GATE、紫もやしと呼ばないで   作:黒ウサギ

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レレイちゃんが可愛い。
伊丹と三日間一緒に寝て結婚する約束みたいなのしてるの可愛い。伊丹許すまじ。
でも中の人諏訪部さんだから許す。
何が言いたいかと言うとレレイちゃん最かわ。


紫もやしと炎龍

 コダ村からまた違う村に向かう道中、私はカトーの荷馬車に乗って本を読んでいた。自他ともに認める程の本の虫ではあるが、そんな虫でも見た事が無い本があるので、自衛隊の車から私は移動してこうして本を読んでいる。ちなみにレレイはレレイで私と入れ替わる様に自衛隊の車に乗り込んでいった。あれ位の年頃なら目に映る物全てが興味を惹くのだろう。まぁレレイが何歳か分からないけど、実際自衛隊がこちらに持ち込んだ物は日本では常識の物でも此方では非常識なのだ。取り合えず食べさせてもらった携帯食品は中々に美味しかったと思う。

 

「はぁい、パチュリーさ・ま」

 

「ロゥリィか、この短い期間でまた会うなんて珍しいな」

 

 ハルバードを方に担ぎ、こちらに笑いながら迫って来たロゥリィに対し当然の様に紅茶を送る。今更であるが説明したいと思う。この紅茶、茶葉自体はそれこそそこらで子供の小遣いでも買える代物だ。だけどそれを普通に飲むことは私の矜持が許そうとしなかった。その結果飲むだけで疲労回復代謝促進美容に良いとちょっと可笑しなことになってしまった。 

 そんな秘密を持った紅茶であるが、ロゥリィは普通の紅茶と思って飲んでいる。とはいえロゥリィは死と断罪を司るエムロイの使途。その肉体は既に成長を止めており、今更健康に気を遣う必要は無い。まぁ私も何だけど、その話は置いておこう。

 

「昨夜にやけに魂が騒いでいたけど、大方君の仕業なのでしょ?」

 

「ご明察、ちょ~と道中に盗賊が集まってたから主神様の為に張り切っちゃった♪」

 

 よくあるよくある。盗賊見かけたら滅ぼしたくなる・・・訳ない。私はそもそも無益な殺生は嫌いであるし、人であるなら尚更嫌だ。まぁ必要があればためらいなく殺すが。

 はてさて、今更であるが何故ロゥリィがここにいるのだろうか。どうせ彼女に聞いてみても楽しそうだからとしか言いそうに無いので一人考えてみる。とは言ってもこの子は本当に気まぐれである。ついでに主神も気まぐれである。一応は巡礼して来いと命じられて旅をしていると以前聞いたことがあるが、果たしてどれが本当なのかすら分からない。考えても詮無き事と、今回も彼女の気まぐれ故の行動なのだろう。

 そして彼女がここにいるという事は、厄介ごとが舞い込んでくるという事。パチュリー軽くお家に帰りたいです。

 そんな彼女であるが、現在伊丹の膝の上に笑顔で座っている。何やら二人で話し込んでいるのだが、どうせ私の情報を欲しがっているのだろう。

 仮に私が彼らの立場で、二次創作の存在が目の前にいて、創作の中でしか扱えない力を扱い、自分達と同じように考えて行動する。しかも私に至っては二次創作のパチュリーでありパチュリーでない。何を言っているか分からないと思うが、私にもさっぱり分からなかった。

 こちらの世界に生まれてきてどれくらい経過しただろうか。少なくともロゥリィとそこまで歳が離れていなかった筈だが、些細な事であるし記憶に留めていなかった。

 自身がパチュリーであると分かった時は苦悩した。創作の上であれと、彼女の名を汚さぬように努力した。スペルカードルールが存在しなくても彼女の技を作り上げ、歯向かってくる相手がいなくても自己を磨くことを忘れずに。今では賢者と呼ばれるようになったがそれでも彼女には尚届かない。

 

「どうしたのパチュリー」

 

 気が付けば、レレイが私の顔を心配する様に覗き込んでいた。見ればテュカも自衛隊の車の中からこちらを見ており、私はそんな二人に何でもないと笑顔で応える。少し深く考え込んでいたようで、気が付けば大分距離を移動していた。

 

「戦闘用意ぃ!!!」

 

 突然叫び出した伊丹の声に、何事かと彼と同じ方向に視線を向ける。

 ロゥリィは歓喜に笑みを浮かべ、テュカは恐怖に顔を歪め、レレイは顔を僅かに強張らせた。

 

「折角見逃してあげたのに、また襲いに来るなんて馬鹿な子。おいで、相手してあげるわ」

 

