書き殴り短編倉庫   作:餓龍

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入院中に暇すぎて書き殴っていたものをいくつか投稿しまする。
精神状態もろにでているので、文章がやばい感じです。


2 検証中(街中編)

 

  w月 r日 晴れ

 

 やっと発作を押さえられるようになったため、記録とリハビリをかねて日記を付けていこうと思う。

 アレにこの世界に落とされてから、今日でだいたい一月ぐらいだとクリスに教えてもらった。

 とりあえずこれまでについてをまとめると、

 

 ・死亡、アレにこの世界に落とされる。

 ・モンスターが跋扈する森のど真ん中にリスポーン。

  色々中途半端なせいでリスキル祭り。

 ・エリス様に救い上げていただく。

  能力等を正常化し、様々なことを教えていただいて送り出して貰う。

 ・リスポから一番近くの人里であるアクセルに出現。

  直後にトラウマの発作で行動不能になったのを、エリス様からの神託を受けたというクリスに助けて貰う。

 ・アクセルの街のエリス教会に保護していただく。

  発作がある程度落ち着くまで一週間ほどかかる。

 ・ギルドにて冒険者登録をし、冒険者カードを作ることで職業『クラフター』を取得。

  ステータスの補正で精神的に超人になった模様。

  以降、発作は起きていない。

 

 といった感じである。

 クリスに助けて貰わなければ発作の過呼吸で死んでいたかもしれないし、エリス教の教会に受け入れて貰わなければまともに会話すらできなかった自分はのたれ死んでいただろうし。

 やはりエリス様は素晴らしい。

 素晴らしいとしか表現できない自分の語彙力の低さが恨めしい。

 明日は能力の検証だ。

 

 

  f月 l日 晴れ時々曇り

 

 今日は一日、クリスに手伝って貰っての能力検証で終わった。

 まだまだ検証は続けるけど、現在判明していることは、

 

 ・基本的に道具やアイテムは片手持ちであり、『石の剣』を両手持ちでガード体制を取ることができ、クラフト画面がレシピ選択式だったことからおそらくConsole Editionであるとおもわれる。

  ただし現実準拠の影響か、ブロックの設置や破壊などのマイクラ能力を発揮できないが利き腕の右手とは逆に持つことはできる模様。

  おそらく利き腕とは逆では装備していることになっていないと思われる。

  なお取り落とした『石の剣』が深く地面に刺さるなど、利き腕とは逆でも道具の重量軽減等は変わらない模様。

 ・クラフター能力は全て使用時に魔力を消費する模様。

  消費量については要検証。

  スキルは職業取得時にすでに専用の物を取得済みで、新しく取得することはおそらくできない。

 ・怪我の回復に体力ゲージを消費する模様。

  ちょっとした切り傷や痣なら一瞬で治癒した。

  腕や指の切断による欠損、重傷はどうなるか不明。

 ・消費した魔力や体力ゲージの回復に空腹ゲージが消費される模様。

  限界まで空腹ゲージを減らしたところ、飢餓感でほとんど頭が回らなくなっていた。

  できるだけ満腹状態を保つ必要あり。

 ・インベントリやクラフト画面、体力ゲージに空腹ゲージなども普段は見えないが意識すればみえる(他人には見えない)。

  ソレ等の操作も意識すればできるが、インベントリなどで視界を遮られるのはゲームと変わらない模様。

 ・物を壊す、もしくは手に持った状態で空中に向かって仕舞おうとすればアイテム化する。

  アイテム化できるのはマイクラに登場するものだけで(要検証)、アイテム化した物は自分にしか触れられない。

  また、一立方メートル未満の物は複数取得することで自動的に一立方メートル、つまり1ブロックにまとめられる模様。

 ・ブロックへの干渉、及び設置は5m先まで届く模様。

  要検証。

 ・設置したブロックは設置直後から現実世界の法則に従う。

  例:『丸石』を縦に積んだところ、1つめの段階で『丸石』を構成する丸石がバラバラになって崩れ落ちた。

    『石レンガ』なども、設置後はレンガ一つ一つで分解可能。

 ・隣接させると繋がって見えるブロックは、隣接させると継ぎ目のない一つの物体になる。

  例:『石』をT字型に設置したところ、継ぎ目のないT字型の一つの岩になった。

 ・アイテム化した時点で重さがほぼなくなるが、ブロックは設置した時点で、道具は手元に出現させた時点で重さを取り戻す。

  後述するが、クラフトするととんでもない重量になる物が多いので注意。

 ・アイテムを加工するクラフトについては、レシピは今のところマイクラのバニラと変わらない(要検証)。

  そしてアイテム化していないとクラフトできない。

 ・マイクラ的能力を発揮するためには、使用する道具もマイクラ能力で制作したものでなければならない(要検証)。

  例:販売されているつるはしでは石を採掘できず、アイテムの『丸石』にできなかった。

 ・制作物の重量は、素材の重量の合計になる模様(要検証)。

  例:『作業台』の時点で土にめり込む重量であり、『丸石』8つを使用する『かまど』にいたっては石畳を圧壊させていた。

    『石つるはし』も他人が持ち上げられる重量ではないようだ。

 ・クラフトした制作物もマイクラ能力を備えている(要検証)。

  ただし、クラフターの自分しか使えないようだ(要検証)。

  例:『作業台』、『かまど』、『チェスト』はマイクラのまま。

 

