ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】 作:スラッシュ
※今回は最新サーヴァント、アルトリア・キャスターが出ます。
まだ育成が終わっていない方、絆レベルが上がっていない方、召喚出来ると思っている方はネタバレ注意です。
今回はちゃんとしたコメディ回です。水着までの筆休めって感じです。
「またか」
「まただな」
「またか……」
ヤンデレ・シャトーの中で何時もの2人と顔を見合わせ、互いに同じ事を呟いた。
後はあのモードレッド馬鹿が来れば完成する。
「一体、何を基準で集められているんだろうな」
「さぁな。案外、全員近くに住んでんじゃねえの?」
「こんな変なご近所さん、嫌だなぁ……」
(それはお前だよ!)
と玲の奴も思っただろう。
「全員、集まったようだな」
「あ、皆来てくれて助かるよ」
やはりエドモンと一緒に山本がやって来た。
「今回はお前達なら馴染みがあるだろう。騎士王を用意した」
「騎士王って言うと、アルトリアの事か?」
確かに、玲は謎のヒロインXオルタと、山本も血縁関係のあるモードレッドと一緒にいる事が多かったりするが……
「俺と陽日は関係なくないか?」
「そうだ……寝させ……」
寝ながら抗議するな。
「切大、貴様には多少の縁はあるだろう」
っち。こっそりターゲットから外れるつもりだったが駄目か。
「何と言おうと変更はない。諦めろ」
「そういう事だから、皆よろしくね」
「ちょっと待て」
エドモンにシャトーへ送られるより早く、俺は山本を呼び止めた。
司会者側と一緒に現れた事も怪しいし、こいつまさか……
「まさかお前、モードレッドに安全に会いたくて俺達を売ったんじゃねぇだろうな?」
「えぇ、嘘でしょ?」
どうやら玲と陽日も同じ結論に至った様だ。
「…………そ、そんな訳ないじゃにゃいか」
「間を開けた上に噛んだな」
「殺す」
「戦争だ」
玲と珍しい事に普段はずっと寝ている陽日が立ち上がって拳まで握っている。
「ご、ごめん! でも、今日は本当にピンチだから……!」
「知るか! お前のサーヴァントだろうが!」
「だよな」
「睡眠妨害で訴えてやる」
「文句があれば、こいつの場所までサーヴァントを連れてこい」
エドモンの鶴の一声で俺達はヤンデレ・シャトーに送られた。
「……ふぁ……もう200回位回したけど出てこないなぁ」
その日、僕はガチャを回していた。
新しいアルトリア……性能云々よりも、僕の愛しのモーさんの為に召喚しておきたいと思ってなけなしのお小遣いも使って回すけど出ない。
もう遅いし、これで最後にしよう。
そう思って僕は召喚のボタンをタップした。
『――』
「お、出たぁ!」
漸く現れたアルトリア・キャスターを見た瞬間、全身の力が抜けてそのまま寝てしまった。
しかし、可能性は収束するらしくて……
「なるほどなぁ……あの野郎。俺は66連で1人引けたから十分だってのに……!」
「マスター? どうかしましたか?」
「気分でも優れないのでしょうか? 横になりたいのなら、膝を貸しましょう」
目の前のサーヴァント……達を見て、俺はなんとなく状況を理解した。
アルトリア、Fateの顔とも言える騎士王の事だが、最近になってセイバーではなくキャスターが実装された。
そんなアルトリア・キャスターが、2人。
一人目はノースリーブな衣装に茶色のポーチと耳当ての付いた帽子を着用している。言ってしまえば騎士王とは程遠い何処にでもいる少女だ。
魔術を研究しているらしく、杖を握っている。
二人目のアルトリアは同じサーヴァントの筈だが、霊基再臨を数回行った後の王の姿。王冠を被って大剣を構えており、服には金属製の胸当てや腰当てが施され、青のリボンで髪を縛っている。
「……なんでもない。とにかく、アイツをしばきに行こう」
「良く分かりません……了解しました。マスターの敵は私の敵ですから」
「出掛けるなら共に行きましょう」
俺達は部屋を出た。
カルデアらしき廊下を見て、山本の野郎を探す為にしらみつぶしで歩き回る事にした。
まさか、後ろから不意打ちされるとは思っても見なかった訳だが。
「あっ、と!?」
両足を青い光に拘束され、俺が地面に倒れるより早く、光の刃が青い光の縄を刺して固定した。
「やりました!」
「ええ、成功ですね」
明らかに結託している2人のアルトリアを見て、俺は困惑する。
