ハリーポッターと妖精の翼   作:ファルドゥン

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今回は思ったよりも文字数が増えてしまったので、できた部分まででとりあえず投稿します

ではどうぞ


第三話 魔法界との初接触~ホグワーツ特急~ 前編

 

 

結論を先に言うと、私は幻想郷に帰っていない。

どうやってもあちら側に連絡をとる手段がなかったので、ひとまず宿を探して一晩寝てからどうするか決めるってことになった。

あいにく漏れ鍋の二階が宿になっていたので泊まる場所には困らなかったけれど、渡されたお金の残金がかなり残っていることから推測するに、そもそも初めから幻想郷に帰らせるつもりがなかった説が急浮上してきた…ちょっとだけイラっとするよ。

 

翌日、アリスさんは独自のルートで幻想郷に一時帰宅、私は新学期も近いので取りあえず漏れ鍋待機、ということになった。

なんでも、まだルーマニアにいたころに使っていた家の近くから魔界に行くことが出来るようで、魔界を経由して幻想郷を目指すそうだ。アリスさんには、私の存在がばれないようにするための細工と幻想郷との連絡手段を確保するという重大な任務があるため、頑張ってもらう。

 

その後しばらくは教科書を読んだり、ダイアゴン横丁を散策したり、悪戯道具を眺めていたりして毎日を過ごしていた。悪戯道具、さすがに一年生で目立ちたくないから買わないでおこう、今はね。

フクロウの名前はナチュルにしたよ。意味はそのまんま自然、妖精故に直球ネーミングなのです。

 

入学式の二日前にアリスさんは帰ってきた。どうやら永遠亭の薬師に依頼をしたようで、その身に纏う妖精の雰囲気をなんとなく霧散させる、というふんわりした効能の薬を貰ってきた。これ大丈夫なのかな。

連絡手段は紫さんが用意してくれた。以前異変解決に使用した遠隔会話などができるオプションを河童の技術力で改良し、幻想郷とも繋がるようにしてくれた。今後はこれでアリスさんや幻想郷側とも連絡が取れる。ナチュルの仕事は荷物運びが主体かな。

これらを渡してアリスさんはさっさと行ってしまった。理由は

 

「確かに泊まりたいのはやまやまなのだけれど、こっちで生活するために、少なくとも家は準備しなきゃ。大妖精はホグワーツでいいけれど、私はそうもいかないのよ。ごめんね」

 

とのこと。こればっかりは仕方ないね、無事にホグワーツにたどり着けるか心配だけど、みんなも頑張っているし、私も覚悟を決めるよ!

 

そんなことを思っているうちに、あれよあれよと入学式当日の朝ですわ。

 

店主のトムさんから朝ごはんをいただく。イギリスの朝食はとても美味しいね。別に食べなくてもいいって言っても食べること自体は好きだしこれくらいの楽しみは精神的にいい。今日は朝が早いからベーコンエッグとトーストに紅茶だけれど、いわゆるイングリッシュ・ブレックファストってやつは野菜もしっかり取れているし、味も素晴らしいと素直に思うよ。昼と夜のことはあえて言及はしない、うん。

トムさんに水を頂いて、自分の部屋で例の薬を飲む。

…特に変化は感じないかな。飲んですぐだしそりゃそうか。

 

前言撤回、鏡の中の自分が自分じゃない。

まさか髪の毛の色が変わるなんて思ってもみなかったよ…。

もう一度渡された薬瓶をよく見る。すると隅っこのほうに小さく『ついでに見た目も変わるようにしといたわ』と書かれていた。えー聞いてない。

確かにこの緑の髪の毛は目立つけれど、この色、気に入ってたんだけれどなぁ。

飲んじゃった物は仕方ないけど、このことはホグワーツについてからアリスさんに相談してみよう。

 

過ぎたことは忘れるに限るけどはてさて、私はこれからこの大量の荷物を全てトランクに収納し、わが身一つで運ばなければいけないわけだ。

もうこの量の荷物となると、気合で押し込むしかない。しばらくの間トランクと格闘、ねじ込んでやったよ。そして誰も見ていないことを確認してからのガッツポーズ。

ローブはどうしようか…とりあえずいつもの服でいいかな。

 

ホグワーツへの行き方は、キングスクロス駅という場所に行き、そこからは汽車を使うようだ。

漏れ鍋からキングスクロス駅は歩いていけない距離ではないようだし、魔法界のお金ならともかく外の世界のお金、イギリスだから確かポンド、は持っていない。

大変だけど仕方ない。そこは気合で歩いてやろうじゃない!

