ハリーポッターと妖精の翼   作:ファルドゥン

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第二十四話 現場、そしてブラッジャー

「石にする力を持った怪物、筋は通ってるね」

 

「『秘密の部屋』の中の恐怖が何らかの魔法生物だと仮定するなら、だけれど。ダンブルドアが治せなかったわけだから可能性は高いわね」

 

ビンズ先生の講義後、私たちは件の廊下に向かっていた。

何でもいいから手がかりが欲しいのよねー。

 

「……おや?フィルチさん居ませんね」

 

「ラッキー、大っぴらに調べれるぞ」

 

ふーむ、特別変な跡とかはないかなぁ。

いや、この文字こそ最も変で気になる対象なわけだけれども。

もう一度、順を追って考えよう……この一文から得られる情報も少ないんだけどね。

秘密の部屋が開かれたってことだから、ホグワーツ内のどこかの部屋の鍵が開いたと考えるのが自然だよね。

ということは誰かがそれを開けたことになるけれど、ということはその開いた人と部屋の中の()()がこの異変の敵ってことだよね。

 

「……ヨーセイ?」

 

いやいや待って、()()()()()ってだけならいろんな考え方出来るよね。

例えば洗脳したとかそんなんで、心の中の()()を開けたみたいな意味だとそれこそ誰がやったのか分からなくなってくるのか。

部屋の中の()()を差別意識とかに置き換えて……うーん石になってる理由には乏しいかな。

ややこしく考えるよりそのままの意味で考えた方が素直だけど…1000年近くも見つかっていない部屋なんてあり得るのかな?調査して出てきてないわけだから…うーん、謎ですわ。

 

「―—ヨーセイ!」

 

「はい!?……えっ、どうしました?」

 

「呼びかけても答えなかったのはあなたじゃないの。しっかりしなさいよ…」

 

「あぁ、えっと…すみません。用事はなんですか?」

 

「もう行ってしまったよ…さっきそこの窓からクモが列を作って逃げていったんだ」

 

「クモですか。あまり集団で行動することもなさそうな生物ですね……ロンさんどうしました?」

 

見るからに顔色が悪い。さすがに気になっちゃうね。

 

「クモは――僕、好きじゃない」

 

「あら、意外ね」

 

「あれ?魔法薬でクモ、よく使いますけどどうしてたんですか?」

 

「死んでるのは大丈夫なんだ……動き方が、ね」

 

ふーん、まぁ何かしら持ってるもんだねぇ。

使うかは置いといて、一応覚えておこっと。

 

「そうだった。みんなはここに水たまりがあったの覚えてる?」

 

……あぁ、すっかり忘れてた。そういえばあったね。

 

「確かこの辺だよ」

 

……あっ、女子トイレ。

 

「ここって三階の女子トイレですよね。もしかしたら……ほら、名前を度忘れしてしまいましたけどここの幽霊さんが何か見ていたかも」

 

「『嘆きのマートル』ね。入って聞いてみましょう」

 

「えっと、じゃあ僕らはここで待ってるよ」

 

「あら、入ってもいいわよ?どうせ誰もいやしないわ」

 

「そういう問題でもないと思うんですが……」

 

「…うん、やっぱりやめとく。何か見てないか、ちゃんと聞いてきてくれよ」

 

 

 

 

うわぁ、故障中とは書いてあったけど思ってたよりひどいねこりゃ。

鏡はひび割れが目立つし、そもそもしみが凄いから機能してない。手洗い台は縁が欠けていて床はかなり湿ってる。トイレの扉が落ちかけてるのはとりあえず真っ先に治すべきだと思うのだけど。

ハーマイオニーさんは迷わず一番奥の小部屋に歩いていき、マートルを呼んだ。意外にも来たことがあるんですねー。

 

「……何の用よ」

 

「こんにちは…あぁ、もう時間的にはこんばんわですかね?」

 

「もう夕食も近いものね…あー、私たちちょっと聞きたいことがあって来たの」

 

「そう言って私にちょっかいかけに来たんでしょう。私、死んでるけどちゃんと感情はあるのよ」

 

あぁ、確かにこれめんどくさいね。いい子っぽいけど常に話してたいかって言われると首が横に振られるタイプ。

 

「別にあなたのことをどうこうしたいからって来たわけじゃないですよ?私たちはただ――」

 

「冗談じゃない!私の生きてる間の人生って悲惨そのものだったわ…今度は死んだ私の人生も台無しにしようとしてるんでしょう!?」

 

幽霊の人生……哲学かな?

