ダンジョンに飯を求めるのは、間違っているだろうか? 作:珍明
遅くなってすみません。
・17.10.10に誤字報告を受け修正しました。
戦前を行くのは、ライオス達のパーティー。
ゴライアス以外にも魔物の群れが現れ、その中にはミノタウロスもいる。
「くっそー、折角のミノタウロスがゴライアスのせいで相手出来ない……」
『防衛の盾(ディフェンス・シールド)』を発動させ、ライオスは皆の盾となりつつゴライアスへ斬りつける。
「ライオス、街から援軍です。魔導師の詠唱が終わるまで、彼女と時間稼ぎして下さい」
アスフィの指示を受け、了解の意味で剣を掲げる。
彼女とはリューだ。
ウェイトレスのはずが疾風の如く斬り込む。リューがここまで強いとは知らなかったが、理由は詮索すまい。アスフィからも人前で彼女の名を呼ばぬように厳命された。
ライオスの相手はゴライアスだけでなく、隙を突いて狙ってくる雑魚だ。奴らを切りつける度に魔石やらドロップアイテムが地面に転がる。角や爪はどうでもいいが、センシに調理して貰えそうな部位もある。
「「……勿体ない」」
ライオスとは離れた位置から、センシも同じ気持ちで悔しがる。
冒険者はファミリアもパーティーも連携も構わず、誰もが武器を手に取ってゴライアスや湧き出るような魔物達と戦闘を繰り返す。
リィベラの実質的な取締役のボールス・エルダーの人望と指揮力ありきだ。
戦闘の邪魔になるセンシとヘスティアは千草に守られる形で、ゴライアスの攻撃が当たらず尚且つ遠くない位置に即席で構えた借拠点にいる。怪我人に傷薬を配り、武器を失った者へ予備を渡していく。
「歯痒いかな……、わしも冒険者なら……」
ライオスの周辺に転がった肉や骨やらのドロップアイテムを回収に行けた。
「ねえ、センシくん。この状況で何を考えているのか当てようか?」
緊迫感と疲労に少々キレ気味にヘスティアが問うた時、魔導師の詠唱が終わる。とっておきの一発に備え、ボールスが避難指示と号令を出した。
5人の魔導師それぞれが得意とする魔法が容赦なくゴライアスを襲い、巨人の顔面を奪って膝を折らせた。
後は全員で畳みかけて終わる……はずだった。
それなのに、瞬時に再生して見せた。
「ありえねえ、ゴライアスにこんな……」
チルチャックが恐怖で身震いし、目を見開く。たかだか、18階層の階層主にこれだけの回復力があるはずがないのだ。
咆哮を上げたゴライアスは両腕を地面に叩きつけ、その風圧は周囲の冒険者だけでなく十分に距離をとっていたはずの街にいた後衛にまで及んだ。
「……まさか、僕がここにいるからなのか?」
凄まじい威力とその犠牲に対してヘスティアは思わず、呟く。神が迷宮に潜るなど、ご法度。それを破った神々への罰として強さを得た。
ヘスティアの推論を確かめようにも、ウラノスは地上でヘルメスは姿を見せぬ。
「死にたくないのだ」
聞こえたセンシの声にヘスティアは気づかされる。
「ゴライアスはこれまで何度も死んだ。だから、もう殺されたくないのだ」
意を決したセンシは懐からミスリル包丁を取り出し、アダマント鍋を取り出す。そして、一目散に走りだした。
「センシくん! 何処へ行くんだ!?」
「リリがお守りします。千草様は……いない?」
「自分の仲間のところだろ、俺が行く。リリはヘスティア様と居ろ」
ヘスティアの制止も聞かず、センシは止まらない。チルチャックがすぐに追いかけた。
群がる魔物はゴライアスの優勢を察してか、更に数を増す。地面に叩きつけられ、意識の戻らぬ冒険者を狙ってくる。仲間を守らんと起き上がった者達は防戦一方だ。
すぐ起き上がれたライオスだが、剣は折れ、盾もヒビが入り今にも壊れそうだ。丸腰になった彼へもミノタウロスは容赦なく迫る。素手で身構えた瞬間、それは斬り捨てられた。
「ライオス、立てる?」
