ハリーポッターと妖精の翼   作:ファルドゥン

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第三十六話

 

 

 

黒いマントのような物を羽織ったそれは、確かにそこに佇んでいた。

顔は頭巾で覆われていて確認が出来ないけど、その全身から漂う気配と寒気が私達の敵だという事を教えている。

 

「貴方は……なんですか。何が目的ですか」

 

まずは言葉を投げかけてみる。あくまで調子を崩されてはいけない、自分のペースを保たなきゃ。

マントから手が突き出される。勿論私も杖をいつでも抜ける状態にしている。まるで血の気のない、灰色のそれは…………

 

 

 

 

 

 

 

……あれ?

 

 

えっここは……黒い影は?私……なんで天井を見上げているの?

 

「ヨーセイ!起きたのね……ほんっとうに心配したわ……」

 

「……ちょ、ちょっと待って下さい。何があったんですか。黒い影は?私は……」

 

「君はあれから気を失っていたんだ。無理もないが……さあ、食べるといい。気分がよくなるよ」

 

起き上がって確認する。ルーピン先生だ。

 

「ルーピン先生?えっと……それは、チョコレートですか?でも……いえ、そんなことより何があったのかを教えてください」

 

「あの黒い奴が来て、手を出したあたりでヨーセイ倒れちゃったんだよ……本当に大丈夫?」

 

私が……倒れたって?一回休みとか、そんなんでもない限りありえないというか、そもそも自覚症状みたいなのが全くなかったんだけど……

知らない間に魔法をかけられたってことかな。でも、そうなるとみんなが普通そうなのが変だよね。

 

「私は他の生徒たちの様子も見てくるからね……チョコレートは食べておくように。では失礼」

 

「あ、はい……」

 

「ヨーセイも食べて。一気に暖かくなるから」

 

別に寒いわけではないんだけどなぁ、やっぱりよく分からない。

 

 

 

とりあえずパキパキとチョコを割って食べる。甘くておいしいなっと。

 

「さっきの奴はなんだったんですか?」

 

「吸魂鬼って言うんだってさ。あの時ハリーも引き付けかなんかを起こしたみたいになって……」

 

「何というか……とても怖かったわ……」

 

怖く感じるような魔法をばら撒いてたんだろうか……そういう不思議生物って線もあるけど。

 

「でもヨーセイは倒れた割にはピンピンしてるね」

 

「そうなんですよねー。別にどうってこともないんですよ」

 

「僕、変な気持ちになったよ。もう一生楽しい気分になれないんじゃないかなって……」

 

……まぁ気になるけど実害はなかったし、後で報告だけして終了かな。

今年の目標はもう見えてるわけだから、変に拗らせるのは良くないはず。

さて、もう汽車も動き出しているしそろそろ着いてもおかしくないよね……

 

 

 

 

 

汽車が止まり、新入生はハグリットに集められて船に、私たちは人波に流されながらも馬車乗り場に集められ乗り込んだ。

ハリーさんは吸魂鬼に会ってからここまでずっと、あまり体調が良くないみたいで馬車が止まるまで座席のクッションに深く腰掛け目を閉じていた。

別に私はなんともなかったから窓の外を眺めていたりしていたけどね。夜のホグワーツを外から眺めることってあんまりないから、ここに通って三年目の今でも少し新鮮に感じる。

 

おっと、馬車が止まった。外に出て軽く一伸び。

他のみんなは……ってあれ?この声は……

 

「おぉ!ヨーセイ久しぶりだな!ポッターはどこだ?」

 

「あらマルフォイさんお久しぶりです。ハリーさんなら……っと、来ましたね」

 

馬車から他の三人が降りてきた。でもマルフォイさんの姿を見つけてあからさまにいやそうな顔をするのは止めた方がいいんじゃないかなって。

 

「おいポッター!気絶したんだって?本当に気絶なんかしたのかい?」

 

マルフォイさんもそのおもちゃを見つけたような顔は止めません?

