ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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ホラーっぽいのが書きたかったけど、そろそろ夏が終わりそうです。
やっぱり、計画はしっかり立てておかないと駄目ですねー……

水着イベントもまだ終わってないので、オススメの周回クエスト等のアドバイスがあれば小説の感想と一緒に書いてくれると嬉しいです。


ヤンデレ・サバイバル

 

「夏、この季節に定番のイベントと言えばキャンプや祭り、楽しげな風景が浮かぶ事だろう」

 

 アヴェンジャーの前振りに耳を傾ける。

 正直、どっちもヤンデレと一緒は勘弁願いたいものだ。

 

「だが、夏に定番のトラブルと言えば、何がある?」

「トラブル?」

 

 そんな夏の定番と言われても、すぐには答えが浮かばない。

 

「船の事故、飛行機の事故、なんでもいい。

 幸か不幸か、災厄に見舞われ生き残った人物が目覚めるとそこに広がっているのは謎の孤島だった……

 なんてあらすじは、フィクションの中では幾度と無く使いまわされた、まさに定番だ」

 

 孤島、そのワードだけで俺のSAN値はジリジリと減っていく。

 

「まさか……」

「サバイバル……そうだ、サバイバルだ! 貴様を襲うのに、まさに相応しいシチュエーションだろう?」

 

 死ぬ、余裕で死ぬ。大体、サバイバルにヤンデレは関係ない。

 

「安心しろ。猛獣も未知の怪物も存在しない。貴様を襲う脅威は飢えでも乾きでもない。

 島では貴様を今か今かと待ち構えるサーヴァント共がいるだろう。今回は各自の部屋は無いが、それぞれが拠点を見定め、構築している事だろう」

 

「……具体的には何をすればいい? 逃げてりゃいいのか?」

 

 それでは何時もと対して変わらない。

 

「どうにかして島から脱出してみせろ。1週間逃げ切ればヘリが、イカダを作りある程度島から離れてもいい。説得できるのであればサーヴァントの力での脱出も認めよう。但し、説得の交渉材料に求愛や性行を使用すればその時点で敗北だ。サーヴァントの狂気がお前を染め上げ、共に島で余生を過ごす事になるだろうな」

 

 結構厳しい条件だ。そもそも素人にイカダ作りなんて、無茶振りも良い所だ。

 

「安心しろ。イカダは材料さえ揃えれば魔術によって作られる。

 説明が長くなったが、後は現地で確かめる事だ」

 

 

 

 波の音、眩し過ぎる日光、問答無用の砂浜だ。

 

「……マジか……」

 

 分かっていたが絶望すら感じる晴れ晴れとした舞台に、俺は早くも頭を抱えていた。

 

「兎に角、移動だ……」

 

 このまま日射病でダウンしてしまうのは避けたい。俺は日光を避けて森の中へ歩いた。

 

 その途中にあった木々には様々な果物がなっており、アヴェンジャーの言った通り飢えで苦しむ事は無さそうだ。

 

「さて……イカダを作るか」

 

 今来ているカルデア礼装に、魔術が追加されていた。

 【簡易脱出船:D】、必要な材料が分かりと自動でそれらを組み立てる事の出来る魔術の様だ。

 

「とはいえ、木を切り倒す方法が無い……ん?」

 

 早速どうするか考えていると、何か聞こえてきた。鎖の音だ。

 

「まさか……」

 

 頭に浮かんだ最悪の可能性に、慌てて俺は木の影に隠れた。

 

「…………何者かが侵入した様だな。

 他のサーヴァント……にしてはやけに慎重な動きだ。マスターが到着した時間と殆ど一緒に来た……ならばマスターの可能性が高いと見るべきか」

 

 その声色と口調で理解出来た。

 エルドラドのバーサーカーだ。

 

「……好機だな。他の奴らより先にマスターを見つけ、捕らえる」

 

 それだけで思わず頭を木に打ち付けたくなった。が、声が近くなってきたので体を強張らせた。

 

「とはいえ……魔力が溢れ流れているこの島では、マスターやサーヴァントの魔力どころか気配すら感じられない……仕方ない、虱潰しで探すとしよう」

 

 エルドラドはそう呟きながら俺の隠れている木の後ろから去って行った。

 

「……行ったか……危なかった」

 

 嫌な汗を手で拭きつつ、俺はエルドラドの去って行った方向と真逆の方へ行く事にした。

 

 

 

「これが拠点か……」

 

