真剣で転生天使に恋するのはまちがっている。   作:八和大誠

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予告通りショボい戦闘シーンです。
暇なときにご覧いただければ幸いです。


たたかう天使様

生徒が屯する中、学長である川神鉄心の声が響き渡る。

「西方、楊志!」

「……」

青髪こと楊志は2刀一対の吹毛剣(すいもうけん)を手に俺を見据えている。

「東方、比企谷八幡!」

「うっす」

対する俺は手をポケットに入れたまま、今にも倒れそうな姿勢とやる気の無さそうな態度を取っている。

一部の生徒からは俺への批難の声が響いていた。一般人から見ればただのだらけている野郎だが、これでも俺は凄く戦闘体制だ。俺がしているのは脱力。生き物は何かを頑張ろうと力を込めるより脱力をする方が何倍も力を発揮することが出来る。

「それでは……」

学長が始めの合図を出そうとする。そして静かになる生徒たち。依然として構えを変えようとしない俺と吹毛剣を構える楊志。

「始め!!」

合図と共に突進して来る楊志。俺は変わらず脱力し続ける。

そして楊志は自らの間合いまで来たのを確認し、俺に手に持つ2刀で切り込んできた。

俺はポケットに手を入れたままだが漸く構えた。周りから見ればまるでその動きがわかっているかのように紙一重で避ける。

二刀流の特徴は攻撃頻度だ。だがそれは、本当に攻撃を打つ場所が解る者には無に帰す。

覇気・見聞色

端的に言えば『相手の気配をより強く感じる』だ。生物は常に体から声を発している。それを聞き取ることが可能になる。勿論その声の居場所と数も容易に感知出来る。

楊志は自分の攻撃が全く当たらない事に焦らず、的確な攻撃を続けている。

「もっとギアを上げないと俺には届かないぞ」

敢えて挑発的な態度を取ってみた。どうせならこいつの本気を見てみたいからな。

すると楊志が距離をとった。

「アタシが本気を出しても貴方には絶対に傷を負わせる事は出来ない。だから最後に死なない程度で攻撃してほしい」

……仕方ない。そこまで言うなら、その態度に免じて寸止めにするか。

俺が今出来る技術は

ーーー仙人モード

ーーー猿武

ーーー間流結界術

ーーー無想

ーーー覇気

ーーー六式

の六種類だ。

猿武と覇気の組み合わせにしてやろうか……。

「武装・硬化」

右腕が黒く変色した。

「行くぞ」

「……」

楊志は何も言わずに集中している。どうやら防御に専念するようだな……だがそれは格上に無意味な行為だ。

(ソル)

地面を10回以上蹴り、一瞬で楊志の目の前まで行く。その事に驚いたが流石梁山泊、防御する体勢は崩さない。

「猿武・兜割り」

右腕を硬化させたまま猿武で放つ俺の必殺技。まぁただの突きなんだけど。無論、本気で撃ってはいないが上級悪魔の体を貫く威力だ。体の前で寸止めしても良いが人間だから運悪くお陀仏の可能性が在る。

そこで俺は体の横に撃つことにした。

だが俺とこいつの身長の都合上、上手く腹の横に打てず、顔の横になってしまった。

距離が有ったにもかかわらず楊志の後ろにいた生徒たちが風圧に負けて飛ばされているものがいた。

「俺の勝ちで良いだろ?」

「十分解った。私の負け」

「勝者、比企谷八幡!!」

学長の声が響き渡り、一拍遅れて生徒の盛り上がりの声が上がった。

「本気でやったの?」

「あ?本気でやったらここら一帯塵と化すわ」

俺は楊志の方を見ずに与一の方に向かった。

「与一、どう……!!」

与一の目の前まできて感想を聞こうとしたら突然真横からトンファーを突かれそうになった。

俺は油断してその赤髪の軍人の接近に気付かなかった。不意をつかれ、反射的にトンファーを武装色を使った右腕で壊してしまう。

攻撃した本人もトンファーが壊されるとは思ってはいなかったらしく驚愕している。

「私のトンファーが……!!」

「あんた誰だよ?つうか何で攻撃すんだよ」

俺は答えを待つがそれは出来なかった。

「川神流・無双正拳突き!!」

「おっと」

俺は赤髪とは反対側から来た相手の攻撃を飛び退き後ろへ後退する。

「今度は何だよ……」

よく見たら武神(笑)だった。

「はは!!今のを避けるか!!」

面倒な奴に絡まれてしまった。

「さっきの手合わせで余計に欲求不満になってしまったが!!」

武神(笑)は話を途中で切り乱雑に殴り掛かってきた。

「お前となら楽しめそうだ!!」

最後の台詞だけなら勘違いしそうだが殴り掛かりながら言われても嬉しくもない。

俺は一旦攻撃を止めるために拳を手で受け止める。

俺はこいつの拳を受け止めて解ったことが一つ有った。……こいつの拳には覚悟が乗っていない。

その事だけで憤怒の意に成った。が

「喝っ!!!」

「………っ!!」

突然の怒鳴りに憤怒は治まった。

「これ、モモ!止めんか!」

俺は二人で言い合っているのを無視し、今度こそ与一に話し掛ける。

「不幸だ」

「奴に絡まれるとは…」

「凄いな!義経は感動した!」

与一と一緒にいたポニーテールの少女こと源義経は急に体で凄さを表現している。

「武神に目をつけられるなんて災難だね」

ダルそうな感じで川神水を飲みながら近づいてきた武蔵坊弁慶。

「本当に……楊志の頼みを聞くんじゃなかった」

「まぁ元気出して。川神水でも飲む?」

「ああ、後で貰うわ」

こうして俺と楊志の戦闘+αは終了した。

 