 

「ほら、そこの扉の近くでハロウィーンの日に猫が襲われたでしょう?その事でマートルさんが何かを見てないかと聞きに来ただけです」

 

「……あの日はそれどころじゃなかったわ。パーティーから帰る途中でピーブズが私をからかってきたの」

 

「そうですか、失礼しました。では私たちはこれで」

 

うーん、とりあえず聞きたいことは聞いたしさっさとここを出て夕食に向かおう。

ハリーさんたちも待ってるしねー。

 

 

 

トイレを出ると、退屈そうに私たちが戻るのを待っているハリーさんたちが壁にもたれ掛かっていた。

 

「どうだった?」

 

「さっぱりよ。何も見てないって」

 

「上手くいかないものですね」

 

「まぁ仕方ないよ。早く夕食の席に向かおう」

 

四人で大広間に足を向ける。

 

「……ところで、どんな人が継承者だと思う?」

 

「よく考えてみようぜ。まずマグルが大っ嫌いで、スリザリン生で、僕らがみんな知ってる奴だ」

 

ロンさんがわざとらしく答える。

 

「もしかして、マルフォイさんのことを言ってるんですか?」

 

「あいつが言ったこと聞いたろう?こんなのほとんど自分からゲロってるようなものじゃないか」

 

「…うーん、私はあんまり信じたくないですけどね」

 

「あいつの家族はみんなスリザリン出身で、そのことをことあるごとに自慢してくるしな」

 

ハリーさんもそれに続く。

 

「あの家系なら、何世代も前から部屋の鍵を保管していてもおかしくはないさ」

 

……否定しきれない、かな。

 

「でも、どうやって証明する?」

 

「方法が無いことはないわ。学校の規則を50以上破ることになるけど…」

 

「あの……私聞いてきましょうか?」

 

「あなたは継承者ですかって?馬鹿正直に答えるとは思えないけど」

 

「どこかのタイミングで私自身が話したかったんです。勿論タイミングを見て、ですけど」

 

「……じゃあ、そっちはそっちで動いてちょうだい。私はポリジュース薬からアプローチするわ」

 

「ポリジュース薬って何?」

 

「数週間前、スネイプが授業で話してたじゃない。まあいいわ、ポリジュース薬は――」

 

ハーマイオニーさんが二人に薬の説明をしている間、私はマルフォイさんのことについて、ただぼーっと考えていた。

 

 

 

 

 

 

時間は少し進んで今日は土曜日。

ポリジュース薬の作り方が書いてある禁書の本を読むためにいろいろあったけど、それ以外は特に何事もなかったね。

土曜日ということで、今日はクィディッチの試合日だった。勿論私たちも観戦席にいる。

思えばマルフォイさんと距離を開け始めたのもクィディッチの練習の時だったね……しかも今日の相手はスリザリンだ。

 

……私は一体マルフォイさんとの関係をどうしていきたいのだろうか。

確かにマルフォイさんの言ったことは許せないんだけど、ただ許せないというだけで対話を拒むのはちょっと違うような気もするんだよね。

言ってもそこそこ長く口きいてないし、もうそろそろ話してもいいのかな…?

 

「ヨーセイ、またぼーっとしてるわよ」

 

「…あぁ、すいません」

 

「ほら、試合始まるよ」

 

意識を戻して前を向くと、ちょうど試合が始まったところだった。

各選手が一斉に空に飛び立っていく。ハリーさんも一際気合が入っているのか、すごいスピードだ。

 

「向こうの箒って確か性能がいいんでしたっけ?」

 

「多分、今ある競技用の箒の中なら最高速度なんじゃないかな」

 

「あら、それは確かにまずいですね……あっあぶない!」

 

ブラッジャー、暴れ玉が突っ込んできたのを間一髪で避けるハリーさん。

あっぶなぁ、見てるこっちがひやひやするよ。

 

「何とか避けましたね…って、あれ?あの玉ハリーさんのところにまた行きましたよ」

 

「必死に避けているけど……」

 

