ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】 作:スラッシュ
ので、記念にウマ娘のヤンデレを書いてみました!
一番のお気に入りはスーパークリークだけど、アニメ未試聴だから育成していけばもっと好きな娘が見つかるかもしれない。
――此処は日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園……
……だと思う。
「……え?」
辺りを見渡せば、そこらかしこに見覚えのあるウマ耳の少女達。
自分自身もトレーナーバッチを身に着けており、自分の担当ウマ娘と二人三脚で夢を追うトレーナーである事は理解出来る――が、しかし。
「なんで?」
今の知識は全て、俺のスマホにインストールされている【ウマ娘 プリティーダービー】と言うゲームに基づくものだ。
この光景は現実には実在しない、夢の様な場所だ。
「トレーナーさーん!」
勿論、この格好ならトレーナーではあるんだろうけど、俺は唯の一ゲームプレイヤーだ。
なのに、立ち尽くしていた俺に向かって、可愛い声が呼び掛けて来た。
「あ、あの子は――っ!?」
「――同人誌なら他で描け」
「あああぁぁぁぁぁ! 拙者のプロットがぁぁぁ!!」
シャトーのシナリオなら任せろと、新宿のアーチャー経由で現れたライダークラスの黒髭。
しかし、全くサーヴァントの出てこない導入を見たエドモンはそれを破り捨て、大きなため息を吐いた。
「全く。やはり恩讐が足ら……ん?」
「……源……死……え」
どこからか現れたサーヴァントが、床に落ちていた黒髭のプロットが書かれた羊皮紙を燃やし、巻物に変化させた。
「貴様は――平景清か」
「源氏、死に候え」
巻物を開いた彼女は自身の刀で指を斬り付け、開いた巻物を血で綴っていく。
「ほう、貴様はアヴェンジャーだ。やる気があるならば止めはしない」
「源氏……鏖殺……!」
今日も迎えてしまった悪夢の夜。何時もの事だが監獄塔の中は不気味で、今にも恐ろしい何かが現れるのではないかと警戒しながら歩いていた。
まあ恐ろしい何かなんて、ヤンデレサーヴァント以外いないけど。
「……ん?」
石造りの廊下を歩いて数分、一瞬だけ視界がブレた気がした。
「……な、何……?」
続いて、俺は壁に右肩を預けた。
足に力が入らず、1人では立っていられない事に漸く気が付いた。
「ま、不味い……!?」
慌てて【イシスの雨】を使うと、少しだけ体に力が戻った。
「まさか、結界か!?」
頭に浮かんだのは第五次聖杯戦争のライダー、メドゥーサの宝具。学校に展開して魔力を得ようとしたあの結界で、貧血の様に倒れる生徒がいた筈だ。
「と、兎に角、此処から離れて――っ!」
しかし、再び体は重くなり意識が朦朧と始めた。
「ぐ、か、回復……!」
しかし、魔術を発動させるだけの時間は残されていなかった。
「も、う……無理……――」
――全身から力が抜ける感覚に耐え切れず、俺は床に倒れたのだった。
「…………っうぶぶぶ!?」
突然の冷水を掛けられた俺は驚きと共に飛び起きようとしたが、体を何かが抑えていてそれは叶わなかった。
覚醒し、視界を塞いでいた水が落ち切ると、目の前にバケツを持ったブーディカがいるのが見えた。
「ブーディカ……」
「呆れた……どうして此処に来たの?」
溜め息と共にバケツを下ろしたライダーのサーヴァント、ブーディカ。赤い髪の面倒見の良いお姉さん、の筈だが……なんだろう、普段より表情が硬い気がする。
「ねぇ、お姉さん、次に会ったら容赦しないって言ったよね?」
「え、えぇ……?」
どうやら椅子に縄で括りつけられている様だ。
それよりも、彼女のやたら敵意ある言動が気になる。どうやら、複雑な事情があるタイプのシャトーらしい。
「いやまぁ、毒で倒れる君をこうやって助けておいてなんだけど」
「毒!?」
「気付いてなかったの!? ……それは不用心なんてレベルじゃないよ。死にに来たの?」
「そんなつもりは本当にないんだけど……なんで毒が?」
そこまでするなんて本当にどんな状況なんだ。
「……はぁ、そう言えば君は寧ろ毒気を抜く様な事も度々あったね。今ね、此処の廊下には対源氏用の毒が撒かれているの」
対源氏……随分限定的だが、そんな毒を操るサーヴァントを俺は1人知っている。
しかし、あのサーヴァントは召喚していない様な……いや、あの人は確かアヴェンジャーだった筈だ。
つまり、このシャトーは平景清によって作られた物だと言う事か。
「君、今源氏属性が付加されているから長居すれば死んでる所だったよ」
「それは……助けてくれて、ありがとう」
「……」
何故か顔を反らされた。
「ねえ、あの毒は私達の罠だって知って言ってる、のよね?」
「はい?」
ブーディカの罠?
