GATE、紫もやしと呼ばないで   作:黒ウサギ

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続くかは分からない、最近色々書き過ぎて何を書けば良いのか分からないから・・・。
週一更新出来ていれば褒めて欲しいレベル。


紫もやしと懐かしき日本

 窓から差し込む木漏れ日を受けながら、パラリパラリと本を読み進めていく。

 こちらに存在する本は彼方に比べれば楽しみが少ない。物語はありきたりであるし、稀に内容が似通った本が流通している。

 

「ふぅ・・・」

 

 一通り本を読み進めたので本を閉じる。そもそも今読んでいるこの本は何度読み返したのか分からない。正直飽きた。

 休憩しようと思い指を一度パチリと鳴らす。すると何処からかカップに入った紅茶が現れた。それを今更気にするでも無く紅茶を飲む。果たしてこれは何処の茶葉だったか、大分前に買っておいた紅茶であったはずだが茶葉は決して風化する事無く買った当初の美味しさをそのまま保っている。

 その時に部屋の扉が何度かノックされた。それに対してまた指を鳴らす。

 

「ロゥリィか」

 

 

「久し振りねぇ、賢者様」

 

 世間一般では『死神ロゥリィ』と呼ばれる目の前にいる少女。確か記憶が正しければ齢900を超えた筈だが一向に姿が変わることは無い。何故なら彼女は8柱ある神が遣わした、使途の一人。

 

「そう言う貴女も姿は変わらないわねぇ」

 

「まぁ今更そんな話をしに来たわけでも無いだろう?用件は何だい?」

 

 何も出さないのは失礼だと思い、彼女にも紅茶を出す。彼女も行き成り現れた紅茶に驚く事無く慣れた様子でソレを飲んだ。

 

「相変わらず理から外れた真似を軽々しく行うわねぇ」

 

「慣れてしまえばそれは常識と同じような物さ、いつの日か私と同じような真似を出来る者が生まれ落ちるかも知れないよ」

 

 それだけは勘弁ね、と彼女は告げる。何故だろうか、まるで私の様な存在がいるだけで疲れてしまうといった気配がする。

 

「まぁ今日来た用件は何時もと同じね。またお願いね」

 

 そう言い彼女は手に持ったハルバードを此方に放り投げてくる。人ならざる腕力から放り出されたハルバードはクルクルと回りながらこちらに迫る。そのまま私にぶつかるかと思われた時、目の前で動きを止めた。

 

「何度も言っているでしょ、投げるなと」

 

 目の前に浮かんだままのハルバードに軽く指を振り、仕事は終わり。今度はその斧に対して指で弾く様な仕草をすれば、巻き戻しの様にロゥリィにハルバードは戻っていく。

 

「そうそうこれこれ!最近また正神ハーディの奴が結婚しろ結婚しろ煩くてぇ・・・。ついこの前だってジゼルが襲い掛かって来るし」

 

「待て待て、その話が長くなるのであれば今度にしてくれ」

 

 こうしてロゥリィが愚痴を溢し始めればいくら時間があっても不足してしまう。そうなるとただ時間が無駄に消費されるのがオチだろう。

 

「そうね、この話はまた今度にいたしましょう。それじゃぁ、ばぁいばぁい」

 

 何処か甘ったるい声で、誤解を招きそうな動きをしながらロゥリィは去って行った。去り際に飲み干したティーカップを此方に放り投げて来たので指を鳴らし元の場所に戻す。

 煩いのも居なくなった事であるし、また何処かに本を探しに行くとしよう。そうして座っていた椅子から立ち上がり指を眼前から下に向けてゆっくりと下す。それだけで私の姿は着慣れた服であるパーカーにジーンズと言った服装に代わる。まぁこの世界ではこの格好をしているのは私一人のみなので、ある意味私であると証明する服となっている。

 

「ふむ」

 

 着替えて外に出ようとしたところで、久しく感じなかった魔力の動きを感じた。これは確か・・・

 

「門が開いた」

 

 異界と此方を繋ぐ、神々が決めたシステムの様なソレが開いたということは近いうちに大きな騒動が起こる。

 

「まぁ、私には関係無い事かもね」

 

 関係ないのだけど、巻き込まれる可能性は十分にある。主にロゥリィとかロゥリィとかロゥリィのせいで。

 そもそもあの子が私を事あるごとに巻き込むから神々の興味を惹くことになったのだし、面倒と言ったらありゃしない。

 それはさて置き、門が開いたのであれば向かう場所は一つだけだ。門の向こう、まだ見ぬ世界に向かうとする。

 爪先で床を二回ほど叩くと、巨大な魔法陣が形成される。その場所に立ったまま門が開いた場所に向かって魔力のパスを繋ぎ

 

「行ってきます」

 

 誰に対して告げた訳でも無い言葉を口に出して、私は部屋から消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 辿り着いた場所は『アルヌス』と呼ばれる、始まりの大地とも思える場所。そこに私の目には巨大な門が映っていた。そもそも私一人だけであれば門を経由して異界に向かう必要は無い。ただ対価として膨大な魔力が消費されるのでおいそれと使うことは出来ない。

 それに転移するのも簡単ではない、向かう所の知識なんて当然持ち合わせている訳では無いし安全とも限らない。それに大分昔に試したことがあるのだ、懐かしき場所に転移しようとして、全身が引き裂かれる様な痛みを襲った事を。つまり失敗したという事。原因は分からないが、あの出来事以降試した事は無いし、転移をする際は門を経由して向かうことにしている。

