ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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お待たせしました。

最近10年ぶりにSNSで友達と話しました。お互いあんまり変わってないって言い合って、近状を報告し合いました。覚えててくれてありがとう。


ヤンデレ・シャトー……??

 

「……」

「先輩? 大丈夫ですか?」

 

 何時になく疲れていた俺は取り敢えずエナミの質問に頷いて返した。

 

「あぁ……大丈夫」

「じゃないですよね……もしかしなくてもあの悪夢が原因だったりしますか?」

 

 流石に見抜かれるか……

 

「だって先輩、机に顔うつ伏せてますもんね」

 

 そうだ。現在進行形で疲れており、今にも放課後によったファミレスで眠りそうなのだ。

 

「……そんなに大変な目に合ってるんですか……」

「いやぁ……大丈夫大丈夫」

 

 朝起きたらまるでナニかにエネルギーを使い果たしたかの様に力が入らないだけだ。

 

「重症ですね、これ……」

 

 

 

「せんぱーい、お待たせしました!

 BBチャンネルスペシャル企画、先輩強姦塔(以下略)の始まりですよ!」

 

「微塵も待ってなかったし……て言うか現実世界に影響出るとかやばいんですけど、この悪夢」

 

「何を言ってるんですかー?」

 

 奇襲を仕掛けて来たBBは俺のクレームにニッコリと笑って返してきた。

 

「こんな美女に囲まれ、浮気して、何股もして、ペナルティの無い方がおかしいじゃないですか?」

 

「して、じゃなくて、させられてんだよ!」

 

「先輩、最低ですっ♡

 そんな悪い子先輩には今回もたっぷりお仕置きを――あれ?」

 

 BBは素っ頓狂な声を上げると同時に、BBスタジオの電源が落ち、そして点いた。

 

「先輩、また後輩を増やしたんですか?」

 

 俺にそんな質問を投げかけながら現れたのは現実の後輩であるエナミだった。

 

「あー……リアルで彼女ヅラしてるエナミさんでしたか……そういえば、先輩の悪夢に入ってこれるストーカー的な能力を持っているんでしたね?」

 

「黙って下さい。先輩は私の物です。悪夢だろうと、貴女には渡さない」

 

「ふふふ……良いですね、面白い展開です♪

 BBちゃん、悲恋とか略奪愛とか大・好・物ですよー!

 そんな訳で、2人ともぉー飛んでっちゃえ!

 ふぅぅー!」

 

 

 

「っきゃぁ!」

「うご!」

 

 のっけからダメージを受けた俺。吹き飛ばされた先でエナミの下敷きになった。

 

「せ、先輩!? 大丈夫ですか?」

「おう……大丈夫だ……」

 

 打ち付けられた箇所は痛むがなんとか起き上がり、監獄塔を見渡す。

 

「何時もとは、雰囲気違いますね……」

「そうだな……」

 

 なお、この間の記憶は曖昧だ。BBが登場した事と牛若丸やジャックが居た気はするが、あまり詳しく思い出せない。

 

「今日は先輩をどうこう、って訳には行きませんね」

「シャレにならないからやめてくれよ……」

 

 エナミの巫山戯た言葉に相槌を返すが、辺りへの警戒を怠るつもりは無い。

 暗い廊下の先を見るつもりで感覚を研ぎ澄ます。

 

「っ――!」

 

 だが視覚よりも先に、嫌な音を聴覚は拾った。金属音、それも交互に揺れるかの様な2つの音だ。

 

「……先輩?」

 

 エナミの声が響くと同時に、こちらに向かっていた金属音の動きが止まった。

 

「――! やばい!!」

「先輩っ!?」

 

 俺はエナミの腕を掴むと、近くの部屋に急いだ。

 

「ちょ、先輩!? この部屋は――」

「――良いから入れ!」

 

 エナミを急かして部屋に入ると同時に、聞こえてくる金属同士のぶつかり合った音。

 

「間一髪か……」

「先輩、今の音は……?」

 

「パッションリップだ。

 今の攻撃は危なかったな……」

 

 俺の予想では今の金属音は間違いなくBBの生み出したアルターエゴの1体、パッションリップだ。

 

 巨大な金属の手とバストを持ったBB同様の紫色の髪を持った彼女の攻撃力はまさに化物クラス。

 

