ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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だいぶ迷ったロンドン編。

意外と敵の女性キャラが多かったですね。


っく……殺せっ……! ロンドン編

 

 

 ナーサリー・ライム編

 

「う……何処だ此処?」

 

 ロンドンに着いてそうそうに拉致された様だ。

 周りは何も無いかのような真っ白な空間。

 だが霧の溢れているであろうロンドンとは思えない。

 

「ありす……ありすは何処……?」

 

 辺りを見渡す俺の前に黒いドレスを身に纏った幼女が現れる。

 Fate/EXTRAに登場したキャスタークラスとしてもサーヴァントとしても異質な存在、ナーサリー・ライムだ。

 

 ロンドンでの登場は第4節の筈だが……なるほど、ロンドンに着いてそうそうに聖杯によって召喚された彼女と接触したのか。

 

「此処にはいないよ、君の愛読者(マスター)は――」

「――嘘よ嘘よ! だってありすの対戦相手(遊び相手)だった貴方がいるじゃない!」

 

 どうやら月での記憶は残っているようで、俺の事も知っている様だ。

 

「だけど、此処はロンドン。月じゃなければ、魔術師(ウィザード)も存在しない」

 

「いいえ、違うわ違うわ、違うわ! ありすはいる! いるったらいるの!」

 

 聞き分けの無い子供の様に喚くナーサリー・ライム。どうした物かと頭を掻く。

 

「本を忘れない読者ならともかく、読者を忘れない本とは……」

 

「ありすが来るまで、貴方も此処にいて! 私と一緒に、ありすを待ちましょう!?」

 

「いやそう言う訳には……」

 

 俺は頭を振って断るが、ありすは俺の片腕を引っ張る。

 

「あ! そうだ! お茶会を開きましょう! 楽しい楽しいお茶会を開けば、ありすは必ずやってくる! 楽しく遊んでくれた貴方がいれば、あの子もきっと喜ぶわ!」

 

 妙案を思いつき急に騒ぎ出すナーサリー・ライム。

 不味いな。何か嫌な胸騒ぎが……

 

(っは! しまった! ……!?)

 

 気付くの遅すぎた。

 

 自分の名前が、思い出せない。

 

 自分は■■■■……いや、■■■■だったか?

 

「さあ、思いっきり楽しみましょう!」

 

 ありすが両手を広げるとお菓子やお茶の置かれたテーブルが現れ、白一色だった辺りが森の中の様な風景に変わる。

 

 だがそんな楽しげな雰囲気とは裏腹に俺の体調は最悪だ。

 

(気分が悪い……頭が痛い……)

 

 記憶の消える感覚に負け、俺は椅子に腰掛けた。

 

 その先にテーブルに置かれた桃色のお菓子、マカロンが見えた。

 

(…………マカロン、食べれば少しは気分が良くなるか……)

 

 そんな誘惑が頭を過る。

 

(駄目だ! あれを食べたら……?)

 

 あれ? あれを食べたら、なんだ? 

 何が不味い?

 

 いや、駄目だ! 

 アレは……あれは? なんて言うお菓子だっけ?

 

 そもそも……

 

(何が、駄目なんだけ?)

 

 気が付けば桃色のお菓子を口に運んでいた。

 

「ん?美味しい!」

「でしょう!」

 

 何か欠けていた様なそんな気がしていたがマカロンを食べる度に喪失感が薄れ、無くしたと思っていた記憶が埋まっていく。

 それに釣られて体調も良くなる。

 

「はい、貴方の分の紅茶!」

「あ、ありがとう」

 

 子供用の多少小さく感じるティーカップに注がれた紅茶を飲む。

 

「んー……良い味だな……香りも良い」

「そうでしょ! きっとありすもこの匂いに釣られて来てくれるわ!」

「うん、そうだね」

 

 俺は頷いた。そうだ、きっとありすもすぐに来るだろう。

 

 そうしたらどうしようか?

 また鬼ごっこかくれんぼで遊んであげようか?

 それとも、トランプやお絵かきも良いかもしれない。

 

「それまで、ずっと一緒に待っていましょう!」

「ああ、待ってあげよう!」

 

 当たり前だ。きっと直ぐに来るだろうし……

 

「ありすが来るまで、ずーっと」

 

「ずーっと……一緒にいてくれるよね?」

 

 

 

 アルトリア・オルタ(ランサー)編

 

 モードレッドと力を合わせ、この時代を滅却する為に最凶最悪の強さで召喚されたニコラ・テスラを撃破した。

 

 安堵する俺達に一本の槍を持った騎士が襲い掛かる。

 

 モードレッドは一目見て直ぐに理解した。

 

 アーサー王が自分を殺しに来たんだ、と。

 

 反逆者を殺す為の聖槍、ロンゴミニアド

を持った彼女は何も言わず俺達へと攻撃を開始した。

 

 ニコラ・テスラとの戦いで消耗した俺達は苦戦を強いられる。

 

「っぐ! こんのぉ!!」

 

 剣の間合いで戦おうと接近するモードレッドだが、馬に跨り常にモードレッドより高い位置から攻撃を繰り出すアルトリアへの攻撃が届いていない。

 