 

 

 

…本当に大変だった、荷物の重さを全く加味していなかったよ…。

大体30分とちょっとで着く予定だったのに丸々一時間かかっちゃった。

11時まではまだ余裕があるけれど、まさかこれほどかかるとは…。

ま、へたり込んでいても仕方ないのでとりあえず、この切符に書いてある九と四分の三番線なる何とも中途半端な場所を目指そう。魔法界の人って微妙な数字好きだよね、一ガリオン、十七シックル、二十九クヌートはまだ納得できてない。

 

まずは九番線に行けばなにか分かるかもと行ってみれば、まさにビンゴ。どう見ても魔法つかいだと思われる家族がいた。赤毛で荷物もいっぱい、それにフクロウも一羽いる。マグルだのなんだの聞こえてくるのでほぼ100%正解だ。

この人たちさえ見ていれば、多分行き方も分かるよね。

注意深く観察、すると一番年上っぽい男の子を初めとして、どんどん子供が柵の中に消えていくよ。おそらくこの「9」と「10」の看板の間の柵が隠された通路なのだろうけど、まずは確認。

目の前にまさに魔法使いの家族がいるのに聞かない手はないよね。

 

「「あの…すいません」」

 

うっわ、まさかこんな場所で声が被るなんて、私はなんて不運なのでしょう…ん?

被った?

 

「あら、こんにちは。坊やたち、ホグワーツへは初めて?うちのロンもそうなのよ」

 

どうやら私と同じように観察していた子が他にもいたみたいで偶然にも聞き出そうとするタイミングが被り、ついでに内容も被ったみたい。

瞳は緑で髪は黒色の癖毛でくしゃくしゃ、メガネをかけた男の子だ。

 

「はい。でも……あの、僕、行き方がわからなくて」

 

「私も同じ状況ですね。キングスクロス駅まで来たはいいものの、そこから先が分からなくて困っていたんです」

 

「どうやってプラットホームに行くかってことね?それならこの九番と十番の間の柵にむかって、ただまっすぐに歩けばいいの。立ち止まったり迷ったりしないことがコツよ、走ってもいいわ。ほら、ロンの前に立って、まずは坊やから」

 

メガネの少年が言われるがままに柵に進みだした。少年はだんだん小走りになり、ついには全力で柵に突進していった、と思ったら消えていたよ。魔法ってホントなんでもありね。

 

「次はあなたよ、準備はいいかしら?」

 

コツさえわかればなんということはない。ただ柵に向かって歩けばいいだけだし。

一応私も女の子なわけだから、優雅に歩いて向かおう。ちょっぴり怖いけど大丈夫。無理でも柵にガンってなるだけ。

 

…うん、成功、今度は内心でガッツポーズ。目の前には何とも立派な蒸気機関車が停車していたよ。

乗車しようと扉を探しているとさっきの少年の姿が、こっちに近づいてきた。

待っていてくれたのかな。

 

「君も無事来れたんだね。ちょっぴり心配しちゃった」

 

「はい、とは言ってもただ歩いてきただけですけどね」

 

「僕は少し怖かったから走っちゃったよ…僕の名前はハリーポッター。君は?」

 

「私の名前は大妖精です。……本名ですよ?」

 

ちょっと驚いているみたい。確かに英語で話していて突然他国の言語の名前が飛び出したら驚くよね。驚かせれたことに対してのちょっぴり優越感、心地よい

 

「ちなみに大が苗字になるのでこちら風に言うと妖精・大ってところでしょうか。まあ、その、よろしくお願いしますね」

 

「うん…よろしく。とりあえず、荷物を置いて座ろうか」

 

二人で空いているコンパートメントを探す。

なんだかんだギリギリの乗車時間になってしまったので、席はどこも満席。

最後尾の車両でやっと見つけることが出来たよ。

 

二人で協力してトランクを持ち上げることで、やっとの思いで収納すると、途端に汽車が動き出した。窓の外の景色が全て、後ろに流れていく。

とりあえず椅子に座ってゆっくりしよう…と思ったらコンパートメントの扉が開いた。

 

