あ、アシ?北上やけど何か文句あるが?   作:ジト民逆脚屋

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お久し振りです!
今回からちょっとお話が動き出します。

目指すは鉄血SEの似合う艦これ!
土佐上様にレンチメイスを持たせたい逆脚屋です!


友人から、ちょっと読み辛くないかと言われ書き方を変えてみました。



四日目昼

「よいよいっとにゃぁ」

 

北上は独特なリズムを刻みながら、髪から石鹸の泡を流し水気を拭き取っていた。

誰も居ない街、その街にあるホームセンターが今の五人の拠点となっている。

粗方、水気を拭き取り終えた北上はちらりと陽当たりの良い場所を見る。そこには、先程洗った若草色の作業着の上着とシャツが干されていた。

 

「まだ、乾いちゃぁせんか。しゃあない、このまま居るか」

 

タオルを肩に掛けたまま、陽当たりの良い場所で寝転ぼうとするが、北上の耳にある音が届いた。

 

ーー何ぜ? この音は?ーー

 

気になった北上は寝転ぶのを止め、音のする方へと歩いて行く。

念の為、北上は今上半身全裸である。一応、肩にタオルを掛けているから、重要な部分は見えていないが、六つに割れた腹筋や逞しい背筋に腕は丸見えである。

 

「おう、おんしら何しゆうぜ?」

 

北上が向かった先では三人の妖精、カズ、ジロ、サブが北上が拾い集めた斧やナイフに鋸を、小さなハンマーで叩いていた。脇には、何かを分解したのか部品が散らばっている。

 

『これはこれは』

『北上さん』

『妖精加工です』

 

「妖精加工ち、何ぜ?」

 

『妖精加工というのは』

『これで深海棲艦と』

『戦える様にするやつです』

 

妖精加工、妖精が持つ不思議な力で深海棲艦の装甲を貫通し辛い武器でも、幾ばくかの資材を消費しダメージを負わせる事が出来る様にする加工である。

 

「ほうかほうか、言う事はよ。アシの鉈も、その妖精加工済みかや?」

 

『そうですけど』

『北上さん』

『服、服着るです』

 

妖精三人が振り向けば、そこには上半身全裸の北上が居た。

髪を洗っていたのだろう。普段は三つ編みに纏められた髪は解かれ、軽くウェーブを作って水気を帯びている。

これだけなら美人の類いに入るのだが、この北上の目付きの悪さとくわえ煙草に逞しい筋肉が、美人の感を若干台無しにしている。

 

妖精三人の服着ろコールに北上は、平気な顔をして腰に提げている鎚鉈を抜いて刃を見てながら、こう言った。

 

「んあ? 下履いちゅうきかまんろ」

 

『いやいや』

『そうじゃ』

『なくてですね』

 

これには妖精三人も困った。

目の前の北上はズボンは履いていて、タオルを肩に掛けて、重要な部分は隠れているが、それでも上半身全裸には変わらない。

積まれていたブロックに腰掛け、店内から見付けて来たのであろうシャープナーで鎚鉈の刃を研ぎ始めた。

カズ、ジロ、サブの三人には為す術が無かった。

 

平然とした顔で煙草を燻らせ、鉈を研いでいる北上に誰か何か言ってくれ。

 

妖精三人は手斧の加工を止めて、何処へともなく祈った。

 

「母さん、リュックとカバン見つけた!」

 

その祈りが通じたのか。

対北上用決戦兵器大和がリュックと肩掛けカバンを見付けて現れた。

大和は、上半身全裸で鎚鉈の刃をタッチアップする北上を見るや否や、叫んだ。

 

「母さん! ちゃんと服着ないとダメでしょ!」

 

これには北上も困った。

今、自分の服は乾かしている最中であり、だから上半身全裸なのだ。

 

「いやにゃぁ、大和よ。アシの服はいま乾かしゆうがよ?」

「なら、他の着て! 誰かに見られたら、どうするの?!」

 

北上は唸った。

北上自身は見られようが、何かが減る訳でも無いから別に構わない。

だが、大和の様な子供にそう言われると弱い。

 

仕方なく、北上はまだ少し生乾きのシャツと上着を着る事にした。

 

