ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】 作:スラッシュ
今まで一度しか登場してないマスターをもう一度使い回そ――サルベージする話です。
ゲーム実況者のぺたろーがヤンデレ・シャトーで送る日常です。
はい、皆様こんにちわ!
森羅万象あらゆるゲームを遊びます、八百億チャンネルのぺたろーです!
今回実況するのは新宿の復讐者さん制作の
えー、この製作者さんの作るゲームはですね、化け物や人間とは違う、動物を題材にする事が多く、自然の怖さや普段人が気にも留めない悪行に対する罰等が込められている物が多いです。
いやー、こうやって新作が遊べるのが大変嬉しいですねー(諦めの棒読み)
過去に同じ製作者さんのゲームをプレイしています。概要欄にリンクを載せておきますので、そちらも合わせてご視聴下さい。
……ゲームが始まりましたね!
『ねぇ、お願い』
おっと? いきなり、体が半分陰で隠れてるけど可愛い女の子が……雨の中で手を伸ばして、助けを求めてる……?
『助けて――!』
うぉ!? 狼!? 後ろに狼いる!?
『お願い、助け――』
男はクズ野郎だったのか、当然の如く一目散に逃げてしまいましたね……山の中か? めっちゃ走ってって……って、女の子が凄い勢いで迫って――狼になった!?
『――置いて、かないで』
死んでしまいましたね。
あーでも、これはじゃあプロローグか……“囮”、始まりましたね。
やっぱりタイトル通り、主人公の仲間が“囮”にされるのかな?
――ん?
「――え、っと、ちょっと待ってくださいね!」
誰かが扉を叩いた音を聞いて、俺は配信中のマイクを切って外へ出た。
「ん? 誰も……あれ? ご飯?」
扉の向かいの壁におにぎりの乗ったトレイが置いてあった。ご丁寧に【マスターへ】と書かれた紙が添えてあった。だけど、左右を見ても誰もいない。
「んー? エミヤかな? でも、ヤンデレ・シャトーって女性サーヴァントしかいないって聞いたんだけど……」
こんな事をする相手が分からなくて疑問符を浮かべながら、トレイを持って部屋へと戻って扉を閉めた。
「よし、配信の続きを――」
「――という訳で、この枠は今からあたしとちゃんマスのラブラブ配信に変わりまーす! どんどん高評価押して、スパチャもポンポーン、送っちゃって! 送られてきたスパチャは一銭残さず全てあたし達2人のデート代に使い切っちゃうかんねー!」
何処からともなく
アゲアゲでキラキラな青黒ツートンヘアーのアーチャーである彼女は、なぎこさんと呼ばれるのを好んでいる平安時代のパリピ女子だ。
「って、何してくれてんのなぎこさん!?」
「でっへへー! ちゃんマスの部屋にこっそり入ったら、なんかこうエモさが止められなくってさぁー! あ、ちょち待ってて!」
俺のゲーミングチェアを足場に思いっきりジャンプし、空中で一回転してから扉の前に着地したなぎこさん。
肩にかけていた鞄から何か、スマホの様な物を取り出して扉を背に自撮りを始めた。
「イェーイ! ドヤッ!」
「な、なにしてんの……?」
戸惑いの声をあげると、突然扉が輝いた。
「あたしのスキルでこの扉、恋の関門に変えちゃいました!」
「え、もしかして逢坂の関の事?」
「そそっ! 流石ちゃんマス、良く分かってるー!」
先からテンションが計り知れない程に盛り上がっている彼女は、思いっきり俺に抱き着いてきた。
「ちょ、ちょっとなぎこさん!?」
「んーへへへ、あたしめっちゃ仕事したでしょ? ちょっと甘えてもいい?」
「いや、そもそも配信が――」
俺のこの配信はカルデア内の端末からなら誰でも見られる様になっている。
こんな配信をしたら今すぐにでもヤンデレサーヴァントが――ん?
「ねぇ……なぎこさん?」
「んー? キスしちゃう!? ちゃんマス、遂にあたしに告白を――」
「――マイクのミュート、切った?」
「……ミュートって何?」
……良かった。どうやら、これまでの音声は配信されていないようだ。
コメントに『マスター?』とか『大丈夫ー?』とか『他の女と話してるの?』とか流れてるけど……
「……よし、じゃあなぎこさん。一緒に配信しよう」
「ほっほー! なるほどなるほど、カップルチャンネルだね!
きゃーとか騒いで、抱き着いてやんよ! ぐへへへへ……」
うん、俺にこのテンションは荷が重い。
「じゃあ、配信再開でーす――」
――はい、戻ってきました。
――ちゃんマスのカノピッピ、なぎこさんでーす!
