高校でも暗殺教室   作:紅音 葵

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紅音「さぁ!予告していた将暉への嫌がらせ回です!」
将暉「お前マジでざけんな!!!」



第54話 犬の時間

「…また?」

 

テストが終わりった6月半ば。

その日は月一で行われる委員会議の日である。

 

冒頭の言葉はC組の誰の言葉でもない。

 

委員長・副委員長会議が行われる会議室。

その言葉を発したのは1-Bの委員長である海野弘樹の言葉である。

 

簡単な話、1-Bの副委員長である住若菜がクラスの出金伝票を忘れたのである。

 

彼女自身、少し……いや、かなりのうっかり屋のようで、筆記用具や何やらを忘れてくるわけなんだが……

 

それを見た担当の先生は

「まぁ…今回の会議でそんなに大事なものじゃないし。また明日生徒会の人に直接渡せばいいから」

 

その言葉に、住は小さく「すみません」と謝る。

 

委員会議を始めてまだ少しだが、この流れは少しずつ恒例になりつつある。

 

それを見ているカルマと柊は

「飽きないねぇ、海野も」

「まあね…でもそこまで怒ることでもないだろーに」

「イライラしてんじゃない?最近雨多いし」

「あー…そっか…」

 

梅雨。

ジメジメした空気は人の心もジメジメさせるようで…

 

__________________________________________

 

「ねぇ将暉君。明日の朝までこの子お願いできるかな?」

 

時と場所が変わり、放課後の喫茶店「KATO」

そこには珍しく倉橋と岡野が来ていた。

その腕にはタオルに包まれた子犬が1匹。

どういう経緯か2人とも雨に打たれてびしょ濡れである。

 

それを見た将暉は

「………お前ら………

 

 

 

 

なんで喫茶店に動物持ち込むんだよ!!!」

「えぇぇぇ!!?違っ…」

 

なぜか唐突に怒った将暉に磯貝とカルマは

「まぁまぁ将暉は一旦落ち着いて。

倉橋も岡野もびしょ濡れじゃんか。このタオル使って。

俺今日委員会議だったし雨で部活なかったしで使ってないから」

「犬は一回俺が持っとくね〜。はい。俺も今日タオルつかってないから」

 

そんなテキパキ動く二人を見て前原は

「…磯貝がイケメンなのはいつもの事だけど…俺今初めてカルマのことイケメンだ、って思ったわ」

「カルマとかがイケメンって言うよりも将暉が心狭いよ。別に厨房の中入れてる訳じゃないし、お客さんもうちら以外いないんだから…あれくらいいいのにね〜」

「お前ら…全部聞こえてるから…」

 

こんな将暉の言葉を完全スルーして、中村は

「ところで陽菜乃はなんでここに犬を?」

「…ちょうど帰り道に捨ててあって。学校戻って飼育館に入れることも考えたんだけど…この子すごく濡れてたから、どっかあったかい所行こうかなって」

「でも寮はやっぱり常識的にダメかなってなってさ。やっぱ鳴き声とかもあるし」

「なるほど…で、この辺で家知ってるの将暉くらいだから」

 

そんな柊の言葉に、ふたりは頷いた。

 

その話の最中、将暉はというと……

「…で、なにやってんだよ」

「優に電話かけようと」

「……なんで?」

「………優の家って犬飼ってて。この家置いててもご飯もなにもないし。だから……」

「将暉」

 

カルマに呼ばれて、将暉は反射的にそちらを向く。

と、そこで見えたのは犬の顔で──

 

 

瞬時に他の6人の耳に悲鳴が入ってきた。

 

パッと見てみると、犬を抱えてケラケラ笑ってるカルマと……

「お前マジでふざけんな!!!やること小学生かよ!!!マジでこの店クビにすんぞゴラァ!!!!」

「いやいやごめんねぇ将暉w w w」

「笑いながら言うんじゃねぇ!!!」

 

それを見たみんなの頭に浮かんできたのは…一つの可能性。

それを代表して中村が口にする。

「ねぇ佳奈……もしかして将暉ってさぁ……

 

 

犬、苦手だったりする?」

「するね。多分私の暗所恐怖症並だと思うけど…」

「相当だね…」

「…で、カルマはそれを知っててやってる訳だ」

「趣味悪ぃ…さっきあいつの事『イケメン』とか言った俺をぶん殴りたいわ」

 

みんながそう口々に言う中、岡野が柊に「きっかけとかあるの?」と尋ねる。

「んー…ソラの家って昔柴飼ってて。小三くらいまで生きてたっけ…」

「ん?」

「小学校行く前くらいの時期かな?ソラの家で遊んでたらその子が将暉に襲いかかって……今考えてみたらその子はじゃれてるつもりだったんだろうなぁって思うけど…」

「あ、はい」

 

そんな話をしている柊たちに、将暉は

「ったり前だろーが!!!逆になんでみんなが触れるのかが不思議だわ!そんなのに噛まれたら死ぬだろ!!」

「死にはしないと思うぞ、死には」

「ワンちゃんはそんなに噛むことないから大丈夫だよ〜」

「『思う』とか『そんなに』とか100%大丈夫って根拠がねぇことよく言うよなお前らは!!」

 

いや、それもう色んな意味で詰んでない?

