この素晴らしい過負荷に祝福を!   作:いたまえ

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相棒がまた始まりましたね。
約15年間も殺人事件(未解決事件含む)をコンスタントに解決している特命係を知らない弁護士って……うーん、ゴミかな。(視聴者目線


五十九話 王女殿下のワガママ

王都の兵士、それも王女の護衛ともなると実力は折り紙つき。王宮騎士は、冒険者とは一線を画す存在だ。戦闘力に頭脳、おまけに人間性も高いレベルで揃っている。腕っ節があれば誰でもなれる冒険者に対して、王宮騎士の多くは貴族の生まれ。幼少から剣と魔法を学び、学業との両立をして十数年。ようやく騎士学校への受験資格を得られる。

合格してからも、日々激しい訓練で肉体をいじめ抜き、歴史や地理、政治に経済といった知識も得ながらひたすらに騎士の在り方を学ぶ。約3年の期間を経て尚、卒業するには実践的な、山でのサバイバル訓練を生き抜かなくてはならない。3週間にも及ぶ卒業試験は命がけで実施され、栄養補給はというと、蛇や蛙などを捌いて食し、夜間はモンスターを警戒しながら就寝しなくてはならない。無論、日中にはスパルタなトレーニングを科せられる。歩きにくい山道を、炎天下の中15キロの距離を決められた時間内で走らなければならなかったりする。日本における、自衛隊のレンジャー訓練に匹敵する苦行だ。あまりに過酷ゆえ、時には命を落とす学生も。

 貴族は跡継ぎが重要なので、長男を騎士学校に入学させる家庭はまずあり得ない。必然、ほとんどが家を継げない次男、三男で構成される。けれど、無事に卒業出来た暁には、温室で育った兄よりもよほど立派な青年となり、次期当主に選ばれる事例も往々にしてある。

 

 謁見の間で球磨川に斬りかかったのは、全員が過酷な訓練を受けて来た者たちだ。装備する剣も、市販されていない、名のある名匠が造った一品。

クレアは球磨川の変態発言を受けて。アイリスに良いところ見せたいが為、手ずから球磨川を斬ろうとしていたが……彼女が剣に手を伸ばしかけた時にはもう、他の騎士たちは剣を振り終えていた。

 

 騎士への道は一つとは限らない。クレアのように、女性はもう少し条件が緩かったりするし、何か一点でもステータスが突出していれば、試験が免除になる事も。それでも、平均以上の能力は求められるけれど。俗な話だが、コネでだって騎士にはなれるのだ。

 

そうはいっても。アイリスの側近ともなれば、コネで入った人間が混じる可能性は皆無で。紛れもなく、球磨川は必殺の斬撃を喰らいまくったであろう。

クレアは自分の弱さを客観視させられて歯痒さを感じざるを得ないが、さしあたって球磨川の遺体を片付けなければと意識を切り替える。

アイリスの御前に死体を放置するなど言語道断だ。

そこそこの功績をおさめた冒険者だとしても、近衛騎士団の技から逃れるのは水面の月を掬うのと同義。

斬撃を回避して今しばらく生命活動を維持したければ、時間の一つも止めなくてはどうしようもあるまい。そう、時間を操る他無いのだ。

 

「……どういうことだ」

 

結果として、球磨川禊の死体は謁見の間のどこにも落ちておらず。彼は血色の良い笑顔を携えて、近衛騎士達の射程から遠ざかった位置に存在していた。剣を避けた分、アイリスに近くなる形で。

クレアのつぶやきは球磨川以外の全員の心境を表したものとなる。

戦闘面で騎士に引けを取らないアイリスでも、目の前で行われた球磨川の回避行動は目視出来なかった。

ブルーの瞳を丸くさせる、悪く言えばマヌケな表情でも、アイリスは可愛らしい。

 

『あはっ!めんごめんご。僕はなにぶん田舎者だからね。我が国日本では、美しい女性には下着の形状や色を尋ねないと失礼にあたるんだよ。文化の違いか、この国では逆にそれが失礼にあたるようだけれど。反省したぜ。もう二度としないから許してよ、同じ過ちは絶対繰り返さないから』

「クマガワ殿、貴方の出自は聞いていない。私は冒険譚を述べよと言ったのだ。それと、貴方の国ではどうあれ、今後わが国で女性の下着について聞けば牢屋入りは免れないと思え」

