俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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束「じゃあじゃあ、女の子の姿になるってどうかな! いっくんが!」
一夏「なんなんですか、それは!」

原作三巻で実際にそんなやり取りがあったりなかったり


やはり巻き込まれ転生者植里は弱い。

 あの後、箒は紅椿をみんなの前で動かしてみたのだが、それもう凄いの一言だった。飛ぶの斬るの斬るのが飛ぶのでもうヤバイ。ヤバすぎる。なんてスペックの機体を渡しているんだろうあの人は。やはり天災じゃったか……。ちなみにそれを動かしている箒の表情は酷く気怠げだったという事をここに記しておく。篠ノ之さんはいつもけだるげ。いつもは凛々しいんですけどね。なんでもお姉さんに色々と言われてるのが気にくわないらしい。それらを纏めて一言で伝えるならば『死ね』だそうだ。うん。俺も同じ気持ちだよ。現在進行形で。

 

「では、現状を説明する」

 

 千冬さんが真剣な表情で口火を切った。旅館の一番奥に設けられた宴会用の大座敷、たしか風花の間とか言っていたそこに俺たち専用機持ち全員と教師は集まっている。何が起こっているのかお分かりいただけただろうか。原因は? くそウサギ! イェーイ!

 

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエルの共同開発の第三世代型軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった」

 

 来ちゃったよ福音さん。原作と変わらず来ちゃったんだよ福音さん。全く誰だ、こんな大事を仕出かしておきながらヘラヘラと笑って世間を知ってなおスルー決め込む馬鹿で天才で天災で人を人とも思わぬ糞野郎のくせに無駄にスペック高いから自由気ままに生きているおっぱいのでかいウサギみたいな篠ノ之束は。最後答え言っちゃってるやん。違うんだ。犯人はヤス。

 

「その後、衛星による追跡の結果、福音はここから二キロ先の空域を通過することが分かった。時間にして五十分後。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処することとなった」

 

 淡々と言う千冬さん。滲み出るオーラがマジという雰囲気を伝えてくる。そんなものが無くてもマジだと分かってはいるんですがね。この展開、転生者として見過ごす訳にはいかねぇぜ! ……それに原作通り一夏が撃墜されると非常に心配なので是非とも参加したい所存である。まぁ、俺の機体スペックじゃ参加出来ませんけどね!

 

「教師は学園の訓練機を使用して空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう」

 

 な、なんだってー!? 今明かされる衝撃の真実。楽しかったぜぇ、お前との友情ごっこぉ! 違う。それ真ゲス。その前からして違ってはいるが。もともと衝撃の真実でもなんでもない。既知の事実である。原作知識があるんですしおすし。お寿司。そんなことよりおうどん食べたい。

 

「それでは作戦会議をはじめる。意見があるものは挙手するように」

 

 その言葉に続くようにして、座っていた彼女たちは次々に意見を述べていく。とりあえずセシリアさん提案の機体情報を受け取ったら後は何も出来ない。凄いな、何を言っているかさっぱり分からん。やっぱり俺だけ場違い感やばくないっすかね。正直蚊帳の外である。しかしもうこれはあれだ。割り切ろう。そういう神からのメッセージであろう。多分。という訳でもっぱら俺が考えるのは福音さんのことしかない。ぶっちゃけ戦いたくないんだけど戦わなければ生き残れない感じなのかどうか。そこが問題だ。機械相手に何を望むでもないから話し合いとかも不可能ですしね。……機械相手はちょっとなぁ。うむ。

 

「──おい、植里。聞いているのか」

「うっす。聞いてます」

「なら先程私は何と言った?」

「おい、植里。聞いているのか」

「馬鹿者が」

 

 スパァンといつもの二割増しで叩かれた。うん。今のは全面的に俺が悪い。つーかてめぇが勝手にやっても何一つとして解決できねぇだろうが。察しろ。

 

「こんな時に考え事か? 随分と余裕そうだな」

「はい。すいません」

「何を熱心に考え込んでいたかは知らんが後にしろ。お前だって重要な戦力の一部だ」

「……そーっすね」

 

 いやはやこんな俺でさえ戦力に数えてくれるとは千冬さんお優しいです。思わず涙が出ちゃうレベル。こんな雑魚に何か出来るとは思えませんがね。ええ、所詮は一般人というやつですよ。うん。あれだ、もうどうにでもなーれ。福音? 戦闘? 気合いでどうにかしてやるわボケ。あと、海の上で華麗に散るってのも美しくて良いと思うんですよ。死亡フラグ乙。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 結論としては原作通り。一撃必殺の零落白夜を持つ一夏を超高速起動が可能な箒の紅椿で運ぶ。福音さんは通りすがりに斬られる。落ちる。死ぬ。いや死んじゃ駄目でしょうに。うんうん。やっぱり原作通りって言うのは落ち着くよ。先が見えてる安心感ってやつなのかね。その作戦に俺がねじ込まれてなければの話だが。

 

「いやさ、別に良いよ? 嫌って訳じゃない。ただなんで俺なのかと」

「仕方ありませんわ。一撃の大きさでは一夏さんに引けを取らない筈ですわよ」

「当たれば、の話っすねぇ」

「当たれば、の話ですけど」

 

 当たれば。その四文字がどれだけ大変なことなのかを俺は知っている。そもそも当たったところで掠ってちゃ意味がないというのがこの武器の欠点だ。束さんが言うには確実に直撃さえすれば零落白夜に勝るとも劣らない超火力らしいのだが、如何せん実感がない。現にこれで倒したことってあまり無いんだよなぁ。あの天災曰く倒せないのは俺がまだロッドを完璧に使いこなせて無いからだそうだ。ちくしょう。

 

「そんなに気張らなくとも、わたくしたちはいざという時の保険だと織斑先生も言っていたでしょう、蒼さん」

「そうは言いますがねセシリアさん。やっぱりヘタレにこの重圧は少し愚痴りたくもなるというか」

「セシリア、ではなくって?」

「イエス。マイフレンドセシリア」

「発音もなにもダメダメですわね」

 

 容赦ない言葉の数々が脆くなった心を打ち砕く。その効果音はドラララララであることを期待したい。ダイヤモンドは砕けない。治ってくれマイハート。絹ごし豆腐よりも柔らかいと言われた俺の心よ。めっちゃ脆いじゃねえか復旧不可能。

 

「束さんに弄ってもらってブレードの出力と維持時間を伸ばしてもらったとは言え、五秒ってお前」

「五秒もあれば十分ではなくって?」

「いやいや、俺そんなに優秀じゃないから」

「まぁ、相変わらず自己評価の低いお人だこと」

 

 ちなみに何故セシリアと俺が居るのかって言うのはご想像にお任せする訳にもいかないのできちんと説明すると天災のせいである。説明終了。終わり。つまるところくそウサギがペラペラと喋り倒して俺を無理矢理戦場へ引きずり出したのである。なんとなく予想してたから別に良いよ。な、泣いてなんかないしっ!

 

「何はともあれ宜しくっす、セシリア」

「えぇ、わたくにお任せください。なるべく安全運転になるよう善処しますので」

「あ、これヤバイやつだ」

 

 なるべくと善処しますが合わさって最強のコンボに見えてしまった俺は悪くない。箒が一夏を運びセシリアが俺を運ぶ。上手く行く気? 勿論しない。




二人が一歩前進するためのアイテム③

『漂う死亡フラグ』×?

保持者:?? ?

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