なぎこさんは妄言パリピ女子だからスルーお願いします。
えええ、そりゃねぇぜちゃんマス! ユーとミーの仲だろぉ?
主人公と友達の4人が妙な噂のある館に遊びに来た所から物語が始まりますね。
はいはーい! なぎこさん、似たようなゲーム知ってまーす! 青――それ以上は言わないでね。
『あっちから音がした!』
『僕が先に見てくるよ』
うわー、なんで1人になりたがるのこの人? ウルフ系男子?
物語の進め方にケチつけないでね。まあ孤立するのはホラーゲームのお約束だし、これで主人公が死んだりはないと思うけど。セーブしとこ。
うんうん、危うきにはセーブして近寄れって事ね。
『ギャァァァ!』
玄関の方で騒ぎ声! 来ましたね!
悲鳴だけやたらリアル……ねぇ、これって新宿のDQNの悲鳴じゃ……
製作者が製作者だし、本当にそう聞こえるからやめて。
『皆!?』
皆いなくなってんじゃーん! やばー(棒読み)
予想通りだけど、これから敵が出てくるのかな? 取り敢えず探索だね。
『た、助けて!』
女の子が部屋の中央の檻に捕まってるよ。
ちょ、ちゃんマス、罠だよこれ罠! ハニートラップって奴!
いや、でもプロローグを見た後だと逃げるのも不味い気がするんだよ。助けよう。
『――グルルルル!!』
ひゃ、でっかいワンワン!?
逃げないと、ってなぎこさん腕に引っ付かないで!?
あ、ちゃんマス壁にぶつかってる、壁!
『Game Over』
なぎこさん、なんで腕に抱き着いたの?
だ、だって……ちゃんマスが、怖がらない様に包み込もうかなって……大人の母性的な感じで。
……
あー、なぎこさんの胸を鼻で笑ったなぁー!? そりゃあ、あの源氏の棟梁の迫力には数段劣りますけど――ちゃんとあるからね!?
(別に大きさの問題じゃなくて色仕掛けで来るタイミングの最悪さに呆れただけなんだけど)
次邪魔したら怒るからね。
ちゃんマスのツンデレめー! あ、コメント欄めっちゃ荒れててウケる。
誰のせいでしょーね。
『あの娘を助ける為に、檻の鍵を見つけないと!』
うぅぅ……あたしのアンチにめっちゃ正論書いてる人がいるー。無理無理、こんな人と絶対に友達になれないよー。
はいはい……あ、スパチャありがとうございます。
よし、この金でデートしに行こうよ!
また荒れるからそう言う発言は控えてね。
『へぇ……あいつを助ける為ね。分かった。俺は1階を探しておいてやるよ』
こいつめっちゃ嫌そうな奴だね。
そうだね。だけど、生き残ってるならこの後何かしでかすかも。
……ちゃんマス、詰まった? あたし今アンチとレスバしてボコボコにされてるから慰めてぇー!
うーん、行ける場所全部調べて、後は1階だけか。
あ、アンチさん今からこっち来るって。なぎこさん特製セキュリティの前に泣くが良いわ!
「なぎこさんは此処にいらっしゃいますか!?」
「うぉ!? うっそ、スキルで閉じてたのに!?」
俺はまたマイクを切った。
「当世風の文章に詳しい後輩がいますので簡単でした!
そんな事より、何故此処にいるんですか!?」
「えー、私とちゃんマスはズッ友だよぉ? 遊びに来てもふつーでしょ?」
「配信の邪魔をするのが友人のやる事ですか! マスターの配信を作業用BGMに日記を認めるのが日課で――っは! すいませんマスター! 私まで配信のお邪魔を……!」
「大丈夫。気にしてないから」
「……あ! そーだ! あたしたち3人で配信しよう!」
「そ、そんなの、ダメに決まってるじゃありませんか……!」
「えー、ダメなのちゃんマス?」
もうここまで来たらどうとでもなれだと思う。
「大丈夫だってさ!」
「で、ですが……」
「あ、ほらリスナーが待ちきれないってさ! 始めちゃおう!」
『へへ、ごくろうさん。じゃあ、俺がこの鍵であいつを救ってやっから』
あー、この野郎鍵だけ持って行きやがった!
やっぱり性格悪い奴だったな。
ですが、あの女性は“囮”ですのでこの方はもう死んでしまうのでは?
かおるっち、メタ読みは駄目だよ?
なぎこさんも最初の方に言ってたよ。
『っひ、ば、化け物!?』
あー、あのワンワンリボンついてる! 女の子、狼になっちゃってんじゃん! やば、逃げないと!
ですが、食べれた方の傍に鍵が……
新しい囮って事かな。
『“地下の鍵”を手に入れた』
これ絶対食べられるって! 右向け右!
