あ、アシ?北上やけど何か文句あるが?   作:ジト民逆脚屋

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土佐弁北上様、二話目でございます。

前回、土佐弁が分かりづらいというお言葉を多数頂きましたので、後書きにて注釈を入れております。
注釈以外に分かりづらい言葉がありましたら、お手数ですが活動報告か感想にて質問をお願い致します。


一日目後半

おう、アシよ。北上よ、なんか水汲んで帰って来たらよ、あの煙突付きの機械にこんまいまるっこいヘルメット被ったがが乗っちゅうが。ありゃなんぜ?

 

『北上さんだー』

『ハイパー?スーパー?』

『スイパー!』

 

ほんまになんぜ、こいたら?人、じゃあないろぉし妖怪かや?煙草の煙吹き掛けたら消えるがかな?

 

「ふー」

 

『煙い!』

『なにをするだー!』

『ゆるざん!』

 

イカン、消えんし怒らいたが。山の怪やったら煙草の煙で消えるち聞いたけんど、ほいたらこいたらは山の怪やないがやろうな。

 

「おんしら、何者ぜ?」

 

『『『妖精です!』』』

 

妖精つか、確かに妖怪よか妖精の方がらしいゆうたららしいが、いきなりそがいなこと言われてもにゃあ。まあええか。

 

「まあ、そいたら妖精さんち呼ぼうか」

 

『オーケーです!』

『それにしても、変な喋り方です!』

『ほんとに北上さん?』

 

ほっちょき、標準語らぁ喋るがは苦手ながやき。

 

「アシは北上よ、何ぞ文句あるがか?」

 

『怒らしたです!』

『お前のせいです!』

『許して、プリーズ!』

 

別に怒っちょらせんが、やっぱりあれやろうか?土佐弁は聞き慣れん人にはキツイがやろうか。

 

「気にしな、アシは別に怒っちょらせんが」

 

『ホントです?』

『よかったです』

『わちき、許された!』

 

分かってくれた様じゃな、にしても、最後の奴は許されん気がするがは、アシの気のせいながやろうな。

 

『北上さん北上さん!』

『出撃しましょう!』

『北上、いっきまーす!』

 

妖精さんの一人が煙突の上で跳び跳ねて、残りの二人が背負い革をバシバシ叩きながらはしゃぎゆうが、なんじゃろ?

 

「出撃ち、なんぜ?」

 

『は?』

『ひ?』

『ふ?』 

 

へほ、つか?喧しいわ!妖精さんが「何言ってんの、こいつ?」みたいな顔でアシを見ゆうが、知らんもんは知らんがじゃ。

 

『北上さん』

『じ、冗談じゃ?』 

『ですよね?』

 

「アシは冗談は、上手く言えんがよ」

 

『なんてこった・・・』

『やばくね、これ?』

『おーまいがー・・・』

 

其れほどか?其れほどまでにヤバイがか?妖精さんが、がっくり膝をついて項垂れちょるきヤバイがやろうなぁ。

 

「で、その出撃ゆうがはなんながよ?」

 

『え~と、ですね』

『その文字の通りに』

『出撃して戦います』

 

「戦う?なんとよ?」

 

『オウフ』

『マジかー』

『そこからかー』

 

あれ、これアシ、バカにされやぁせん?出撃の言葉の意味は知っちゅうが、この妖精さんらの様子からするにこれはやまったろうか?

そいでまあ、妖精さんから聞いた話やと、この世界は深海棲艦ゆう連中に制海権を獲られてしもうたらしいがよ。

それだけやったらかまんがやったろうけんど、いやかまんことないけんど、この深海棲艦ゆう連中は、げにまっこと厄介なことに現代兵器、ミサイルとかバルカンやらが効かんかったがやと。

そっから、各国はじり貧になって頭抱えよったとこに、アシの体でもある北上ら、艦娘と妖精さんが日本に現れて深海棲艦を張りまわしたらしいがよ。そいで、そっから日本が主体になって各国に艦娘とその上司の提督を派遣して、反撃を始めたゆうことながやと。細かいことは、はしょったけんど、そういうことらしいが。

 

「しょう、厄介な話やの」

 

『そうなんですよ!』

『だから』

『戦いましょう!』

 

戦う言われてものう?アシはガワは北上やけんど、中身は第一次産業従事者やが。そらぁアシだって、喧嘩の一つや二つしたことあるし、山で仕事しよったら獣に会うて襲われたき殺いたことはあるけんど、戦争となったら話は別よ。

第一、北上になったゆうて絶対戦わなぁいかんゆうことでもあるまい。戦こうて死ぬがは嫌やし、こっちの世界に何ぞ義理が有るゆうことでも無し。

あれ?これ戦ってもアシに得らぁ一コも無いが。

 

「戦うゆうても、今の事やないがやろ?」

 

『まあ』

『それは』

『そうですけど』

 

「それやったら、明日の事よ。もう日が沈みゆうき、湯ぅ沸かいて飲んで寝よか」

 

ホンマは酒がええがやけんどの、無い物はしゃあない。

さて、明日はどうするかよ?この世界を調べるにも、海は厄介者がおるし、まあ、明日の事か。




注釈

こんまい:小さい
こいたら:こいつの複数系
そいたら:そしたら 土佐弁では『し』が訛って『い』と発音される事があります。
そがいな:そんな
~らあ:物や人に対する複数系
がやろうか:なんだろうか がやろうな、になるとなんだろうな
やまった:失敗した等の意味
げに、まっこと、しょう:本当、とても等、物事を強調する時に使います。
はりまわす:高知県西部幡多地方の土佐弁、幡多弁と呼ばれます。ビンタする等、暴力を振るう等の意味で使われる事の多い言葉

他に分かりづらい言葉がありましたら、活動報告又は感想にて質問をお願い致します。

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