 両掌にその全体像を収め、閉じ込められるならキューブ状で圧縮する恐ろしい攻撃能力を持つ。

 

「そんな恐ろしい能力を持ってる奴がいるんですね……」

「このまま一箇所に閉じ籠ってるのも不味い、直ぐに出るぞ」

 

「先輩、待って下さい!」

 

 呼ばれたので後ろに振り返る。部屋の主が現れた様だ。

 

「マシュか……」

「今、私と先輩は愛の逃避行中なの、邪魔しないで!」

 

「私も行きます!」

 

「じゃあそれで良いよ!」

 

 1秒も待ってられない俺は扉を開けてマシュの部屋を出た。

 

「見つけましたよ」

 

 だが遅かったようで、部屋から出て直ぐにパッションリップの声がすぐ側で響いた。

 

「っく……

 ちょ、ちょっと待て! 一方的な愛は駄目だって反省したんじゃないのか!?」

 

 俺は慌てて距離を取った。

 

「…………? 一方的? 何を言ってるんですか……私とマスターさんは両思いじゃないですかぁ……」

 

「糞、そっち方面かよぉぉぉ!?」

 

 月の聖杯戦争では主人公に一方的に迫っていた事を反省し成長した筈のパッションリップが開幕早々宝具を放ったのにはおかしいと思ったが、まさか両思いだと勘違いした状態で病んでる……否、この場合は病んでるから両思いだと思い込んでいるのだろうか。

 

「なのに……他の女と手を繋いで歩いているなんて……うぅ……潰すしかないじゃないですかぁぁ……」

 

 泣き始め、よく切れそうな鋭利な手で器用にもその涙を拭う。

 

「泣くな、そしてすぐに潰そうとするんじゃない……浮気じゃないし、リップの事は好きだから、な?」

 

「ほ、本当ぅですかぁ……?」

 

 その言葉にホッとしたか、肩の力が抜けたパッションリップは俺に近付く。

 

「えへへ……じゃあ、そこの後輩さん方は邪魔ですから、どうぞ居なくなって下さい」

 

 瞬間、空気が凍った。

 

「お母様は邪魔者はペシャンコにしてって言ったけど、しないで済むならそれに越した事は無いですね」

 

「黙って聞いていれば、随分調子に乗ってくれますね……

 先輩の身の安全のために最初の先輩の発言は聞き流しましたけど、これ以上は我慢の限界です。

 先輩の彼女として、貴女を消します」

 

「爪の攻撃の弱点はもう知っています! 

 貴方の全体像を潰す攻撃は、私には通用しません!」

 

 マシュは盾を構えると全力で突撃してきた。

 

「……やっぱり邪魔をするんですね……面倒だけど、プチッと、潰します……!!」

 

 強大な盾と腕がぶつかり合う。

 

「――夢幻召喚(インストール)、ブリュンヒルデ」

 

 変身シーンはカットと言わんばかりに、一瞬だけエナミの体が光るとその身にブリュンヒルデの力を宿した。

 

「っはぁ!」

「えい!」

 

 巨大な腕と槍が互いを切り裂こうと均衡する。

 盾も槍も腕も、全ての武器が巨大で強大な為、巻き込まれない様に俺は逃げ出した。

 

 

 

「逃げたのは良いが……あの2人で果たしてパッションリップに勝てるのか……?」

 

 マシュのパッションリップ対策は確かに有効な手だ。

 近くで素早く動くモノを捉える事が出来ない様に、近くにある巨大なモノの全体像をリップが両手で包む事は出来ない。

 

「だけど、リップはエナミの使ってたブリュンヒルデを含む3柱の女神をベースに作られたハイ・サーヴァント。

 エナミは逆にブリュンヒルデのみをコピーした、劣化と言っても過言ではない存在。マシュだって決して攻撃力が高い訳じゃないし……」

 

 戦いは長引きそうだ。その間になるべく遠くに逃げたい。

 

「……今の内にリップの部屋に逃げ込めば……いや、危険すぎるか」

 

 こういう時は大抵他のサーヴァントに狙われる。キノコ王国のお姫様じゃないんだ、俺はちゃんと学習している。

 

「――学習しても実行でなきゃ意味無いけどね!」

「騒がないで下さい、マスター」

 