 暫くして、エルドラドの拠点らしき物を見つけた。

 道中に罠の類いは無かったが、俺は慎重に探索を開始した。

 

 森の中に開けた場所には井戸や畑、見張り台があり、奥には2階は有りそうな木造の家があった。

 

「木で出来た、簡単な造りの家だな……ん?」

 

 その隣には家の半分程度の大きさの小屋があった。入り口には何か文字が書かれていた。

 

「えーっと……マスターの小屋?」

 

 ペット扱いである。

 アマゾネスの厳しさに戦慄しつつ、僅かに空いているドアに近付きつつ、中を確認する。

 

「げぇっ! やっぱりペットだコレ!!」

 

 中央には丸太が刺さっており、そこにはロープが巻かれている。どう好意的に見ても捕まれば俺がアレに自由を奪われるのは想像に難しくない。

 

「……ん?」

 

 思わずドアを閉めた俺だが、そこで礼装に力が張り巡らされる感覚に足を止めた。

 

「簡易脱出船のスキルか……?」

 

 スキルを発動させた俺の手が触れていたドアが消滅した。

 

「うおっ!? え、なんで!?」

 

 ビビった俺は慌てて拠点を離れ森に入った。

 

 一旦、木の後ろに隠れた俺はもう一度簡易脱出船を発動させた。材料が再び表示された。

 

「……ん? 木材が、5//20になってる……」

 

 それを見て俺はようやく理解した。

 

「なるほど……道具も何もない俺じゃあ木は切れない。となると、この魔術でサーヴァントの切った木材を頂きながらイカダを造るのか、なるほど!

 …………マジですか……?」

 

 難易度が上がった気がする。サーヴァントの拠点なんて、なぜ一番危ない場所から材料を調達しなければならないのか?

 

「だったら、今すぐにでもバーサーカーから奪って材料を――」

 

 揃えてやる。そう思ったがすぐに俺は身を隠した。

 何故なら、鎖が地面を引っ掻く音が聞こえてきたからだ。

 

「マスター……どこに隠れた?

 すぅ……」

 

「――出てこいっ!! マスタァァァァァァッ!!」

 

 小さな体から放たれたその凄まじい叫び声に思わず体が震えた。

 

「何故ドアを奪ったが知らんがっ!! 足跡を追えば追跡は簡単だ!! 出てこい! マスター!」

 

 俺は思わず、腕を思いっ切り振り上げた。

 そして、草木は音を鳴らしエルドラドが睨んだ。

 

「そこかっ!!」

 

 俺は、走り出した。

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁっ!」

 

 逃げ切ったかも分からず、道程を記憶する事もせずにただひたすら走り続けた。お陰で、バーサーカーの拠点に戻るのは実質不可能になってしまった。

 

(あそこに戻るなんて……ゴメンだけどな)

 

 あの叫び声に圧倒されな恐怖に囚われそうになりながらも、俺は近くにあった石を逃げ去った方向とは逆に投げた。

 その音に反応した彼女はそちらへと走り去り、俺はまんまと逃げ切る事に成功したのだった。

 

「だけど、ここまで来れば――」

 

 ガサッと、草木が揺れる音がした。

 俺は慌ててしゃがみ、林の後ろに隠れた。

 

「……マスター? 気のせいだったのでしょうか?」

 

 声はバーサーカーではない。

 この軽い口調は、タマモだ。

 

「んー……匂いがする様な、しない様な……元がキャスターなので魔力が濃いとどうも嗅覚がハッキリしませんねぇ……

 んー……サマーでセレブな私がマスターを迎えに行く事も考えましたが……やはりここは正妻らしく、家で待つのが吉、でしょうか?」

 

 気づいていない様だが、魔力が濃い、とは何の事だろうか? 先からそれに助けられているが、どうにも嫌な予感がする。

 

「まあ、見つけた時に、ケモノの如く昂ぶってしまってもぉー……良いですよね?」

 

 ボソッと呟いたタマモはクルリと振り返って拠点へと帰っていった。

 

「…………タマモの拠点か……」

 

 さてどうする? 此処をスルーして、別の拠点に行くか? 

