第二の嵐となりて   作:星月

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木虎藍②

「『強化睡眠記憶』のサイドエフェクトか。村上先輩も中々面倒な力を持っていたものね」

「言われて見れば唯我先輩との個人(ソロ)ランク戦でも十五分ほど休憩をとっていましたよね。今思えばあれもサイドエフェクトの為の必要時間だったのかも」

「果たして唯我先輩相手に使う必要があったのかと考えると甚だ疑問だわ」

「…………万全を期していたのでしょう。きっと」

 

 個人(ソロ)ランク戦を終えた木虎達は支部に戻るという村上と別れた後、先ほどの村上が話していたサイドエフェクトの話題で盛り上がっていた。

 以前、そして今回と二度にわたり村上の実力を目にした二人。

 サイドエフェクトなしの訓練でもあれほど優秀な成績を残していた村上だ。戦闘にも有効に使えるサイドエフェクトを使えばあっという間に攻撃手(アタッカー)界の上位へと駆け上がっていくことは想像に難くない。

 その力を羨ましく、同時に恐ろしくも思う。今後彼と戦うこととなれば最大の難関の一つとして立ちはだかることは火を見るより明らかなのだから。

 

「昇格できれば来月のB級ランク戦、村上先輩は鈴鳴支部の人と組むと話していたし。村上先輩が私達の中では最も早く名を挙げるかもしれないわね。羨ましいわ」

 

 勿論、A級太刀川隊への加入を決めたという唯我は例外として、だ。

 村上の力はB級ランク戦でも通じる。B級ランク戦チーム戦とはいえ幾度か一対一の場面は出来るだろう。そうでなくてもあらゆる人との戦いで得た経験を即座に身につけることができるというのは隊員にとっては理想的だ。

 既にチームを組むという話が来ているのも村上のみ。油断の欠片もない村上のことだ。来月までに正隊員にはきっとなれているだろうと木虎は愚痴のように零す。

 

「あの、木虎先輩」

「ん? 何かしら?」

 

 そんな木虎を見て何かを思ったのか。

 並行して歩いていた副が立ち止まり、木虎を呼び止める。

 

「……いえ、すみません。何でもありません」

「え? 何よ? 言いたいことがあるなら、何でも言ってくれたら」

「ありがとうございます。しかしよく考えればまだこちらの準備が出来ていませんでした」

「準備?」

「ええ」

 

 そう聞き返されて、副は歩みを再開しながら答えた。

 

「おそらく来週には全部解決していると思います。その時に全部お話しします」

 

 笑みと共に紡がれた呟き。結局それ以上副が打ち明ける事はなく。

 木虎は悶々とした思いを抱えたまま翌週を迎えることとなった。

 

 

――――

 

 

 そして月日は流れ、次の週。

 この間、副はひたすらランク戦に打ち込んでいた。

 土日の休日にもボーダー本部に顔を出すとC級ランク戦に参加。

 体力・集中力の続く限りランク戦に挑んでいく。

 しかも、この体力・集中力の続く限りというのが普通の人と比べると異常に長かった。少なくとも一日に十人近くの隊員と戦いを積んでいる。おそらく小南との連戦に次ぐ連戦で自然に鍛えこまれたのだろう。

 あらゆるポジション、個人(ソロ)ポイントの相手に挑み続けるがその間彼が失った個人(ソロ)ポイントはなんとゼロ。一度もランク戦で負ける事無く個人(ソロ)ポイントを稼ぎ、合同訓練が行われる日には村上の個人(ソロ)ポイントに追いつこうとしていた。

 そして、週二度目の合同訓練。

 この訓練を終えた時、個人(ソロ)ポイントが正隊員の目安となる4000ポイント目前まで迫っていた。

 

「んっ、んーっ! 合同訓練終了!」

 

 背伸びをして疲れを吹き飛ばす仕草を取っているのは副。

 今日も木虎達と並んで高得点をたたき出していたのだが……彼の左手に記録されている個人(ソロ)ポイントの増え方は彼らの比ではない。

 今日の合同訓練を終えた時点で副の個人(ソロ)ポイントは3846。翌週の合同訓練で満点を取ることができれば正隊員を迎えることができるほど点数を伸ばしていたのだ。

 

