素直に追いかけて ボールを追いかけて 作:スターダイヤモンド
《1回の裏、ソフトボール部の攻撃。その前に守備についたμ'sのポジションを確認しておきましょう》
《ピッチャーは絢瀬選手、キャッチャーは東條選手の生徒会コンビ》
《ファーストは…なんといっても先ほど、あわや満塁ホームランか?…という大きな当たりの2点タイムリーを放った小泉選手。セカンドは矢澤選手。サードはμ'sの元気印、高坂選手。ショートには西木野選手が入ります》
《外野は左から南選手、先頭打者として塁に出て、そのあとすかさず盗塁を決めた星空選手、そして、その星空選手を返した先制タイムリーの園田選手です》
《さて、絢瀬選手…どんなピッチングを見せるか?ソフト部のトップバッターは、先ほどまったく出番のなかった、セカンドの四ノ宮選手。左打席に入ります》
穂乃果(まったく出番のなかった…って…)
※穂乃果はサードなので、ヒデコの実況がうっすら聞こえている
《さぁ、注目の立ち上がり…》
凛(ホントなら『セーフティバント返し』をしたいとこだろうけど…本家ソフトボール部のプライドがあるだろいし…まず、それはないかにゃ~)
四ノ宮(…?…やけに一二塁間が広いわね…)
《絢瀬選手、小さく頷いて、モーションに入る…腕を大きく回して投げた!ストラ~イク!初球は真ん中の甘い球に見えましたが、四ノ宮選手、これを見送りました》
四ノ宮(なかなか速いじゃない!ウインドミルも「サマ」になっている。素人がピッチャーをやると、どうしても山なりに投げてしまうもの…。しかし、打てない球じゃない)
《続く2球目!引っ張った!速い打球は一二塁間を抜けていく…ライト前ヒッ…あぁ~…》
四ノ宮(!!)
《ラ…ライトゴロ…です…。バッターアウト!!》
四ノ宮(な…そんな…)
《誰もがライト前ヒット…と思った瞬間、矢のような送球が1塁に!強肩の園田選手、なんとライトゴロで仕留めました。四ノ宮選手、まだ信じられないと言った表情…》
海未(名付けて『ラブアローシュート』ならぬ『ライトアローシュート』とでも言いましょうか…。そうです、スペルは違いますが、ライトアローは『光の矢』と『右翼手の矢』を掛けてます…と、私は誰に説明しているのでしょうか?)
凛(ふふん…作戦成功!これがあるんだにゃ~!ソフトボールは…)
二本松(あの妙な守備位置はその為?引っ張った打球は全部ライトゴロにするつもりか?)
《ショック醒めやらぬまま、ソフトボール部の2番バッターが打席に向かいます。次は、やはり先ほど出番の無かったショートの六車選手》
穂乃果(プププ…ヒデコ、口が悪すぎ…)
《左バッターが続きます。絢瀬選手、どう攻めていくのか?》
凛(大きく空いてる一二塁間は、狙いどころ…でもライトゴロは恥ずかしいにゃ~…流し打ちでもしようかにゃ~…でも…そうは、させないにゃ~)
《あっと、これは六車選手、インコースのボールに窮屈なバッティング…ボテボテのピッチャーゴロ…これで2アウト》
穂乃果「絵里ちゃん、ナイスピー!!」
にこ「絵里、調子良さそうね!」
二本松(流し打ちを考えていたところに、インコースの甘いボール。迷った瞬間にバットが出てしまった…という感じか…)
一条「ここまで僅か3球…。絢瀬にしろ東條にしろ、あのセンターにしろライトにしろ、なんでスクールアイドルなんかやってるんだ?」
二本松「確かにな…」
《ソフトボール部、3番はサードの五木選手。右バッターボックスに入ります》
五木(守備位置は…変わらずか…。さっきもそうだっが、センターはかなりレフト寄り…右中間が大きく空いている…)
《五木選手、ゆっくり足元をならします》
五木(…なるほど!!さっきのバッティングから推測するに、ショートとレフトは「穴」なんだな…で、それをカバーする為、セカンドもセンターも左寄り…)
《バッター、構えた。それを見て絢瀬選手、1球目を投げた!…外角低めに外れてボール…》
五木(…であるなら…右バッターの私には、引っ張らせないため、徹底的にアウトコース攻め…)
《次の投球…外!今度は決まって、1ボール1ストライク》
五木(やはり!!ならば、それを狙い打つだけ。こっちも伊達にクリーンアップを打ってるわけじゃないのよ!)
《ピッチャー、速いテンポで3球目!投げた!おっと、内角近め!これはバッター、のけ反って避(よ)けました》
希「ごめんな…ぶつからへんかった?」
五木「大丈夫…」
《五木選手、軽く手を挙げ、ベンチに無事を伝えます》
五木(…東條…外一辺倒ではなく、内角を交えてくるとは…やはり侮れない相手だ…)
《カウントは2ボール1ストライク、投球4球目…》
五木(定石通りなら、ここは…)
《投げた!》
五木(…外!)