『はいはーい』

 

 謎の身のこなしを見せた球磨川を不審がるクレアは、常に球磨川を視界に収めながらアイリスの側に移動した。

 後の祭りだが、球磨川達をこの場に通したのは紛れもなくクレアであり、異文化に触れて育った人間の過ちなら、一度くらいは見逃すべきだと判断したらしい。二度目はないが。

 

傍までやってきたクレアに、アイリスは何かを耳打ちする。

 クレアは聞き終えると、球磨川に向き直って

 

「お見事です。先ほどの身のこなし、目で追う事も叶いませんでした。魔王軍幹部やデストロイヤーと戦闘を行なった情報に偽りは無いようですね。クマガワ殿、貴殿に敬意を払い、無礼な質問をした件は不問とします。仕切り直し、冒険譚をお聞かせください。……と、アイリス様が仰せだ」

 

 通訳のように、クレアはアイリスの言葉を伝えた。違う言語を使用しているわけでは無い為、王族が下々の者と直接言葉を交わすのはよろしくない的な教えなのかもしれない。

 

『冒険譚を語れ?それよりも何よりも、君にはまず王族の責務を果たして貰わないとね』

「王族の責務、だと?」

 

クレアが訝しむ。

アイリスも、眉を寄せるだけなのは球磨川の発言にピンときていないからか。

 

『おいおい、何のことかすらわからないのかよ。全く、これだから王族って奴は』

 

王族の責務。

勿論、それはギルド長の一件だ。アクセルから冒険者を絶滅させかけたデストロイヤー事件。その責任から逃れ、王都に身を隠したギルド長が見つかるまでは、アクセルの住民は誰も前に進めない。王族ともあろうお方が、国民の感情を余所に、華々しい冒険譚なぞにうつつをぬかしていいワケがない。

 

『アイリスちゃん、君はエリートではなくひょっとすると愚か者の部類だったりするのかな?』

「き、キサマ……!アイリス様に対する侮辱、その命で償うがいい!!」

『クレアちゃん、君は随分と血の気が多くて元気があるね。何か良いことでもあったのかい?そんな君は、少し頭を冷やす必要がありそうだ。なんなら、僕が手伝ってあげるぜ』

「黙れ。今すぐに、減らず口を叩けなくしてやろう」

 

再三の忠告も甲斐無く。球磨川の、王女に対する失礼な態度は改善されなかった。クレアは又も剣を抜こうと構えたが……

 

「……むっ」

 

 目当ての感触が手に伝わらない。見れば、いつの間にか腰の剣が無くなっている。

 

「なんだとっ!?……私の剣は、どこにいった?」

 

 何度か腰の辺りをさするも、そこには何もささっていない。最初から部屋に忘れて来たのではないかと疑いたくなるくらい、剣の存在感が消えている。

 

「馬鹿な。我がシンフォニア家に受け継がれし名剣が……!」

『うるさいなぁ。君は、さっきからカチャカチャ騒がしいんだよ。カチャカチャするのは、咲ちゃんの歯だけで十分さ。』

「お前の仕業か!?」

 

  怒髪天を突く。クレアはつばが飛ぶのも構わず球磨川に吠えた。だが。

 

『さあ、知らないよ。』

 

  あっさりと否定。

 

「嘘をつくな!キサマ以外に考えられないだろうっ!スキルか何かで盗んだに決まっている」

『いやいやいやいや。ほんとほんと、僕じゃ無い。しっかり見てよ、僕が剣を所持していない点から、盗んで無いのは明白だろ?』

 

 球磨川は、確かにどこにも剣なんか持っていない。服に隠せる代物でも無し。てっきり盗賊スキルの類で盗んだものだと考えたが、誤りだったようだ

 

「……まさか、本当にキサマがやったのでは無いのか……?」

『しつこいなぁ。それよりも王女様、アクセルでの災害の件、報告は王都まで来てるんだろう?少なくとも、冒険者ギルドへはアクセルのギルド長探しが依頼されてる筈なんだけれど』

「なんという事だ。父上に、私は一体なんと報告すれば……」

 

