ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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お久しぶりですいません。スラッシュです。

活動報告の方で既に書きましたが、1ヶ月近く更新が止まっていて、本当に申し訳ありません。

恐らくこれからは元のペースに戻れると思います。
ですので、気が向いたら感想や誤字脱字報告の方、よろしくお願いします。


ヤンデレ・帰宅

 

 俺は1ヶ月程、家族と旅行に出かけていた。

 幸いにも、その間は一度もヤンデレの悪夢を見ることは無かった。

 

「……来たか」

「旅行の間、全く見てなかったのに帰ってそうそうかぁ……」

 

 俺はあくびを噛み殺しながらもアヴェンジャーの顔を見た。

 旅行疲れで早めに寝たが、それが返って裏目に出たか。

 

「待っていたのは俺だけでは無い、と言っておこう。

 さあ、久しぶりに始めようか……!」

「お手柔らかにな……」

 

「それはお前のサーヴァントに頼むのだな!」

 

 

 

 ヤンデレ・シャトーの中に入った俺の前には3m程の大きさのドアが立っていた。

 

 周りには他には何も無く、俺の周囲から5m以上離れた空間は真っ暗な闇に覆われていた。

 

「この扉を開けるしか無い訳だな………………何それ怖い」

 

 いきなりの強制イベントに腹を括りながらも、扉を開けた。

 

 

「――旦那様ぁ!!」

 

 1歩足を中に踏み入れた瞬間、黒い着物が視界に入った事に気付くと同時に、清姫は俺に抱きついていた。

 

「うぉあ!?」

「私っ、私っ! 寂しゅう御座いました!」

 

 驚きよろめきそうになったが、なんとか足に力を込めて安定させた。

 

 泣きながら俺の体に顔を埋め込む彼女に、思わず罪悪感を感じずにはいられなかった。

 

「……悪かったな」

 

 なので目の前にちょうどいい高さであった頭をポンポンと叩いて撫でた。

 

「帰ってきて下さって、清姫、本当に嬉しいです……!」

 

 まだ少し涙を浮かべながらも清姫は顔を上げ、微笑んだ。

 

 清姫はそっと俺の手を取ると奥へと引っ張った。

 なので踏ん張った。

 

「っ……旦那様?」

「えーっと……どこに行く気か、聞いていい?」

 

 若干トーンの下がった清姫の声に、俺は焦りを隠しながら聞いた。

 

「何処へ、と言われましても……勿論、夫婦の部屋へ、ですよ?」

 

 言いながら体を摺り寄せ顔を赤く染めた清姫はとても嬉しそうに笑った。

 何を想像しているかなんて簡単に理解出来た。

 

「……きょ、今日は出来れば寝させてくれにない?」

「あ……そうですか……」

 

 分かってくれた様だ。清姫は頬に手を当てた。

 

「……でも、マスターの上でなんて、少々はしたないですね……」

「待て待て待て! 違う! そう言う意味じゃない!」

 

 この娘は何も分かっていないようだ。ヤル気満々の様だが俺はそうは行かない。

 

「……もしやマスター、今宵は営みに乗り気では無いのですか?」

「! そうそう! 本当に眠たくて……」

 

 なんだ、分かってくれたか。ならば話が早い。

 

「ご安心下さい。滾るお香が御座いますし、貴方様の愛しの清姫もその肢体を晒しましょう。例え海に沈む様な疲れであっても燃え上がる事間違いなしです」

「いや、だから俺は今日は無理だって!」

 

 俺が声を荒らげると清姫の顔に影が指した。

 

「……そう、ですか……」

「ああ、気分じゃないから」

 

 これはアレだ。豹変するパターンだ。

 

 だけど、火に油を注ぐ結果が待っていると分かっているので手を放したり、距離を取る事は出来ない。

 

「マスターがそうおっしゃるなら私…………我慢できませんので少々、乱暴をしてしまいます」

 

 言うが早いか、清姫は俺の両手を掴むと奥の部屋へと駆け込んだ。

 

「――う、あぁぁぁ!?」

 

 声を出して驚いている間に廊下を過ぎて、部屋の中へと放り投げられ布団へと落下した。

 

「ふふふ、今宵の清姫は旦那様の肌に飢えております故……遠慮は致しません」

 