 だが、もし他の拠点にもサーヴァントが構えているのであれば、それは無駄だ。

 

 俺は立ち上がると、タマモの後を静かに歩いて行った。

 

 徐々に水の流れる音が大きくなり、その先には川が流れているのが分かった。

 木に隠れながら様子を伺うと、川の向こう側に和式の少々凝った造りの家があった。屋根は瓦で出来ている様で横に広く2階までは無さそうだ。

 

「……アレが、タマモの拠点か」

 

 さて、どう攻略すべきか――

 

「――マスター、捕まえました!」

 

 突然、木の上から何かが、タマモが降ってきた。

 

「う、おぁ!? 痛たっ!!」

 

 何も出来ず、地面に組み伏せられた俺はタマモの胸の感触を背中で感じながら、そんな事がどうでも良くなる程度に両手を強く捻られた。

 

「すいません、マスター。ですが、私達の愛の巣に着くまでの間、我慢して下さいまし」

 

 立ち上がらせた俺をタマモは両手を背中で抑えたまま拠点へと移動させた。

 

「……ふふふ、私が空気中の魔力が濃い程度でマスターを見逃す筈がありませんよ? 私はマスターがちゃんと私の元に来ると、信じておりました!」

 

「……の割には手痛い出迎えだな?」

「私もマスターと1ヶ月も会えなくて、寂しかったんですよ? タマモぉ、今日は正妻パワー全開でマスターをおもてなししますね?」

 

 川を飛び越え、着いた先にあったのは田んぼと先程見ていた家だ。

 

「さあ、此処が私達の家です! 子供は何人ほしいですか? 野球が出来る位ですか!? リフォームでしたら私にお任せ下さい! 空間位なら幾らでも広げて見せます!」

 

「いや、何を言ってるんだお前は」

 

「もう、ご主人様ったら釣れないですね?

 仕方ありません。先ずは調きょ――もとい、考えを改めて貰いましょう!」

 

「調教って言い掛けたな」

「ソンナコトナイデスヨー」

 

 タマモは家に入ると俺をある部屋に連れてきた。

 

「えへへ、言う事を聞かないマスターにはこの檻に入って貰いますね?」

 

 そこには木で出来た丈夫そうな檻があり、タマモは俺を入れると外から鍵を掛けた。

 

「唯の檻ではございませんよ? 御札とそれに通された魔力によって接着、強化された木材で出来た結構丈夫な檻です。

 キメラ程度なら十分抑えていられる代物ですのでマスターが自己強化しても壊せませんよ?」

 

 それだけ言うとタマモは俺に背を向けて部屋の外へ出ていった。

 

「先ずは食事にしましょう。精をしっかり付けないと、マスターはきっと私の愛で果て続けてしまいますから♪」

 

「…………」

 

 静かに、襖を閉じた。

 

「………………」

 

「…………」

 

「――良し、【簡易脱出船】」

 

 俺がスキルを発動すると触れていた檻は消え去った。

 

「木材は……15/20か。結合・接着物も5/8、上出来だ」

 

 檻を出た俺は襖を触り、簡易脱出船のスキルでそれも吸収した。

 

「木材は19までか。欲張らず脱出させてもらおう」

 

 調教部屋から出て縁側から脱出した俺はそのまま森へと消えた。

 

 

 

「とは言え……接着物かぁ」

 

 木材はあと少し、だが結合・接着物は少々厄介だ。なんとなく木材だけでイカダ造りは無理だと分かっていたが。

 

 だが、恐らくロープの様な木材を結合できる物なら恐らくこのカテゴリーにも含まれるだろう。

 

「取り敢えず次の拠点だ。そこにさえ着けば恐らく材料も揃うだろう」

 

 と、軽くは無いが楽観的に構えていた俺は新たな拠点を見つけて言葉を失った。

 

 

 

「……嘘だろ……」

 

 俺の脳内は唖然としていた。少なくとも、片手に握られていた食べかけの果実を落とす程度には。

 

 砂で出来た4m位のメジェド神の形をした建造物は許そう。何か可愛いし。

 

 その隣にあるバベッジに変形しそうな機械仕掛けの家も許そう。外にある蒸気機関が気にならなくも無いけど。

 

 だが……

 

「黄金劇場はダメだろ……」

 

 なんか涼しげに噴水の様に水が出ているが、そのままメジェド神に被害が及ばないか心配だ。

 

「……て言うか、あの3人が同時か……」

 

 捕まったら不味そうだが、俺は取り敢えず接近を試みた。

 

「て言うか、3人は何処に?」

 

 隠れられる場所も少ないので適当に接近し、岩の後ろに隠れた。

 

「……! なんか喋ってるな?」

 

 喋り声が聞こえて来たので聞き耳を立てた。

 