 横に倒された俺は白い布を被っただけの、手抜きの幽霊みたいな存在に攫われていた。

 

 最近引いてしまったキャスターのサーヴァント、天空の神で冥界の神でファラオなニトクリスの仕業だ。

 褐色な胸と局部を薄い布で覆っただけの露出の多い服装に、マントにすら見える広く長い髪の女性は、杖で床を叩いた。

 

「マミー達、ご苦労です」

 

 あっという間に部屋にまで拉致られた。

 

「何やら外ではサーヴァントが争っている様ですが、マスターに怪我は無いようで安心致しました」

「うん、無事ですけど……」

 

「……何時もよりも元気がないですね? 大丈夫ですか?」

「ああ……そりゃあ、外で戦ってるサーヴァントがいるのに心配しないわけには――」

 

「――不敬ですっ!

 私の前で他の女の話をしないでください!」

 

 ニトクリスは怒り、眉をひそめると頬を染めながら座っていた俺を床に押し倒した。

 

「……て、手荒な真似をしてしまいましたね……ですが、私の前で他の女性の心配など厳禁です。

 私を、もっと敬って下さい……」

 

 そっと近付いたニトクリスは俺の腹の上に馬乗りになった。

 

「当然、私が上です……ファラオですから。

 さあ、夜枷を執り行いましょう」

 

 来ている礼装を外そうとニトクリスの手がボタンに伸びる。

 ニトクリスは慎重に、1つずつ外していく。

 

「――っはぁあ!」

 

 最後の1つが外れたと同時に、エナミの気合の声と共に何かが破壊された音が響いた。どう考えても被害者は扉だ。

 

「あ! 先輩が褐色肌のヤリマンみたいな人に襲われてる!」

 

「や、ヤリマっ!?」

 

「丁度良いですね。《貴女にも戦ってもらいます》」

 

 腕を輝かせて令呪を発動させたエナミはニトクリスに命令を下す。

 

「っく……! 何ですかこの令呪は……!!」

 

 強化令呪による命令に逆らえないニトクリスは杖でマミー達を召喚する。

 

「先輩! これを!」

 

 投げ渡されたのはアーチャーのクラスカード。

 

「これは……」

「今は戦力が居るんです! さっさとして下さい!」

 

 エナミが熱くなっている。恐らく、パッションリップの被虐体質のスキル効果で彼女に対して好戦的になっている様だ。

 

「っく……なっ!?」

 

 部屋を出た俺達の目の前で、パッションリップは両手でマシュの盾を持ち上げた。

 当然、盾を握っているマシュも一緒に、だ。

 

「潰せない人、嫌いです……要らないから、捨てちゃいます」

 

 マシュの足を自分の胸辺りで降ろす。その先からマシュの体はパッションリップの胸へと吸い込まれていく。

 

「なぁ!?」

「さあ、大人しく入って下さいね?」

 

「っち! 夢幻召喚(インストール)!

 っはぁ!」

「きゃぁ!?」

 

 エミヤの力を宿した俺は適当な剣を矢として投影し放ち、パッションリップの手に命中させた。

 放されたマシュは地面に落ちながら、なんとか胸から足を脱出させた。

 

「あ、ありがとうございます、先輩!」

 

「……私を攻撃しましたね?」

 

 パッションリップの呟きに、俺の腕、桜マークが反応し始めた。

 桃色だった花弁は徐々に濃くなっている。

 

「――っやぁ!」

 

 パッションリップは俺に向かって突撃する。

 此処は――

 

「干将・莫耶!」

 

 剣を投影して、その攻撃を防いだ。

 

「あっはぁ♡」

 

 パッションリップは嬉しそうに笑いながら更に爪を振るう。

 

「やらせません!」

 

 ニトクリスはマミーに指示を出して自身も杖から魔術を放って攻撃しだした。

 

「邪魔、です!」

「それならこれも貰いなさい!」

 

 パッションリップの背中から迫るブリュンヒルデの槍。

 

「うっぐ!」

 

 だが、パッションリップは俺に向かって横に薙ぎ払う様に振った爪を止める事なく、己の体を回転させた。

 

「っきゃぁ!」

「ぁうっ!」

 

 剣で防いだ俺は数歩下がる程度で済んだが、数匹のマミーと槍で攻撃しようとしたエナミは吹き飛ばされ、マミーはニトクリスに命中した。

 