ベルは確認ではなく、命令のように強い口調で問う。礼を言う間もなく、ライオスは後から来たアスフィとリューに無理やり起こされる。
4人で背を預け合うように立ち、ゴライアスと魔物へ気を配る。
「ライオス、ヘルメス様が何処にいるかわかる?」
「……多分、わかる」
安全な位置から見下ろしている。干渉も手助けもせず、事の成り行きを見守っている。例え、それがライオスやアスフィが命を落とす結果でも構わないのだ。
「なら、ステイタス更新してきて」
「!? それを言うならベルこそ、ヘスティア様がいるだろう」
「いえ、クラネルさんは日頃からステイタスを更新しています。貴方が最後にしたのはいつですか?」
リューの質問にぐうの音も出ない。
「正直、焼け石に水のようなモノですが、行ってきなさい」
この場を死守する。そんな決意でいて熱意がアスフィの声から伝わってきた。
「わかった……すぐ戻る」
「待ってる」
ベルの返事を合図に4人はそれぞれの持ち場へと駆け出す。襲ってくる魔物を折れた剣で斬り伏せ、ライオスは高見から見下ろすヘルメスを目指した。
●○
こんな数の魔物を目にしたのは初めてだ。斬っても斬っても数は減らず、疲労に襲われても休む間はない。
「カブルー! はい、飲んで」
ミックからポーションを貰い、疲労感と少々の怪我を治す。空になった瓶を防戦一方のダイヤが相手していたワームへ投げつけた。
「ホルム!」
「無理無理、数が多すぎる! こんな場所に彼女は呼べないよ!」
「ふざけんな、このくそパルゥム! てめえも戦え!」
ゲドの背に隠れ、身を守るホルムは必死に拒む。同じく必死な形相でライガーファングとの猛攻を繰り返すゲドはブチ切れて怒鳴った。
「どいて! サンダーボルト!!」
詠唱を終えたリンが杖を掲げ、魔法を放つ。ライガーファングは文字通り、塵と消えた。
「おせえよ、馬鹿リン!」
「うるさいわね、前を見て!」
リンの警告を聞いてゲドが前を向いた瞬間、シルバーバックが突進してきた。
「ふざけんな、絶対、生き延びてやる、こんなところで終って堪るか」
呪文のように呟くゲドは肩で息をしながら、剣を構える。
どんなに悪態吐いても、ゲドは逃げずに汗だく状態で休みなく剣を振り続ける。彼が怪しげな魔道具を使い、ベル・クラネルと決闘した時は帰り道で始末しようと決めた。
だが、こんな状況だ。騒ぎに紛れて殺す余裕はない。無事に生き延びれたら、一先ず今回は殺さずに置いておこう。それがカブルーなりの誠意だ。
(彼はどうしているだろうか?)
カブルーが心配せずとも、ベル・クラネルは戦っている。冒険者としての名声や稼ぎではなく、純粋に強さを求める青臭さが滲み出た【リトル・ルーキー】を気に入った。
ああいう少年にこそ、強くなって欲しい。
「だから、さっさとどうにかしてくれ。ライオス・トーデン」
ベル・クラネルとは正反対の感情を抱く男の名を呟き、カブルーはゲドとの連携を組んでシルバーバックを倒した。
●○
ヴェルフの周辺にいた魔物をどうにか倒し切る。ベルや他の仲間を確認しようと周囲を見渡した時、センシのうろつく姿に背筋が凍った。
「何してんだ、あんた!? 死にたいのか!」
「ヴェルフ、無事か。ライオスはどこだ? この鍋と包丁を渡しに来た」
切羽詰った表情のヴェルフと同じくらい、センシも緊迫している。
「これらは家宝なんだろ!? 包丁じゃリーチの問題もあるけど、流石に壊れちまうぞ」
「家宝を惜しんでなどおれん。ゴライアスはもう殺されたくないのだ。だから、殺される前にわしらを殺そうとしておる。わしらは殺されるわけには……」
センシの言葉が終える前に轟音が響く。魔法と魔法がぶつかり合う音、ベルの白いファイヤーボルトとゴライアスの魔法だ。
階層主の顔が魔法の名残である煙で隠される。