「良いなフラン? しっかり反省したか?」

「はんせー、した」

 

「ジー……」

 

「抜け駆けは駄目だ」

「ぬけがけ、だめ」

 

「マスターを捕らえたらここに連れてくる!」

「ますたー、つれてくる」

 

「ジー……」

 

「うむ! 宜しい! 我々は水着同盟、マスターを捕まえた暁には平等に、だ!」

「びょうどう、ばらばら」

 

「ジー……」

 

 ……さて、この背後からずっと俺を見続けるメジェド様をどうしようか、うん。

 

「……見逃して、くれませんかね?」

 

「ダメダ」

 

 言うが早いか、メジェド神のつもりのニトクリスは自分を覆っていたぬのを俺に被せ、布の中でその正体を得意げに晒した。

 

「……驚いたでしょう? メジェド様の似姿、その中にいたのはなんと私、ニトクリスでした!」

「いや、知ってた」

 

 このファラオ、本気でバレてないとおもったんだろうなぁーと思いながらもどうしようか考え、気が付いた。

 

「……で、どうするの? 密着してるせいで立つのは無理なんだけど」

 

 ニトクリスは俺の言葉を聞いて手を動かした。

 

「そんな訳…………アレ?」

 

 しかし、ゴソゴソと動かしても布に包まれ密着し、地面に落ちた俺達はどうやっても立ち上がれない。

 

 下に倒れた俺が布を抑えている上に、ニトクリスの体は布に動きを阻害されているので立ち上がる体勢になれない。

 

「ならば同盟を組んだ2人を呼んで――っもぐ!?」

 

 ニトクリスの口に手を合わせて塞いだ。ネロとフランを呼ばれてしまうと対処が出来なくなる。

 

「何かないか!? この状況を打開する何か……!!」

 

 あった。俺は直ぐ様それを実行した。

 

 

 

「メジェドしんの ぬのを てにいれたぞ!」

 

「ま、マスター! それを返してください!」

 

 よし、これでイカダの帆を手に入れた。あとは結合・接着物だけだ。

 

「うぅ……これではオジマンディアス様どころかメジェド神にすら合わせる顔が……!」

 

「何やら楽しそうではないか、マスター、そしてニトクリスよ!」

 

 そこに赤い稲妻……ではなく、まともな赤と白の縞模様のビキニを着たネロ・クラウディウスと、僅かに黄色の上着で肌と水色のビキニを隠しているフランが立っていた。

 

「――ローマ皇帝! あの布を取り返しては貰えませんか!? 私の大事な物なのです!」

 

「うむ、その暁にはマスターは我々が貰うが良いな!」

「うっ……! それでは割に合わないので両方とも自分で取り返します!」

 

 2人のサーヴァントが同時に俺に迫る。

 

「フラン!」

「うん!」

 

「「っな!?」」

 

 驚く2人を雷の刃が一閃。

 辛くもネロがそれを自身の宝具で受け止め、ニトクリスはそれと同時に後ろに下がった。

 

「……フラン、我々を裏切るつもりか?」

「ますたーに、ばいしゅう、されました」

 

 昨日の悪夢、攫われるも直ぐに悪夢が終わりを迎え、別れ際にフランが駄々をこねて俺を殺しそうになった。

 

『じゃあ、次にあった時に俺を守ってくれるならフランと一緒にいてあげる』

『……ならいいよー、ふらんはいいこなので、それでてをうってあげる。

 ぱぱみたいに、うそはつかないでね?』

 

 ……との事なので、俺はこの後なるべく彼女の機嫌を損ねずにどうにかしなければならないのである。

 

「……ならば! 余は躊躇いなくお主を切るぞ!」

「似姿は返して頂けねばなりません! マスター共々、お覚悟を!」

 

「……ばべっじ、おねがいします」

 

 フランがそういうと、先まで蒸気機関をから携えただけの家が形を変え始めた。

 

 残念ながら俺は合体シークエンスを実況できないが、兎に角凄くかっこいい動きと共に人型となったそれはニトクリスとネロの前に立ちはだかった。

 

「人の恋路を邪魔するのは趣味ではないが、友人の娘の為だ。私も体を張ろう」

 

「いまのうち、ますたーこっち」

 

「むう、まさかこんな形でバベッジ氏と戦うことになるとは……だが、この程度でマスターを諦める訳にはいかぬ!」

「今はアサシンですが、神秘と言う点ではそちらより私の魔術の方が上です! 道を開けて頂きます!」

 

