ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】   作:スラッシュ

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今回の当選者は そこら辺のだれかさんです。

真夏にバレンタインデーの話を書きました。執筆が遅い自分のせいです。申し訳ない。
切大以外のバレンタインデー、2021年版です。


時を遡りバレンタイン2021

「もう二度と使わないからな、このイロモノ宇宙服!」

 

 バレンタインの日、水着サーヴァント達から全力で逃げている俺はこの事態を招いた魔術礼装へ文句を吐き捨てた。

 

 水着メイヴに海岸で襲われて【エスケープ・ポッド】で逃げようとしたが彼女の用意した島に不時着し危うく喰われそうになり、再度使用が可能になったのでもう一度使ったら今度はコントロールが効かずにホテルに突っ込んだのだからそりゃあ悪態の1つも吐きたくなる。

 

 こうなればチョコを受け取る所ではなくなってしまった。

 

「って言うか、これで全員じゃないとか無理ゲーにも程があるだろ!」

 

 やがて疲労と残りサーヴァントの数が足を重くし、ホテルのエレベーターに追い詰められた俺はこちらに向かってくるサーヴァント達の姿を見て、瞳を閉じた。

 

 もしかしたら今までの人生、毎年やって来るバレンタインデーに両手から溢れんばかりのチョコが欲しいと願い続けた俺への天罰なのかもしれない……

 

(いや、そんな訳無いだろ)

 

 やっぱり理由もなく理不尽な悪夢の世界に僅かな涙を流し、それを指で拭った水着のマリー・アントワネットが隣でこちらを見下ろしながら微笑んでいた。

 

 

 

「こちら、お疲れのマスターに甘味をお持ちしました」

 

 僕の前に座ったアーチャーのサーヴァント、巴御前は丁寧にチョコを手渡してくれた。

 

「あ、ありがとうございます!」

「ふふふ、そんなに畏まらなくても良いのですよ? 普段からお世話になっているマスターに、感謝を伝えるのはサーヴァントとして当然かと」

 

 僕は余りの嬉しさに何度も頭を下げた。自分が一番好きなサーヴァントからバレンタインデーにチョコを渡されるのは、此処が悪夢ヤンデレ・シャトーの中だと分かっていても嬉しい。

 

「大事に食べるよ!」

「えぇ……是非」

 

 彼女も今日がバレンタインデーだと知っているし渡してくれたのは丹精込めて作られたチョコレート。だけれど、生前の繋がりを大事に想う彼女はそれが決してバレンタインデーの品だとは口にしない。

 

 そんな彼女の想いを汲んで、僕も態々バレンタインの事を口にはしなかった。

 

「それでは、折角マスターの御家を“しみゅれーたー”にて再現したのですから、ゆっくりお寛ぎ下さい」

 

 今回、僕達は自宅を再現したシミュレーター内にいた。

 現実世界に現れた事もあるけれどその際には様々な制約があったからあまり彼女と一緒に過ごす事が出来なかった。その反省を生かして、シミュレーターを使う事にしたらしい。

 

 僕としても余計な邪魔が入らず病みの浅い彼女と2人なら安全だし、喜んで誘いに乗った。

 

「じゃあ早速食べようかな」

「はい。では、巴は何かお飲み物を持ってきますね」

 

 台所へ向かい自分の家の冷蔵庫を開ける巴御前の姿が珍しくて思わず眺めた。

 

「マスター」

 

 冷蔵庫を開いたまま彼女はゆっくりとこちらに振り返った。その動作に、背中が少しだけ震えた気がした。

 

「ん? どうしたの?」

「こちらのちょこれーとは、どなたからの贈り物ですか?」

 

 彼女がこちらに見せて来たのは透明な袋に入れられたチョコレートの箱。

 リボンで封をされたそれは、僕へ宛てられた物だとはっきりと書かれている。

 

「既に巴以外の女性からちょこを受け取っていただなんて……どの様な方なのか、とても興味が御座います」

 

 頬に手を当て柔らかそうな表情を浮かべるけれど、その頭上には2本の角が生え、炎の様な瞳が此方を見つめていた。

 怒りで再臨してしまった彼女を宥める為に、僕はそのチョコレートの送り主を彼女に教えた。

 

「……御母上、ですか?」

「うん」

 

 彼女がこちらに疑いの眼差しを向けるのも、まあなんとなく分かっている。

 

「ツウちゃん、なんて書き方は母さんしかしないし、ハート型なのは毎年の事だよ。父さんのと一緒に作ってるからね」

「そう、ですか」

 

 その説明で納得してくれたのか、巴御前はそっとチョコレートを冷蔵庫に戻した。

 

「ごめんね。母さんにも負けたくなかった?」

「いえ、御母上と張り合おうだなんてそんな……」

 

 申し訳なさそうに頭を下げてるけど、母さんは当日の朝一番に渡してくるから同棲でもしていない限りは負けイベントだ。

 

