高校でも暗殺教室   作:紅音 葵

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今回は少し長めです。


第13話 プライドの時間

場所は椚ヶ丘の住宅街。

カルマは駅までの道のりで不良に絡まれていた。

 

「はぁ?」

「肩がぶつかったって言ってんだろ。」

 

そう主張する不良たちに対し、カルマは煽りをかける。

「そっちが広がってるからじゃん。あっ、それか謝んなかったら何かあんの?」

「…このガキ…。」

 

不良たちが切れたのを確認すると、カルマは笑いながら…

「ははっ、やるんだ。」

そして殴る体制に入った。

 

が、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ありませんでしたー‼︎」

…殺せんせーである。

「どうか担任の私に免じてお許しを!この通り靴ならいくらでもなめますんで!」

 

不良たちは(な、何かキモい上に靴溶けてねぇか?)と思い、

「ちっ、先公ならちゃんと生徒の態度ぐらい教育しとけ‼︎」

と言い、立ち去った。

 

それを確認した殺せんせーは、

「カルマ君。この時期に暴力沙汰はダメでしょう。」

「フン。」

「この一年で、ずいぶん成長した君ですが、そのケンカっ早さはなかなか直りませんねぇ。」

「…ある程度ケンカしてればバカもよってこないし。それに何で悪くないのに謝んなきゃダメなの?そんなことしたら…

 

自分の中の大事な刃を失っちゃうよ。」

 

そう主張するカルマに対し、殺せんせーは顔を×にしてこう言った。

「それは違いますよ、カルマ君。本当に優れた殺し屋は、仕事中に通行人とぶつかれば…迷うことなく頭を下げるものですよ。ターゲットを狙う彼らからすれば、目の前のいざこざは無駄(リスク)でしかない。

また、君が目指す官僚の世界でも利益のために理不尽に頭を下げないといけない時もある。」

 

そしてカルマの頭にポン、と触手()をのせ、

「では…君に合った頭の下げ方を教えましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、カルマは渚・杉野・寺坂・イトナと一緒に山を下りた。

 

いつもと違う表情を浮かべているカルマに対し、寺坂は、

「冴えねぇ顔してんな、カルマ。またあのタコに鼻っ柱折られたか?」

その言葉に対し、イトナは、

「うらやましいか、寺坂。お前のだんごっ鼻じゃ折りようがない。」

「ああ⁉︎」

 

そのやりとりを聞いたカルマは、イトナの方を振り向いて尋ねた。

「イトナはさぁ、最初会った時に言ってたじゃん?俺の方が強いとか弱いとか。そこらへんはもうこだわってないの〜?」

 

その質問にイトナは、

「あれは俺の言葉じゃなくて、触手の言葉だ。俺が本当に欲しかったのは…強ければ手に入るものではなかった。だからカルマ、お前の方が強い。それでいい。」

 

その回答にカルマは「ふーん。」と、気のない返事をした。

 

その時、

「ちょっ…離してったら‼︎」

 

「あの声…矢田さんじゃない⁉︎」

渚の声を皮切りに5人はその方向に走り出した。

そしてそこにいたのは6人の外国人だった。

 

「あーあ、やっぱ英語しゃべれねーか。日本の女は。」

「構わねーよ。体で会話できればな!ははははは。」

 

「おい、テメーら何やってんだ‼︎手ぇどけろや‼︎」

 

最初に口を開いた寺坂に、外国人達は

「ったく…頼むからヒトの言葉でしゃべってくれよ。」

 

すると…

「離せって言ってんの。うちの女子にあんたらの匂いがうつるんだよ。それか飼育係呼んでこようか、家畜共?」

 

外国人に対し挑発をしたカルマだったが…

 

「…なんだと?」

その外国人達はカルマに殺気を向けてきた。

そこでカルマは相手の実力に気がついた。

(…なんだこいつら。殺し屋か?どいつもこいつもめちゃめちゃ強い。)