 

「さて」

 

 又しても指を鳴らして使い慣れた魔導書を一冊手元に呼び寄せる。その魔導書を片手に私は門を潜り抜け

 

「・・・・・・え」

 

 言葉を失った。

 最初に目に入った物はビルだった。久しく、本当に久しく見無かった建物が並び立ち、そのビルは所々が燃えていたりガラスが割れていたり抉れていたりと凄惨な光景が広がっている。

 原因はすぐさま見つかった。本来ならば存在しないはずの翼竜が空を支配しており、逃げ惑う人々を餌として認識し襲い掛かっている。地上には馬に乗った騎士甲冑に身を纏った者達が、同じように剣や槍を持ち人を殺して笑っている。他にもオークやゴブリンと言った魔物達が数多く。

 ふと、本当にふと顔を上げて見ると見覚えのある看板が目に入った。『銀座』と言う文字が入ったその看板を見て、私の心に久しく感じる事の無かった感情が芽生えたのが感じた。

 

「久し振りの帰郷に、無粋な真似をする輩。大方門の向こうに対する侵略行為なのでしょうけど、私の怒りを買う真似をしたのは間違いだったと知りなさい」

 

 独りでに開く魔導書があるページで止まり、赤い赤い魔力が立ち上る。立ち上った魔力が銀座の宙に浮かび上がり、それはまるで太陽であった。

 

「ロイヤルフレア」

 

 その太陽から幾本もの光の線が空を奔り、翼竜の身体を貫き燃える。当然同乗していた騎士も同じように燃え、苦しみながら落下していく。

 私はその光景を見る事無く歩き始める。目的の場所は皇居。このような非常事態が起こったのであれば避難先として皇居が解放されることもあるだろう。歩きながらも魔法陣を広げ続け、辛うじて息がある人々の治療を行いながらゆっくりとした足取りで動く。

 こんな時でさえなければ、過去の記憶をなぞりながら歩き回る事を楽しんでいたのだが・・・。

 

「全く、全部台無しにしてくれて・・・」

 

 馬上に見えた旗は帝国の旗であった。あの国に対して後でお礼をしてあげないといけないだろう。

 道中でこちらに襲い掛かって来た奴等には等しく死を与えた。人を多く殺して来たのだろうし、ここで殺しても問題は無いだろう。何て言い訳じみた事を考えているが、用は憂さ晴らしである。

 途中から治療を行える人がいなくなり、私は空を飛んで皇居に向かった。既に空を飛んでいた翼竜は一匹たりとも存在しておらず、空を飛ぶのに障害は無い。仮に翼竜が残っていたとしても障害にすらならないが。

 そうして飛ぶ事数分、辿り着いた皇居の門にはオークが槌で門を破壊しようとしているのが見えた。一先ずソイツを始末して、私は人々を守る様に降り立つ。

 

「人が、空を飛んできた・・・?」

 

 ファンタジーな出来事が起こっているのにも関わらず、今更人が飛んでいるだけで驚くのも如何なものかと思ってしまう。だが過去にも空を媒介無しに飛んでみたら大層驚かれた事もあったのでそんな物だろうと考えるのを止める。

 

「そこから動かない事ね、死にたくなければ」

 

 背後の、門の中にいる人々に声を掛けてから魔導書のページを自身で指定して止める。

 

「吹き荒れなさい、テンペスト」

 

 最初は柔らかな風が頬を撫でる程度だった風が、強風に、暴風に、竜巻となって災害となる。それに巻き込まれた存在はミンチよりも酷い事になる。

 風が止んだ後に残っていたのは血だまりだった、だが全てを倒すことは出来ていなかった。と言うよりも部隊が二つに分かれていたのか、先ほどのオークたちの部隊の後ろにもう一団体部隊が見える。

 もう一度魔法を行使しようと試みた所で、騒々しい音が響き渡る。空を仰ぎ見れば鉄の塊が浮いていた。別に初めて見るわけでも無いのに鉄の塊扱いはひどいか、日本国が保有する武装ヘリである。

 ヘリに備え付けられた砲門から銃弾が雨の様に降り注ぎ、残っていた部隊を壊滅に追い込んだ。

 科学の圧倒的な力の前に、少しだけ唖然としてしまう。でもまぁ科学の発展と言うのはそういうものだ。行き過ぎた科学は魔法も同然とは誰が言ったものだったか。帝国の兵士からすれば何かしらの魔法としか思えなかっただろう。まぁ確認する前に亡くなってしまったのだが。

 さて、と周囲の状況を見渡してみる。血の池が出来上がり、ばらばらに飛び散った肉片が地面に塗れている。銀座も同じような惨状だったことからとても本を買えるような状況では無いだろう。

 本を購入する事は素直に諦めて、また別の機会を待つことにしようと思う。門は一度開いたら壊されるまで閉じる事は無い。日本と言うか、こちらの世界からすれば向こうの世界は宝物庫も同然だろう。目の前にある宝をみすみす逃すバカはいないだろう。

 私は再び皇居の床を二度叩き、門の目の前まで転移する。

 

「まっ!」

 

 転移直前に、声を掛けられた気がするのだが今更戻るのも面倒だ。

 再び門の前に辿り着いた私は次の機会を楽しみにしながら門を潜る。そうして門を潜り、元の世界に戻ると私はまた二度地面を叩き部屋に戻っていった。

 

 

 

 

 




ロウリィもテュカも良いけどレレイ最かわ。異論は認めない

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