 

「うせろマルフォイ」

 

「ウィーズリー、君も気絶したのかい?あのこわーい吸魂鬼で、縮み上がったのかい?」

 

「あの……マルフォイさん。悪いことは言わないので今はやめておいた方が……」

 

「どうしてだ?ヨーセイ、こんなに愉快な気分になれることはそう無いぞ!」

 

「いや、ですから……あっ」

 

「ん?君たちどうしたんだい?」

 

「えっ……あ、えっと、いいえ。なんでもありません――先生」

 

ルーピン先生が次の馬車で降りてきた。相変わらず見た目は継ぎ接ぎだらけでボロボロだけど、先生なのに変わりはないしマルフォイさんも素直に引いたようだ。

 

「じゃあ、またな。おい、クラップ!ゴイル!行くぞ」

 

そう言ってマルフォイさんはお供の二人を連れて城の石段を登っていった。

私たち四人も生徒の流れに従ってぞろぞろと上がっていく。

 

 

 

「グレンジャー!ポッター!ヨーセイ!三人とも私のところにおいでなさい!」

 

大広間に入るか入らないかというところでその声に呼び止められた。マクゴナガル先生だ。

なんだろう、用事か何かかな?私は別に怒られたりするようなことはしてないはずだし。

幻想郷でチルノちゃん達と遊びで魔法を使ってたことなんてバレるわけが無いし……バレないよね?ちょっとだけ不安になってきた……

 

「そんな心配そうな顔をしなくてよろしい――ちょっと私の事務室で話があるだけです」

 

なんだ、やっぱりただの用事ね。一安心。

 

「そういうことみたいなんで、ロンさんは先に行っててくださいね」

 

「うん、わかった」

 

ロンさんだけ置いて行っちゃうのはなんか悪い気がするけど……まぁ許してもらおう。私は悪くない、うん。

 

 

 

 

 

「ルーピン先生が前もってふくろう便をくださいました。お二人は、汽車の中で気分が悪くなったそうですね」

 

事務室に着き、椅子に座ってから先生は私とハリーさんに向けてそう切り出した。

倒れたことの続きだったか。確かにハリーさんはずっと気分も乗らなさそうだったから、その辺りをルーピン先生が考えてくださったのかな?

なんにしろ私は別に体調も悪くはないわけだから、適当に言って早く返してもらいたい。組み分けとか楽しいから見たいしね。

 

「私は大丈夫ですよ。確かに倒れましたが、その後も気分が悪いとかそういうことはありませんし」

 

「僕も大丈夫です。何にもする必要はありません」

 

あらあら、ハリーさん強がっちゃって。

 

「おや、珍しい子もいるわね」

 

その時、部屋を軽くノックする音が聞こえ、マダム・ポンフリーが入ってきた。

 

「あなたは……去年石になって医務室に来て以来よね。体が丈夫なのは大変よろしい」

 

そう言いながらマダム・ポンフリーはハリーさんの方を横目で見て、小さくため息をついた。

 

「あなたはまたなのね。さしずめ、何か危険なことをしたとかでしょう?」

 

「ポッピー、吸魂鬼なのよ」

 

マクゴナガル先生がそう言うと、マダム・ポンフリーは途端に暗い表情になった。その表情を変えないままハリーさんの前が身を掻き分け、額から熱を測り始める。

 

「吸魂鬼を学校の周りに放つなんて……倒れる生徒はこの子達だけではないでしょうよ。そう、この子はすっかり冷え切ってしまっています」

 

「ハリーさん、まだ寒かったんですか?」

 

「ヨーセイ、本当に大丈夫だから」

 

私はてっきり、気分が悪くなって寒気がするとかその程度だと思ってたんだけど物理的に体温まで奪ってしまうのか。

 

「……あら、あなたは平熱ね。倒れたんじゃないの?」

 

「倒れましたよ……いや、正確にはあまり覚えてないんですが、どうやら倒れたらしいです」

 

「脈は……二人とも正常かしら」

 

「この子たちはどんな処置が必要ですか?絶対安静ですか?」

 

それは……困る、困っちゃうよ。組み分けの後のごちそうとか、ごちそうとか食べれなくなっちゃうのはいやだなぁ……

 