 舌で唇をなぞりながらも襖を閉めた清姫は瞳の中にハートを浮かべながらこちらを見る。

 

「さぁ、先ずはマスターにも勃って頂かないと……ですね?」

 

 倒れた俺の上に寄り添う様に清姫は膝を折り、のし掛かった。

 

「待った待った! 清姫!? 俺は――」

「――ああ、マスター……清姫は待ちくたびれてしまいました……またふらっと何処かに行ってしまう前に、この体に愛をお注ぎ下さいぃ……」

 

 どうやら俺と会えなかった時間が長かった様で、いつも以上に強引だ。

 既に俺の服を上にずらして胸板をなぞっている。

 

 舌をタランと口から出しており、恐らくこのままだと俺に愛撫を始めてしまうだろう。

 

「ならっ!」

「っきゃ!?」

 

 咄嗟に、何を血迷ったか俺は清姫の体に左腕を回し、右手で清姫の手首を掴むと見下ろす様に体を動かし上を取った。

 

「俺が……触ってやる」

 

 夏の暑さでやられたか、嘘のつけない清姫相手にとんでもない事を言った俺は、右手をそっと、清姫の胸へと当てた。

 

「あ……ぅん」

 

 僅かに手の平を動かすと短く、小さい喘ぎ声が漏れた。

 それだけで俺も彼女も体に熱を宿した。

 

「はぁ……ぁぁ」

 

 頬が赤く染まって、誰の目から見ても恥ずかしそうな清姫は、続きを強請るように微笑んだ。

 

 逆に俺は今まで自制し続けた努力を思い返し、夏休みの中で緩んでいた気持ちにブレーキを掛けながら、次にすべきは何かを考えていた。

 

「……もうぅ、焦らさないで下さいましぃ……」

 

 清姫は胸に当てられたままの俺の手の甲に自分の手を重ねる。

 だが、それでも俺は止まったままだ。

 

「……本当に、したく、ないのですか?」

「あ……う、ん……」

 

 その言葉に清姫はそっと目を閉じると、仕方ない、と言いたげな顔でもう一度微笑んだ。

 

「では……せめて私の横でどうか、お休み下さい」

 

 流石にこう言われると抵抗するのは失礼だと思い、言われた通りそっと布団に体を預けた。

 

「……ふぅ……」

 

 夢の中だというのに疲れてしまう事を理不尽だと思いつつも、隣から聞こえてくる音に思わず視線を向けた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!!」

 

 今にも襲ってきそうな程に発情しきった清姫の捕食者の様な眼光に、体が思わず強張った。

 どうやら、まだまだこの悪夢は――

 

 

 

 

 

「……あ、れ?」

 

 清姫の顔は無い。布団も無い。

 拘束された訳ではないが、先までいた場所とはまるで違う部屋にいた。

 

「マイルームか……?」

「先輩!」

 

 マシュの声が開かれた扉から聞こえてきた。

 

「お帰りなさい、先輩!」

 

 マシュにそう言われ、戸惑いながらも何か返そうとした。

 

「マスター……お帰りなさい」

「お帰り、マスター」

 

 次々と女性サーヴァントが現れ、俺に出迎えの言葉を掛けてくる。

 

「ふふ、旦那様、先程ぶりですね」

 

 そこには清姫もいた。

 10人位にベッドに囲まれた辺りから若干、恐怖し緊張し始めた。

 

「……え、えっと……?」

 

 そして、恐らく俺がゲームで召喚したであろう全ての女性サーヴァントがそこに集まっていた。

 ざっと数えても20人位いるだろう。

 

『おかえり、マスター!!』

 

「た、ただいま。

 所で……何で全員、手を背中で組んでるんだ……?」

 

 この質問は正直意味の無い質問だ。

 

 この部屋に11番目辺りで入ってきたネロの背中で金色に輝く何かが聞き慣れた金属音を鳴らしていたからだ。

 

「先輩が帰ってくるのが余りにも遅かったので」

 

「もう どこ にも いかない よう に」

 

『――閉じ込めよう』

 

 全員の手に握られていたのは人間の腕力で千切るは不可能な太さの縄、手錠、鎖。

 

「因みに、閉じ込めた後はマスターの自由よ? お好きな娘を指名してね?」

 

