ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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遅くなって申し訳ありません。

プリヤコラボが始まりましたね! 
海外だとサーバー落ちがひどすぎてロクにプレイできないけど……
感想欄にガチャ報告だけするのは控えて下さいね。自慢したかったら活動報告でどうぞ。


ヤンデレとわりと普通のデート

 

「デート……?」

「そうだ。もう一度、と言うのは芸がないかもしれないがな」

 

 俺は疑問符を浮かべた。デートなんかしたことあっただろうか?

 

「(貴様は覚えていないんだったな……)まあいい。今回は個別でデートだ。サーヴァントはこちらで選んでおくぞ?」

 

「分かった……デート?」

 

 何故だろうか。その単語を聞くと体が震え始める。

 武者震いか、もしくは童貞でも拗らせ過ぎたか。

 

(流石にあの拷問の記憶は完全には消えんか……)

 

 

 

「デートね……」

 

 震えの止まった体を動かして辺りを見渡す。

 

「駅の前?」

 

 人混みの溢れる駅前で始まった様だ。現実と同じ名前の看板がそこら中にある。

 

「ごめんなさい、待たせてしまったかしら?」

 

 どうやらお相手が来た様だ。

 

「いや全ぜ……ん……?」

 

 俺の前には日傘を指した女性……と言っていい身長かは分からないが、ステンノが現れた。

 

「あら今私の事をバカにしませんでした?」

「いや、これっぽっちも……」

 

 さてただのステンノでは無い。ヤンデレステンノだ、油断せずに行きたい所だ。

 

「……まあいいでしょう。ではどこに参りましょうか?」

 

 さていきなり童貞に難易度高い質問だ。デートプランのデの字も用意していないんだが……

 

「……ふふ、イジワルな質問でしたね。昨日デートに誘ったのは私なのに」

 

 困る俺を見て面白がる女神様は静かに指を指した。

 

「さあ、あちらに行きましょう」

「うん、分かった」

 

 俺が頷いて指さされた場所へ向かおうとするとステンノは俺の腕を掴んだ。

 

「お待ち下さい」

 

 そう言ってステンノは両手を俺に向け、そのまま止まった。

 

「……えーっと……?」

「此処まで歩いて疲れました。抱いて下さい」

 

 いきなりこれである。

 

「えっと……日傘はどうするの?」

「貴方が抱いてくれるなら、要りません」

 

 そう言って日傘を畳む。

 

「さあ、どうぞ?」

 

 

 見た目相応に軽い。しかし、道行く人が1ミリも反応しないとしても、これは恥ずかしい。

 

「ふふふ……素晴らしい優越感でしょう? 女神の私をその両手に抱いて歩いているのですから」

 

(暑い……)

 

「下を向けば美しい私の顔が見えるんですもの、疲れる事すらご褒美でしょう?」

 

 まあ、無茶苦茶されなければ問題は無いが……

 

「それに……いい香りですわ」

 

 首後ろに力を込め、体に顔を密着させたステンノの鼻が小さくくすぐる。

 

「それで……目的地は?」

「もう少しですわ」

 

 その言葉に従って歩き続けるが、やがて足を止めた。

 

「あの……ラブホとかの看板が見えるんですが……」

 

「あら? じゃあもう着いてしまったかしら? 何処のホテルが良いか、選んで下さい」

 

「いや、普通にアウト!」

「あら? 貴方が私のデートを受けてくれたのに、ですか?」

 

「いや、デートって言ったけどラブホは無しだ!」

 

「まあ……マスターの童貞(ピュアハート)にこの場所は早かったかしら?」

 

「先ず見た目だけで犯罪だろ!」

 

 小悪魔○学生で筆下ろし、なんて18禁ゲームにありそうなワードしか思い浮かばない。

 

「大丈夫ですわ。ちゃんと免許証を持ってきました」

「何も大丈夫じゃない上に免許証メドゥーサのだろ、コレ!」

 

 クラスがライダーじゃなくてアサシンだから何も運転できないし。

 

「……仕方ありませんわ。別のデートプランに移りましょう」

 

 そう言ってステンノは真逆の方向、つまり行った道を指差した。

 