「ちょ、なんで……!」
本来、ヤンデレは想い人の隣に他の女がいれば排除する様な、助け合う事のない連中だ。だから俺もちょっと油断して行動していたのに。
「お忘れですかマスター? 私は確かに王の様な風貌ではありますが、中身は若き私となんら変わりありません」
「それに、同じ私同士で大好きなマスターを巡って争うなんて不毛じゃないですか」
確かにカルデアに召喚された同名サーヴァントは絆レベルが共有だけど……いや、これは召喚されてからまだ日が浅いから俺に対する好感度が低く、それ故に独占欲も薄くなっているんだ。
独占欲が薄いなら拘束なんてしない? 俺もそう思っていた時期があったよ。
「マスター、何処に行くつもりだったか知りませんが……今日は私と一緒に過ごしましょう」
「ええ。私にこのカルデアを案内してください」
「だったらこの拘束は要らないだろ!」
「駄目ですよ。私、お転婆ですからふらっと迷子になっちゃうかもしれないのでこうしてマスターと繋がってないと離れ離れになってしまいます」
「ええ、それは困ります」
足の縄は解かれるが、代わりに両手を縛ると2本の先端を嬉しそうにそれぞれが1つずつ握りしめた。
「さ、行きましょう!」
「まずは腹ごなしですね。案内して頂けますか?」
宙に浮かぶ光の剣がこちらに先端を向けていなければ断っていたが、俺は黙って頷くしかなかった。
「――またサーヴァントを増やしましたね部長」
「言いながらその妙な力で突っつくな」
いつも通り、俺の隣を歩くXオルタ。
反対には山本の野郎に押し付けられたであろう耳当て帽のアルトリア・キャスターがいる。
「お前も、山本のサーヴァントなら引っ付くんじゃねぇよ」
「違いますよ! 私はマスターのサーヴァントです!」
「本当かぁ?」
強い強いと俺のダチが言っていたので当然呼符で召喚してあったが、先の話的にこいつは俺じゃなくて山本のって感じじゃないのか?
「私は本来、その人のサーヴァントとして此処に出現する筈だったんですが、それを譲ってもらう形で此処に来たんです! だから、私は間違いなくマスターのサーヴァント! そう言う訳ですので、エスコートをよろしくお願いします!」
「譲るねぇ……」
「部長。このレアプリズムで夢火を交換しましょう」
「指を指しながら物騒な事言うなよ」
工房はあっちです、じゃねえって。
「まずはどこに行きましょう!」
「工ぼ――」
「――普段学校にいるからあんま馴染みがないが、あっちに行ってみるか」
このままだとまた戦いが始まりそうだし、居場所が分からないまま探索を始めた。
見つかったのはトイレ、休憩室、職員の部屋とあんまり関係なさそうな部屋ばかりで山本の影も見えはしない。
『――』
「ん? なんか聞こえたぞ」
「誰かが話してますね」
「っしゃ!」
遂に見つけたと思い、声の聞こえる方へと走っていく。
拳を握りしめつつ曲がり角を曲がるとそこには――
「マスター、いい加減起きて歩きませんか?」
「もしかして本当に呪いでしょうか?」
――2人のアルトリア・キャスターを困らせたまま相変わらず寝ている陽日を見つけた。
「はぁ……なんだ、陽日か」
「……ぐー」
寝てやがる……そして奴の寝転がったベッドは魔力の青い車輪と縄で引っ張られている。
取り合えず、一度起こして情報を共有するべきか。
「全く……おい、起きろって」
「あ、ちょっとそんな軽率にマスターに近付かないで下さい!」
俺を止めようと2人のアルトリアが触れた。
その瞬間、2人は消えた。
「……ん?」
俺と寝ている陽日だけがそこにいる。
「え? いやいや、待て待て? 殴ってすらいないから、別に消滅した訳じゃないよな?」
慌てて周りを確認するがやはり俺以外の誰も周りにいない。
「ぶーちょーーぉーーー」
Xオルタの声が曲がり角から聞こえて来た。そう言えば、先のダッシュで置き去りにしちまったな。
「また、増えましたぁーー」
「はぁ?」
俺の疑問の声と同時に、曲がり角からXオルタとアルトリア・キャスターとキャスター、そしてキャスターとキャスターが……っておい!?
「増えてんじゃねぇか!」
「ですから、そう言ったじゃないですか」
「俺はもう重ねて宝具レベル5だぞ。なんで4人もいるんだよ?」
「分かりません。先程突然増えてしまって……」
もしかして、他の奴のサーヴァントに触れたら勝手に契約が入れ替わるのか?