ーーーーーーーーーー

 

時は昼休み。

別に飛ばしているのは何にも無かった訳ではなく、エーベルバッハに勝負を挑まれたり、武蔵坊にやたら絡まれたり、雪ノ下に睨まれ続けたり、葵に(変な意味で)絡まれたり、そんなぐらいしか無くて思い出したくなかったんだ。因みに何で名前を知っているかと言うと井上に教えて貰ったからだ。あいつは本当に頼りになる……ロリコンだが。

授業自体も聞く必要もなく、fullで音楽を聞いていた。まぁ今も腹も減ってないし四時間目から引き続き聞いている。与一が近づいてきても気配察知が働くから問題ない。

すると俺の方に近づいてくる人間の気配を感じた。また武蔵坊か?と思ったが梁山泊の二人だった。

「何か用か?」

「話がしたい。付いてきて」

「……解った」

楊志の申し出に素直に従った。目的があって俺に戦いを挑んだんだ。その理由を聞いても良いだろう。

 

ーーーーーーーーーー

 

場所は屋上。

俺は武松と楊志の二人と向き合っている。

途中、悪魔が付いてきているのが解った。数は4。その内上級悪魔が3人か……どうせここを管理している悪魔だろう。

「で、何?」

「私達は直江大和と比企谷八幡を見極めに来た」

こりゃ随分とややこしくなりそうだな。

「直江大和は廬俊義(ろしゅんぎ)として、貴方は呉用(ごよう)としての資質を見極める」

「……」

「そしてその事を曹一族も知った」

「……はぁ、奪われないように護衛も兼任してるって事か?」

「話がはやくて助かる」

うわぁ、めっちゃ迷惑。

「それは俺が人外だと知ってもか?」

「そう」

成る程。この世界では人だけではやっていけない事も在るからな。

「その話、詳しく聞かせてもらって良いかな?」

突然、第三者が現れた。

「何の用だ。俺は今こいつらと話してるんだけど?悪魔ども」

俺がそう言うと梁山泊の二人が構えた。

「……別に心配するな。こいつらに敵意は感じられないし、もしもの時は俺が何とかしてやる。だから構えを解け」

構えている二人に聞こえるように呟いた。

解ってくれたのか構えは解いてくれた。警戒心は解いていないが。

「それは此方の台詞かな?悪魔の領土に踏み込んで来るなんて」

さっき突然話し掛けてきた肩ほどある黒髪の女だ。

「一個人として、比企谷八幡として来ているんだから問題ないだろ」

「姉さん、回りくどい。率直に言うわよ、貴方は何者?直ぐに言いなさい。さもないと実力行使をしなくてはならないわ」

「ゆきのん、落ち着いて」

付いてきたピンク髪の少女に宥められている。それにしても実力行使ね……

「ふっ」

「……何がおかしいのかしら?」

どうやら俺が鼻でわらった事がおきに召さないらしいな。

「いや、自分の実力を棚にあげる悪魔は滑稽だと思ってな」

「それは貴方が私より強いと?」

肩を震わせながら鋭く睨んでくる。

「さぁ?どうだろうな?」

「私を馬鹿にするのもいい加減にしなさい」

「…流石に妹を馬鹿にされて黙ってはいられないよ」

…ああ、何でこの選択肢を選んだんだろう。

「馬鹿にはしてないさ。それに…」

俺は右手を刀印の形にする。そして間流結界術を使用し、四人全員を囲む。

「どちらが優位に立っているか解らせないとな」

こうなったら自棄だな。

結界の中にいる悪魔が壊そうとするが結界はびくともしない。

「解」

そして俺は悪魔を滅するために結界を張ったのではないから直ぐに解く。

「俺は取り敢えずお前らに危害を加えるつもりはない。もし俺が攻撃するときはお前らが人間に手を出したときだ。だから俺は無視しといて構わねぇぞ」

なんとも横暴な注文だと自身で思うわ。これはある種の脅しだからな。

「雪乃ちゃん、ここは出直そう」

爽やかイケメンが雪ノ下に意見する。納得していない顔で屋上を後にする悪魔一行。だが雪ノ下の姉であろう悪魔が

「また今度ね♪」

二度と会いたくねぇよ!

心中で悪態を突きながら最初の相手の方を向く。

二人を見るが武松の方は顔が赤かった。緊張でもしたのだろうか…

「……大丈夫か?」

「私は何とか平気。武松の方は手遅れ」

「……」

楊志は訳の解らない事を言ったが、何故武松はもっと赤くなる?

「まぁ大丈夫そうだな。それより俺の正体を二人には話しておくわ」

「良いの?」

最もらしい疑問をぶつける楊志。

「別に…知っていた方が判断しやすいだろう?」

「それなら教えて」

俺は勇気を出し二人の耳元まで近づいた。

「俺は転生天使だ」

それを聞いて想像とは違うもので一瞬固まった。

「本当に?」

疑り深いな、しょうがない。普段はあんまり翼を出さないが証拠としては十分だろう。

俺の背から3対6枚の翼と頭上にはわっかが現れた。

それをした瞬間、余鈴が鳴り響いた。




覇気は武装と見聞しか使えません。基本的に努力して習得出来る技術です。
殆どが楊志の台詞です。
戦闘シーンのご指摘宜しくお願いします。

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