「すいません、巴が少し早とちりをしました……飲み物は、お茶で宜しいですか?」

「うん。ありがとう」

 

 彼女から貰ったチョコレートと淹れてくれたお茶を楽しみながら、この後どうしようかと話し合った結果、僕の部屋でゲームをしようと言う事になった。

 

「シミュレーターでマスターの部屋のぱそこんも一台増やしましたので、一緒にげぇむに興じる事が出来るかと!」

「それは良いんだけど……」

 

「いかがしましたか?」

 

 生えた角はそのままなの? って言おうと思ったけど、別にどうしても引っ込めて欲しくはないし、可愛いから口をつぐんだ。

 

「なんでもない……」

「そうですか? では行きましょう!」

 

 自分の部屋に巴御前と入る光景に言い得ぬ高揚を感じながらも、入ってみると見知った部屋の中に知らない机が置かれていた。

 

「巴はこちらにしますね!」

「って、僕の机……」

 

 恥ずかしい事に、今日は宿題を終わらせた後は直ぐにゲームに没頭していたから机の上は散らかりっぱなしだった。

 

「ちょっと待ってて下さい……!」

 

 慌てて鞄の中に教科書やノートを突っ込もうとすると、鞄の中で何か引っかかった。

 

「ん……なんだ?」

 

 クシャっと音を立てたソレを取り出そうとした所で、鼻に甘い匂いが届いた。

 

(あ、これ委員長がクラス全員に配ってた義理チョコ……!)

 

 この場で取り出すのは不味いのでそのままにして置こうと思い手を止め――手首を巴御前に掴まれた。

 

「……マスター?」

「え、っとこれは……」

「チョコですね?」

 

 鬼だからだろうか、恐らく匂いを感じ取ったのだろう。

 物凄い剣幕でこちらを睨む彼女に、また事情を説明して納得してもらおうと喋り始めた。

 

「これは、クラスメイトが配っていたのを貰っただけだから……!」

 

 少し焦って略したけど、これで静まってください……!

 

「配っていた……」

「そうそう! だから、別に特別な感情がある訳じゃないから……!」

 

 慌てて言い訳を重ねる僕。

 

 常日頃から、鬼の血を持ちながらも人として在ろうとする巴御前の自制心は凄まじい。

 だからヤンデレ・シャトーの狂気の中でも他のサーヴァントとは違って生前の夫に操を立てながら、僕との距離感を保ってくれている。

 

「……」

 

 無言で近付き、背中に手を回して抱き締められた。

 

「マスター」

 

 ――2リットルの水が入るバケツに既に1リットル入っているとしよう。

 

 ――恐らく多くの人は“まだ1リットルも入れられる”、そう考えると思う。

 

「巴は」

 

 ――だけど、そのバケツが常に揺れていたらどうだろう?

 

 ――揺れに揺れて、かさを増した水は外へと飛び散ってしまうだろう。

 

「鬼に、なりそうです」

 

 …………だから。

 

「うん、分かった」

 

 銀の髪が真っ白く変わっていく彼女を見て、部屋まで持って来ていた包を開いた。

 

 中に入っているのは甘栗子ちょこれいと。彼女が渡してくれたプレゼントだ。

 

「はい、あーん」

「はむっ!」

 

 それを彼女の口に直接押し付ける様に指で入れた。少しだけ、指を舐められた感触。

 

「…………っふぅ」

 

 それを何度か噛んだ後に、彼女が一息吐いたのを見て僕も安堵した。

 

「す、すいませんマスター!」

「大丈夫、僕も悪かったよ」

「い、いえいえ! 誰よりも先にマスターにちょこをお渡ししたいだなんて、我ながら恥かしい姿を晒してしまい……!」

 

 そう言いながら顔を僕の右肩に埋める巴御前を見て、内緒に笑った。

 

 鬼になると、僕への愛憎が溢れ出てしまう彼女はその自制心もあって一度だけ恋人らしい事をすると水をかけられた炎の様に静まるらしい。

 

 しかし完全に鎮静化する訳ではなく、こうして抱擁している事が気にならなくなってしまう程の好意は残ってしまうらしい。

 

「……じゃあ、そろそろゲームをしよう」

「はいっ!」

 

 だから彼女がそうと気付かない様に、僕から離してあげる。

 

 それが僕と巴御前の日常。

 お互いの距離感を、まるで夫婦の様に尊重し合うこの関係は少し寂しくもあるけれど、巴御前が大好きな僕にはたまらなく嬉しい一時だ。

 

 

 

 

 

「嫌でち!」

「そこをなんとか!」

 

 今日も夢の中の道場でサーヴァント相手に斬り合い……ではなく、キッチンにまで紅閻魔ちゃんを連れて来たんだけど……

 

「明日はバレンタインデーだから、素敵なチョコの作り方を教えて!」

「いーやーでーちー!」

 