「先輩! こんっのぉ!」

「退いて!」

 

 立ち上がったマシュは盾で突撃するが体力の限界だった為か、パッションリップの渾身の一撃に盾ごと吹き飛ばされた。

 

「っふぅ……お掃除は終わりです。マスターさんだけ、残りましたね」

 

「っち!」

 

 被虐体質と爪が合わさったカウンター戦法……素人目だが俺はそう分析した。

 

 相手の防御を度外視した攻撃にそれを上回る攻撃でクリーンヒットを決める……力押しと言っても良いかもしれない。

 

「その力が脅威過ぎるんですけど……!」

 

 防いだとは聞こえが良いが、実際は砕けた干将・莫耶を投影し直しているので敗北は必至だ。

 

「ふふふ」

 

 だが、あちらは戦いが終わったとばかりに笑顔でこちらに近付いて、爪で俺を掴もうと腕を伸ばす。

 

「っ! この!」

 

 切っ先で爪を止めるが数秒後には触れた先から砕けていく。

 

「……痛いです、マスター」

 

 剣の当たった箇所を眺めると、俺に悲しそうに言った。

 

「っ!」

 

 もう片方の爪が迫る。投影し直してた干将・莫耶を、今度は両方の切っ先で爪を止める。

 

「……酷いですよ、マスター」

「……」

 

 涙目になる彼女に戦意が薄れていく。

 

「! うぅぅう……」

 

 それでも自衛の為にもう一度剣を振るったが、俺は罪悪感に耐えられずインストールは無くなり涙が出てきた。

 

 

「大丈夫ですよ、マスターは私の爪を怖がっていただけですよね?」

 

 そっと俺の肩にリップの爪……では無く指が置かれた。

 

「えへへ、お母様がこの中だったら普通の腕に変えられるって!」

 

 嬉しそうに、強く抱き締められた。

 

「マスターは優しい人ですよね? だから、斬ろうとした私に謝りたいんですよね?」

 

 俺は涙を流しながら頷いた。

 

「じゃあ、私のお部屋に来て下さい」

 

 手を引かれ、黙って連れて行かれた。

 

「ちょっとだけ痛いの、我慢できますよね?」

 

 ジャラジャラと鎖が地面を這いずった。

 

「お母様は、私に数回攻撃するとBBパニックで私の価値が自分より上に移動するから、その罪悪感で良い子になるって言ってましたけど、マスターは最初から良い子ですもんねー?」

 

「っ……!」

 

 鎖で足を縛られた。俺は両手を差し出した。

 

「え? 手は縛りませんよ? だって、折角握手できるようになったんですもん」

 

 パッションリップはそっと俺の手と自分の手を重ねた。

 

「えぇ……これからはずっと握っていましょう」

 

 俺はコクリと頷いた。

 

「マスターは掃除も洗濯も料理も、ぜーんぶ私の為にしてくれますよね?

 私の好きな時に甘えさせてくれますもんね?

 私がマスターを嫌いになりそうな時は先に謝って仲直りしてくれますね?

 私がマスターを好きだって言ったら、愛してるって返してくれますよね?」

 

 俺は彼女の要望に只々頷いた。

 

「……好きです」

「愛してる」

 

「きゃぁーっ! マスター、私も愛してます!

 逃げたりしないで、これからも私の事しっかり愛して下さいね?」

 

『……死で二人を(ブリュンヒルデ)!』

 

 扉の向こうから声が聞こえる。魔力の高まりも感じられた。

 

『――別つだけ《ロマンシア》!!』

 

 開放された真名を聞いた時には、俺の意識は消えていた。

 

 

 

 

 

「遂に次回は私の出番ですね……先輩を酷い目に合わせて豚の様に扱って…………え? まだ私をゲットしてない? ゲットしてなかったら出番なし?」

 

「ちょ、ちょっと作者さん!? 何をしてるんですか! リンゴは幾らでも余ってるんでしょう!? さっさとラスボス倒して私を手に入れて下さい! ここまでやって未登場だなんて、私、絶対に認めませんからね!?」




KPを振り直すべきか、ミッションを来なしてもっと有利にすべきか……全ミッションコンプリートを狙うなら後者ですよね。

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