「……お姉さん、そろそろ本気で怒るよ?」
「え、えぇっと……?」
流石に今の俺と彼女の間に看破出来ない認識の差があるのは理解できたので、俺は彼女に問いかけた。
「俺、ブーディカさんのマスターですよね?」
その言葉に顔を強張らせたブーディカは、一度拳を握り締め、開いてからこちらに視線を合わせた。
「……そこまで、惚けているなら思い出させてあげる」
そう言って彼女は俺に説明を始めた。
曰く、現在のカルデア側の戦力は源氏繋がりのサーヴァントのみ。
平景清はまたしても打ち出の小槌を奪い、鬼一師匠まで無力化した上でサーヴァント達を複数引き抜いたらしい。
勿論、全てのサーヴァントがそうなった訳ではない。
源氏繋がりのサーヴァントが彼女に従う事はなく、平景清も怨敵の引き抜きなんてしなかった。
しかし、それ以外のサーヴァントから彼女は小槌を使って忠誠心を奪い、新たに自分に対する忠誠心を与えたらしい。
「だから、今の君は私のマスターだけど、仕えるべき主じゃない」
(カルデアの令呪じゃ、強制力も数も足りないからこの事態に対処出来ないよなぁ……)
「はぁ……でも、君のその気質のお陰なんだろうね。倒すべき君を前にして、こうやって拘束するだけで済んでるんだから」
なるほど。先から微妙に優しくない対応をしていたのにも合点がいった。
「でも、どうした物かなぁ……のこのこ敵のマスターを逃がしたってなったらアヴェンジャーさんに怒られるだろうし……」
「そこを何とか……」
「まあ、まだ君の情報は伝えてないし、取り逃がしたって事にしてあげても良いけど…………本当に忘れてるのかは知らないけど、次に会った時に容赦しないって言ってるんだよね」
「忘れたからノーカンでお願いします」
「駄目です……はぁ、しょうがない」
ブーディカはこちらに剣を向けて振り下ろし、縄だけを切り裂いた。
「それじゃあ、お仕置きだけにしてあげる」
カルデアのマスターを捕まえたけど、彼にすっかり敵意を抜かれてしまった私は、こんな危険な場所に一人でやってくる彼に説教をする為に耳かきをする事にした。
「せ、説教なのに耳かき?」
「はい、良いから此処に頭を置いて」
自分の膝をぽんぽんと叩くと、彼は直ぐに頭を預けた。
――全く、こんな簡単に敵である私に首を差し出すなんて……本当に警戒心がないだよねぇ……
「……んっ」
「あだぁ!?」
悪戯のつもりで首に軽く歯を立ててみたら、痛がって声を上げた。
「大人しくしてね。もう、今ので分かった? もっと警戒心を持たないと君、本当に危ないよ?」
「あたた……だ、だからって急に――いつっ!?」
お姉さんに言い訳をする悪い子の耳たぶを抓った。
「じゃあ、そろそろお説教と耳かき、始めるよ」
「お、お願いします……」
「よし、それじゃあ……あ、細かいのが一杯あるね」
ライト付きの耳かきで見ると、奥にも結構ありそうだけどまずは小さいのから取らないと見辛いかな。
「綿棒でまとめて取ってあげる。
……ごしごし……ごしごしっと」
あ、体が少しピクってしてる。
「……君ね、マスターなんて言っても魔術師じゃない普通の男の子でしょ? これまでいくつも戦場を潜り抜けたって言っても、敵の拠点に一人で乗り込むなんて……あれ? そもそも、それって何か作戦があったの?」
「いや、気付いたら此処にいたから」
「……もしかして、キャスターの誘導の魔術か何かに引っ掛かったのかな? だとしても、やっぱり不用心だよ。此処を出たら、ちゃんと礼装の耐性を更新するんだよ?」
「は、はい……!」
しっかり反省させる為に、綿棒をちょっとだけ押し込むと先より大きく反応してる。面白がってもっとやってあげたいけど、そろそろ綿棒の色が変わる位取れたから、耳かきに持ち替えた。
「うん、これでちゃんと見えるね」
「……」
「メディカルチェックとかで、体をしっかり管理して貰ってるんだろうけど、そのせいでこういう部分は見落としがちなのかな……? すっごい溜まってる」
「う……すいません」
「いいよ。やりがいがあるからね」
一番近いのに狙いを定めて、少しずつ、耳を傷付けない様にそっと……
「っ……!」
「あ、ごめんね。くすぐったかった?」
「い、いえ……ちょっと息が」
ああ、そっか。良く見ようとして耳に近すぎちゃったか。
「ちょっと我慢してね」
耳かきの先端を端に当てる様にして……前に、前に。
「サーヴァントがカルデアを出て行くなんて事、今までも結構あったでしょう?