 

 

 フランに連れられて海岸までやってきた。

 

「フラン、接着剤か紐はないか?」

「木のツタなら、あるよー」

 

 丈夫そうな蔦を貰った。それでは足りなかったので数分程採取すると、ようやく材料が揃った。

 

「よし、【簡易脱出船】!」

 

 魔術が起動すると材料が全て消費され、簡易脱出船1/1となった。

 

「ますたー、まだだっしゅつできないよ」

 

 これから脱出……の筈がフランにストップがかけられた。

 

「なんで?」

「ほら、うみをみて」

 

 言われた通りに海をみると巨大なサメのヒレが見えた。

 

「しまじゅうにまりょくがじゅうまんしてるから、えねみーがかっぱつかしてるの」

「っげ! ここに来てその設定かよ!」

 

「きょうまりょくがじゅうまんしたから、あさってまでしまからでるの、きけん」

 

「ーー!」

 

 フランにそう言われ、落ち込み始めた俺の耳に爆音が届いた。

 

「な、なんだ今の!?」

「ばべっじが、ごりんしょう」

 

 見れば先まで拠点のあった辺りから煙が上がっている。フランは両手を合わせて頭を下げた。

 

「……ますたー」

「ん?」

 

 フランに腕を掴まれ、そちらを見た。

 

「えへへ……あさってまで、いっしょにさばいばる、だね?」

 

「あっはい」

 

 俺はフランの無邪気な笑顔に空返事で返した。

 

 

 

 

 

「フラン、くっつき過ぎだ」

「……よるはさむい」

 

 フランにピタリとくっつかれ、寝にくい。

 

「ほんとうはせいしょくこうい、したい」

「こら、そんな事を女の子が言うんじゃない」

 

 フランはそんな俺の小言はどうでもいいとばかりに、更にくっついてこちらを見た。

 

「……いまから、する?」

 

「しない!」

 

 俺が断ると、フランは頬を膨らませた。

 

「ぷくー……えい」

「っ!? おい!」

 

 思わず怒鳴った。突然人の股を撫でるのはセクハラだ。

 

「びくってなった」

「やめないさ! わりとマジで!」

 

 結局、その夜はフランにボディタッチをされ続けて、ろくに眠る事ができなかった。

 

 

 

 

 

 翌日、果物を取りに森を歩いていたが、暑さにやられ怠そうにしていたフランはバーサーカーの一撃で吹き飛ばされ、俺は逃げる事も出来ずに捕まった。

 

 捕まった俺は例の小屋に入れられ、ロープを首に巻かれた。

 

「マスター……お前はただの奴隷だ」

 

「っぐ、はぁはぁはぁ……!」

 

 首を縛っていたロープを緩められ、ようやく呼吸をする事が出来た。

 

 俺を捕らえたらエルドラドのバーサーカーは、俺を痛めつけて試している様だ。

 

「抵抗しろ。もっともっと……! お前が屈服した時、私はお前をペットとして扱う。

 人間ではなく、弱きケモノとしてだ。愛も慈悲も無い、偶に愛でて偶にいたぶるだけの存在だ。

 それがいやなら抵抗しろ!」

 

「っく!」

 

 エルドラドがまたロープを掴もうと、したので慌ててその腕を掴んだ。

 

「……ふふ、それでいい」

 

 腕を掴まれたバーサーカーは嬉しそうに笑うと掴まれていない片手を俺の背中に回し、体をくっつけた。

 

「その顔、必死になって私を見てくれるお前が――」

 

 俺は慌てて首元のロープを、もう片方の手で掴んだ。

 

「――大好きだぞ?」

 

「っぐぅ……! あ、あぶねぇ……!」

 

 予想通り、バーサーカーは背中に回した手で首のロープを掴んで引っ張った。

 

「……良し、良い抵抗だ。これから毎日お前を虐めてやる。

 だがこれも全て愛ゆえだ。耐えたら褒美も僅かばかりの自由も与えてやる。

 だから、しっかり抗え、マスター」

 

 彼女との抵抗の日々は、完全復活したバベッジとフランが助けに来るまで続いた。

 

 この時の経験は無事に脱出し朝日を迎えた俺の記憶に色濃く残る事だろう。

 

 

 




ネロの出番? うーむ……そもそもネロって他のサーヴァントと比べても水着でも普段との違いがあまり無いんですよね。
でも、次は頑張って出番増やしますから、お許しを……

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