 現在判明しているのはこのぐらいか。

 明日は街の外でできる検証だ。

 モンスターの討伐も含んでいるので、かなり不安だがまぁ大丈夫だろう。

 早めに寝ることとする。

 

 

 

 

 

「あぁもう、ほんと先輩なにやらかしちゃってるのさぁ。 私じゃこれ以上はかばえないよ……」

 

 エリス教の教会、その礼拝堂にて。

 盗賊少女クリスに姿を変えた幸運の女神エリスは、ここ最近つきっきりで面倒を見ている一人の青年の現状に頭を抱えていた。

 本来、神は人間に過度の干渉をしてはいけないのだが。 自身の先輩ともいうべき女神である、水の女神アクアのやらかした失敗そのものの青年のために奔走する羽目になっている。

 なにしろ本来転生候補ではなかった青年が手違いでアクアの元に送られた際に、面倒だからとそのまま転生させるという暴挙をおこなったのだ。

 さらにはアクアは本来あり得てはいけない、転生特典として与えてはいけない『死んでも何度でも生き返る』能力を青年に与えてしまっている。

 

 しかも神器という形ではなく、その魂に直接くっつける形で。

 

 ここで通常の転生のように、どこかの街に転生していればそう簡単に死ぬことはなく。

 世界に適合し切れていない転生特典が違和感となってエリスに伝わることでその存在を知ることができただろうし、転生特典の修正もできただろう。

 ところが青年が転生して降り立ったのは街の近くとはいえ森の中、モンスターの生息する領域。

 世界に適合し切れていない転生特典がまき散らす違和感がモンスターを刺激し、排除しようと青年を執拗に狙い続けた。

 結果、転生特典は魂と完全に融合し。 青年はまともな方法では死ねなくなってしまったのだ。

 これらは当然大問題であり、エリスはアクアへと連絡を取ろうとしたがなぜか連絡が取れず。

 仕方なしにこうして青年へのアフターケアをしているのだが。

 

 

「この子かんっぜんに心が壊れちゃってるじゃないか……! ステータスの補正でなんとか取り繕ってるけど、このままじゃ下手をすれば魔王よりもやっかいな人類種の敵になっちゃうかもしれないとか!」

 

 

 何度も何度もモンスターに殺され、絶望に魂すら砕かれたところに転生特典による復活で魂が転生特典と融合して変質し。

 その肉体も死のトラウマによって常に死に続けており、転生特典によって維持されている。

 精神にいたってはアクアへの極まった憎悪を軸に、僅かに残った善性をくっつけているようなものだ。

 エリスの努力によってなんとか人らしく行動するようになっているだけであり、ふとした拍子に狂気を覗かせている。

 ちょっとしたきっかけで平然と人を虐殺し始めてもおかしくないくらいに。

 そう。

 

 アクアを信仰するアクシズ教徒がこの世界から減れば、アクアの力が減衰するなんて知られたら……。

 冷徹に、理性的に、狂気的に、効率よく、衝動的に。

 青年は全身全霊を以てアクシズ教をこの世界から駆逐しようとするだろう。

 それこそアクシズ教の総本山であるアルカレンティアの地下に大空洞を掘り、崩落させるなどしてアルカレンティアそのものを地図から消し去りかねない。

 そしてそれを何度でも繰り返す。 アクシズ教徒が多くいる場所全てで。

 その地に生きる者達全てを、『必要な犠牲』として何の感慨も躊躇もなく巻き込んで。

 

 本来で在れば、この世界の人間では殺しきれない青年は女神である自身がこの世界から排除すべきなのだ。

 しかしそれは、魂と転生特典が分離できないほど癒着してしまった青年の魂を、『女神の過ちの権化』を見捨てて完全に消滅させることを意味する。

 かといって行き過ぎた狂気で正気に見えるほど壊れた青年では、他の世界に送ったり、封印したり記憶を書き換えたりといったことには精神も魂も耐えられない。

 つまりこの青年に対して女神たるエリス自身ができることは、信仰の象徴になる以外ほぼなにもないのだ。

 ゆえにせめて人間としての姿であるクリスとなって、人間にできる範囲で手助けしていこうとしたのだが。

 

 

「いやほんとなんてものを特典にしちゃったのよ。 魂への影響を最小限に押さえられるぎりぎりまで世界との整合性をとってるのに、あれは……。 一体元はどんなゲームだったのか……」

 

 

 拳で岩を、木を、大地を壊して消失するように取り込み。

 取り込んだ物体を一辺1mのサイコロ状ブロックに変換して設置し。

 全力疾走しながら1m以上の高さまで跳躍し。

 7.5t以上の重量があるツルハシや斧を小枝のように振るい。

 材料こそ必要だが様々な物を一瞬で加工する。

 

 エリスにはマインクラフトのような箱庭系ゲームをしたことがないのでわからないが、本来この程度の力は基本中の基本であり。

 マインクラフトというゲームの目的が、ある意味世界の創造であるということは知らなくてよい情報だったのだろう。

 なにしろ、下手をすれば彼に与えられていた能力が『mod導入済みクリエイティブモード』だったかもしれないのだから。

 

 憂鬱な彼女はしかし、明日のための準備は怠らない。

 真面目な彼女は一度こうと決めたことはできるだけやり遂げようとするだろう。

 たとえそれが心労の一つとなろうとも。

 

 

「とりあえず明日はダクネスとあわせてみよう。 何か刺激になるかもしれないし」


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