後、土佐上様が何故にタ級に力負けしなかったのか
何故、土佐上様世界線に妖精が居て、バケツのオッサン世界線に妖精が居ないのか
これらが、ちょっと分かります。
トピック?
艦娘 所謂、ヒューマンデブリ的な扱い?
この世界で最初に落とされた国はフランス
やっぱりフランスはガバってピポッてる!
シャルル=ウツー
寂れ埃や汚れが目立ち、雑草が庭先を覆った民家。
その持ち主を失った民家の居間にて、高らかに鼾をかく女が寝ていた。
女の名前は北上。元々は違うが、本人も何が何だか分からぬ内に、この軽巡洋艦娘の北上になっていた。
「んがぐ・・・」
高らかにかいていた鼾が止まり、包帯が巻かれた右手で腹を掻く。
あまり他人には見せられぬ寝姿だが、本人は一向に気にしないのだろう。
六つに割れた腹筋をそのままに、また鼾をかき始めた。
「ぐぐがぐ・・・」
「・・・もう、母さんったら。またお腹出して寝てる」
「ぐがっ」
「んしょっと」
大和が北上がはだけた布団を直し、溜め息を一つ。
「母さん。いつ起きるのかな?」
北上はタ級との戦いの後、二日間起きる事無く眠り続けている。
息はしているし、食べ物や水も口に持っていけば勝手に食べるが、眠ったまま起きる気配が無い。
『大和さん。缶詰見付けてきたです』
「ありがと、カズちゃん」
『北上さん、まだ起きないです?』
「うん。ジロちゃんとサブちゃんは?」
『二人なら、艤装の修復してるです』
ジロとサブの二人は頭を悩ませていた。
『どうして』
『こうなってるです?』
先の戦闘で破損した北上の艤装を、町中で拾い集めた金属製品を潰して加工して修復していたのだが、肝心要の動力部で問題を発見した。
否、問題と言うよりは奇怪なものだ。
『なんで』
『動力機関が二つあるです?』
通常、一つの艤装に一つしかない筈の動力機関が北上の艤装には二つあった。
戦闘中は必死で気が付かなかったが、今思えばおかしい点が幾つも北上にはあった。
相手は戦艦タ級であるのに、一介の軽巡洋艦娘である筈の北上が力負けをせず、かつ強度でも負けていなかった。
実際にはそれは有り得ない事だ。
戦艦級に勝てる力を持つ者は居ない。戦艦とは、絶対の力と装甲で戦場を擂り潰す、何者にも真似する事の出来ない存在、それが戦艦なのだ。
なのに、北上はその戦艦級でも上位に当たるタ級と、互角の力勝負をした。
サブは思い出す。
戦っている最中の北上、そしてその艤装。
そうだ。艤装の動力機関は回転を上げ、北上に戦う力を
しかし、ある一瞬、北上の力がはね上がった。
あの時、動力機関は全力で稼働していた。
だが、北上が吼えた瞬間、もう一つの動力機関が稼働し始めた。
それはまるで、北上が求める力を求めるままに与えるかの如く、北上の要求に応えたかの様であった。
『う~ん』
『どういう事です?』
二人は更に頭を悩ませた。
第一、自分達の事もよく分かっていないのだ。
何時かは覚えていないが、自分達妖精は消えかけた。
と言っても、うすらぼんやりとした感覚的な記憶に過ぎない。
だが、自分達はこの世界から存在が消えかけた。
何が原因かは分からないが、『とてつもない何か』が産まれようとしていたという事は分かる。
あれが何だったのか?
それは分からないが、あれはきっと良くないものだ。
『考えても分からない事はしょうがないです』
『戻ってテレビ点くか試してみるです』
『ジロ、サブ。テレビ点いたです』
「テレビって凄いね。遠くの事も分かるんだもん」
『何やってるですかね?』
『見てのお楽しみです』
『って、え?』
「なに、これ・・・」
考えても分からぬと思案を中止し、二人は居間に戻り物は試しにと点けてみたテレビを見て、愕然とした。
本日未明、佐世保第二鎮守府が深海棲艦による侵攻で壊滅しました。
侵攻した深海棲艦は、第一第三佐世保鎮守府により討伐されましたが、佐世保第二鎮守府とその周囲の生存者は居ないとの事です。
暫定政府はこの事を受け、佐世保に現存する第一第三両鎮守府の戦力増強を発表。
対深海棲艦用戦車並びに対深海棲艦用強化外骨格の配備を決定しました。
同様の侵攻はラバウルでも発生しており、暫定政府は追加戦力の増強と配備に頭を悩ませる結果になっております。
ーーはい、は? 只今入ってきた情報です!