 何時も必要以上にお世話を焼いてくれる雀女将の紅閻魔ちゃんも、首を縦に振ってはくれない。

 その理由は重々承知しているけれど、お母さん以上に頼りになりそうな彼女の助力が得られればあの唐変木――玲に良いアプローチが出来るかもしれない。

 

「そんな恋する乙女の様な顔をされても、今のご主人に教える事はできまちぇん!」

「そっか……」

 

 此処まで頼んだけど嫌がられてしまっては仕方ない。

 今は夢の中、まだ時間もあるし目の前にキッチンがある幸運を無駄にしない為にもせめて練習するしかない。

 

「……頑張ろう!」

 

 私は一人、チョコの前で拳を握って気合を入れた。

 けれど、キッチンの前に立って首を傾げた。

 

「…………何を作ろう?」

 

 まずは、何を作るか考えないと……!

 

 

 

 普段は献身的に自分の主に仕える紅閻魔だったが想いを寄せるマスターが男性に贈り物をすると聞いてはその頼みに頷く事は出来ず、だがそんな自分が顔を合わせるのも烏滸がましいとキッチンを飛び出した。

 

「全く、ご主人は……はぁ」

 

 愛するマスターに助力を請われたにも関わらず、拒絶してしまった事を悔いる紅閻魔だがこのままでは戻る顔もない。

 戻って来た道場の窓、その向こうへ視線を向ける。

 

「……こうなったら、ご主人の想い人をこの目で確かめるでち」

 

 切華の想い人、玲。

 噂には聞いているがサーヴァント並の腕っぷしを持ち、常に沢山の女性サーヴァントを侍らせている。らしい。

 

「あちきからマスターを奪っておきながら、その好意を全く意に介さず傍若無人に振る舞っている悪い殿方でちとか」

 

 その姿を雀に変えて、道場の窓を潜り抜けた彼女はキッチンにいる主人と離れるを惜しみつつもカルデアール学園に向かった。

 

「っむ、此処は……なるほど、学び舎でちか」

 

 既に学園の購買部で働いている玲の紅閻魔と入れ替わる形で学園に侵入したせいで、来て直ぐに働くことになったが、彼女が宿屋の女将である紅閻魔なのは変わらない。

 

「焼きそばパン完成でち! カレーパン揚げ終わりまちた! 卵、キュウリ、ソーセージ!」

  

 直ぐに購買部の作業に慣れて、無事に休み時間を切り抜けた。

 

「ふぅ……購買部、中々忙しかったでちがこれでやっと本来の目的を……」

 

 学園内を歩きだして数分……

 

「目的を……」

 

 中等部を数周して更に十数分……

 

「目的……」

 

 校庭で体育に勤しむ学生を見回って数十分……

 

「……何処、でちか……」

 

 彼女は知らない。この学園の授業には移動教室がある事を。

 

「……漸く、見つけたでち……!」

 

 探し続けている内に放課後のチャイムが鳴り響き、教師から新聞部の部室を訪ねて漸く玲を視界に捉える事が出来た。

 

 しかし、その周りにはジャンヌ・オルタ、両義式等の新聞部員が一緒におり、長らく迷っていた事もあって紅閻魔の怒りは直ぐに爆発した。

 

「やはり、あんな軽薄そうな男、ご主人に相応しくないでち……!」

 

 腰の刀に手を伸ばし、その瞳で玲を睨んだ。

 

「……まずは、その性根を舌と一緒に切り落すでち!」

 

 玲が間合いに入ったと同時に自らを青い閃光に変えるほどの速さで繰り出される抜刀術。

 カルデアール学園のサーヴァント候補生とは違い、成熟しサーヴァントとしての能力を十全に発揮できる教員の立場にいる紅閻魔のそれは聖杯戦争で通用するだけの技術と魔力が迸っている。

 

 しかし――

 

「――こちらよ、部長さん」

「うぉ!?」

 

 狙い澄まされた斬撃は、玲が突然後ろにいた両儀式に引っ張られた事で空を切る結果となった。

 

「物騒な雀さんね?」

「……はぁ……なんで私がいる時に限って邪魔が入るのかしら?」

 

 彼女の奇襲に気付いた両儀式は刀を抜き、ジャンヌ・オルタも悪態を吐きながら炎を走らせ威嚇する。

 

「……あれ? 家庭科の紅閻魔先生?」

 

 そんな中一人だけ呑気な玲が前に出た。

 

「ご主人の気も知らず女を侍らす悪漢はこの手で成敗するでち!」

「……まーたあいつらか?」

 

 玲の頭の中には切華……以外のマスター達の顔が思い浮かんだ。以前自身のサーヴァントを送りつけてきた山本が怪しいなと思いながら頭をかいた。

 

「これ以上マスターには指一本触れさせないでち! 切り捨て、御免でち!」

 

 体を前に倒し、抜刀の構えをする紅閻魔。

 

 式とジャンヌが我先にと獲物を向けて駆け出すが、サーヴァントと候補生の差は明確だった。

 

(これは――!)