「……なあ、お前ら。そこの寝てる奴がいるから起こしてやってくれないか?」
試しに俺がそう頼むと、Xオルタには変化が無かったが……アルトリア・キャスター達は全員一度消えてから陽日の周りで再出現した。
「マスター、起きて下さい」
「お寝坊さんですね、私も寝ちゃおうかなぁ」
「せめて部屋に行きませんか?」
「ふふふ、可愛い寝顔ですね」
「なるほど。元々あの野郎のサーヴァントであるこいつらの契約は移せて、Xオルタは俺のだから変わらないって訳だな」
「ふう、これで部長と私だけですね」
「……煩い……騒がしい、眠い……」
「山本に返してやる為にはこうすればいいって事だな」
「なら部長。このまま私と一緒に探しに行きましょう」
「そうだな……寝てる所悪いが、こいつらの相手は任せるか」
「ちょっと待て……置いていくな」
「起きてるのかよ」
「寝たい」
「じゃあそのままでも良いだろ?」
「いやだ」
「……さくっと山本を引っ張ってくるからそこで待ってろって。な?」
陽日を救出しても多分寝直そうとするだろうと思った俺は、奴を置いてカルデアの散策に戻る事にした。
「マスターの好きな人を教えて下さい!」
「ノーコメントで」
「別に私では無い事は知っているので、どうぞ遠慮なく言って下さい」
食堂で俺は椅子に座った状態で縛られて、2人のアルトリア・キャスターに尋問されていた。
「……」
「私達は友人じゃないですか。秘密を共有して、仲を深めましょう」
「あ、でしたら私達から質問に答えましょう。何か知りたいですか?」
「……じゃあ、好きな物は?」
「むぅ。その質問に関してはもうマスターの部屋でお答えしましたよ?」
「はい、マスターにバツ1つです」
大剣の方のアルトリアが嬉しそうに笑って魔力の縄を追加した。
「……これは?」
「えいっ!」
「っぐぅ!?」
可愛らしい声で追加した縄を引っ張られ、体を強く締め付けられる。
「では今度は私の番です。マスターの好きな人は誰ですか?」
「うっ……ま、マシュ……!」
カルデアのマスターが好きなのは、間違いなくマシュ。だから俺はそう答えた。
「へー、そうですか」
「では次はマスターの質問ですね」
「……きゅ、休日の過ごし方、とか?」
「うーん、魔術の研究か、寝てばかりですね」
「ええ、普段は忙しいので休める時に休むのが大事です」
「なら俺を休ませてくれても良いだろ……」
「駄目です。じゃあ、マスターはどんな風に休日を過ごしているんですか?」
もはや尋問から拷問に変わっているアルトリア・キャスター2人の質問攻めに苦しめられている。
「……はぁ、はぁ……」
もしかしてこれはキャストリアシステムとか言うサーヴァント過剰運用に対するアンチテーゼなのだろうか?
「知れば知るほど、マスターの事が知りたくなってきました。あ、汗が……よしよし、拭いてあげますね?」
「そろそろお水が欲しくはないですか? 火の神が造りあげた大剣から拘束の魔力を使用しているのでマスターの水分を徐々に奪っているんです。渇きを感じたら危険ですので早目に言って下さいね?」
マジモンの拷問だった。
「み、水をくれ……」
「じゃあ、この質問にだけ答えて下さい」
「マスターの、本当に好きな人は、誰ですか?」
やめろ。
それを口に出せば絶対このシャトーで戦争が始まるから。
「知っているんですよ? マスターは様々なサーヴァントに好かれて大変モテモテなんですよね?」
「マシュさんが好きなのも嘘ではないでしょうが……もっと好きな人がいるんじゃないですか?」
「アルトリアだよ」
「……」
「……」
2人は笑顔を向き合い――
「――不正解ですね?」
「――もう1本追加しましょう」
「それは勘弁してくれ!」
俺の言葉など聞かずに、更に縄が追加された。
「隠さなくても良いじゃないですか?」
「ええ、友人に隠し事は無しです」
「いや、でもやっぱり恥ずかしいし……」
「では私に何故怯えているか、聞いても良いですか?」
「……まあ、同じ顔のサーヴァントに苛められたのがちょっとトラウマで」
「そうですか。それは気の毒ですね。ええ。だから私にちっとも心を開いてくれないんですね?」
いや、それはこの状況のせいです。
なんて言えないので黙って首を縦に振った。
「だったら、やはり相互理解を深めるのが大事ですね!」
「アルトリア・ペンドラゴンと同一視されたままなのは、嫌ですからね」
漸く縄を外され、水を差し出された。だが、依然として俺は椅子に縛られたままだ。
