k月 s日 快晴
今日はアクセルの街の外、草原で初心者が相手にするらしいジャイアントトード相手に検証作業をした。
街の外に行く前にギルドで、クラフト能力で作成した道具とブロックの重量を測定してもらい。
ついでにできるだけ安全性を高めるためにも一時的なパーティーメンバーとして、ダクネスというクルセイダーをクリスの紹介で入れたのだが。
正直あれはないとおもう。
あれはドMとかそういうのじゃない、もっと恐ろしい何かだ。
聖騎士『クルセイダー』でもない、性奇士『狂性堕暴』だ。
死ねば直るんじゃないかとも思うが、この世界では本来復活は一度きりらしいのでそれも使えない。
ジャイアントトード相手に『丸石』や『かまど』を投げつけ、とどめを『石の斧』で刺していたのだが、あの変態積極的に投げつけるブロックの軌道上に割り込んでくる。
邪魔にしかならないのでやめさせようとしたら、興奮して迫ってくる始末。
咄嗟に変態の足下を『石のシャベル』で掘って生き埋めにしたのだが、それはそれで興奮してやがる。
クリスにしっかりと次回からパーティーを一緒にしないでくれと頼んでおいたが、どうなることか。
エリス教徒らしいのであまり無碍にも扱えない。
本当にどうしてやろうか。
追記
変態のあまりの衝撃に検証結果を書き忘れていた。
・『ブロック』および制作物は、おおよそ質量保存の法則に従う模様。
『石』と『丸石』がそれぞれ約2.5t。 『かまど』が約20t。
『石のツルハシ』と『石の斧』が約8t。 『石の剣』が約5.5t。
『木の棒』を振り回すのと『石のツルハシ』を振り回す感覚や速度が一緒だったことから、ゲームと同じように所持した物の重量が自身に与える影響はない模様。
おそらく、防具も『革』や『鉄』を装備しても防具無しと変わらない動きができると思われる。
・アイテムやブロック、道具は自身が所持している時点では重量が存在しなくなる模様。
質量はそのままらしく、おそらく重力の影響を受けなくなっているものと思われる。
そのため『石の斧』よりも『石の剣』のほうがゲーム的な攻撃力は高いはずなのに、実際の破壊力は質量が『丸石』一個分、つまり約2.5t重い『石の斧』のほうが遙かに威力が高くなっている。
そして『石の斧』よりも遙かに重く、投げつけた際の威力がある『かまど』(約20t)。
投擲技術の修得が急務であろう。
・ブロックの設置や、採掘などのブロック破壊。 敵への攻撃などは自身から5m離れたところまで届く。
ただし、攻撃の場合は道具で直接殴るよりも遙かに威力は落ちる模様。
おそらく、ゲームで設定された攻撃力が適応されていると思われる。
・投擲等でアイテムや道具が自身の手から放れた場合、つまり自分が手放した瞬間から数秒はアイテム化が維持される模様。
このアイテム化が維持される時間は手放す瞬間にある程度コントロールできるが、約0.5秒から5秒程度がコントロールできる範囲の模様。
・レベルアップによるステータスの変動は確認できず。
おそらくゲームにおける身体能力の再現、その代償だと思われる。
またレベルアップによるスキルポイントは得られたが取得可能なスキルは表示されず。
何らかの条件を満たす必要ありか?
今日は精神的な疲労(特に変態)が大きく響いたので、早めに就寝することとする。
明日はレベル上げついでの金策を中心に活動するつもりだったが、どうするべきだろうか。
「ふっ(ゴシャァ!)、しっ(ズゴゥン!!)」
「はぁっ、すごいなこれは! 音と振動だけでもとんでもないとわかるぞ! あぁ、いいなぁ、私も……!!」
「はいはいダクネスは埋まってよーねー。 まったくここまでとはねぇ。 でもステータスがあがらないみたいだから戦闘能力がすぐに頭打ちになっちゃいそうなのが残念だよね」
ブロック状に掘り抜かれた穴に落ちたダクネスが地面を伝わってくる衝撃と轟音に興奮している横で、逆にブロック状に積み上げられた土の上で座り込みながらクリスは軽くため息をついた。
その視線の先では、彼……マイトが投擲した一辺1mのサイコロ状のブロックが、本来衝撃に強いはずのジャイアントトードをその重量で文字通り挽き潰し。
押し潰さんと跳躍から落下してきたジャイアントトードを、片手で振り回した石の斧で水平方向に殴り飛ばし。
射出してきた舌を石の剣で防ぎ、舌のからみついたままの石の剣を相手の口内へ向かって投擲。 後頭部を爆散させる勢いで切っ先を飛び出させていた。
金属製の武具を纏わず、ジャイアントトードが苦手とする切断系の攻撃も使わず。
本来高い耐性を誇るはずの衝撃系(いや、質量系か?)の攻撃のみでもって駆逐される獲物と化したジャイアントトードの姿に、僅かに憐憫の情を覚えるクリスであった。
なお、街への帰還中にマイトへと絡むダクネスが平地で複数回落下し。
もう二度とダクネスとはパーティーを組まない、とマイトに宣言されたクリスの姿があったことを追記しておく。