(……わずか一週間で私達に並ぶくらいの個人(ソロ)ポイントを稼ぐなんて)

 

 その副の姿を恐ろしくも思いながら、木虎は彼を凝視していた。

 この期間、逆に木虎の点数は彼ほどは伸びていない。あの日のランク戦以降はランク戦にも参加しておらず、合同訓練で得た点数のみだ。現在は3954となっている。

 原因は決してやる気が起きなかったというわけではなく、彼女がボーダーとは提携していないお嬢様学校に通っていることが起因している。元々正隊員ではない以上学校側にもボーダー隊員ということは報告しておらず、副達と違って学校からの距離も遠い為に中々時間を作ることが出来ない。

 その為C級ランク戦の常連と化していた副は、木虎にとっては知らぬ間に急成長をしている脅威に映ったのだ。

 

「ふふっ。どうやら僕に追いつこうと必死に訓練していたようだね」

「そう思うなら唯我、実際にランク戦をして試してみたらどうだ?」

「謹んでお断りする! 個人戦の結果が全てではない!」

 

 個人(ソロ)ポイントは3871と現状では上回っている唯我が調子に乗ろうとすると、横から入った村上によって心がへし折られた。よほど以前のランク戦が堪えているのだとみえる。

 こう語る唯我のポイントも合同訓練のみの上昇だ。

 ちなみに彼の場合、木虎と違い本当に彼がランク戦へのやる気を喪失してしまった事に起因する。

 

「まったく。それではA級に上がったとき苦労するぞ」

「いいんだ! 僕の力はチームの為にある!」

 

 ダダをこねる唯我を適当にあしらう村上。彼も個人(ソロ)ポイントは3920と正隊員昇進は目前だ。

 村上も副には及ばないものの、時間があればC級ランク戦に参加するようになっていた。

 最近では弧月で村上に敵うものはC級にはいないと囁かれるほど。もはやB級隊員の中でも引けをとらない攻撃手(アタッカー)と言われる強さを手にしていた。

 

「とにかく、もう訓練は終わりだ。僕はこの辺りで失礼する。副君、僕を越えたいと考えるならば頑張るといい。応援しているよ」

「……あーはい。お疲れ様です」

 

 村上にも個人(ソロ)ポイントを追い抜かれたことに傷ついたのか、唯我は唯一ポイントが低い副に声をかけその場を後にした。

 複雑な気持ちになったが応援だけは受け取っておこうと副は立ち去る背中に手を振った。

 

「俺は一戦くらいランク戦を行っていこうか。二人はどうする?」

「そうですね。私も一戦だけ挑戦しようと思います」

「あー、その前に。木虎先輩!」

「え?」

「ランク戦の前にちょっと話があるんですけど、いいですか?」

「……別に構わないけれど」

「じゃあ俺は先にランク戦に挑む」

 

 残った三人は村上の発言からランク戦に挑もうとするが。

 副の呼び止めにより副と木虎はそのままロビーに留まり、村上が一人ランク戦へと臨む。

 

「それで、話って?」

 

 村上がブースに入ったことを確認して木虎が口を開いた。

 わざわざこのタイミングで木虎だけを呼び止めたということは何か特別な用件なのだろう。

 そう判断し、木虎は椅子に深く座りなおすと副が話すのを待った。

 

「ええ。それなんですけど……もう少し待っていただいてもいいですか?」

「私は大丈夫だけどどうして?」

「話すにあたって他にも来て欲しい人がいるんですけど、まだかな?」

 

 そう言って副は視線を時計に移した。

 来て欲しい人。そう聞いて木虎が考えたのは嵐山隊の面々だ。以前狙撃手(スナイパー)の佐鳥には挨拶したが、他の隊員は最初の合同訓練で指導は受けたものの特に個人的な会話はしていない。

 何か兄弟として紹介しておきたいのだろうか。

 そう木虎が考えていると、副が何者かの接近に気づき、立ち上がった。

 