(まずっ!)

 

 彼女の領域に踏み込んだ瞬間に察した。

 自分達の攻撃より、紅閻魔の刃の方が速い。

 

「おっと」

『っ!?』

 

 しかし、再び紅閻魔の刃は空振った。

 玲が2人の首根っこを掴み、後ろに下がらせたからだ。

 

「喧嘩を売られたのは俺だ」

 

 何か言いたげな2人を強引に下げらせた玲は、紅閻魔と対峙する。

 

「……言っておくでちが、情けも容赦もしないでち」

「それは一度でも刀を当ててから言うんだな」

 

 指をクイクイと動かして挑発する玲を見て、紅閻魔はやはり主人に相応しい相手では無いと本気で構えた。

 

「見切れると、思うなでち――!!」

 

 間合い、正面……もはや人間の玲が先に打ち込んでいても先手を取れる状況で、雀の抜刀術が炸裂した。

 

「――」

「どうした? そんなに驚いたか?」

 

 しかし、憎き男は片手……どころか僅か指三本で刀を受け止めて平然と立っていた。

 

(戻せ、ない――!?)

 

「今度はこっちの番だな」

 

 刀を掴まれたまま、手放す事も出来ない紅閻魔に玲は一歩近づいた。

 

「ほらよっと」

「チュンっ!?」

 

 トン、と彼女の額から良い音が鳴ったと同時に刀を放されその場にばたりと倒れ込んだ。

 

「って、アンタ今のデコピンで済ます気!?」

「流石に子供を殴る訳には行かねぇだろ。拳骨ならともかく」

「あの人、一応教員ではなくて?」

 

「それに、まだやる気よ」

 

 同じヤンデレだからだろうか、紅閻魔の執念深さを察知したジャンヌは炎を放とうと旗を構えた。

 

「やる事が一々みみっちいんだよ」

「……ど、どういう意味でちか!?」

 

「俺に勝ちてぇなら何度でも受けてやるよ。

 だけど、俺がてめぇの恋路の邪魔だからってんなら話は別だ。邪魔者を排除すればなんて楽観的に考えやがって。

 俺が居なくなっても、お前は俺と同じになれるのか?」

 

「なれるでち! ご主人はあちきを」

 

 彼女の言葉を遮って、玲は自慢げな顔で話し続けた。

 もう彼の中で紅閻魔のマスターが誰なのか、見当がついていた。

 

「いーや、なれない。俺はあいつの幼馴染で、喧嘩がそこそこ強い。背も高い。可愛い弟がいるし、口うるさい母親もいる。

 ほら、なんか同じもん持ってんのかぁ?」

 

 言いながらスマホを開いて“可愛い弟”の写真を見せつける玲の姿に両儀式は微笑んで、珍しくドヤ顔を浮かべる彼にジャンヌ・オルタは若干呆れていた。

 

「……ご主人の身の回りの事なら、おちきの方が上手くやれるでち!」

「ほー?」

 

「掃除、洗濯、料理! 健康管理だってできるでち! 腕っぷしで威張り散らかしてるガサツ男に負ける理由がないでち!」

「なら、何で此処にいるんだよ?」

 

 質問の答えを待たずに玲は立ち上がって背を向けた。

 

「さっさと腕を振るって来いよ」

 

「……」

 

 階段を駆け上る玲の後を、ジャンヌ・オルタと両儀式が追った。

 上から聞こえて来る楽しげな会話を聞き流しながら、紅閻魔は立ち上がったのだった。

 

 

 

「……よーし、これでどうかな?」

 

 一人キッチンで四苦八苦した末、出来上がったのは冷凍パイシートの上に溶かしたチョコレートを入れたミニチョコタルト。

 だけど……

 

「チョコも、生地も……固い……」

 

「何をしてるでちか」

 

 いつの間にか姿が見えなくなっていた紅閻魔ちゃんが、私の作ったチョコタルトを1つ食べて、溜め息を吐いた。

 

「はぁ……こんな物を、人様に食べさせては駄目でちよ?」

「うっ……」

 

「あちきは、困っているご主人を見捨てたりなんてしないでち。もう一度、材料選びからやってみるでち」

「え、手伝ってくれるの!?」

「勿論でち!」

 

「……あれ、どうしたのそのおでこ?」

「え、あ、これはその……」

 

 彼女の額には見慣れた小さな痣があった。

 昔の玲が手加減し損ねて付いた痣によく似ている。

 

「痛くない?」

 

 私がそう問いかけると、俯きながら返事をした。

 

「……少しだけ、いたいでち」

 

 涙目で言った彼女の額に、氷水で冷やしたタオルを巻いてあげた。

 しっかりと巻いてあげると、すぐに彼女は割烹着に着替えて台所に立った。

 

「……大丈夫なの?」

「大丈夫でち! さぁ、まずは材料から見直すでちよ!」

 