カキン
《打った!外のボールをきれいに合わせた!センター前ヒット!打球はライナーで二遊間を抜けていきました》
五木(読み通りだったが、あのコースじゃ、これが精一杯のバッティングだな…)
《さあ、ソフトボール部、ツーアウトながらランナーが出ました。続くバッターは、右投げ左打ち、ピッチャーの一条選手。大きく伸びをして、打席に向かいます》
一条「さてと…借りは返してもらうよ…」
希「ウチは、なんも貸してへんけどなぁ…」
一条「…ひとりごとだ…」
《4番を迎えて守備位置が動きます。セカンドの矢澤選手は定位置に戻りました。それに合わせてショート、サードもやや右にシフト》
二本松(守備位置まで変えるのか…。やはり、単なるアイドルグループではないな…)
《長打を警戒してか、外野は深め。レフトの南選手はフェンス際まで後退。ライトの園田選手も右に動いてライン寄り。…しかし、センターの星空選手はあまり動かず、右中間は大きく空いています》
一条(なめたマネを…)
《ピッチャー絢瀬選手、後ろを振り向い、外野を見渡しましました》
絵里(頼んだわよ…)
《プレートに足を揃え、身体を屈め、キャッチャーのサインを覗き込みます。2、3度首を振ったあと、今度は頷いた。モーションに入る…大きく腕を回して、投げた!》
一条(もらった!!)
キン!
《打った!掬(すく)い上げた!大きい当たり!抜ければ長打コース!》
凛(にゃっ、にゃっ、にゃっ…にゃあ~!!)
《…あ、星空選手、横っ飛びぃ!!…ダイビング!!》
一条(!!)
…
…
…
《捕った?捕ったのか?…》
…
凛「にゃお」ブイ
ウワ~ッ!!
《あぁ!!捕っています!捕っています!星空選手、捕っています!超スーパーファインプレーが出ました!》
リ~ン!
リ~ン!
リ~ン!
《場内からは『凛コール!』これにグラブを上げて応えます、星空選手》
一条(…バカな…)
《呆然としたままファーストキャンバスの上で立ちすくむ一条選手…。一方、満面の笑みは、三塁側ベンチ。ハイタッチで星空選手を迎えます》
穂乃果「凛ちゃん、かっこいい!!」
海未「あれが追い付くなんて、私も驚きを隠せません」
にこ「アタシがセンターを譲ってあげたんだから、このくらいはやって当然でしょ!」
花陽「凛ちゃん、怪我は?」
凛「大丈夫にぁ~!」
《今の場面、リプレイで振り返りましょう。ツーアウト、ランナー1塁。4番、一条選手を迎えての初球でした。》
《絢瀬選手の投げたボールは内角のやや低め。これを一条選手、掬(すく)い上げるようにして思い切り引っ張る。打球は大きく弧を描いて、広く空いた右中間へ…》
《誰もが長打かと思ったその瞬間…ここです!星空選手が突然現れて…横っ飛び!!》
《別角度でもう一度…》
絵里(…って、何台カメラあるのよ…)
《打った瞬間、最短で落下地点へ走っています。そして…このダイビングキャッチ!!文句なしのスーパープレーです!》
穂乃果「凛ちゃんは、進むべき道を間違ったね?」
海未「それだと、μ'sは、今、ここにありません!」
穂乃果「あっ、そうだね」アハハハ
花陽(そうだよね…凛ちゃん…、入学した時は最初は陸上部に入るつもりだったんだよね…。それなのに、私が巻き込んじゃって…)
凛「か~よちん!」
花陽(!)
凛「今、凛のこと、考えてた…にゃ?」
花陽「えっ…べ、別に…」ユビスリスリ…
凛「隠してもわかるにゃ~!大丈夫、凛は何部に入ってても、こうしてかよちんと一緒いられるのなら、後悔なんか絶対しないから…」
花陽「凛ちゃん」
凛「それに、こんなにいっぱい、素敵な仲間もできたにゃ~。これも、かよちんのおかげだ…よ…」
花陽「凛ちゃん…」
凛「かよちん!」
花陽「凛ちゃん!」
凛「かよち~ん!!」
一同(…)
にこ「…ラブラブなところ悪いんだけど、次、凛から」
凛「にゃ、にゃ~!!…い、行ってきま~す…」
真姫「ちょっと、バット忘れてるわよ!」
凛「にゃ~…」
真姫(…ハァ…なんか、虚しい…)
希「嫉妬やね」ボソッ
真姫「ちょっと、人の心、読まな…って、なんでもない」
希(クスッ)
~つづく~