思わず、ヴェルフ達も見入ってしまう。顔を半分なくしたゴライアスは余裕の笑みを浮かべ、ベルに魔法を放つ。逃げる隙すらなく、衝撃で宙へ投げだされた彼に渾身の拳が襲いかかる。
桜花が捨て身の覚悟で盾を構え、ベルを守ってくれなければ危なかった。
それでも、勢いを殺しきれなかった為にベルは借拠点地まで吹き飛ばされた。
「げえ、ゴライアスの顔、もう再生してやがる」
「ヴェルフ、後ろへ下がれ。チルチャックからポーションを貰え」
慄くチルチャックに構わず、センシはヴェルフに後退を促す。しかし、勧めた2人は下がる気配がない。身の危険を顧みず、まだライオスを探すつもりだ。
背負った魔剣が布越しにヴェルフの背へ存在感を示す。『火月』は炎の力が込められ、放てばゴライアスにも十分なダメージを与えられる。しかし、一回限りの力だ。
そのたった一回で壊れてしまう。
それは嫌だ。
「けど……腹を括るしかねえわな」
布を取り払い、『火月』の剣身が露になる。柄と一体化した剣に見え、無骨で一切の飾り気もない。剣に限らず、武器や防具に飾りなど要らぬ。
「ヴェルフ、それは……自作か?」
「もしかして、魔剣!? そんなにデカイのは初めて見た」
「俺は『火月』って呼んでいる。こいつを使うには、ちょいと大きく振らねえといけねえ。センシ、頼む。俺を守ってくれ」
『火月』の炎を放つには、振りと同時に隙も出来る。確実に命中させるには、ゴライアスの動きを封じる必要がある。
無茶な頼みを聞いても、センシの目には驚きだけで恐怖はない。
「一瞬なら、できる。それでいいか?」
「うええ、正気か? ライオスを探せよ!」
必死に止めるチルチャックを無視し、センシは鍋を構えなおす。
「チルチャック、おまえさんが持っている一番良いポーションをわしにくれ」
「ねえよ、そんなモノ! ああ、もう! 誰かこの馬鹿をとめろ!」
「お待ち下され、センシ殿。そのお役目、この命にお任せを」
血相を変えた命が来た為に、チルチャックは本気で安心した息を吐く。
「本気で任せるぜ」
「承知した」
命がどれだけ状況を把握しているか、確認してからヴェルフは念を押す。彼女はクロッゾの魔剣に目もくれず、役割だけをしっかり受け入れた。
だが、命がゴライアスを足止めする為には詠唱が長い。つまりは足止めの為の足止めが必要になる。
結局、センシは囮として鍋を構える。
「しょうがねえなあ、ミアハ様がくれたとっておきだ。持ってけ、泥棒!」
やけくそで怒鳴り散らしたチルチャックは、ミアハが彼の護身用に調合したポーションを投げ渡す。一時的に身体を完全に守ってくれる。強敵から逃げるか、その場凌ぎとして大変、重宝される。
ポーションを飲み干したセンシは体を守られる感覚に包まれる。
「センシ、命の足止めが成功したら速行逃げろよ!」
「勿論!」
ヴェルフの声にセンシは気合を入れんと大声で答え、ゴライアスへと突進する。命は魔法が届く範囲まで距離を縮め、詠唱を始める。
ドスドスと走ってくるセンシに気づき、ゴライアスは容赦なく狙う。アダマント製の鍋とポーションによる強化で守られた。
しかし、地面に減り込む程の衝撃に体がズシンッと重くなる。この重さだけでショック死してもおかしくない。所詮、何の恩恵もない生身の体では限界がある。
レッド・ドラゴンはファリンやマルシルの魔法があって、ギリギリの状況で戦えた。あの時より、ずっと厳しい。
「だが、逃げるわけにはいかん。わしも……死にたくない」
どんなに不利でも戦いを始めれば、逃げられない。
「地を統べよ 神武闘征!」
詠唱が終わり、ゴライアスの傍へ光の剣が打ち込まれる。状況を確認しようと階層主の手が緩み、センシはその隙をついて地面を転がる。ヴェルフも『火月』を構え、駈け出す。
それを見計らったように剣を中心に円の形で重力場が発生する。上から押さえつけられる重圧に階層主の動きは、確かに止まった。