「あっ、来た!」

「おまたせ」

「うん。訓練はどうだった?」

「順調だったよ。問題ない」

「絵馬君?」

「……どうも木虎先輩」

 

 ロビーにやってきたのは予想を外して絵馬だった。

 副と簡単なやり取りを済ませると、木虎に軽く会釈をする。

 そういえばこの二人は同年代だったかとこの前の自己紹介を思い出す。

 しかし呼ばれた理由が思い当たらず、木虎は軽く頭を悩ませた。

 

「実は木虎先輩に聞いて欲しいことがあるんです」

「一体何かしら?」

「俺とユズル、二人でこの前話したんですが。もしもB級に上がることができたならチームを組んでみないかと話したんです」

「え? あなた達が?」

 

 驚いて問い返すと二人は揃って頷いた。

 

「早ければ来月のランク戦にも結成が間に合う。期間はあまりないから、早く決めた方がいいって」

「ユズルは少し悩んだんですけど、同年代だからやりやすいということもあってオッケーしてくれました」

「まだ入隊してそう経っていないのに新人同士で組むなんて……」

「珍しい話ではないようですよ? 後から隊員が加わることはありますが、同期の隊員同士でチームを組むケースが多いようです」

 

 心配する木虎に対し、副の表情は明るい。絵馬も不安を抱いているようには見えなかった。

 確かに新人離れした実力を持つ二人だ。正隊員としてもやっていけるという自信を持っているのだろう。

 

(年下なのに自分からここまで積極的に動けるなんて凄いな)

 

 二人の姿が眩しく映る。

 しかし同時に何故それを打ち明けたのだろうという疑問も残った。

 

「そこで木虎先輩に一つ提案があるんですが」

「何?」

 

 相槌を打つに留まり、木虎は次の言葉を待った。

 ユズルと一度視線を合わせ、肯定の意味なのか頷きを確認してから副は大きな提案を持ちかけた。

 

「木虎先輩。俺達と一緒にチームを組んでみませんか?」

 

 それは正隊員、B級のチームへの誘い。

 副と絵馬。二人が新たに作るチームに加わらないかと。

 そう木虎に話を持ちかけたのだった。

 

「……どうして私を?」

 

 すぐに決断するのは得策ではない。まずは詳しく話を聞こうと二人に理由を問いかける木虎。

 

「理由としては単純に木虎先輩ほどの実力を持つ隊員が欲しいと思ったからです」

「俺はともかく、銃手(ガンナー)の副が一人で点を取るのは難しい」

「そう。できることならもう一人連携を取れる戦力が欲しかった。木虎先輩ももうすぐB級隊員へ昇格するでしょう。まだ他の隊へ加わるという話もないと知っていました」

「でもソロとしておくのはあまりにも勿体無い。だから加わって欲しい。それが俺達の考えだ」

 

 当然ながら理由は即戦力としての期待だ。

 二人だけのチームがないというわけではない。しかし出来たばかりともなるとどうしても戦力不足と感じる点があるのだろう。

 そこで木虎に目をつけた。

 B級隊員と戦える戦力と評価している点はいい。

 しかし。

 

「確かにあなた達の提案を受けることも手ね」

「じゃあ!」

「でも、問題が三つあるわ」

 

 木虎がすぐに頷くことはなかった。彼女は上へと成長していくことを望んでいる。

 そう簡単に即席チームに加わることは許せなかったのだ。

 あえて視線を厳しくして、木虎は二人に自分の考えを語り始めた。

 

「三つ、ですか。なんでしょう?」

「まず一つ。チームの得点について。B級ランク戦はチーム戦とはいえ個人(ソロ)ポイントの増減がある。その中で勝ち上がっていくことを考えると、他のチームに入ったほうが私は活躍できるかもしれないわ」

「それについてはむしろ、俺達と戦った方が木虎先輩にとって都合が良いと思う」

「どうして?」

 

 一つ目は純粋な戦力としての不安だ。

 個人(ソロ)ポイントの増減がある以上、下手にチームに入って己のポイントを減らすようなことがあって元も子もない。

 なら他の既存のチームに入った方が自分の為になるのではないかと言うと、絵馬が彼女の言葉を否定し、副が続きを次いで説明をする。

 