逃げて下さいマスター!
ちょ、紫式部、む、胸が……!
『ゲームオーバー』
かおるっち、そりゃないぜ……ちゃんマスをそんなロケットステイツで誘惑するなんて……
え、あ……マスター、私の、その……ご満足頂けたでしょうか?
ちょ、かおるっち未亡人設定忘れてるでしょ!? ちゃんマスも、いつまで赤くなってんの!?
……つ、次行きましょう。
『地下への入り口が開いた』
かおるっち、先から近すぎじゃない?
マスターは私の友人なので、これくらいの距離間でも問題ないです。
ほっほほ……かおるっち、積極性であたしと張り合うつもりかえ? 今こそなぎこさんの大人の色気を見せる時!
『此処から出して!』
また囮か。でも、今度は助けられるかもしれないからセーブしてから探索しよう。
貴方とマスターなんて組み合わせが「マッジ有り得ない!」です! サーヴァントとしての甲斐性もないのに従者ポジションとかネタ枠です! 恋とか根本的に向いてません!
未亡人キャラだってくっついたら魅力半減、ガン萎え間違いなしでしょ! アンケして……え、そっちの方がアガる? 背徳感?
(これは流石に放送事故…………そうだ、先なぎこさんが持ってきたおにぎりを食べさせよう)
『出してくれてありがとう。でも――もうお腹すいちゃったの』
ふう、なんとか最初のエンディングに辿り着きました。バッドエンドAですね。どうやら、移動回数に応じてイベントが進んでしまう仕様の様です。
次回の配信ではエンディング回収をメインに、難所を攻略して行きたいと思いまーす! じゃあ、さようなら!
「終わった……」
そして俺は後ろを振り返った。
直前まで騒がしかった2人はどちらも、おにぎりを一噛みして床に倒れている。
「何か、怪しい薬でも入っていたのか?」
ありうる。なんせ、なぎこさんの初登場でも紫式部が持ってきた薬入りのチョコが原因だったし。
でも無視して扉へと歩こう。
「喉が渇いてきたし、水でも飲みに――え?」
足を掴まれた。
思わず掴んだ本人を見ていると、先までの奇抜な衣装ではなく引き摺る程に長い和服を着たなぎこ……清少納言がこちらを見ていた。
「……なぎこ、さん?」
「清少納言、そう呼んだ方が良いって思ったんでしょう? そう呼んだらどう?」
そう言って手に持ったセンスを僕の首に向け、くいっと上げた。
「えーっと、これは……?」
「っぷ……あはは!
ちゃんマス、引っ掛かった? ざんねーん、なぎこさんでしたー!」
ちょっと焦った。
もしかしたら、またバレンタインの時の様な特異点が? って心配になった。
「いやー、まさかパラっち、オケっち、セミっち、アスっちから渡されたおにぎりが前と同じ様な事をする物だとは思わなくてさー」
「メンバーも同じ!?」
でも、大事にならないなら良かった……
「……あの、ちょっと良い?」
「ん?」
「あたし、ちょっとウザ絡みしたり、ちょーっと空気読めなかったするけど……こんなあたしでもちゃんマスの傍にいて、良いかな?」
ちょっとでもちょーっとでもなく、超ウザかったけど……
「うん、勿論」
「だよねー! ちゃんマスならそう言ってくれると思ったー!」
あの、突然抱き着かれるまでは許すけど、押し倒すのはなし!
「ちょ、っあはははあ! だ、めぇあっあはははは! なんで、くすぐってぇぇぇ!?」
「わははは! あたしはせーじゅん派なので、愛おしさがヤバみが深まってきたらくすぐりで誤魔化す事にしたのだ! つまり、今のマスターは大好きだから絶対離さないぞと、“泰山解説祭”の前に伝えておく!」
駄目だ、くすぐり攻撃が激しすぎて何言ってんのか何も分かんない。
「あ、あひゃひゃひゃひゃっ! ちょっと、本当にまひぇえあははは!?」
「……え、なんですかこの状況?」
「あ、かおるっちもくすぐる?」
「くすぐりません! ていうかやめて下さい!
マスター、マスター!? 本当に泡拭いてますけど、大丈夫ですか!?」
ヤンデレ成分が低過ぎるって? 自分もそう思います。
なぎこさんのアクが強過ぎる。あの人、ヤンデレ・シャトーでも構わずはっちゃけるのは間違いなしですからね。
因みに、企画以外では切大は基本作者の召喚したサーヴァントとしか会いませんが、他のマスターは違います。
何が言いたいかと言うと、自分は紫式部も清少納言も召喚出来ていないって事です。
……まあ、日本サーヴァントは清姫がいますので(泣)!