「『火月』!!」
振り下した魔剣から炎が放たれ、ゴライアスの巨体を丸のみした。この場にいる魔導師でも決して扱えぬ強力な炎だ。これだけの威力を持つ魔剣をヴェルフは打てる。彼だからこそ出来る血統の業。
そして、込められた炎を放った事で『火月』は魔剣としての役割を終えて、粉々に砕け散った。
(……ありがとう……)
これまでなら、使い捨てられる魔剣へ後悔と謝罪しかなかった。今のヴェルフにあるのは、絶対の感謝だ。
『火月』の余波をまともに受け、吹き飛ばされたヴェルフをセンシがクッション代わりに受け止める。炎の隙間から、焼かれたゴライアスが皮膚を再生していく様子が見えてしまった。
「くそ、まだ……足りねえのか!」
「本当に下がれ、ヴェルフ」
奥の手だった『火月』の犠牲さえ、今のゴライアスを倒しきれない。この現実を思い知り、ヴェルフは悔しさで歯噛みした。センシが必死に彼を抱え、この場から逃げようとする。
そんな彼らを走り抜ける人影を見た。
●○
今のライオスは、高ぶっている。心の底からだ。
ステイタス更新によりランクアップだけでなく、新しいスキルを発現させたのだ。
「ライオス、実に君らしいスキルだ」
意味深に笑うヘルメスからスキル名を告げられ、ライオスはしっくりきた。
『悪食(グロスイーター)』、本人が心から食いたいと望んだ魔物を生きたまま食せる。しかも、対象の魔物に合わせて身体能力が大幅に上がる。
魔物は絶命すれば、ドロップアイテムでもない限り部位を残さない。だから、ライオスは魔物を生かしたまま、食う術を模索していた。
その原点に返ったスキル、彼の願いそのもの。
――もう、殺さずとも魔物の味を知れる。
これに興奮せざるをえない。
ライオスは武器も盾も鎧さえも着ず、湧き起こる衝動のままに戦場を駆け抜ける。ヴェルフが魔剣らしき武器で炎を放つのも見えた。
倒れ込んだ仲間を横切り、ゴライアスへ一直線だ。
「いい具合に焼き上がったな、ゴライアス」
目を輝かせるライオスは冒険者というより、初めて愉しいモノに出会えた少年のように心が躍っている。
――ゴライアス、俺はおまえを知らない。知りたいんだ。だから、教えてくれ。
殴りかかってくるゴライアスの腕を難なく避け、その腕を足場にする。ライオスの勢いは止まらず、階層主の耳まで一気に距離を詰めて、歯を立てた。
いくら恩恵のある冒険者とはいえ、巨人のゴライアスに歯を立てたくらいでは皮膚さえ通るはずもない。だが、ライオスは分厚い耳をしっかりと噛んで思いっきり顎を引いた。
ブチブチと音を立てて、ゴライアスの耳は引き千切られる。ありえぬ耳の痛みに動揺した階層主はライオスを振り払おうとするが、彼は残った耳たぶにしがみ付いて離れない。
ライオスの口に含まれた耳は、まるで飲み物のように喉を通って胃へと流れ込む。
――ああ、美味い。
「これがゴライアスの味か、焼いている割には生っぽいな」
唇を舐めたライオスは物足りない気分を満たす為、彼を掴もうとするゴライアスの手に飛び移り、その親指を噛む。
食しながら、ゴライアスの耳や指が再生していないと気づく。
「俺のスキルのせいか? それも知りたい、もっと教えてくれ」
お代わりを強請る口調でライオスが聞こえたように、ゴライアスは悲鳴を上げた。
今までの雄叫びや咆哮とは明らかに違う。気にせず噛みつこうとしたライオスは親しい声を耳にする。
「ライオス、下がって」
白い輝きを纏ったベルの姿が視界に入りこむ。骨を刃のように尖らせた武器を剣として持ち、こちらへゆっくり歩いてくる。
このまま独りで愉しみ続けるよりも、皆と食事したい。
そう考えた時、自分の中にある高揚が下がって行くのを感じた。
「またな、ゴライアス」
それだけ告げ、ライオスはゴライアスから離れた。
何故か、ゴライアスは命拾いしたという安心感を得ている。真っ向から来るベルよりも、ライオスに恐怖していた。