「ああ、まだマスターは両手が使えませんでしたね! じゃあ、私が飲ませます。お口を開けて下さい」
「そうそう。ゆっくり飲んで、むせないでください」
この後も、俺は彼女達との強制的な会話をこなして、30分後に漸く解放される事になった。
「では、カルデア探索再開です」
もう俺のスタミナは――と言えば元気に回復された。
やっぱり、全国で馬車馬の如く働かされているアルトリア達の仕返しなのではないかと、俺は肝を冷やしながら廊下を歩いた。
「……あ、此処は」
「私とマスターが出会った場所。召喚室ですね」
「う……気持ち悪い……!」
「ベッドを運ばずに、マスターを担げばよかったんですね!」
「行きましょう! このシミュレーションの丘は走り回るのに最適で気持ちいいです!」
「揺れる……!」
「あ、あっちは町ですよ町! なんか現代みたいです!」
「行ってみましょう」
「ぐ、煩い……!」
最悪の悪夢だ。
夢の中なのに揺らされ、騒がれ、とても寝れる様な状況じゃない。
「マスター、あれは何でしょうか?」
「観覧車……」
「あれは?」
「ジェットコースター……」
「あの黒くて恐ろしい場所は……?」
「お化け屋敷」
そもそも、そんなものが全部そろっているのって遊園地ぐらいじゃ……遊園地だった。
「なんでもありますね!」
「あ、あのグルグルする奴に乗りましょう!」
「……ん……あれは?」
全部が騒がしい遊園地の中でひと際大きな金属が聞こえて来た。
仕方なく前を注視すると、そこには鉄棒を振ってる諸悪の権化である山本と災厄の元凶である玲が見えた。
「――てめぇ! 大人しく、自分のサーヴァントの手綱を握りやがれ!」
「僕のサーヴァントはモードレッドだけだ! このデートは邪魔させて堪るか!」
相変わらず人外な身体能力を発揮する玲に、意外な事に山本が必死に食らいついている。
「負けるか! 僕は絶対に、幸せを掴んで見せる!」
「主人公みたいな事言ってんが、てめぇはヤンデレを押し付けただけだからな!」
…………よくも俺の睡眠を邪魔しやがったな。
「目に物みせてやる」
殆ど使っていなかった令呪を発動させて、全てのアルトリアに命令をする。
玲は確か、このサーヴァント達を触れさせて擦り付けた。だから、こうすればきっと――
「――全アルトリア! 山本を取り押さえろ!」
「…………すいませんでした」
「おい、何俺にだけ謝ってんだよ。あの2人が来たらきっちり土下座しろよ」
「はい、本当にすいません……」
玲との戦闘中に全ての自分のアルトリア・キャスターに取り押さえられ、そのまま押し倒されて服を脱がされそうになった山本をモードレッドが頬をぶっ叩いた事で悪夢が終了し、一度全員がカルデアの食堂に集合する事になった。
「にしても遅いな」
玲の言葉とともに食堂の扉が開いた。
そこには体のあちらこちらに縄の跡が残っている切大と、不機嫌そうな顔を浮かべる陽日が立っていた。
「……」
「……」
「お、おい? 大丈夫か?」
「ご、ごめん2人とも! 僕、ちょっとモーさんに会いたくて――」
2人はそっと扉から左右に移動する。
その後ろからサーヴァントであるシャルロット・コルデー、マタ・ハリ、ガレス、サロメが10人ずつ入ってきた。
「……え、えーっと?」
「いやー、ちょっとフレンドガチャ引き過ぎちゃってさぁ……なあ、山本、暫く預かってくれるか? そうだよな。アルトリアも預かったし、別にいいよな?」
「あ、あの、僕モーさん一筋で……っひ!?」
更に後ろからメイブ、シトナイ、ケツァルコアトル、カイニスにゴルゴーンがやって来た。
「これは、玲。君にだよ」
「……はぁ!? 何でだよ!?」
「忘れた? アルトリア全部置いて置き去りにしてくれたお礼だよ」
「あ、あれは緊急時で……!」
「「言い訳無用だ!」」
この後、カルデアの食堂が原型を留める事無く崩壊したのは言うまでもないだろう。
最近は少なくなりましたが、少し前はこの小説の感想で自分とヤンデレを押し付け合っていたのでそれを再現してみました。
この後、玲も多分仕返しの仕返しをする事でしょう。
水着でまさかのキアラさん登場。あの人を引いてしまえばヤンデレ・シャトー入りですので出来れば水着化して普段と違うテンションでいる事を願うばかりです。
アルトリア・キャスターは無事引けました。水着ガチャもそこそこ回せる程度に石が残っていますので17日が楽しみです。でも今回人妻多くないですかね?