ヤンデレ・シャトーを攻略せよ 【Fate/Grand Order】 作:スラッシュ
更新開始という訳ではなく、未だヤンデレ・シャトーを心待ちにしている読者様達にバレンタインに合わせて短い話を投稿させて頂きます。
今回の話はバレンタインデーの個別イベントをヤンデレ風に改変していますのでネタバレになってしまうかもしれません。
気になる方は先にスカディ、メドゥーサ(槍)、アナスタシアのイベントを見ておく事をおすすめします
スカサハ=スカディ編
全てのサーヴァントにチョコを渡し、プレゼントを受け取るというのが今回のヤンデレ・シャトー脱出の条件だ。
シュミレーターのある領域、氷の城がそびえ立つ一角にやってきた俺はスカサハ=スカディと対面する事になった。
「む、マスターから渡してくるとは……良い心掛けだ。その行いに私も答えるとしよう」
「ありがとう」
渡されたのは冷えた容器に入れられたアイス。透明な氷の様にも見える程、澄んだ青色をしている。
「……愛か……」
スカディが悩みの色を呟いた。
「マスター……今の私に愛は無い。
だが、私の中で別の似た何かは私の中で燻り続けている」
そんな気はしていたが、彼女は城の出入り口を塞いでしまっている。このままでは出られない。
「ああ――そうか。愛ではないのか。今、お前だけを見つめているこの感情は――恋なのか」
「うっぐ――!」
勝手に納得行く答えを見つけた様だが、それは俺の解放ではなく捕縛を意味する。
ルーンの魔術で動く事も、喋る事すら封じられた。
そして、そんな俺を見下ろしながら玉座から立ち上がり、ゆっくりと階段を降りていく。
「少女の様にはしゃいでしまっているのだろうが、恋には不慣れ故、許せ」
氷を叩く足音がコツ、コツと響いて近付いてくる。
何時もなら藻掻いて抗うのだろうが、今回は――女神の城に閉じ込められた時から既に諦めていたのかもしれない。
「お前の心に触れたならば、あるいは――」
メドゥーサ(アナ)編
「じゃあ、一緒に探そうか」
「…………え? い、良いんですか?」
ランサーのメドゥーサに出会った俺は彼女の探している姉妹を一緒に探すと言った。
去年のバレンタインイベントではそう言ってチョコレートを貰った筈なので、適当な所で手分けして別れれば良いだろう。
「ありがとう、ございます……そうでした、マスターにこれを用意していました!」
そして狙い通りチョコを貰った。よし、後は別れるだけだ。
「ありがとう、メドゥーサ」
「じゃあ、早速探しましょう。まずはこの先の大倉庫から――」
彼女の指差す先に向かい、扉を開いた。
「……誰もいないみたいだな」
「そうですね」
俺は倉庫から出ようとドアノブを握った。しかしその瞬間、鎖が俺の手首を縛り槍で鎖の穴とドアを貫いて固定した。
「な、なんのつもりだメドゥーサ?」
「……ごめんなさいマスター。
姉様達は……きっと簡単には姿を表さないので、マスターに誘う為の囮……? になって欲しいです」
「囮って……大体、2人が俺に釣られると本気で思って――」
「――来ないならその間は、マスターは私だけの物ですね?」
メドゥーサの目が怪しく光り始めた。
あの2人には劣るだろうが、魅了の魔力が籠もっているのを理解した俺は慌てて目を逸らした。
「っ……やっぱり、私の力では魅了出来ないのですか……」
気落ちした声で俺に近付くと、その小さな体で俺を抱き締めた。
「……寂しいです。マスター」
「甘えるのはいいんだが……せめて鎖を解いてくれないか?」
「嫌です……姉様達を縛る様な真似は出来ませんから、姉様達の次に好きな貴方は絶対に放しません」
「だから一緒に探そうって……っん?」
顔を俺の胸に埋めた彼女をあやそうとしていると、倉庫の扉を誰かがノックした。
『小さなメドゥーサは何処かしら?』
『居るなら返事なさい』
漸く来た様だ。これで後は2人に妹を預けておしまいだ。
「ほら、エウリュアレとステンノだ。来てくれたぞ」