「そうね、少なくともチョコレートは食べさせないと」

 

「チョコレートならもう食べましたよ。ルーピン先生がその場にいた全員にチョコレートを配ってくれましたから」

 

「あら、本当に?それじゃあ、『闇の魔術に対する防衛術』の先生がやっと見つかったのね。ちゃんと治療法を知っている先生が」

 

あのチョコには意味があったのか。ただ落ち着くから食べろってことではなく、しっかりとした治療法だったわけだ。

 

「二人とも、本当に大丈夫なんですね?」

 

「はい、問題ありません。ハリーさんは?」

 

「僕も大丈夫」

 

「いいでしょう。ミス・グレンジャーと時間割の話をする間、外で待っていらっしゃい。それから一緒に宴会に向かいましょう」

 

どうだろう、組み分け間に合うかな。まぁごちそうには間に合いそうだしいいか。

 

 

 

 

どうやら組み分けはもう終わってしまったらしい。少しだけ残念だけど、仕方ないね。

グリフィンドールの辺りに向かうと、ロンさんが席を取っておいてくれた。

 

「いったい何だったの?」

 

「吸魂鬼のことで……おっと」

 

ダンブルドア先生が挨拶のためか立ち上がったので、一度話を中断した。

 

「新学期おめでとう!皆にいくつかお知らせがある。一つはとても深刻な物じゃから早く片付けてしまう方がよいじゃろうな……」

 

一度話を止めて咳払い。

 

「ホグワーツ特急での操作があったから皆もご存じじゃろうが、わが校は現在魔法省から吸魂鬼、つまりディメンターを受け入れておる。学校の入り口という入り口を固めておるが、絶対に彼らといざこざを起こしてはならぬぞ。ディメンターにはいたずらや変装、『透明マント』ですらムダじゃ」

 

マダム・ポンフリーがポツポツ話していたことで察しはついていたけど、やはりホグワーツ周辺を囲うように放たれているのね。

出会わないに越したことはないと思うし、気を付けよう。

 

「さて、暗い話はおしまいじゃ。楽しい話に移ろうかの」

 

「今学期から新任の先生を二人お迎えすることになった。まずルーピン先生。現在裁判で忙しいロックハート先生に代わって『闇の魔術に対する防衛術』の担当を引き受けてくださる」

 

まばらな拍手が上がった。まぁ見た目がアレだし仕方ないけど、腕は確かそうだし期待できるね。

 

「次に『魔法生物飼育学』の先生が退職なさったので、ほかならぬルビウス・ハグリッドが新たに教鞭をとってくださることになった」

 

えっ、それは聞いてないんですけど。

他の三人は互いに顔を見合わせ、一斉に割れんばかりの拍手が上がった。

私も少し遅れて拍手に加わったけど、はっきり言って不安しかないの。

そもそもあの変な教科書を無理矢理買わされてる時点で何が始まるんだって感じだったのに……そうかぁハグリッドさんかぁ……いや、個人としては好きだけどね。

順風満帆っぽかった一年間が、これまた一波乱ありそうな気配を見せ始めたようです。

 

 

 

 

 




お久しぶりです
多分毎回同じこと言ってますね

基本的に元気にやってることはツイッターの方とかでちらちら漏れてるんですが、大まかに何やってたかというと、旅行に行ってゲームして、教習所行ってゲームしてました

元気です、無駄に

まさかゴ魔乙とFGOのイベントにシャドバのアプデが重なるとは……予想外でした

とまぁ、関係ない話はこれくらいにしておきます


やっと導入が終わった感じですかね?アズカバンは凄く書きにくいというのは感じています。
なんというか……つかみどころが少ないというか。

あと設定を考えるのも難航しました。
どっかに矛盾が生じてそうですが、もう妖精の魂とかそんなん考え始めたらキリがないのでご了承ください。多分次回お披露目です。


誤字脱字その他もろもろ、いつも通り待っています!

ではこの辺で
次は早く仕上げたいなぁ(所詮夢

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