「っはぁ――ッガァ!?」

 

 モードレッドの側面への攻撃を槍で防いだアルトリア。その隙に彼女の跨っている馬が前足をモードレッドへと上げ蹴り飛ばす。

 

「マシュ! 敵を抑えて!」

「了解です!」

 

 地面に叩きつけられたモードレッドの元へと急ぐ。ダメージ自体はそう大きくは無い。

 

「【応急手当】!」

「悪ぃ……だが、まだまだっ!」

 

 冷静を装うモードレッドだがどう見ても焦っている。

 

「こうなりゃ宝具だ! 一気に行くぜぇ!」

 

 モードレッドが吠えると、マシュが下がる。

 

 それに答えるが如く、アルトリアも槍に魔力を高める。

 

 雷電の如く互いの武器に走る魔力。同時に、宝具が開放された。

 

「マスター! 宝具、展開します!」

 

 来るであろう衝撃に備え、マシュも俺を庇うように宝具を発動させる。

 

 振り下ろされる魔力の閃光が雷雲を切り裂き、突き出された魔力の暴風は雷すら巻き込んだ。

 

「いっけぇぇぇ!!」

 

 

 

 辛うじて、勝利した。

 

 そう思った時には既に俺は捕まっていた。

 

 馬から飛び降り、宝具の直撃を避けたアルトリアは連戦の疲労と宝具の展開が重なり動けないマシュとモードレッドを無視しつつ、俺を攫ってその場から離れた。

 

「……」

 

 付いた場所はアジトでも無い適当な一軒家。無人の様だ。

 

 無言のまま、アルトリアは俺を壁際に下ろしてこちらを見る。

 

「っぐ!!」

 

 アルトリアはロンゴミニアドとは別の槍を軽く俺へと突き出した。

 

 が、そっと目を開ければ槍は俺の体では無く背後にあった壁を突き破っていた。僅かに左腕の皮が切り裂かれて血が出ている。

 

「……んっ……」

「っ!」

 

 くすぐったい。

 俺に近づいたアルトリアはそっとしゃがむと自分で切り裂いた腕の傷を舐め始めた。

 

 僅かに痛いが腕で感じる口の温度が感覚を麻痺させる。どうも俺から魔力を回復しようとしているようだ。

 魂喰いを行わないのは、わずかに残った理性が抑えているからだと信じたい。

 

「ん……ちゅっん……」

 

 血が出なくなったのか今度は唇を当てて吸い始めた。

 

 顔が近付き胸が腕に当たる。柔らかい感触と女性に血を吸われている背徳的な状況が興奮を呼び起こす。

 

「……」

 

 それを横目で見たアルトリアは顔を僅かに赤くしながらもこちらを見る。

 

「……」

 

 顔を横に振った。どうやらその気は無いらしい。

 

「……痛っ!」

 

 再び槍が俺の皮を裂いた。血が出なくなったのか別の場所に1本の線を刻んだ彼女は再び舐め、吸い始める。

 

「んっちゅ……」

 

 部屋に彼女の水音だけが響く。

 

 しばらくすると、今度は左手の甲を傷付け吸い始める。

 

 見れば吸われた場所全てにキスマークが付いている。

 

「も、もう良いだろ……?」

 

「っちゅ……ん」

 

 終わった。そう思ったが、彼女の槍は今度は俺の右腕を傷付け吸い始める。

 

「お、おい……! っひぃ!?」

 

 抵抗しようと僅かに腕を動かすと今度は頬を傷付けられた。

 大人しくしろと言わんばかりに彼女は俺の頬を舐める。吸う。

 

「…………」

 

 そして頬から吸い終わると彼女は俺と視線を合わせる。

 首筋に、僅かに冷たい槍の温度。今度は首を傷付けられた様だ。

 

「――」

 

 其処で漸く彼女は口を開いた。

 

「反逆は、赦さない」

 

 それだけ言うと首の傷を舐める。

 

 血の気が引いていく。恐怖からなのか吸われ過ぎたからかは分からないがこのままだと不味いかもしれない。

 

「……もういい」

 

 そう言うと漸く俺から唇を放した。

 

「……」

 

 だが、一向に俺から視線を外さない。

 

「ふふ……反逆者の同胞を汚すのもまた一興か……」

 

 俺の顔や首、腕のあちこちについたキスマークを見て満足そうに笑っている。

 

「いっその事……あいつから奪ってみせようか…………」

 

 駄目だ。血を失い過ぎたか魔力を失ったせいか視界が、意識が遠のいて行く……

 

「……から……わた……ぃらく、きざんでぇ……」

 

 

 

「嘘、だろ……!?」

 

「せ、先輩っ!」

 

 その後、マシュとモードレッドがアルトリアを打倒し俺を救出したが、2人の顔色は優れなかった。

 

 俺が発見された時の衰弱が酷かったのもあるが、それ以上に彼女達の心を抉ったのは消える事の無い無数の切り傷とキスマークだった。 




え? ジャックちゃんは何処だって?
いや……操られてるから書きませんでしたけど……何か?

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