 

その時外国人の内の一人が、

「おい、赤いチビ。いいからおとなしく女を差し出せや。そしたら殺しやしねぇよ。少し遊んだら返してやる。

世界中動き回ったから飢えててよ。聞く話によると、日本の女は何されても従順に従うそうじゃねーか。」

「…このやろう!」

 

一方後ろでは渚と杉野が小声で、

「殺せんせーは?」

「カナダにメープルシロップ絞りに行ってる。」

「…てかこいつらそれも予定の内なんじゃ?」

 

その時、もう一人の外国人が

「いや。俺はこのガキも逃がさねぇ。反抗的な目に侮辱の言葉。一つ社会のマナーを教え込まないと気がすまねぇよ。」

 

カルマは外国人達を見て、

(…こいつ一人だけでも余裕で鷹岡より強い。そんなのが合わせて6人。こっちの戦力は5人。この路上で不意を突けば1人か2人なら倒せるかもしれない。…でもそれまでだ。絶対に矢田さんは助けられない。なぜって…奥の奴が別格でやばい。下手すれば…烏間先生より。こいつらを本気にさせてしまったら…どんな結末が待っているか…。)

 

「…悪かったよ。」

「ああ⁉︎」

考えた末、カルマは謝る選択をした。

「謝るから、離してやってよ。みんな…卒業前の大事な時期なんだ。」

「日本語で謝罪の言葉が聞きてぇなぁ。ロッポンギで日本人ぶちのめした時に覚えたからよ。」

 

外国人にそう言われ、カルマは一瞬躊躇した。

が、昨日殺せんせーに言われた言葉を思い出す。

『カルマ君、プライドの刃は捨てなくていい。一度足元に置くだけです。』

カルマは胸に手を当てて、教え通りプライドの刃を足元に置いた。

そして、

「…すいませんでした。今日のところは勘弁してください。」

 

『置いた刃をまっすぐに見なさい。正しい志が宿った刃なら、地面でも煌々と輝いているはずです。』

 

「プ、ははははは!びびんなよ!ちょっとからかっただけだって!」

「はなからこんなガキに興味ねぇよ。」

「ちょっと泣きそうな顔すんなよ。あっ本当に泣いた?ははは!」

 

外国人達は矢田を離して立ち去った。最後にリーダー格の男が、

「すまなかったね。全員私の友人なんだが、少しクセのある奴が多くてね。」

 

外国人の全員いなくなったのを確認してからカルマは地面に手を伸ばし、プライドの刃を拾った。

そして胸に刃を戻した後、一息ついた。

「渚はすごいよね。鷹岡に平然とやってのけたんだからさ。」

「うんん。こらえてくれて本当に助かったよ。」

「あのタコが言うにはさ、社会に出たらこういうことしなきゃいけないんだって。…なんも得しなくね、これ?」

 

その質問に対して、矢田が答えた。

「十分だよ、カルマ君。おかげでこうやって無事に帰ってるんだから。」

「…無事が見返りねぇ。」

 

 

そして下校していると、本校舎の近くで「イトナ」と呼ぶ声がした。

そこに立っていたのは…

「よかった。学校に行けば会えると思ってた。」

「え…

 

 

父さん?」

「「「「「えっ…?」」」」」

「お前が今どこで暮らしているのかわからなくてな。『無事』でいてくれて本当によかった。」

 

『無事』という言葉に渚と杉野がカルマを小突いた。

「無事だってさ。」

 

「債務の整理がやっとついたんだ。これからは一緒に暮らせる。

声変わりしたな。背も伸びた。よく一人で頑張ったな、イトナ。」

「…うん。」

普段あまり表情を変えないイトナが嬉し涙を流していた。

それを見つつ、

(ま、今回はこれでよしとするか。)




ホウジョウサイドの話はカットします。
みんなが卒業するまでにあと10回はやると思います。

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