誘拐とか、強制レイシフトとか……でも、今回はしっかり敵対してるんだから、戦うつもりで来ないと……って、今の私が言っても説得力がないかな?」
「……っ、はい」
耳の中が気になって返事があいまいになってるね。それじゃあ――
「……よし、取れた。
ふー」
「っ!?」
あ、今までで一番大きくピクってして、可愛いなぁ。
「ほら、油断大敵」
「これは唯のイジワルでは……?」
「うーん、じゃあお姉さんが持ってる裁縫用の針で耳かきしてあげようか?」
「も、もう油断しません!」
「よろしい……続けるよ?」
しきりに顔を縦に振る彼が可笑しくって、私は笑いながら次に狙いを定めた。
「……あ、これ大きい」
しかもくっついてるから先みたいに端から転がすのはちょっと無理かもしれない。
「ごそごそってするけど、ちょっと我慢してね?」
「ど、どうぞ……!」
「……本当はね、君はこんな事してる場合じゃないかもしれないよ?
景清はね、直接私に君を殺せなんて言わなかったけど、目ぼしい英霊を小槌で強化してたり、より強固な忠誠心を注いでいるみたいだから…………」
「そ、そうなんですか?」
「うん……まあ、だからこうやって敵である君を妨害するって言う名目で、耳かきなんてやれてるんだけどね……あ、剝がれたね。じゃあ後はこれを引っ張って……」
大きいがとれそうで、耳かきがを動かしている手が少し早る。
「あっ……!」
「と、ごめん。ちょっと当たったかな?」
「だ、大丈夫です」
「うん……私もね、きっとその内小槌を振られると思う。
影清は生前の恨みや復讐心を持つ者を選んでいるみたいだから……」
「源氏に恨みがあるアヴェンジャーだから、相性がいいのかもしれない……」
「そうだね……でも、流石に自分の主でも、そんな風に恨みを弄って欲しくはないなぁ」
「……ブーディカさんのそれは、自分で持っているべきものだよ」
そんな風に言われると何故だか少し恥ずかしいようで、嬉しくなった。
「君は、私のそんな側面、汚いと思う……?」
「思わない、です……ブーディカさんは、どんな想いがあっても、それがブーディカさんだから」
彼の言葉に、自然と頬が緩んでしまう。
「君、さてはお姉さんたらしだなぁ……? お姉さん以外に、何人のお姉さんがいるのかなぁ?」
「い、いないですって」
「ほんとぉ? じゃあ、耳かきされたりは?」
「母親位ですよ」
「ふーん、じゃあ私が君の家族以外で初めて耳かきをしてるって事だよね?」
「そう、です……」
なんか、本当みたい。
嬉しくなった私は、ちょっとご褒美を上げる事にした。
「“……私が君の初めての人、だね?”」
あ、また大きく反応した。
耳まで赤くして、可愛い……!
「ふー、取れたぁ……次は反対だね」
「……はい」
「緊張しちゃった?」
「あ、いや……むしろ、解れた気がします」
「むぅ、一応、緊張させる為のお仕置きだったんだけどなぁ。
次は、やっぱり針を使おうかなぁ?」
「や、やめて下さいって!」
「ふふ、じゃあ次はすぐ終わらせちゃうからね。
気持ちよくなってね、
一番の嘘は、ヤンデレが微塵も存在しない事だったりする。
今週の日曜日まで5周年記念企画の募集を行ってますので、活動報告の方を読んで応募して頂けると嬉しいです。
FGOは次の大量霊衣が気になりますね。今のアキバイベントも含めて頑張ります。