衝撃。
大きく吹き飛ばされ、カクテルシェイカーのように揺さぶられた身体の感覚が遠ざかる。
同時に目の前をよぎるのは、過去の情景。
何度も、何度も繰り返した地獄のような日々。
守りたいもののことごとくとひきかえに勝ち取った勝利。
そして、別離。
暗転。
再び戻ってきた自分の部屋。
そして、『あいつ』とのおかしな出会い。
暗転。
恩師により自分が残滓であると告げられ、それでも前を向いて歩き始めた。
『あいつ』のせいですごい騒動になったけど、結局一緒に協力してもらうことになった。
暗転。
『あいつ』により引き起こされる連日の騒動。
なぜか俺が対処のために駆けずり回ることになった。
暗転。
『あいつ』により告げられた事実。
その事実に俺は戸惑い、怒り、悲しみ。
……そして喜びに泣いた。
暗転。
『あいつ』によりもたらされた『力』と、世界の変化。
俺にとっての、いや世界にとっての『希望』。
そして……。
反転。
『…s………ta…………master!!』
「……ッすまねぇってうぉおおっ!? 」
目と鼻の先をよぎる『壁』にとっさに『身体』を下がらせ、『右腕』を掲げる。
同時に撃ち放たれた暴力が『壁』……突撃級の軟らかい背後を抉り、沈黙させた。
「どんぐらい気絶してた?」
『5 seconds. Strategy final stage. Be steady.』
「ははっわりぃ、もう大丈夫だ!」
ふわりと『身体』を……戦術機『武御雷』を躍らせるようにして要塞級の上に着地し、すぐさま跳躍噴射で前へと跳ぶ。
『相棒』が視界の端に表示したデータによれば、さきほどよけそこなった要塞級の触手は胸部装甲を掠めただけで損傷は塗料がはげた程度だったらしい。
その程度の衝撃で一瞬とはいえ気絶するとは、相当疲労がたまっているようだった。
「目標までは!?」
『Even targets are 20 another kilos.』
「よしっ。 こちら『SB 1』、さぁあと一息だっ!!」
『『『了解ッ!!』』』
大きく息を吸い、叫ぶ。
同時に再度スロットルを全開に叩き込み、突撃砲をばら撒いた。
すさまじい数のBETAをすり抜け、奥へ奥へと。
目標を……『あ号標的』を目指して。
『Nightmare of knightmare.』~~騎馬の悪夢~~
俺は死んだ。
トラックにはねられて死に、神様とやらにあい、能力をもらって創作物の世界におくりこまれた。
正直にいえばあまりにもテンプレすぎていまだに実感がない。
神の娯楽のためだけに死んだと聞かされた時はさすがに怒ったが、現金なことに好きな能力をやるといわれたらいかにして能力を使って楽しむかに興味はうつっていた。
だからなのだろうか、これは。
俺みたいなやつを選んで玩具にしたのはわかる。 わかるんだが……。
こりゃないだろ、神様。
思えば、前兆はあったのだ。
「おいおい、マジかよ……。」
たとえもう二度とループしないとしても、平和な日常に帰れなくてもいい。
今度こそ誰も死ななくていいように。 皆の笑顔を護るために俺はこの地獄のほうがましな世界に戻ってきた。
廃墟となった故郷と、巨大なロボット……『撃震』という戦術機におしつぶされた幼なじみの純夏の家。
ループするたびに見てきたその光景は、ただ一ヶ所のみが強烈な違和感をはなっていた。
仰向けの状態で大破し、もう二度と動かないはずの撃震がなぜか外部スピーカーからノイズを流していたのだ。
すぐにふたたび沈黙したので接触不良だろうということにして先を急いでいた、のだが。
その後も足音がひとつ増えたり視界の端に人影がみえたり割れ残ったガラス窓に顔がうつっていたりどう考えても人がはいらない隙間から細い手が手招きしていたりしたが極力無視し(再確認したら消えていたし……)、なんとか基地にたどりついたのに。
「ひはひ、ひゅへひゃなひ。」
頬をつねっても、なんど目をこすってもかわらないその非現実的な光景に、乾いた笑いしかでてこない。
横浜基地の正門に到着した俺をまっていたのは、唐突に響きわたった警報の音と殺気だった喧騒、混乱する門兵。
そして。
『sIロがnェタKEる』
「なにいってんのかわかんねぇよ……。」
格納庫から文字通り飛びだし、目の前でひざまづく戦術機『武御雷』の姿だった。
神が俺に要求したのは、『『白銀 武』とその周囲の幸福』。
なんでも『ハマったがあまりにもあまりな結末なので、Happy Endを見たいから』だそうな。
そのために世界をひとつ作ったというんだから、あきれるしかない。
そして俺が神に要求したのは、『戦術機を自由自在に動かせ、決して傷つくことのなくなる』能力。
たしかに間違いなく願いはかなっている。
かなってはいるのだが……。
(たしかに戦術機を触れもせずに自在に操れてるし、この身体なら傷つくどころか触れることすらできないだろうさ。 けどなぁ……。)
武御雷の頭のよこに『浮かぶ』、『誰にも見えない』身体で眼下の白銀をみおろす。
そう、奴をその周囲の『半透明な』奴等ごと幸福にしてやればいいんだ。 やってやる、やってやるさっ!!
武御雷に両腕をひろげさせ、でっちあげた音声ソフトで叫ばせる。
さっそく原作崩壊なこんな状況にした事を後悔しながら。
『Welcome to Nightmare!!』
……あ。
日本語にすればよかった……。
実はこれ、プロットまでしか書いてない小説アイディアのメモ書きの中で、最初に主人公を亡霊にしたもの。
短編として書いたのもこれが最初で、ゲートの亡霊を書いたのもアニメを見て亡霊主人公ほうり込んだら楽しそうだなーと考えたのがきっかけという。
ゲート亡霊はまだかかりそうです。
降霊術とかなぁにそれぇ。
これ、本格的に主人公を地球側出身の神にしないと抵抗もできないんですがそれは……。
陰陽師とかの設定持ってきて、亡霊→鬼→鬼神にすればいけるかな?