 

「やぁ…なんて言うか……完全に拒否してるね」

「でもソラは犬好きなんでしょ?」

「それとこれとは別だからねぇ…」

 

女子たちがそう話してる間、こちらでは

「ま、ごめんって。じゃあ将暉ん家のドライヤー貸して。乾かしたいから」

「自分で取ってけよ…場所分かんだろ」

 

そんな将暉の言葉に、カルマは真顔かつ黙って持ってた犬を持ち上げ──

「よし分かった。だから犬持ち上げんな!」

 

よろしく〜と言ってた将暉を送るカルマに、全員が「趣味わっる」と思った訳なんだが…

 

「ところで…陽菜乃はこの子の犬種って分かる?」

「んー雑種だね〜。見た感じはビーグルちゃんだけど…毛がくるくるしてるから…もう一方はプードルちゃんだと思うよ〜」

「……ビーグルって聞いたことあるけど……イメージつかないなぁ…」

「スヌーピーって言ったら分かるかな?あの子がビーグルちゃん」

「マジで!?でもスヌーピーみたく白くねぇよな…?」

「まれにいるんだよ〜。真っ白で生まれてくる子。普通は茶色か黒と白の2色になるんだけどね」

「へぇ…」

 

と、そんな説明をしていると、店のドアが開いた。

入ってきたのは……

 

「ごめん。将暉のヘルプできた!」

「あーソラ。久しぶり……ってほど会ってなくないか…?」

「噂の子は!?」

「カルマが持ってる」

 

それを聞いたソラは、一瞬動きを止め……

 

カルマに言う。

「ねぇカルマ君…」

「ん?何?」

「カルマ君さ…将暉になんかした?」

 

バレっバレじゃねぇか!!!!

そんなツッコミをみんなは心の中で留める。

 

とカルマは

「うん、した」

「悪びれもなく言ったぞこいつ!!!」

 

さすがに前原はこのツッコミは止められなかったらしい。

 

ソラもカルマのあまりの悪びれのなさに怒る気力も失くしたようで……

 

 

その時

「はい、ドライヤーどーぞ!」

「んーありがと〜。で、なんでそんなに怒ってんの?」

「誰のせいだよ!?」

 

そんな将暉をスルーして、カルマは柊に犬とドライヤーを渡す。

 

そして柊は犬を乾かしながら大体の話をする。

「つまり……1日この子を預かっててほしい……と」

「そうそう」

「んー……1日くらいならお母さんにもバレずに過ごせると思うから良いけど…明日どう渡せばいいかな?」

「ソラの家ってここから近い?もしそうならソラの家かここかで」

「うん。じゃあここでいいかな?」

「OK!」

 

そんな話をしている女子達に将暉は

「あー…じゃあ用事終わったら犬連れて帰って」

「……彼女が来ててそれはないんじゃないの?将暉クン?」

「うっせぇ!エセカルマ!!!」

「将暉は女子に優しくねぇなぁ。何なら俺が教えようか?その辺のすごいサル以外の女子は結構──」

「前原、お前ゆっっっくり後ろ向いてみ?」

 

前原が後ろを向くと……

「げ…岡野…」

「前原?覚悟は出来てるんだよね?」

 

そして岡野は前原にドロップキックをする。

そして前原は岡野の手によって天に召されていった──

 

 

 

 

………………

 

 

「いや、死んでねぇよ!!?」

 

__________________________________________

 

カルマ、磯貝のバイトが終わり、みんなは寮へと帰路につく。

と、その時前原が一言。

「そーいえばだけど……将暉ってキレたら怖いんじゃねぇの?こんなにいじって大丈夫なのかよ…」

 

そんな前原の言葉にカルマは

「ん?ヘーキヘーキ。将暉はこんな事でガチギレしないから」

「?……ああそう…?」

「そうそう。大声出して怒ったりつっこんだりするうちは全然大丈夫」

「あー…そうなんだ」

 

ガチギレしたら静かに怒るタイプの人間かな…とか思ったり。

 

「ま、そんな訳で前原もそろそろ一途になったら?」

 

……は?

「いやいやいやいや!どーゆー理由だよ!?」

 

カルマの言葉に前原がそう言う。

 

「まぁ前原ってなんだかんだ言って馬鹿みたいに鈍感だからねぇ…」

「は?俺鈍感じゃねぇし。むしろそーいうの鋭いぞ?」

「カルマじゃないけど俺からも言わせてもらう。前原は鈍い」

「どこが!?」

「どこがって……うーん…」

「ま、その時に痛いほど身にしみるでしょ」

 

そんなカルマ・磯貝の言葉に、前原は首を傾げた。




二学期に書く予定です(何をかは言わない)
次回からはある学校イベント書く予定です!

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