「……本当に、来てくれたんですか?」
『マスターが今年の貴女の贈り物なのかしら?』
『ならたっぷり一緒に遊んであげないと……ね?』
「すいませんマスター。倉庫のドアが厚いので何も聞こえません」
「え?」
メドゥーサの意外な一言に思わず声が溢れた。
『……どうしたのかしら小さなメドゥーサ? 具合でも悪いのかしら?』
『こっちに来なさい』
外の2人の声も険しくなった気がする。
だがメドゥーサの顔は喜びに満ちており、瞳の輝きもより一層強くなっている。
「マスター、今日は私達だけで……イケない遊び、しませんか?」
アナスタシア編
「マスター、元気そうでなによりね」
「悪夢の中で元気なもんかよ……」
俺の目の前には氷の皇女、アナスタシアがいた。いつも通りぬいぐるみのヴィイを大事そうに抱えている。
「早速ですが、バレンタインデーなので私、チョコをご所望します」
「はい、これだろ?」
俺はサッと赤色の袋を彼女に渡した。
「あら……準備済みなのね、マスター」
「これで無いから俺自身を――なんて言われたらたまったもんじゃないからな」
「ありがとうございます。では、私からも。
私だと思って、大切に扱って下さいね?」
そう言ってアナスタシアは何処からか彼女の抱えているヴィイと似たぬいぐるみを俺に渡してきた。
(うーん……物が大きいから何処かに置いておかないと。他のヤンデレサーヴァントに見つかったら大変だぞ……)
「もしかしたら、ヴィイと同じ魔力が込められているから動いてしまうかも知れないけれど、大丈夫よ」
「いや、全然大丈夫じゃないって……」
彼女と別れると早速俺は自室に行き、ぬいぐるみを適当な棚の上に置いておいた。
「よし、先を急ぐぞ――あれ?」
開かない。今開けたばかりの扉が固く閉ざされている。
「あれ? 自動ドアなのに……開かない!」
引っ張ろうが殴ろうが扉は閉まったままだ。当然、俺は1つの答えに行き着いた。
ヴィイと同じ魔力を与えられ、動く可能性のあるぬいぐるみ。
「こいつの仕業か……でもどうしたものか?」
流石にプレゼントで貰った物を破壊する訳にはいかないし、アナスタシアにバレれば死は確定だろう。
「……開けてくれないか?」
試しにぬいぐるみに話しかけて見るが、何も起きない。
「参ったな……しょうがない。どうせ、俺が部屋から出て来ないと分かったらサーヴァント達も現れるだろうし、それまで大人しくしていようか」
しかし、扉は開かないまま時間だけが過ぎ、俺はベッドで軽い仮眠をとっていた。
『…………』
『……』
『っ』
「――うぉ!?」
目を開いた俺の前にアナスタシアのぬいぐるみが現れ、驚いた俺は思わず手で横から薙ぎ払った。
ぬいぐるみは顔の部分が床に当たり、そのまま跳ねて壁に背中でぶつかった。そのまま微塵も動きはない。
「……な、何だったんだ今の」
そこで俺は扉が開く様になっている事に気が付いた。
「よかった……漸く開いて――あっ!」
予想外な事に、扉の前ではアナスタシアが倒れていた。
「アナスタシア!? どうした!」
「うっ……マスター……」
倒れている彼女を抱き起こすと、唇を切った様で血が出ており、背中もどうやら痛むようだ。
「アナスタシア、一体何があったんだ!?」
「マス、ター……なん、でも、ないのよ……」
いや、何でもない訳がない。もしかしたら、近くにヤンデレが潜んでいるんじゃ……
「ねぇ、マスター……少しは喜んでくれた?」
「はぁ? 何言ってんだこんな時に……! とにかく治療を……!」
「貴方の居場所を奪った女と、同じ顔の女が地面を這い蹲っている姿に、少しは満足してくれましたか……?」
「もっともっと……酷い事しても、良いのよ? 愛してる貴方を傷付けたこの霊基を、もっと嬲ってちょうだい…………」
まだまだ復活は出来ませんが、その日を皆様同様心待ちにしております。
遅くなりましたが、今年もよろしくお願いします。