「あちらの駅まで、運んで行ってくださいね?」

 

 ウィンク付きでお願いされた。

 小悪魔ぁ……

 

 

「……で駅に戻ってきたけど?」

「お疲れ様ですわ。タクシー代です……っん」

 

 不意打ちで頬にキスをされた。

 

「で、次は何処に?」

 

「あらあら、何もリアクションが無いのは寂しいですわ?」

 

「いや、流石に此処まで人1人運ぶのは疲れるんだが……」

 

 十数分の移動でもうローテンションだ。

 

「仕方ないわね。あの喫茶店でお茶にしましょう」

 

 そう言ってステンノは駅前にある洒落た喫茶店を指差した。

 

「分かったよ」

「あ、お姫様抱っこは結構よ」

 

 そう言ってステンノはニッコリ笑い、俺の腕を掴んだ。

 

「だって貴方の彼女としてデートしたいもの」

 

 

「いらっしゃいま――っは!?」

「あらメドゥーサ、奇遇ね?」

 

 なるほど、デートに誘った理由はこれか。

 妹を弄る為に俺を連れて行きたかった訳ね。

 

「う、上姉様!? マスターまで!?」

「二名様よ? 席にご案内して下さる?」

 

「は、はい……かしこまりました」

 

 メドゥーサは不安な様子のまま俺達を席へと案内した。

 

「こ、こちらが、メニューになります」

「ええ、ありがとう」

 

 店に入ってから目に見えてテンションが上がっているのが分かる。

 

「さあマスター? 何を頼む?」

「……じゃ、コーヒーとサンドイッチ」

 

「私には紅茶とショートケーキ、早めにね?」

「は、はい!」

 

 メドゥーサは慌てた様子でカウンターへと向かった。

 

「可哀想に……」

「あら? あの子は喜んでいるわよ。姉の私がわざわざ足を運んであげたのですもの」

 

 一切悪気は無いと嘲笑いながら言った。

 

「それよりもマスター? 私が目の前にいるのですから、あの子にあまり視線を向けてはいけませんわよ……」

 

 そこだけは本気のようで、言葉と共に威圧を感じた。

 

「はいはい……」

 

「お待たせしましたっ!」

 

 早い。数分と待たずに注文の品がやって来た。

 

「ご苦労様。マスターとのデートよ。邪魔しない様に、ね?」

「っ! わ、分かっています!」

 

 メドゥーサは早歩きで店の奥へと消えていった。

 

「ふふ……楽しいわ」

「あまり妹を虐めるなよ?」

 

 俺の言葉は届かなかったようで、妹の苦しみと妬みをケーキと一緒に頬張っている様だ。

 

「ま、俺も食べるとするか……」

 

 サンドイッチを手に取る。が、その先はステンノに先に噛まれた。

 

「ふふ……マスターの初めて……頂きましたわ」

「いや、行儀が悪いだろ」

 

「あら、彼女の可愛いイタズラを咎めるのは紳士の行いではなくてよ?」

 

「全く――」

「――下姉様!?」

 

 メドゥーサの驚きの声に、思わず顔を上げた。

 

「ふふ……此処にステンノ()がいると思ったのだけど……正解かしら?」

 

 その声を聞いてステンノは小さく笑った。

 

(これはエウリュアレもイタズラの対象だな……)

 

「上姉様ならあちらです……マスターと一緒に」

「そう……え? マスターと一緒ですって!?」

 

 驚きの声を上げたエウリュアレは急いでこちらへやってきた。

 

「ちょっとステンノ!? これはどういう事!?」

「どう、とは……どういう意味かしら?」

 

「なんで貴女がマスターと一緒なのかって聞いてるのよ!」

「あら、私達は一心同体。貴女のマスターと一緒にいたい理由が、そのまま私の此処にいる理由になると思いませんか?」

 

「ぬっぐ……でも、どういうつもりよ!? 姉妹で共有する約束じゃなかったかしら!?」 

「必ずしも、一緒にマスターと過ごす事が共有では無いでしょう? それに姉妹で共有なら……姉の私が独占しても許されるでしょう?」

 

 この姉妹喧嘩は不味くないか?