たった今、艦娘保護団体『夜明けの水平線』が武装蜂起をしたと入ってきました!
犯行声明は無く、舞鶴第三鎮守府が占拠されたとの事です!
生存者及び負傷者の情報はまだ入ってきていませんが、当局によると可能性は絶望的との事です!
情報が入り次第、追って・・・
「皆、これって・・・」
『ヤバイです』
『深海棲艦に』
『負けてるです』
深海棲艦の侵攻に艦娘保護団体なる団体の武装蜂起、テレビではまだ絶望的なニュースが流れ続け
「ごぐぁ・・・」
そんな事は知らぬ北上の鼾だけが、薄暗い居間に響いた。
〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃〃
「フウ、疲レタワネ」
「オ? タ級。ボロボロジャアナイカ」
「アラ、レ級。何シテルノカシラ?」
「暇ダッタカラナ。中枢ノクソ女ノ配下ヲカラカッテ遊ンデタ」
「フフ、アマリヤリ過ギテハダメヨ。アノ女ハネチッコイカラ」
「分カッテルヨ。ソレヨリモタ級、随分満足ソウジャナイカ」
「分カル?」
「分カルサ。デ? 何ガアッタヨ?」
レ級のその言葉にタ級は、埃に塗れた髪を払い白い頬を上気させ身を捩った。
その様子はまるで、恋に恋する乙女の様であるが、実際は似ても似つかぬものである。
「嗚呼、嗚呼、私ノ念願ガ漸ク叶ウカモシレナイノヨ」
「アア、戦イノ中デ死ニタイダッタカ?」
「正確ニハ戦イノ中デ満足シテ笑ッテ死ニタイヨ」
「コレマタ、相変ワラズ拗ラセテルナ」
身を捩らせ歓喜に打ち震えるタ級を他所に、レ級は感心した様な呆れた様な態度で、襤褸切れの様になった『何か』を放り捨てる。
その間にも、タ級の昂りは止まる事無く、歌劇の如く高らかに滔々と身振り手振りを加えて歌い上げていた。
「嗚呼、アレコソ正ニ原始ノ闘争! 私ガ長年求メタ真ナル闘争!」
「戦イナラヤッテルジャナイカ。ソレジャダメナノカ?」
「ダ、メ、ヨ! 彼奴ラガヤッテイルノハ戦争、私ガ求テイルノハ闘争! 嗚呼、違ウワ、違イ過ギテ頭ガオカシクナリソウッ!」
「ハイハイ、分カッタ分カッタ。落チ着ケッテ、マタヲ級ニ杖デ頭ドツカレルゾ?」
「ドツクナラドツケバイイジャナイ! 甘美ナル闘争ガ私ヲ待ッテイルノヨ!」
コリャダメダ
レ級は呆れて溜め息を一つ吐いて、自慢の尾を海面に叩き付け、襤褸切れになっても蠢く『何か』が四散した。
「アラ? 良カッタノ?」
「ン? アア、動カナクナッタシ良イカナッテ」
「ソウ。ア、ソレヨリモ聞イテヨ。モシカシタラ、彼奴ハ神秘ノ結晶体カモシレナイワ!」
「神秘ノ結晶体! マジカヨ!」
「エエ、ソウデナクテハ私ト互角ニ戦エル訳無イジャナイ」
「ナアナア、俺モソイツト遊ンデイイカ?」
「ダメヨ、マダダメ」
「ナンダヨ、ケチダナ」
「彼女、マダ目覚メテナイミタイダカラ、モウ少シ待タナイト」
ソレカラヨ、オ楽シミハ
タ級とレ級は笑う。
来るべき邂逅を夢見て、静かに凄惨に笑う。
「ア、ソウイエバ、中枢棲姫ガ次ノ侵攻ニ加ワレッテサ」
「ソ、無視シマショウ」
「ソウダナ」
「アラ? ソウイエバヲ級ハ?」
「ン? ヲ級ナラ中枢ノ配下ガ五月蝿イッテ潰シニ行ッタゾ」
「ジャァ、モウスグ帰ッテ来ルワネ」
このお話で、土佐弁が出なかったのは初めてなんじゃないだろうか・・・
戦艦級にも負けない力と一撃を耐える強度
動力が二つ
あれ?
これ、○○○○フレーム・・・