「うぇ、まだ湿っちゅうわ・・・」

日当(ひなた)に居たら乾くから、ね」

 

うんざりした顔で紫煙を吐き出す北上を宥める大和、その横で妖精の一人、ヘルメットに1と書かれたカズが口を開いた。

 

『北上さん北上さん』

 

「ん? どういたぜ、カズ」

 

『缶の燃料の事です』

 

「燃料がどういたぜ?」

 

『燃料が尽きたら、海の上移動出来ないです』

 

「マジか?」

 

『マジです』

 

北上は二本目の煙草に火を着け紫煙を吐き出し、大和は艤装と北上を交互に見合わせ、カズとジロとサブは頭を悩ませる。

二本目の煙草が半ばまで燃えたところで、北上がカズに問うた。

 

「カズよ、今の燃料はどれっぱぁ(どれだけ)あるよ?」

 

『今はほぼ満タンあります』

『けど、もし戦闘になったら長くは保たないです』

 

カズとジロが言う様に、燃料確保は急務である。

安定した状況下であれば、燃料確保を急ぐ心配は無いが、今は安定した状況下ではない。

何時、何が起こるか分からない状況なのだ。

 

「カズ、其処らの車からガソリン(うつ)いたらいかんか?」

 

『え~と、それは、サブ?』

『ダメじゃねぇですけど、燃費メチャクチャ悪くなるですし、下手したら缶が壊れるかもです』

 

「ガソリンはいかん、か」

 

三本目の煙草に火を着け、北上は天を仰いだ。

ホームセンターの屋根と青空が見える。

艦娘の艤装には専用の燃料が必要だ。その他の燃料でも代用は出来るが、燃焼効率が格段に下がり最悪は艤装が破壊される恐れもある。

専用の燃料を手に入れるには、鎮守府等の艦娘を起用する機関に所属する必要があるが、北上達にとって鎮守府等は訳の分からない集団であり、そこに接近するのも所属するのも情報が集まるまで避けたい。

 

しかし、それでは燃料確保が出来ない。

どうするべきかと、北上は紫煙を吐きつつ頭を悩ませる。

 

ーーどうすぜよ? 鎮守府ゆうがに行くか? うんにゃ、録な事にならん気がするき無しじゃにゃ ・・・!!ーー

 

三本目の煙草が燃え尽き、四本目に火を着けようかと北上がポケットに手を入れた時、北上が目を見開き日当の方角、駐車場に振り向いた。

 

「か、母さん、どうしたの?」

 

大和の問い掛けに返事をせず、脇に置いていた鎚鉈を掴む。

その目は油断無く開かれ、腰は落とし気味に鎚鉈を何時でも振り抜ける様に構えている。

 

「大和、煙突缶持ってき」

「う、うん」

 

『北上さん』

『どうかしたです?』

 

カズとジロが問い掛けるが、北上は駐車場を睨み付けるだけで返事はしない。

大和が持ってきたサブが乗った艤装を黙って背負い、全員に指示を出す。

 

「カズ、ジロ。荷物纏めぇ、何ぞ嫌な気配がすらぁ」

 

『気配って』

『なんです?』

 

「分からん、こんなが初めてやよ。大和も荷物持てるだけ持ちよ」

「うん」

「急ぎよ、嫌な感じじゃ」

 

大和がリュックに店内で見付けた水筒や缶詰等を詰め込み、カズとジロは肩掛けカバンに加工を済ませた斧やナイフを入れていく。

 

『北上さん、缶の動作確認終了です』

 

「アシに繋ぎ」

 

北上の背中の中央、背骨に初めて艤装を背負った時の痺れる様な感覚が走る。

気が張っているからだろうか?

嫌な何かが徐々に近付いて来るのが分かる。

 

「母さん、終わったよ」

 

『こっちも』

『終わったです』

 

「カズ、ジロ缶に乗り、大和は急いで着いて()いよ」

 

肩掛けカバンを持ち、準備を終えた北上達は急ぎホームセンターから離れた。

 

 

北上が察知した気配は、ゆっくりゆっくりと迫って来ている。

まるで、彼女を値踏みするかの様に。




次回
すげぇよ、キタは・・・


になると良いなぁ






トピック

妖精加工=ナノラミネートアーマー

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