 そこからは本当に突然、地獄の鬼も逃げ出すような厳しい料理教室が始まった。

 分量、順番、本当に細かい所まで、完璧に仕上がるまで何度も何度も作り直させられた。

 

 これできっと私の想いが玲に届く。そう思うと、どんな地獄もきっと乗り越えて――

 

「……あ、ご主人」

「……っどうしたの?」

 

「あちきが合格点を出すまで、この夢から出させないでち。

 寝過ごしも覚悟するでちよ?」

 

 

 

 

 

「真ちゃん、お母さん今から出掛けてくるからお留守番しててね!」

「うん、大丈夫だよ」

「玲っ! ……は、今日は出かけていないんだっけ……何かあったら、電話していいからね!?」

「うん、分かってるよ」

 

 何度も何度も念を押してから、お母さんは慌てて家を出て行った。

 何処に行くのかは言わないけど、バレンタインデーの週の休日には毎年お父さんとデートしに行くんだって玲兄ちゃんがこっそり教えてくれた。

 

 良く分からないけど、教えた事がバレたらお兄ちゃんが怒られるから絶対に言うなと言われたからお母さんには黙っている。

 

 因みにお父さんはお母さんより十数分前に家を出ているんだけど、それは今までのデートもお父さんが先に着いて待っていたかららしい。

 

「玲兄ちゃんも友達と映画見に行くって言って家にいないしなぁ」

 

 別に寂しくはないけど、何をして遊ぼうかと考える。

 乱闘、カート……今の内に練習して玲兄ちゃんを倒す特訓でもしようかと考えてゲームを起動しようとして――

 

『――』

 

「……?」

 

 突然、インターホンが鳴った。

 誰だろう。お母さんが忘れ物をして戻って来た、なら別に鳴らさないで鍵を開けて入って来るだろうし……

 

「確認確認……」

 

 壁に取り付けられたモニターから玄関の様子を見るけれど、そこには誰もいなかった。

 

「……悪戯かなぁ?」

 

『――』

 

 モニターから目を離して部屋に戻ると、また鳴った。

 今度は誰が押したのかを確認しようと早めにモニターを点けた。

 

「……あれ? 美遊さん?」

 

 今度は家の前に、俺の召喚したサーヴァントの美遊さんが一人立っていた。

 

『真さん、いますよね? 開けて頂けますか?』

 

 お母さんには何時も留守番の間は家族以外の誰が来ても扉を開けるなって、口酸っぱく言われて来た。

 

 だから、俺は少しだけ悩んで……お母さんには見えないし、友達なら良いかなって思った。

 

「……うん、今開けるよ!」

 

 だから、喜んで彼女を招き入れる事にした。

 玄関を開けると、現実では見慣れない白い制服を着た彼女が綺麗に靴を整えて入ってきた。

 

「お邪魔します」

「いらっしゃい!」

 

 俺がそう言うと、彼女は珍しそうにチラチラと辺りを見渡した。

 

「……やっぱり、誰もいませんね」

「玲兄ちゃんとお母さんは今は出かけているよ」

「ええ、先程チャイムを鳴らして確認したので。気配を消されていなければ察知出来たと思います」

 

 もしかして、前にお母さんに纏めてぶっ飛ばされたのがトラウマになってるのかな?

 

「今日来たのは、その……」

「……?」

 

「……一緒に、遊びたくて」

「うん、良いよ」

 

 リビングの大きなテレビでゲームをしようと彼女を案内した。

 

「どれにしようか」

「いえ、マスターが選んでいいですよ」

「そう? じゃあ……これでいいかな?」

 

 大人しそうにして、口数は少ない彼女だけどどこかそわそわしているのは何となく分かっていた。

 

 けれど、ゲームをやっていれば自然と笑う様になって……

 

『Game Set』

 

「……もう一回です」

「うん!」

 

『Finish』

 

「……もう一回!」

「いいよ」

 

『1P Win!』

 

「あっ、もう一回っ!」

 

 ……どうしよう、やり過ぎたかもしれない。

 

 普通の人よりも強い玲兄ちゃんはコントローラーを動かす指捌きも勿論速い。

 そんな玲兄ちゃんに対抗するには普段以上に直感を働かせて、兄ちゃんの癖を見抜いて先手を打つしかない。

 

 そんなプレイをサーヴァントとは言え、同い年位の美遊ちゃんに発揮すれば勝つのはそんなに難しくはなかった。

 

 ……だけど美遊ちゃんは怒ってしまった上に手を抜けばすぐにバレて指摘されるから本気で彼女のキャラをぶっ飛ばすしかない。

 

 しかも動きが段々雑だから読み易くなって――

 

「カウンター!?」

 

「あ、また掴まれてっ!」

 

「横強っ、じゃない!?」

 

『Game set』

 

「…………」

 

 遂に何も喋らなくなってしまった。

 

「……ご、ごめんっ! 美遊ちゃん、凄く強かったから、こっちも本気でやっちゃって……」

 

「……いえ……少しムキになってしまいました」

「休憩にして、何か食べよっか?」

 

「いえ、マスターは此処で待っていて下さい」

 

 そう言って彼女は立ち上がり、後ろに置いていた自分の鞄を開けてゴソゴソし始めた。

 

(……甘い、チョコの香り……?)