親から、【一人前の証】とか、もしくは【騎士になれたお祝いに】、みたいな感じで貰ったのかもしれない剣が消えて顔を青ざめさせるクレアの焦りなどどこ吹く風。球磨川は王女様に問いを投げる。

アイリスがクレアに代弁させようと目配せするも、まるで気がつかない様子。どころか、白いスーツの膝が汚れるというのに、気高い女騎士はガクリと床に崩れてしまった。

 

「……確かに聞き及んでいますわ。アクセルでの一件は」

 

こうなってはと、アイリスが可憐な唇を開いて自ら言葉を発した。

 王女の返答は肯定、すなわち球磨川の言い分を理解しているようだ。

 

『なーんだ!普通に喋れるじゃない、王女様ってば。人見知りで喋られないふりして、実は饒舌パターンだったりするのかな。それ、どこのハートアンダーブレードだい』

 

 球磨川がズカズカとアイリスと触れ合える距離まで歩を進めても、クレアはうな垂れたまま。なかった事にされたのは、それほど大切な剣だったのか。多少興味も出てくる傷心ぶりは立派だが……騎士としては、彼女は微塵も役に立たなそうだ。

 その点、凄腕のおじさん騎士達はしっかり球磨川を殺せるポジションを確保していたが、今度はクレアでなくアイリスが目線で制する。アイリス自身が指折りの剣士であるがゆえの余裕。

 それでも、一国の王女のパーソナルスペースに見ず知らずの男がいるなど史上初ではある。前代未聞だ。

 

「あ、球磨川さんだけお姫様に近づいてズルいわ!私ももっとお話ししたいんですけど」

 

  王族に対面したのは今日が初めてなのもあり、好奇心に負けて、アクアが王女様の近くに寄ってみようと歩き出すと、それは騎士の一人が手で邪魔をする。

 

「お控えください」

「なんで私はダメなのよ!」

 

 アクアだけに意地悪をしてるとかではない。単に、人数が増えればアイリスを守る際の手間が一つ増えるからだ。払う埃が一つでも二つでも変わらないものの、備えあれば憂いなしと言う。

 

『頼む立場で偉そうには僕だってしたくはないけれど、ギルド長捜索は迅速に対応して貰いたいかな』

「クマガワ殿、貴方のお気持ちはわかりますが……王宮騎士はおいそれと動かせない仕組みとなっているのです。まず、そこをご理解頂かない事にはお話になりませんわ」

『そうなの?そこにいるおじさん達、どう考えても無駄じゃない?いくらなんでも20人は多いよ』

「……守りが強固なのは、王都が魔王軍の奇襲を受ける可能性があるからです。確かに、アクセルの再興は優先すべき事柄ですが……まずは土台を固めなければ空中浮遊してしまいますから」

 

 何につけても中途半端は一番ダメだ。二兎を追う者は一兎をも得ずとあるように、人は優先順位をつけて物事に取り組む。同時に問題を抱えたとしても、結局は一つ一つやっていくのが近道となる場合が多い。魔王軍との闘いと、駆け出し冒険者の街の再興。比べれば、どちらに比重を置くべきかは明白だ。

 

「冒険者達にはギルド長の捜索を手伝わせます。その分、王都の安全は騎士団が守ります。せっかく頼りにして下さって申し訳ありませんが、現時点ではこれ以上人員を割く余裕が我が国にはありません」

 

心底落ち込んだ様子のアイリス。彼女が、1日でも早くアクセルの人々の笑顔を取り戻したいのは本心なのだ。

 

『ふむ、なるほど。大変エリートらしい合理的な考え方だ、虫唾が走るほど』

「……えっ」

 

  球磨川は回れ右して、兵士達を正面に捉える。否定的な返答に、俯いたアイリスがピクッと顔をあげると。球磨川の手に握られた螺子が瞳に写る。

 

『だったら、ここの兵士が如何に無能なのかを証明すれば……アイリスちゃん護衛の任から解かれるって事だよね。僕のような駆け出し冒険者に手も足も出ないとなると!彼らに存在価値は無い。違うかい?』

 

王宮騎士に刃向かう。つまりは、国家反逆罪。球磨川はきっと、自分が何をしようとしているのかわかっていない。

今にも螺子で騎士に襲いかかりそうな球磨川さんを、ギリギリで止められたのは……ここまで空気となっていたアクア様だった。

 