 一度は見逃したのだ、二度見逃す必要は無い。手に魔導書を呼び寄せて、私は空に浮かぶ。

 

「はぁい、ストップゥ~」

 

「むぎゅう!」

 

 直前に、亜神の力をふんだんに使ったロゥリィに足を掴まれ地面とキスをする羽目になってしまった。地面とキスしたままでいるのは流石に衛生上よろしく無いので力任せに起き上がりロゥリィを睨みつける。

 

「ロゥリィ、貴女バカなの?死ぬの?私に喧嘩売ってるの?丁度いいわ貴方達亜神向けに生きたまま封印する魔法をこの間作り上げたのよ。だけど相手がいないし腐らせるのも勿体ないと思ってたところなのよね、じゃあ死ぬ?死ぬ?死ね」

 

 一気に捲し立てるように喋り、魔導書に魔力を込める。その様子を見て私が本気だと伝わったのかロゥリィが冷や汗を掻きながら謝って来た。

 

「ま、待ってパチュリー謝るからぁ・・・」

 

 一先ず私も頭を冷やし、ロゥリィの言い分を聞くことに。

 

「下らない理由だったら、分かってるわよね?」

 

 笑顔で親指で首をなぞる様な仕草をすれば、流石に冗談を言う様な状況じゃないと判断した様子。命拾いしたねロゥリィ、そこで変な事を言い出したら本気で生きたまま氷漬けにするつもりだったから。

 余談ではあるが、こうしてロゥリィと話している間も炎龍は絶え間なく攻撃を繰り返してきている。そんな物は苦でも無いので文字通り片手間ですべて防ぎ、今の所犠牲者は0となっている。

 

「私達は一度、帝国を退けた力を見ておくべきだと思うのよ。彼らの持つあの鉄の一物が何なのかを知る良い機会だと思って・・・」

 

 鉄の一物とか少なくても見た目少女が言う言葉ではないと思う。それはさて置き、確かに以前の知識から銃がどういったものか理解している私とは違い、ロゥリィは何も知らない。だからこそ久しく出会った未知に興味を示したのだろう、まぁ確かに今ここで彼らの力量を人々が知ることで、噂として広まり無駄に彼らの仕事が増えるような事が起きなければ万々歳だ。なんだかんだ言ったがやはり元であるが同郷の者には優しくしたい。だから、私は伊丹の前に跳んだ。

 突然私が目の前に現れた事で、伊丹は激しく動揺しながらも私に銃を向けてくる。

 

「あら、行き成り銃を向けてくるなんて物騒ね」

 

「行き成り目の前に現れないでくれ!危ないだろう!」

 

「私は危なくないから問題無いわね。簡単に伝えてあげる、炎龍のブレスは私が。直接的な攻撃はロゥリィが全力で防ぐわ」

 

 え?と声が聞こえてきたが、私だけ働かせる心算だったのかあの子は。

 

「だから貴方達は自身の力で炎龍を退けなさい。銃と言う武器を持ち、車と言う馬に乗り駆けながら、物語の勇者の様に人々(わたしたち)を助けなさい」

 

 私の言葉に伊丹はぽかんとした表情をしながら、次いで笑い始めた。

 

「守られて戦うのに自身の力で退けるなんて矛盾してませんか?」

 

「あら?勇者様はいつだって賢者を従えているのよ?従えた賢者の力で炎龍を退けたとしても、賢者を従えた勇者の功績であっても可笑しくないわ」

 

 クスリと笑うと伊丹は笑いながら無線機に話しかけた。

 

『賢者様が俺達を守ってくれている。だけど俺達は市民に守られているばかりじゃない、市民を守るのが俺達自衛隊だ!』

 

 その言葉を聞き、彼らは大丈夫だと判断した私はふわりと空を飛ぶ。

 今回のロゥリィの目的は彼らがどうやって帝国を退けたのか知るためだ。であれば、銃とロケットランチャーの威力さえ判明出来れば問題無いだろう。だからこそ防御は私達が担当する。

 私は飛行する速度を少し緩め、ロゥリィが座っている車の上に隣り合った。先程私の事をもやしと言ってきた倉田と言う男性が顔を赤らめているが気にしない。今更下着の一つや二つ見られたところで恥を覚える程子供じゃない。

 

「ロゥリィ、飛行の術式はいるかしら」

 

「ん~、地に足が着いていないと落ち着かないから、今回はパ~ス」

 