「ブラッジャーが一人の選手を狙うことなんてあるんですか?」

 

「普通の動きをしてたらあんなことにはならないよ。ブラッジャーの役割は、より多くの選手を振り落とすことだからね」

 

執拗にハリーさんを狙うその動きはさながら霊夢さんのホーミング弾を連想しちゃうね。

あれかなり痛いからなぁ……じゃなくて。

 

「誰かが細工をしたってことですか?」

 

「ま、普通に考えたらスリザリンよね。まったく許せないわ!」

 

執拗に追いかけられているハリーさんを守るようにフレッドさんとジョージさんが横を固めてるけど、防戦一方で攻めに転じれていないね。

 

…あ、タイムアップを取ったみたいだ。

 

「あのブラッジャーをどうするかでしょうね」

 

「普通に考えたら、検査だろうね。ただその場合は没収試合になってしまうけど」

 

「仕方ないでしょう。さすがに危険だしね」

 

……あれ?そのまま試合が再開した、ってハリーさん一人でブラッジャーに対応してる!?

 

「そんな、危険すぎるわ!早く試合を止めるべきよ!」

 

隣でハーマイオニーさんのそんな声が聞こえる。

ハリーさんはといえば…おぉ、こりゃ凄いね。

ありとあらゆる手段を使ってブラッジャーを巻こうとしている。執拗に追いかけては来るけど、この動きをしていればそう簡単には当たらないだろうね。

 

ブラッジャーとの攻防を見ていると、ふっとハリーさんの動きが止まった。そこにブラッジャーが突っ込む。隣からはハーマイオニーさんの悲鳴が聞こえる。

なんで動きが急に止まったんだろうか……あー、多分あそこにあるの、スニッチだ。

それもハリーさんとなにやら会話していたマルフォイさんのすぐ近く、そりゃ慎重にもなるね。

ボロボロになりながらも、マルフォイさんめがけて、正確にはスニッチに向かって突っ込んでいく。たまらずマルフォイさんがそれを避けて、ハリーさんがスニッチをキャッチ、そのまま地面に突っ込んだ。

試合には勝ったけどこれじゃあ……

 

 

「…ちょっとヤバそうですね」

 

「医務室に先に向かっておきましょう…心配だわ…」

 

 

 

 

 

「え、なんで腕の状態悪化してるんですか」

 

「ロックハートが……ね」

 

「あぁ、はい」

 

ほんと余計なことさせたら天下逸品だね。

 

「マダム・ポンフリーが言うには、この薬で骨が生えるらしいよ。激痛らしいけど」

 

「なんというか、ご愁傷さまです」

 

「にしてもすごい飛行だったな!」

 

「ああ、必死だったからね」

 

「にしても、マルフォイはどうやってブラッジャーに細工したんだ?」

 

「……案外マルフォイさんじゃないかもですよ?」

 

というか、これはマルフォイさんがやったこととは思えないんだよね。

根拠はただ一つ、この部屋に一人誰か隠れてる、っぽいてこと。

最近はなんとなく自分も()()みたいなのが少しだけ分かるようになってきたんだけど、思い返してみればクィディッチの競技場でもこれと同じような感覚を受けたような気がする。

真偽を確認しなきゃね。

 

しばらくハリーさんが喉を焼くような劇薬を飲むのを手伝っているとマダム・ポンフリーが来た。

 

「ほら、ハリーはこれから骨を33本も再生させないといけないんですよ。お見舞いがすんだのなら早くここから出ていきなさい」

 

「分かりました」

 

言われてしまったから仕方なく一度外に出る。

 

「……あっ、すみません。一つ用事を思い出したので一度ハリーさんのところに戻ります」

 

「分かったわ。寮に戻ってるから」

 

「はい、また後で」

 

さて、マルフォイさんのことも気になるけど、まずは目の前の問題を解決しないとね。

一体誰があんな危険なことを仕掛けたのか、私とっても気になります。

 




はい、24話でございました。


正直、自分の中ではこの話あんまりしっくり来てないんですが、展開としてここまでは行きたいというところまで詰めこんだ結果こんな感じに


次回、ドビーです。原作では夜中なんですが……そこはご都合主義ということでひとつ


コメントなど、質問もOKです、もろもろ待っています!
誤字報告もとっても助かります!


ではこれで

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