 この2人は一緒にメドゥーサを虐めていた事はあるが、喧嘩はそこまでした事は無かったはずだ。

 

「ステンノ……!」

「あんまり喚かないの、エウリュアレ。ちゃんと貴女にも独占する機会をあげるわ。でも、きっとその頃にはマスターの心は私のモノになっているでしょうけど、ね?」

 

「そこまでにしたらどうだ?」

 

 見ていられなかったので俺は口を挟んだ。

 

「じゃあ、ステンノとデート終わり。エウリュアレ、何処か行きたい?」

「え、あ、ちょ、ちょっとマスター!?」

 

 立ち上がった俺はステンノを無視してエウリュアレに近付いて、お姫様抱っこをした。

 

「ま、マスター!?」

「あ、メドゥーサ、これ。お会計ね」

 

 ポケットに入っていた千円札をカウンターの上に置くと、そのまま店を出た。

 

(っはぁ……何やってんだろ、俺)

 

 

「……降ろして」

「はい」

 

 喫茶店から出て近くの公園に来た俺はエウリュアレを降ろした。

 

「……私を選んでくれたの?」

「違う。なんだろうな……あの喧嘩は見ていて嫌だっただけだ」

 

 ステンノとエウリュアレは一心同体。互いが離れていてもどこに行ったのか分かる程に。

 その2人にメドゥーサを入れた3姉妹は一番下のメドゥーサをイジメながらも姉妹仲は良かった。

 

 それが、あそこまで分裂しかかるとは……

 

「俺って、お前達が喧嘩するほど価値があるのか?」

 

「あ、当たり前じゃない! 私達にとっては初めてのマスターよ!」

「それが良くわからないな……」

 

 ヤンデレ化の影響で彼女達は他の女を敵視する様になった。だが、以前ならまだ姉妹で喧嘩をする程では無かった。

 

「好きなんて気持ち、湧いた事なかった。面白いモノなら幾度も遊び倒して来たけど、マスターは別よ。

 壊すのが怖い人なんて、初めてで……ステンノが弄ると壊れる気がして……」

 

 まだ完全には理解出来ないが、少しだけ分かった。

 独占欲では無く、エウリュアレとステンノが俺を独り占めする理由は保護欲が原因なのだろう。

 以心伝心だった2人の心は今、俺への不安で揺れているのだ。

 

「なら、喧嘩する理由は無いな」

「……え?」

 

 ならばそれを笑ってやればいい。幸い、ステンノへはエウリュアレを通して伝わるのだから。

 

「壊れやしない。俺はお前達のマスターだ。俺の心配より、人理救済まで使い倒されるお前の体を心配したらどうだ?」

 

 似合わないと分かっているが、俺はエウリュアレに宣言した。

 

「……マスター!」

 

 エウリュアレが抱き付いてきたのでそれを受け止める。

 

「大体、こんな小さい身体で言う事が生意気な――」

「――マスター!」

 

 言葉の途中で背後から別の誰かに抱き付かれた。

 このエウリュアレと同じ位の腕の細さはステンノだ。

 

「……フフフ、格好良かったですわよマスター。でも、誰の何を心配しろ、でしたっけ?」

「私達はゴルゴン三姉妹よ? 人間の生意気が過ぎると……」

 

『先に頂くわよ?』

 

(……どうしようかな、これ)

 

 蛇に睨まれたカエルな気分だ。

 

「ほら、メドゥーサ! マスターを運びなさい! 目的地はピンク色のハートが沢山ある看板の建物よ」

 

「了解です、姉様」

 

 いつの間にかやって来たメドゥーサに捕まり、宝具ペルレフォーンの発動によって現れた白馬に乗せられた。

 

「ちょっと待てぇ!」

 

 嘆きの声を上げながらも、俺は何処か納得していた。

 

 ああ、これが神霊の振り回しか……

 

 

「さあマスター、着いたわよ」

 

 白馬が舞い降りた場所はメイド喫茶だった。

 

「ごめんなさい、ラブホテルでは無いの」

「いや、1ミリも望んでないけど」

 

