処も違う。特に今回のような怨霊はいるだけで人に影響を与えるというのに
清継「次は冬だ!」
紗織「え~まだやるの~」
清継「当然!そのときまで期待して待っていてくれたまえ」
挨拶もそこそこ、慌ただしく着替え、荷物を持ってリクオたちは帰っていった。残るは俺と黒歌、葉月と白音だけだが
蒼「さて、俺は少しやることがあるから黒歌たちは先に帰っていてくれ」
黒「蒼枒が残るなら私も残るにゃ!」
いつもの黒い着物に着替え抱き着く黒歌にかわいいなぁ、と思いながらもそれは受け入れなかった
蒼「黒歌は先に帰って夕飯を作っていてほしいな」
黒「うぅ~~わかったにゃ」
むくれる黒歌もかわいいと思う。どんな表情も黒歌はかわいくて仕方がない。俺は慰めるように頭を撫でてあげる。葉月は何も言わずに転移陣を広げ白音もすでに入って行った。そして葉月と黒歌も転移陣をくぐり、浜には俺一人になった
蒼「いるんだろ?七人ミサキ」
俺はとある一点を見つめながらそうつぶやいた。すると視線の先の景色が揺らぎ、笠を被った7人の霊が現れた
七「初めまして、でしょうか?」
蒼「どちらでも構わない。お前たちは古いものから成仏、地獄に行くからな。俺が出会ったものも、もうすでにいないだろう」
七「おっしゃるとおりです」
当然だよな、こいつらと出会ったもの10年以上前のことだし・・・七人ミサキの役目は海で亡くなり、行き場のない霊を回収、成仏させることだ。だが始まりが怨霊だけに、こいつらの意思とは関係なく普通の人は見ただけで高熱を出し、呪い殺されてしまう。これはあのリクオの友人が言っていたこと通りだ。だがそれで七人ミサキの内の霊の1人が成仏し、替わって殺された者が七人ミサキの内の1人となる、と言うわけではない。もし替わるのであったならば、7人以上の集団の人間と出会った時に七人ミサキは全員が同時にいなくなるため1人も残らない。七人ミサキという存在が消滅してしまうためだ
蒼「・・・お前たちはたまに休んだりしているか?何も動くことだけ、何かをすることだけが成仏できるわけではないぞ」
七「霊に休みなど不要です」
蒼「そうか?俺のところにいる霊は普通に寝たり飲んだりしているぞ」
七「霊なのにですか?」
蒼「霊なのにだ」
まあ普通は考えられないよな。そもそもこいつらは役目だけ受け継ぐが、知識とかそういうのは受け継がないからなぁ
蒼「まぁたまに俺のところにでも来い。近年の霊ならば休みたいと思うものもいるだろうからな」
七「確かに・・・ではいつか、訪ねさせていただきます」
そう言い残し七人ミサキは去っていった。不思議に思ったのは現れた時は7人であったはずの七人ミサキが、なぜか6人になっていたことだった
蒼「まあ、いいか」
俺もその場から飛び去った。砂浜には一切人がいた跡など無く、静かに波の音だけが広がっていた