 

「……こちらを、受け取って下さい」

「チョコレート!?」

 

「はい。今日がバレンタインデーだと、サファイアが予め教えてくれたので……」

 

 彼女が渡してくれたのは手の平より少し大きい位の箱。

 中を開けると、綺麗に飾り付けられたチョコレートケーキが入っていた。

 

「凄い……」

「近しい年齢の男性に向けて作るのは初めてだったので……量が足りるかは分かりませんが……」

 

「ううん、ありがとう!」

「ナイフとフォークもご用意しましたの、どうぞ召し上がって下さい」

 

 差し出された食器を受け取ってから、それをそっと箱と一緒にリビングの上に置いた。

 

「……マスター?」

 

「一緒に食べよう! 今お皿持ってくるから!」

「い、いえ、私は大丈夫ですから……! 味見もちゃんとしましたし……!」

 

「ううん、一緒に食べたら絶対もっと美味しくなるよ!」

 

 足早に台所から小皿を取りに行った。ついでに、フォークも用意しないと。

 

(……ライネスさんから盗んできた睡眠薬は、バレてない……?

 廊下で偶然マスターを手籠めにする為に使うと聞いて危ないから没収したまま、魔が差して混入してしまったけど……気付いてはいない?)

 

「じゃあ、食べよっか!」

「はい」

 

 崩れない様にケーキの真ん中を切って、上の飾りの三日月チョコレートは流石に俺が貰った。

 

「いただきます!」

 

 そして一口食べて、すぐにとっても甘くて美味しい味で口の中が一杯になっ――

 

 

 

「――はぁ……」

「部長、溜め息を吐くと幸せが逃げてしまいますよ」

 

 隣から聞こえて来た後輩の声に、俺は空を仰いだ。

 

「……幸せねぇ……」

「どうしたんですか、まるで私が銀河系一のトップアイドルになったみたいな声で」

 

「自分でそこまで言えるとは、本当にめでたい奴だ」

 

 そう。今俺の隣には何故かバーサーカーからフォーリナークラスにチェンジし、ギリギリ文系女子っぽかった制服姿から音響機器と融合し派手さを極めた様なアイドル衣装に身を包んだ謎のヒロインXオルタが座っていやがる。

 

「まさか現実世界でお前に呼び出されるとは思わなかったが……どんな衣装だよ、ソレ」

「実はまだお披露目には早かったのですが、部長にはどうしても誰よりも先にこの霊衣を見せたくて(実際の実装日は4月)」

 

「だから誰もいないカラオケ店での待ち合わせだった訳か」

 

 本来は夢の住人であるXオルタからの呼び出しを、家族には友達と映画館に行くと言って応じて来た。そして俺が困っている理由は……

 

「そういう訳で、専属プロデューサーになって下さい。手厚い福利厚生と終身雇用は絶対に守りますので」

「断る」

 

 この勧誘だ。

 

「どうしてですか?」

「お前なぁ……いきなりプロデューサーだの言われてもこっちはチンプンカンプンだしな」

 

「ふむふむ、つまり私の契約書に不明瞭な点があると」

 

 そう言って数十枚の紙束を手に持って音読しようとする奴を止め、俺はいい加減はっきり言ってやる事にした。

 

「……そもそも、お前が歌ってる所見た事ないんだけど。そんなに自信あったか?」

「なるほど。この謎のアイドルXオルタの歌唱力をまだ披露してはいませんでしたね。

 いいでしょう。合いの手と、印鑑の準備をお願いします」

 

 印鑑は家に置いてあるってツッコミは胸の内にしまっておきつつ、Xオルタの歌を聞いてやる事にした。

 

 周りにあるカラオケ機器は必要ないとばかりに、宙に浮く音響装置がギターの音を響かせその中央でXオルタは歌う。

 

「――――」

 

 俺の好みの爽快感は無かったが、優しいメロディーと歌声は普段のこいつからは想像出来ない歌だった。

 

 歌い始めて少しの間、豆鉄砲を食らった鳩の様な間抜けな顔を晒していたかもしれない。

 

 それからは一切ブレる事のない演奏と歌に自然と耳を、ソファーに体を預けていた。

 

「――」

 

 歌が終わり、ギターの動きを止めたXオルタに拍手してしまっていた。

 

「いやー、すげぇわ」

「ふふふ、流石の部長も歌で私には勝てませんね」

 

 ブイブイとピースサインをこちらに見せびらかす奴を普段なら殴ってやろうか一瞬考えるが、あの歌の後だとそんな気も起きない。

 