「そう落ち込まないで? ご主人様をちゃーと持て成してあげるから」

「いや、今すぐ帰してください」

 

「すいません……どうか姉様方の謝罪とお礼にお付き合い下さい」

「いや、気持ちだけで結構です」

 

 下げられた頭も押し付けられた善意も断って帰りたい。

 が、体が鎖で縛られたままではどうする事もできず、引きずられるがまま喫茶店に入った。

 

「さあ座って下さいご主人様!」

「お疲れでしょう? お水でございますご主人様!」

 

 いつの間に着替えた美少女達の献身的なご奉仕。だが椅子に縛られては座るもクソもない。

 

「デートでメイドは鉄板でしょう?」

「いや、それは間違いだと思う。あとこの状況も」

 

 俺は冷静にツッコミを入れるが放してくれる雰囲気ではない。

 

「せっかくだからこう言うのはどうかしら?」

 

 ステンノは細いスティック菓子を取り出した。

 

「ポッ○ーゲーム」

 

 そう言って袋から1本取り出すと、一瞬だけそれが怪しくピンク色に輝いた。

 

「おい、いま絶対何かしただろ?」

「大丈夫よ、はい」

 

 菓子を口に挟み、こちらへ近づく。

 

「ちゃんとお口、あ・け・て……っね?」

 

 エウリュアレが耳元で囁き舌で耳の内側を舐める。

 

「っ!」

 

 開いた口に菓子が入り、ステンノのはそのまま徐々に近づいてくる。

 

 菓子を噛んで終わりにしようとしたが、噛み砕けない。魔力で硬度を上げ、あちらは魔力で強化して噛んでいるようだ。

 

(やりやがったな!?)

「ん、モグ……ッチュ」

 

 唇が重なるが、そもそもゲームになってない。

 

「私が楽しめれば何だってゲームですわ」

「次は私の番、ね?」

 

 そう言ってエウリュアレはチョコレートを取り出した。

 

「さあ、一緒に舐め合いましょう?」

「ゲームですらない!?」

 

「駄目よエウリュアレ、私達は女神。あまりはしたない真似はできないわ」

「そうだったわねステンノ。じゃあ、何をしましょうか?」

 

「もう帰してください」

 

「マスターったら、そんなに私達をお持ち帰りしたいのかしら?」

「いや、帰りたいだけ――!?」

 

 ――気が付けば腹に矢が刺さっていた。

 

 

「ふふふ……マスターったら……あまりにもおふざけが過ぎるからつい、射抜いてしまったわ」

 

「駄目よエウリュアレ、私も一緒に、ね?」

 

 ステンノが近付いて、微笑んだ。

 

「さあ、目覚めなさい」

 

「そしてもう一度私を見るのよ」

 

 合図ともに愛を失い、輝く瞳に心を奪われる。

 

「えい!」

 

 再び合図で心が戻り、痛みが愛へと変換される。

 

「ふふふ」

 

 100が0に、0が1000に。1000が10に。

 

「えい!」

 

 付けられた傷は失う度に癒やされ、満たされる度に増えていく。

 

「マスター……」

 

 笑う。痛み。痛み。笑顔。

 

「もっとよ、もっと!」

 

 女神達に心を奪われる。奪われる。奪われる。

 

 もはや失う事は無い。愛に目覚めたまま、少し愛はなくなるが、また容器いっぱいに満たされる。

 

「愛してる、愛してるよ女神様……」

 

「ダ・メ! まだ足りないわ」

 

 メビウスの輪の如く、愛は容器が一杯になっても注がれる。

 

 心で受け止められなかった愛は今度は理性へと注がれる。

 それすら一杯になった時、本能すら愛に染まる。

 

「そうよ、私達は女神」

 

「貴方の運命、生き方、そして起源すらも決めてあげましょう」

 

『マスター、貴方は愛に生きるの。私達の愛で』

 

 体は神の求愛に染まったのだった。

 




たまにはホラーチックなヤンデレが書きたかったんです。

この更新ペースで遊戯王の小説連載したいとか考えてる自分はアホだと思う。

次もデート話だと思います! なるべく早く投稿するつもりですが、気長に待って下さい!


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