「ストップ、ストップよ球磨川さん!てゆーか、アンタ何がしたいのよ。いくら騎士のおじさん達を倒しても、その後球磨川さんが殺されるだけに決まってるじゃない!ちょっとは考えなさいよ」

『アクアちゃん……』

 

  手を広げ、大の字で立ち塞がるアクア。

 

「焦る気持ちはわかるけど、ここは大人になるところなの。仮に騎士おじさん達を捜索に回してくれたところで、たった20人よ?この広い王都では、せいぜい、捜索期間が一週間短くなる程度だわ。たかがそれだけの為に国家に逆らうのは賢い選択とは言い難いんじゃないかしら」

『そう?僕はそうは思わない。一週間も早くギルド長が見つかるのなら、アイリスちゃんに嫌われようが斬られようが、騎士おじさん達にも捜索にあたってもらうべきだと判断するよ』

 

立ち塞がるなら、アクアも螺子伏せるのみ。裸エプロン先輩はじわりじわりと距離を詰める。気持ち悪い笑顔を輝かせながら。

だが、アクアも引かない。

 

  「……それでも。まずはめぐみんとダクネスに一言あってもいいんじゃない?球磨川さんたら、今までも何度か暴走したんでしょ?」

 

 めぐみんとダクネスから、過去の出来事は聞き及んでいる。身分も構わず喧嘩を売ったり、いきすぎた自己犠牲をしたりと。球磨川と二人で聞き込みを始めた際、彼が暴走する危険性についてはアクアも承知していた。

 よもや。王族にすら喧嘩を売るとは思わなかったが。

 

『めぐみんちゃんにダクネスちゃんね。……ま、そうか。うん、それもそうだな』

 

 デストロイヤー戦において、球磨川が対魔法結界を捨て身で消した折。ダクネスからは、「次に無茶な行動をすれば、肉体的苦痛を伴う教育を受けてもらう」的な事まで言われている。

王族に喧嘩を売るなんて自殺行為をすれば、球磨川は今度こそ、ダクネスを見ただけで恐怖を感じるくらいには調教される筈だ。パブロフの禊。

 

『そういうわけで、アイリスちゃん。僕は一回おいとましてパーティーメンバーも連れてくるから、君は宴の準備でもして待っててよ』

 

  球磨川はアクアを連れて謁見の間から出ようとする。

 

「宴……。ふふっ、それは素敵かもしれませんわ」

 

 アイリスは、球磨川の自分勝手な態度のどこがお気に召したのか。何故か笑顔で二人を見つめていた。思ったよりも好感度は下がっていないようなので、ギルド長捜索を手伝えない代わりに宴くらいは開いてくれる可能性がありそうだ。ただ……

 

「それには及ばん。キサマ達のパーティーメンバーは、既に私の部下が迎えに行っている。アイリス様も、このような輩に宴など開く必要はございません」

 

 健気にも、剣の喪失から復活したクレアさんがヨロヨロと立ち上がる。

 

「あらクレア、ですがそもそもお二人を招待したのは貴女ではなくて?」

 

 球磨川らを邪険に扱う家臣を明るい声で諌めたのは、この場で唯一決定権を持つ王女様だった。

 

「アイリス様?」

「お二方は、数々の功績を挙げた冒険者なのよ?私には不在の父に代わり、彼らを歓迎する義務があると思わない?」

「ですが、それは……」

 

まだ反論したそうなクレアだったが、アイリスは応じるつもりは無いようで。王座から立ち上がると、ドレスを摘んでアクア達に微笑んだ。

 

「クマガワ様、アクア様。お仲間は我が家臣が丁重にお迎えしております。先ほど申し上げた事情により、盛大とは言えませんがささやかな食事をご用意させて頂きます。時間が無いのは承知しておりますが、本日の所は休まれて、明日から捜索にあたるというのは如何でしょう」

 

 まさかまさかの、アイリス様からご飯のお誘い。球磨川のディナーに招かれるのは罰ゲームに等しい扱いではあるものの、球磨川をディナーに誘うのなら、まだセーフか。

 

『え。マジで宴開いてくれるの?わーっ!嬉しいなぁ。晩御飯をみんなでワイワイ食べられるだなんて夢みたいだ。僕、明日死ぬんじゃないだろうね』

 