まさか、階層主がそんな事を考えていたなど、冒険者また神々でさえ知りようがなかった。
ベルによって一刀両断されたゴライアスは、その魔石さえも彼のナイフで刺し砕かれる。一連の出来事を階層に居たすべての冒険者は、この場にいる実感さえなくして見守った。
そして、ベルへの称賛と自分達は生き残ったという喜びを込めて歓声が上がった。
彼らに拍手を送りながら、ヘルメスは嗤う。
「ゼウス、貴方の孫は本当に素晴らしい……。……しかし、ライオス。君は最強じゃない、最速でもない、俺にとっての最高だ。ただの人間でありながら、どこまでも俺を愉しませてくれる。君達が紡ぎ出す物語を俺はずっと見届けてやる……」
一呼吸置いてから、ヘルメスは自分の顔を覆う。
ライオスが自分を喰い付きたいと宣言した時の表情を思い出す。歓喜のあまり、心臓がブルッと震える。
「君が死ぬ前に俺を必ずメインディッシュにしてくれよ」
決して神を愛さずとも、ライオスがその舌に神を乗せる時はヘルメスだけでなくてはならない。これだけは絶対に他の神にも譲れない。
「誰にも渡さないぞ、ライオス。絶対にな」
この場にいない誰かへ向けて断言し、ヘルメスは階層の天井を空に見立てて見上げた。
ヘルメスの独り言も知らず、ライオスは跡形もなく消えた去ったゴライアスを残念そうに眺める。
「なんだドロップアイテムなしか、齧った耳を残しておけば良かったな」
「やはり、見間違いではないのですね。階層主に噛みつくなど、おっそろしい」
呆れたアスフィは眼鏡を押さえる。スキルの説明をしようとしたライオスの口を指先で止める。
「スキルについては本拠(ホーム)で聞きます。こんな状態でも詮索する者はいますので」
「……わかった。けど、ベル達にはいいよな?」
ヘスティアに抱きしめられるベルは立つ力もなく、地面に座り込んでいる。ヴェルフやセンシもヘトヘトだが、どうにか立つ。リリやチルチャック、リューは遠巻きに見ている。千草と命に肩を借り、よろめきながら歩く桜花の姿もあった。
「貴方の判断に任せます」
「ありがとう」
ライオスのお礼を聞き、アスフィは彼の肩を優しく叩く。
「ライオスくーん」
ヘスティアに呼ばれ、ライオスは座り込んだベルへと視線を合わせる。呼んだのは女神だが、用事があるのは彼だとわかる。
「ライオス、僕……強くなりたい。レベルとかじゃなく、心も……」
疲労困憊でも、ベルの強い意志が込められている。
「強くなる僕を見ていて欲しい、ライオス。この先もずっとパーティーを組んで欲しい」
誘いの言葉に胸が躍る。ゴライアスを喰った時よりも、ずっと。
リリを一瞥すれば、彼女はわざとらしく口笛を吹く。どうやら、ベルと別れようとした話を聞かせた様子だ。
ならば、今の気持ちを素直に告げるだけだ。
「俺は迷宮グルメ本を作る。その本を俺と一緒に作ってくれ」
ライオスの真摯な想いに対し、ベル以外は心で「グルメ本かよ」とツッコミを入れた。
しかし、ベルには満足のいく返答だ。
「これからもよろしく、ライオス」
「ああ、ベル」
2人の握手を見守りながら、ヘスティアは妬ましそうに頬を膨らませる。
「言っとくけど、誰とパーティーを組もうとベルくんは僕のだからね」
「何様のつもりだよ、ったく」
「全くです、もうちょっと空気読んでください」
ヘスティアは予想外に悪態吐かれ、思わずリリとチルチャックを振り返る。
「僕は神様だよ!」
笑いのツボを押されたリューが必死に口を押さえ、肩を震わせて堪えたのは彼女だけでの秘密である。
閲覧ありがとうございました。
これでTVアニメ本編を終わります。
次のOVAで最後です。
身体能力を強化するポーションはあるという事にして下さい!(土下座)
ライオスはランクアップし、スキル『悪食』を発現させました。