「束縛とかもういいっての!! 令呪を持って命ずる、此処にいる全員止まれ!」

 

 3つの令呪すべてを使用してサーヴァント達の動きを10分間止めた俺は慌てて部屋の外へと飛び出した。

 

 

 

「――逃さん!」

 

 しかし、部屋に出た瞬間横から飛び込んできた何かに呆気なく取り押さえられた。

 

 白髪の美少女、エルドラドのバーサーカーだ。

 その小さい体からとても想像出来ない力で俺の両手を掴み、床に抑えつけている。

 

「っぐ……! 部屋にいる全員に対してしか令呪の効果が及ばない……命令の出し方を間違えた……!!」

 

 込められている力とは真逆な、冷めた声がバーサーカーから放たれる。

 

「――抵抗しないのか?

 マスター、抵抗しないのか?」

 

「いや、どうやって――っ!」

 

 不味い、強い者を好む女王の前で弱音を吐くのは非常に不味い。

 慌てて腕に力を込めるが、当然ながらビクともしない。

 

「そうだ、抵抗しろ。

 強い男は好きだぞ?」

 

 ヤンデレているとは思うが、そこらへんの変わっていない様だ。

 

「もっと、もっとだ! 私に屈服せずに、もっと暴れろ!」

 

 管理系のヤンデレ……と言うか、これは恐らく恋愛対象の成長が好きなタイプのヤンデレだ。

 師匠系、とでも名付けるべきか。

 

 なんてくだらないことを考えてはいるが、割りと本気で抵抗している体は疲れている。

 

「……なんだ、もう力が出ないのか?」

 

 ガッカリした声色でそう言ったバーサーカーは、俺の耳元に顔を近づけて囁く。

 

「――抵抗しないのならば、お前の尻しか愛してやらんぞ?」

 

「っ――!!」

 

 冗談じゃない! 

 

 エルドラドのバーサーカーの爆弾発言に体を必死で揺らし、なんとか彼女を振り落とそうとするが足で踏ん張っている彼女は1mmも動きはしない。

 

「そうか、そんなに振って……尻がいいのか? こっちは恐らく処女だろ?」

「ぜ、絶対嫌だぁぁ!!」

 

 男に処女とか、そんな物は無い。絶対ない!

 

 前言撤回、師匠系とか無い。唯のドSだ。

 限界を超えた力で抵抗しているが、バーサーカーを退かせられる気がまるでしない。

 

「……ますたーを……いじめるの、だめ!」

 

 そこに救世主がやって来た。

 同じバーサーカー……否、水着を着て剣らしき宝具を握っている彼女はセイバークラスのフランケンシュタインだ。

 

 彼女の攻撃にバーサーカーは慌てて俺の背中から飛び、離れた。

 

「良くやった、フラン! お主と水着同盟を組んで正解だったな!」

 

 その後ろからは赤と白の際どい水着を来た皇帝ネロが現れた。

 

「良クヤッタ メジェド様 モ オ褒メシテイマス」

 

 更には何故かメジェド神の様な顔の書かれた白い布を被ったニトクリスもいた。

 

「っち……貴様ら、よくも私とマスターの時間を……!」

 

 バーサーカーの目の色が変わり、その表情は怒りに染まる。

 

「いや! マスターを持って行くのは我々、水着同盟(2017版)だ!」

 

「オ相手 スル」

 

 なお、その間にも保護された俺はフランに担がれて、どんどんその場を離れていく

 

 そこで俺はコッソリ訪ねた。

 

「……もしかして、抜け駆けしてる?」

 

「ますたーひとりじめ、する」

 

 フランの肩の上で揺れる俺。

 

 過ぎ去る廊下の向こう側には眩しい光が照らす砂浜が見えた。

 本来のカルデアは雪山に造られた筈なのに、だ。

 

「旅行から帰ってきたってのに……」

 

 どうやらヤンデレ・シャトーの夏はまだ、終わらないらしい。

 

 

 




戻ってきた早々、普段よりも短い内容となってしまいましたが、本番は次話から! って事で、どうかよろしくお願いします!

今年の水着ガチャはフラン、ネロ、ニトクリスと無事に3体召喚できて大変満足です。
少し前に召喚できたエルドラドのバーサーカーも公式の方でイベントに登場したので解禁していきます。真名は伏せますけど。


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