 断る要素などどこにあろうか。球磨川は一切疑問を抱かず、即座に了承する。アクアも同じく。

 

「王城での宴ってことは、高いお酒飲み放題なのよね?そういうことなら、仕方ないからおもてなしされてあげても構わないわよ!」

 

 浮かれる二人は王女の御前なのも気にせず、ハイタッチを交わす。

 初対面の冒険者に宴を開いてやるなどと。珍しいアイリスの行動に、長年支えてきた騎士のおじさんが興味本位で球磨川達のどこがお気に召したのかを聞いてみると。

 

「クマガワ様は、どこか普通の人とは違うオーラを持っていますもの。礼儀は知らない様ですが、裏を返せば私に対して媚びへつらっていないということ。心を着飾らない人間って、初めて見たかもしれません」

 

滅多に無い下々の者との交流。

 お姫様はどうやら、失礼な人間を面白がっているみたいだ。騎士おじさんも、結局は中年男性。まだ幼いアイリスのワガママをホイホイ聞いてしまうのは、もうしょうがないとしか。

 

幾度も抜刀されたり斬りかかられたりした球磨川さんだったが、こうして無事(?)にお姫様との初対面はクリア出来たのであった。

 

 

 ……………………

 ………………

 …………

 

レストラントゥーガにいるめぐみんとダクネス。彼女達を迎えに行ったらしい騎士は、王都に異動になったばかりの新米だった。

 魔王軍の襲撃があるとはいえ、基本的に彼は城の中を巡回する役回り。

実戦というと、騎士学校の卒業試験で行った魔物との戦いくらいだが……

 しかし、実力が無いこともない。実際、学校での成績は首席だった。

惜しむらくは、彼がいた職場環境か。

 

 こうも魔王軍との交戦が多ければ、自然と警戒心もそちらにばかり向けてしまう。

なるべく急いでめぐみん達を迎えに行くようクレアが命令したのも、新米騎士から思考能力を奪ってしまった原因の一つだ。焦りは時にとんでもない失敗を引き起こす。

 

  新米騎士は、まずはめぐみん達の居場所を知る為、見張りの兵士に聴き込みを行なった。

  この時点で、彼が少し気を引き締めていたら事態は悪化しなかっただろう。

 

城の方向からやって来た騎士が、城下町を巡回する兵士に何やら尋ねている。物陰であらゆる情報を収集する、読唇術に心得がある裏社会の情報屋ならば。その行動から【王城からやってきた騎士が、アクセルより到来した冒険者の行方を捜している】とあたりをつけるのは容易。

 

 情報屋から、その情報を高値で購入した人物が一人。

 

 新米騎士は城を出て30分。やっとの思いでレストラントゥーガの情報を知り、店の近くまで到着した。

あと、通りを3つほど過ぎれば目的地だというところで。

 

「ここまで、案内ご苦労」

 

騎士の背後から、黒い影が襲いかかる。

 

「何者だっ!?」

 

 新米騎士が剣を構えて誰何すると、影はユラリと二つに分かれた。

 左右から、首を刈ろうとナイフが二つ迫る。

 一本の剣では対処出来ないと考え、咄嗟に右へ跳躍し左の影と距離をあけた。それから右の影に対応し、ナイフを剣で受け止めると。

 

「……なっ!」

 

 漆黒のナイフは鉄の剣をすり抜けて、いとも容易く新米騎士の首は切り落とされてしまう。

 

 ビシャッ!!っと、首から鮮血が飛び散り、周囲を紅に染めあげる。

  制御部を失くした身体は少しの間だけ自立したが、そよ風にあおられる形で倒れた。

 

 店の立地が目立ちにくい路地裏なのも手伝い、人は周囲にまったくおらず。

 男の生首と胴体が転がっても、悲鳴は轟かなかった。

 

 影は新米騎士の身体を焼却すると、その足でトゥーガの方向へと歩き出した。




クレアァァァァア!
…というからには、シンフォニアではなくリバースですね。私はアビス好きなんですけど。ティアが可愛すぎて。

剣をまるごと消されるなんて。ミツルギよりも残念。
アクア様は珍しく仕事したね。球磨川を止めるなんて、なかなか出来る事じゃないよ

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