「これで私とのプロデューサー契約成立ですね。部長も一緒に業界デビュー。そして電撃結――」

「――いやぁ、凄いわ。本当本当、まじでトップアイドルって感じで」

 

 言いながら俺は席を立って出入り口に歩いていった。

 

「素人の俺にお前のプロデューサーは……荷が重いだろうなぁ」

 

「え、部長?」

 

「いやー、後輩が高嶺の花になって俺も鼻が高い」

 

 そう言って扉を閉めてやった。

 

「そのダジャレはどうなんで――あ、部長待って下さい!」

 

 見事な敗北だなと関心を胸に町の中を歩いていく。

 道行く人々にはこいつの存在が見えない。いや、例え見えていたとしてもXオルタはこのまま俺の耳元で講義を続けるだろうけど。

 

『約束が違います』

 

(そもそも歌い出したのはお前だし、契約に関しての約束も一切なかっただろ)

 

『なんでも歌で解決するのがスペースアイドルです』

 

(そっちの法則でごり押そうとするな)

 

 とは言え、このまま何もせずに帰してやるのも宜しくないか……

 

「しょうがねぇ、ちょっとだけ付き合ってやる」

 

 俺はネットカフェの前で独り愚痴った。

 

 看板には個室、お菓子食べ放題と都合の良い売り文句が書かれている。

 

『すいません。防音個室、食べ放題付きでお願いします』

 

 高校生には中々痛い出費だが、まあチケット代と思えば高くは無いだろう。

 

『あんぱん、わらび餅、みたらし団子……』

 

 耳元でアレとコレとソレと、周りから大食漢だと勘違いされそうな量を頼んでくるXオルタの要望を黙認して皿へと取り分けて行く。

 

『チョコレート……チョコ、レート?』

 

 どうかしたか? と聞いてやりたいが、周りの目が気になるので取り合えず山の様に菓子が積まれた皿と共に個室に入った。

 

 誰にも見られない空間に入ったと同時に、扉を閉めるより先にあんぱんを食べ始めるXオルタに質問した。

 

「……で、どうかしたか?」

 

「あむっ、はむはむ……どうか、とは?」

「いや、さっきチョコレート見て明らかに変な反応してただろ」

「…………もぐもぐ、何の事でしょうか。もきゅもきゅ……」

 

「いや、明らかにしらばっくれる気じゃねぇか。食べるスピードを上げるな」

 

 皿の上の菓子に手を伸ばそうとする奴から皿を奪って問い詰めた。

 

「……いえその、決して……アイドル衣装に浮かれていた訳ではありませんよ?

 ボイトレもダンスレッスンも厳しかったですが、そこは私のスペースアイドルとしての素質と並々ならぬ努力で――」

「――おい、何を隠してやがる?」

 

 こちらから視線を外したXオルタは、一度大きなため息を吐くと観念して向き直った。

 

「……れました」

「?」

 

「バレンタインデーのチョコ、忘れてしまいました……」

 

 その言葉を聞いて、俺は今日がバレンタインデーだった事を思い出した。

 

「……はぁ……いや、そんな事かよぉ」

「そんな事って、酷いです! 私は部長と同じ世界に行けるんだと、今日をとても楽しみにしてました! 本当はもっと先に見せる予定のアイドル衣装と持ち歌だって、この日の為に!」

 

「分かった! 分かったから!」

 

 怒ってしまったXオルタを宥める様に手を突き出して制止を促した。

 

「はぁ……もう十分、とんでもないプレゼントを貰ったさ」

「……あの歌、ですか?」

「おう」

 

「……嘘です。部長は歌にそこまで関心はありません」

「まぁ、確かにそんなに歌を聞いてる訳じゃねぇし、アイドルにも疎いのは否定しない」

 

 ほら見た事かとこちらを膝で小突いてくるXオルタの頭の上に、そっと手を置いた。

 

「だけど、可愛い後輩の頑張りはどんな形であれ伝わって来るもんだよ」

 

 Xオルタは頭を動かして俺の掌から離れ、再びお菓子に手を伸ばして皿を空にした。

 

「……そんな口説き文句で喜ぶ様なチョロイン、チョロドルじゃありません……

 ……もっと糖分をください」

「はいはい……」

 

 立ち上がり、部屋から出る。絶対定員に食べ放題の元を取ろうとするヤベー奴だと思われるだろうなぁと、足は若干重い。

 けれど、お陰で扉が閉まる際にXオルタの本音が聞こえて来た。

 

「……チョコだって、あの歌に負けない位頑張ったんです……」

 

(……そうかい、ありがとうな)

 

 本人には言ってやれない礼をしつつ、再び食べ放題へと向かった。

 

「……バレンタインデー。だから、やたらとチョコパンとか押してんのか」

 

 だけど、Xオルタが好きなのは和だから派手なポスターには目もくれず、淡々と饅頭や団子を乗せて……

 

「……バレンタインデー?」

 

 ――私は部長と同じ世界に行けるんだと、今日を楽しみにしてました!

