高校でも暗殺教室   作:紅音 葵

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第19話 信頼の時間

みんなは話し合った。

まず第一に殺せんせーに心から死んで欲しいと思っている生徒なんてE組にはいない。…聞くまでもないことだ。

第二にそれでも僕らは殺し屋だ。この一年必死に賭けた思い出を…他人に踏みにじられるのは絶対にいやだ。

 

「ってことはよ…俺らはまず何がしたいんだ?」

そんな寺坂の質問に、矢田が答えた。

「…決まってるよ。

 

多分殺せんせーも…やりたいことは一緒だと思う。」

 

 

 

 

 

 

 

その頃殺せんせーは、机や窓をピカピカに磨いていた。

「ヌルフフフ。肝心の手入れですねぇ。」

殺せんせーは、綺麗になったまどから外を眺め、そして思った。

(超生物である私に、今更恐れるものはない。ただ、一つ願いがかなうなら…また生徒たちに会いたい。)

 

 

 

 

 

(…会いたい)

 

 

 

 

 

そして同じ頃、E組のみんなも、同じことを思っていた。

(会いたい!会わなきゃ何も終わらない!)

 

 

 

「気持ちを抑えて今は待とうよ。

 

『三日ほど頭を冷やして考えるんだな。』っていう烏間先生の言葉の裏をよめば…三日待ってもレーザー発射には十分間に合う。烏間先生もそれまでにきっと手を打ってくれると思う。」

「そうだな…。みんな考えよう。もしここを出れた時に備えて…あらゆる作戦を立てておくんだ。」

不破と磯貝はそうみんなを促した。

 

それからみんなは、着々と殺せんせーのところへ行くための準備をし始めた。

何やら地図や装備品リスト、警備のタイムテーブルなどを広げる。

 

「あと三日。」

みんな、監視カメラの位置を確認したり、各自で戦闘訓練をしたりしている。

 

「あと二日。」

作戦を整理していた磯貝に、カルマが声をかけた。

「磯貝。もし山の中まではいれたら…そっからは俺にしきらせて。

 

…頼む。」

 

いつになく真剣なカルマに、磯貝はいつも通りにこっと笑い…

「ああ…任せた。」

 

そして…あと一日!

 

「…どーすんだよ。全く脱出のチャンスなかったぞ。もう今日だぞ、レーザーが発射されんの。」

そんな寺坂の言葉に全員がうつむいた。

 

とその時、誰かが部屋のドアをノックした。

「いいな。本当に顔を見るだけだぞ。こんなの上にばれたらどうなるか…。」

「わかっているわよ。一目見れば安心だから。」

 

入ってきたのは…

 

「はぁーい、E組のみんなぁ。心配したわぁ。元気だったぁ?」

…ビッチ先生である。その違和感てんこ盛りのハイテンションに全員が引く。磯貝にいたっては触角がしおれるほどである。

 

すると突然、ビッチ先生は竹林にキスをし始めた。

続いて、矢田・三村・神崎・渚に次々としていく。

 

あらかた終わったあと、

「みんな、元気?」

「ん?ん?」

「元気ならよーし。じゃ、帰るわ。」

 

かなり困惑している生徒たちをよそに、ビッチ先生は普通に帰ろうとした。

「おい、もういいだろ。」

「もぉーへーきよ。外にも見張りがいるんでしょう?

じゃまたね、ガキども。」

 

…そこにいたほとんどみんなの心の声が一致した。

((((何しに来たんだ、あのビッチ‼︎))))

 

「な…何しに来たのよ、ビッチ先生‼︎」

目の前で渚のキスを目撃し、茅野は怒りを見せていた。

 

が、渚が口を押さえたまま、表情を変えないのを見て、

「……渚?」

 

すると、キスをされた生徒の口からコードや筒など、様々なものが出てきた。

それは…

「………‼︎僕の爆薬一式だ。」

 

 

 

 

そして夜。

E組のみんなは裏口を爆破して脱出した。

 

そしてそこには、ビッチ先生がいた。

「遅いわよ。私の完璧な脱出マップがありながら。」

ビッチ先生の近くには、27人分…E組全員の靴が用意されていた。

 

矢田は自分の口に入っていた脱出マップを取り出し、

「ビッチ先生…これ…」

「カラスマから頼まれてね。

思いの外かかっちゃったわ。E組教師を口実に通い詰めて心開かせて…休憩室で見張り全員が談笑する習慣つけて、あんたらの脱出経路確保するまで。」

 

…さすがは世界トップクラスのハニートラッパー。

だが一つ気になることがある。

 

「どーやってこんだけの脱出道具口ん中詰め込んだんだ⁉︎」

「恐るべし。世界屈指の色仕掛け術…。」

 

そんな中、ビッチ先生はみんなに伝えた。

「…レーザーの発射時刻は日付が変わる直前ですってね。

どういう結果になるのかわからないけど…どちみち明日は卒業式なんでしょ。

 

卒業前の最後の授業よ。思う存分受けてきなさい。」

「「「「「……はい‼︎」」」」」

 

「逃げたことはすぐにバレる。包囲の警戒が強くなる前に!」

生徒たちが行動しようとするのをジッと見ていたビッチ先生だったが、そんな先生に片岡が声をかけた。

「ビッチ先生‼︎烏間先生と来て!どっちも私の大切な先生だから‼︎」

 

その言葉に始めはびっくりしたビッチ先生も、笑顔で

「…仕方ないわね。」

 

 

 

E組のみんなは自分の家に超体操着や、武器を取りに戻った。

そんなみんなを出迎えた律は、

「よくご無事で、皆さん‼︎お留守の間に空からの偵察は完璧です‼︎」

 

防衛省から少し離れたビルの上に、ドローンの発着場があった。

それを見た磯貝は、イトナに

「自律ドローン充電発着場か…よくこんなの準備してたな、イトナ。」

「本来は対殺せんせーの最終兵器の予定だった。律と組めば、ドローン(これ)の力を最大限に発揮できる。だが…どうやら違う相手に使うことになりそうだ。」

 

そしてそこで磯貝は最後の確認をする。

「山の周りの警備で突破できそうなのは…この、隣町の山を一つ越えたルートだけ。一時間後、この入り口に全員集合‼︎」

 

 

 

そして一時間後。

全員警備を突破し、E組みんながふもとのビルに集まった。

最後に磯貝がみんなに言う。

「いいか、みんな。時間がない。この潜入が間違いなく最後のチャンスだ。」

その言葉にE組全員集合頷いた。

 

そして…

「行くぞ。」

 

そのカルマの声を皮切りに、全員が動き始めた。

 

ーー最後の任務(ミッション)は、全員無事に登校すること‼︎

殺せんせずの暗殺期限まで…あと3時間‼︎




渚の家の中の出来事、個人的には好きなんですがカットしました。
いつもと違って特に理由はありません。
本当にごめんなさい‼︎

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