「知っての通り近年はシールドの発展により銃手(ガンナー)および射手(シューター)は点を取りにくくなっているといわれています」

「そうね。最近ではチームのサポートに回る人も少なくない」

「点を取るには火力を集中させる必要が有る。しかしそうなると攻撃手(アタッカー)ほどではないにしても連携が必要です。現段階でお互いのことを理解していない人よりも、同期に入隊し、共に行った訓練時間が長い俺の方が動きもよくわかると思います」

 

 確かに一理有る話だった。

 C級隊員と違い、B級隊員以上の正隊員は多くのトリガーをセットすることができる。そして基本的に防御用トリガーは全員が取り込んでいる。

 シールドは年々性能を増しており、銃手(ガンナー)射手(シューター)は火力を集中させないと厳しい。そうなると連携は必須となるのだ。副の兄が率いる嵐山隊がそうであるように。

 しかしその為には隊員同士の連携が必要だ。

 お互いの射程や実力を完全に把握しておく必要が有る上に、援護射撃の際には味方への誤射を防ぐために角度をつける必要が有る。

 つまりお互いの動きを理解しておく必要があるのだ。

 そうなるとすでに型ができているチームよりは新たに型を作る、しかも他の者よりも知っている同期と手を組んだほうがよい。

 

(何も考えずに話を持ちかけたわけではないのね)

 

 よく考えられている。頬の緊張を緩め、木虎は認識を改めた。

 ならばと、木虎は二つ目の問題点を告げる。

 

「二つ目。これはチームそのものの問題点ね。絵馬君とそして私、戦闘員の方はよく考えているようだけど、ではオペレーターの確保は?」

 

 木虎が不安視しているもの。それはチームをサポートするオペレーターの存在だ。

 

「チーム戦ともなればオペレーターの存在は不可欠なものよ。まだ当てがないとなると」

「いえ。そちらもすでにある人に声をかけ、チームの加入に了解をもらっています」

「――――え?」

 

 さすがにここまでは想定していないだろうと、年上として世話を焼こうとして、副に話を遮られてしまった。

 

 

――――

 

 

「木虎ちゃんと絵馬君、はじめまして。三上歌歩です。よろしく」

「…………はい」

「どうも」

「三上先輩はこの前まで中央オペレーターで働いていたんですが、部隊オペレーターへ転属を考えていたそうなので、俺の方から声をかけさせていただきました」

 

 オペレーター、三上歌歩。

 こちらもすでに副が動いていたのだ。ぬかりはない。

 新任オペレーターは最初、基地の全体的な業務処理を行う『中央オペレーター』の仕事につくこととなる。そこで仕事内容ならびに機器全般の操作を覚えた後、希望するものは部隊オペレーターへの転属の届出を提出することができる。こうしてようやくオペレーターとして働く事ができるのだ。新しく組まれる部隊あるいはオペレーターが抜けた部隊に選ばれると、そのチームのオペレーターとして部隊に加わることができるという流れ。

 三上もつい最近まで中央オペレーターで働いて、ようやく部隊オペレーターへの道を開く事ができた。

 新たに部隊を結成するチームには副以外にも鈴鳴第一という隊もあったが、鈴鳴はすでにオペレーターが決まっていた。

 転属の届出を出したものの、中々オペレーターの枠がない。

 そんなところに三上に声をかけたのが副だった。

 副達がまだ一度もチームを組んでいないという点も三上にとってはかえってやりやすいと、もし正隊員になったらその時はチームを組もうと彼の誘いに乗ったのである。

 

(まさかオペレーターの方まで意識していたなんで)

 

 さすがにここまで用意周到とは思わなかった。

 しかもこの三上の流れでは木虎が入ることは確定事項ではないのかとさえ思えてしまう。

 このまま流れに乗ってはまずい。仮にも自分の方が二人よりも年上なのだからビシッと決めないと。

 木虎は改めて気を引き締めると最後、三つ目の問題点を提示した。

 