 

「…………!」

 

 もっと菓子を積んでやろうかと思っていた俺はその手を止めて、個室に走った。

 

「Xオルタ!」

「……何ですか、部長。私、今更優しくされても――」

「――俺、もう帰る」

 

 

 

「――ん」

『美遊様、お目覚めになられましたか?』

 

 思っていたより、効き目の強い薬だなと目を覚ました美遊は思った。

 

「うん、おはようサファイア」

『おはようございます。

 どうして美遊様は、ご自分の用意した睡眠薬入りのケーキをお口にしたのですか?』

 

 自分の行動に疑問の声をあげる相棒に、美遊は確かにそうだと思った。

 しかし、睡眠薬を仕込んだケーキを食べる直前に、何も知らないマスターから一緒に食べたらもっと美味しいと勧めらた彼女はその言葉を無下に出来ずに口にした。

 

「……裏切りたく、なかったから」

 

 そんな彼女の言葉に満足したのか、サファイアは黙った。自らの主がこれから、眠っているマスターにする行為を察したのだ。

 

「でも、起きたらマスターの顔があるのって、ちょっとドキドキして……うん、一緒に食べてよかった」

 

 満足げに笑った彼女は、軽く真の前で手を振って眠っている事を確認した。

 

「うん……寝てる」

 

 目で見て分かってはいたが、その事実を確認して嬉しくなった美遊は動かない真の体をまじまじと見つめ始めた。

 

 その眼は、まるで捕まえた獲物を何処から食べるか思考する捕食者の様であり、同時に世界が終わるまで彼を見守り続ける女神の様でもあった。

 

「いきなりは駄目かな……」

 

 ずっと自分を抑える事は出来ず顔を近付けた彼女は、鼻を鳴らして先まで食べていたチョコレートと真の匂いに頬を赤く染めた。

 

「……チョコレート、唇に少し付いてる」

 

 綺麗にしないと。

 そう思った時には指で唇をなぞりとって、付着したソレを考える間もなく舌で舐めた。

 

 何度も試食したチョコレートとはまるで違う味に、彼女は段々興奮が隠せなくなっていく。

 

「……触れて、いいですか」

 

 意味のない質問の答えも待たず、真の手の甲に触れた腕は少しだけ驚き固まったが、戸惑いが消えると肩にまで伸ばした。

 

 その腕に引っ張られる様に彼女は体を床に倒して、真と向き合う様に寝そべる。

 

「……胸が高鳴ってます」

 

 冷静な口調で告げた彼女だったが、孤独を含んだ言の葉だった。

 

「眠った貴方にこの心音は届いていますか」

「私は貴方の心にいるのでしょうか」

「あるいは――」

 

 美遊は顔を、真へと近付け始めた。

 

 その瞳と口の先には、寝息を立てる唇があった。

 

「――これで、繋がれま――」

 

「――ただいまっ!! おい、真! サーヴァントは来てないな!?」

 

 突然の乱入者に硬直し、雰囲気を鏡の様に粉砕された美遊は直ぐに潮時だと真から名残惜しそうに離れた。

 

 ……そうしようとした時には既に額に指1つとは思えない衝撃が走って来たのだが。

 

「っ~! …………義兄さん、お早いお帰りですね」

「やっぱり来てやがったか……! おい、弟に何してんくれてんだ?」

 

 拳を握って追撃をしようと迫る玲を前に、涙目になりながら彼女は微笑んだ。

 

「バレンタインデーなので、チョコレートをあげました」

 

 当然の事だと言わんばかりに告げると、その場から姿を消した。

 

 霊体化である。自分から一切の干渉も出来ないが、逆に干渉されなくなった。

 

 玲の拳がサーヴァントにも沁みる事は以前から重々承知していたので、その日それ以降の美遊は誠の姿をその瞳に収めるだけに留める事にした。

 

 悔いがあるとすれば、目が覚めて折角の休日を寝て過ごしてしまって残念がる自分のマスターに謝れない事だろう。

 自分が帰るまでに謝れないかと、ずっとすぐ後ろで隙を待っていた。

 

(っ! マスター……!)

 

 渡されたチョコレートが美味しかったと書かれた日記を覗き見た彼女は、何も考えず実体化。

 嬉しさそのまま抱き締めようとした所で――

 

「――っ~~!?」

 

 警戒レベルMAXの玲のデコピンが霊核すら打ち抜いて、彼女をカルデアへと還したのだった。




次回の当選者は 陣代高校用務員見習い さんです。

そろそろ水着が来ると言うにまだ記念企画を終えてない自分に呆れてます。
今年はそろそろブーディカさんとか来て欲しい。誰が来ても石は枯らしますけどね。


第六章後編はまだ終わっていないので、感想欄でのネタバレはご遠慮頂けると幸いです。頑張ってクリアします。

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