 そういうとロゥリィは車から飛び降り、凄まじい勢いで走り出し、その速度を維持したままでハルバードを炎龍の足元目がけて振り下ろした。

 ハルバードが振り下ろされた地面は蜘蛛の巣の様にひび割れていき、炎龍の足はそこに沈むようにはまっていき体勢を崩す。

 伊丹達自衛隊は手に持った銃で炎龍に応戦するが、目立ったダメージは与えられていない。あの程度の攻撃では炎龍からすればつつかれている程度だろう。 

 次はどうするのかと伊丹を見るが、頭を悩ませている。そのため私は時間を稼ぐためにわざと炎龍の正面に浮かび、標的を地面を走る伊丹達から空を飛ぶ私へと移させた。

 

 

「目を、目を狙ってください!」

 

 炎龍の左目にエルフの弓矢が刺さっているのを見つけたからなのか、テュカが伊丹に目を狙えと叫んでいる。だが当然の様に伊丹はその言葉を理解出来ていない。

 私は指を鳴らして魔法陣を展開し、その魔方陣を伊丹に与える。彼は突然の私の行動に驚いていたが、テュカの言葉を理解出来るようになっていたことから、私の行動の意図を察したらしい。

 

『総員、アイツの目を狙えぇええ!』

 

 その声を聞いた隊員達の行動は早かった。皆が一斉に炎龍の目を狙い始め、当然その近くにいた私にも少しだけ流れ弾が飛んでくる。私は敢えてそれを一度身に受けてみた、当然周りには幻術を掛けて私は無事に見えるようにしている。

 腕に当たった一発の弾丸は見事に私の腕を突き抜けていった。その痛みに顔を顰めながら治療を開始していく。これで彼らが私を簡単に殺すことが出来ると判明した。すべてを信用するわけでは無いし、今後は体の表面に障壁を張っておくことを決める。

 場面を戻そう。目を狙われ始めた炎龍、再び空から陸に標的を変えて伊丹達では無く逃げ惑う場所を襲い始める。

 

「させないわよっ!」

 

 だがそれもロゥリィの驚異的な力で顔を弾かれ、怒った様子でロゥリィにブレスを吐き出す。それを私は指を回して魔力を動かしブレスの向かう方向をロゥリィから上空に逸らす。

 

「ありがとーパチュリー!愛してるわー!」

 

 はいはい私も愛してるーと適当に流しながら伊丹達を見据えると、隊員の一人がロケットランチャーを取り出し炎龍に狙いを付ける。あ、後方確認忘れて怒られてる。

 さておき、彼が撃ったそれは炎龍を仕留める事は出来なかった。だが片腕を奪うことに成功した、それだけで十分だろう。

 本当であれば腕すらも奪えなかったのだが威力を知るために、避ける直前の炎龍に過剰なまでの重力を押し付け動きを留めた。そうしなければ未だ炎龍との戦闘は続いたままだっただろう。

 炎龍を退けた事を喜んでいる村人と自衛隊員を見ながら、私はロゥリィの隣に降り立つ。

 

「これで満足かしら」

 

「満足満足大満足!興味が尽きないわぁ♪」

 

 これはロゥリィに目を付けられたな・・・。自衛隊員の皆様頑張ってください・・・。

 一先ず、これにて炎龍の騒動は一旦終わりを迎える事に。炎龍を退ける事に成功した自衛隊員は、あのような存在に襲われて被害者が0に終わったという結果に喜び、村人達は家族も資源も失うことなく親戚の元に行けると喜んでいる。

 だが、それでも全員では無い。道中に何台か荷馬車が壊れる事はあったし、病気やケガをする人だっていた。そう言った人達、主に老人や子供がどうなるのかと言うと。

 

「伊丹、アルヌスの丘に駐屯地があるでしょう。そこに連れて行きなさい」

 

「いやね、パチュリーさん。そう簡単に行かないのが」

 

「安心なさい、別にそこを占拠するとか考えてないから。ただ上の人と話し合って場所を提供してもらうだけよ」

 

 その言葉に伊丹は少し悩む素振りをしてから、やがて頷き此方に頭を下げて来た。

 

「これから駐屯地に向かおうと思う、そしてパチュリーさん、ロゥリィ、助けてくれてありがとう。自衛隊を代表してお礼を言わせてくれ」

 

 そうして彼は笑顔を浮かべ、隊員を集めて駐屯地に向かうことを告げていた。

 

「賢者パチュリーにエムロイの使徒ロゥリィ。よっぽどの馬鹿じゃない限り襲ってくる真似はしないわねぇ」

 

 その言葉に今更ながら過剰戦力である事を笑ってしまう。

 だけど、その過剰戦力がいても喧嘩を売るバカがいるのだから、ある意味ではこの世界も面白いのかも知れない。




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