「ここ空いてる?他はどこもいっぱいなんだ」

 

さっき助けてもらった赤毛の魔法使いの家族の内の一人だ。たしかロンってあのおばさんは言ってたかな。

 

「まだ席に余裕はありますし、私はいいですけど…ポッターさんはいいですか?」

 

「ハリーでいいよ。僕も大丈夫だ、座って」

 

どっちもOKを出したことで赤毛の少年は席に座る。私の横、ハリーさんの前だ。

座った彼は、なぜかハリーさんをじろじろ見ている。…なにか顔についているのかな?面白いね、私も真似して見つめてみよう。

 

「ど、どうしたの?君たち。さっきから僕をじろじろ見て」

 

それはあなたの顔の表面に付いている面白い何かを探しているのですよ…とは言わない。

 

「君ってもしかして、あの、ハリーポッター?横の子がさっきハリーとかポッターとか言っていたけど…」

 

まさかの、名前に引っかかっていたようだ。もしかして魔法界では有名な子だったりするのかな?

頷くハリーさん。うーん…別に普通の顔だけれどなぁ。

 

「ふーん…そう…。じゃあ、もしかしてさ、君。本当にあるの?…ほら…」

 

一体何があるというのだろうか。魔法なんてなんでもありだからもう驚かないぞ…。

と密かな覚悟を決めた私の前で、ハリーさんは前髪を掻き上げた。そこには稲妻型の傷跡がひとつ刻まれているだけ。うん、私なんにも分かんない。

 

「この額の傷は何ですか?確かに稲妻型の傷なんて珍しいですけど…」

 

「君…もしかして、あの、ハリーポッターを知らないの!?魔法使いならだれでも知っている有名人だよ!?」

 

心底驚いたと言わんばかりの表情で私を見てくる。でも、知らないことは知らないの。

 

「『例のあの人』から唯一生き残った男の子、ハリーポッターを知らないなんて…信じられないよ…」

 

正直に言うと例のあの人ってのも私にはピンと来てないけど、全部聞いていたら話が進まない。とりあえずこの疑問は会話の中で解決するまでスルー。

 

「すみません、最近までマグルの世界にいたんです。こちらの世界のことには疎くて…」

 

「君もそうなの?僕も、その、マグルの世界で育ったんだ。ハグリッドが教えてくれるまでは、自分が魔法使いだってことも、両親のことも、ヴォルデモートのことだって…」

 

赤毛の少年はまたまた信じられないって顔をしている。やだ…この子面白い。

 

「どうしたの?」

 

「君、『例のあの人』の名前を言った!」

 

どうやら『例のあの人』とはヴォルデモートという名前らしい。

また一つ賢くなったよ、日々成長なのです。

 

「あの、私、多分ハリーさんもなのですけれど、魔法界の常識とか、あまり詳しくないのです。それでも私たち、ホグワーツでやっていけますかね?」

 

「それは大丈夫だと思うよ。マグル出身の子だってたくさんいるし、そういう子もちゃんとやってる、もちろん僕もフォローはするさ。僕の名前はロン。ロン・ウィーズリー、よろしく」

 

「僕は、今更だけれど、ハリーポッター。そして彼女が」

 

「大妖精と言います。よろしくお願いします」

 

またじみーに私の名前で驚いている。これはしばらく使えそうだね。

プチ悪戯ってやつ。

 

それから私たちは色々なことを話した。ロンの家族のこととか、ネズミのこと。途中で車内販売が来てからは、魔法界の不思議なお菓子のことや、カエルチョコのカードのことに話題はシフトしていく。私としては、写真が動くということに興味がある。この写真、せわしないなぁ。

 

かぼちゃパイを食べながら、ロンの話に耳を傾ける。ホグワーツに着くにはもう少しかかりそうだ。

 

 




今回のホグワーツ特急、前編と後編に分けました
自分の一話あたりの文字数の目安のためですが、大体4000から5000文字にしているため、そのあたりを考慮しての投稿となりました

後編が残っているのでたいしたことは書きませんがこれだけ一つ

フクロウの名前は全て、偶然近くにあったナチュル・チェリーのカードのせいです


感想なんかも待っています。ですが放置プレイもそれはそれでアリです

ではこの辺で

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