「最後に、三つ目よ。これも少しチームの話になるわ」

「なんでしょう?」

「隊長の件ね。副君が隊長となるとどうしても他の部隊の注目度も変わってくるでしょう。そうなると」

「何を言っているんですか? 加わっていただけるなら、隊長は木虎先輩ですよ?」

「当然他の隊も狙いを――――はっ!?」

 

 副がどう考えようとも、他の隊員からすれば嵐山准の弟だ。

 新チームということもあって部隊を率いるとなれば当然注目度は尋常ではないだろう。

 そうなると余計に狙われやすくなる。それを指摘しようとして、しかしまさか隊長は木虎であるなどと言われて、ついに木虎は年上の余裕を失った。

 

「ど、どうして?」

「どうしてって、隊長って年長の隊員が任されることが大半じゃないですか」

「他の隊もそういうところが多いしね」

「で、でもここまで人員を確保したのだって全部副君じゃ……」

「別にそんなの珍しくもないですよ。例えばですが、聞いた話によると那須隊では結成に人員を集めたのは熊谷先輩ということです」

「そうね。隊長はチームの責任を背負うということもあって最年長の人が勤める事が多い。隊の精神的支柱だもの。やっぱり年上の人が受け持つようね」

 

 戸惑う木虎だが、疑問に思うのは彼女だけだった。

 確かに三人の言うとおり、ボーダーのチームは年齢が一番高い隊員が隊長を務めることが多い。複数の部隊が任務をこなす時も指揮を執るのは大抵が最年長者だ。

 それを指摘されると木虎は反論の言葉を失ってしまい黙り込む。

 木虎の様子を迷いと判断したのか、副がさらに説得を試みた。

 

「木虎先輩。前に仰っていましたよね。『もっと上を目指すつもり』だと。どうでしょう。俺達と組んだチーム戦を、上へ上がるための活躍の場に利用してみるのは?」

 

 違う。そのようなつもりはない。

 こうして先輩の自分を頼って必要としてくれることは嬉しく思う。問題点の指摘も、まだまだ未熟な点を教えて先輩としての顔を立てて、『仕方ないわね』くらいの感覚でいたのに。

 

「……あなた達はそれでいいの?」

「勿論。俺達もただ利用されるつもりはありません」

「俺も目的がある。他人の目的をとやかく言うつもりはない」

「初めてなんだから、そう難しく考えなくていいんじゃない?」

 

 苦し紛れに問えば、三人は嫌な顔一つ見せずに快く応じてくれた。

 これで断るようなことがあればただの嫌な人ではないのだろうか。

 自分にとっても魅力的な誘いでもある。確実に来月のB級ランク戦に参加できるというのも中々良い手だ。何よりこんなところで嫌われたくない。

 様々な思惑を考慮して――木虎は口を開いた。

 

「仕方ないわね」

 

 あくまでも余裕を持った口調で。柔らかい笑みを浮べて木虎は三人の要望に答えた。

 そしてこの日からさらに各自が腕を磨き、個人(ソロ)ポイントを次々と更新し――その日を迎える。

 

 

――――

 

 

 六月の上旬。

 B級ランク戦の新シーズンが開幕するその初日、昼の部。

 新たに用意された彼らの作戦室に、四人の姿があった。

 

「皆、準備は良い?」

 

 木虎が凛々しい佇まいでチームメイトの三人に問う。

 今日がB級デビュー戦でありながら気負う気配は見られない。年上としてビシッとした姿を誇示したいというところだろうか。

 彼女の視線を受けた三人は、笑みを浮べて其々彼女の呼びかけに応じた。

 

「勿論!」

「……いつでもいけるよ」

「皆。初戦ということで緊張もあるだろうけど、頑張って!」

 

 副、絵馬、そして三上。

 三人が無事B級に昇格できた事で新チーム・木虎隊を結成することが叶った。

 若いチームであるが正隊員のトリガーを手にしたということもあって気迫が滾っている。

 始まりの時はまだかとその時を待っていた。




原作初登場の時も思ったけど、木虎って得意げに語るときに限って何か鋭い指摘を受けそう。

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