今回はちょっとアレがアレしてアレでアレだからアレってことで許してヒヤシンス
「「「「私と組んで、デュノアくん!」」」」
マモレナカッタ。
「うわぁ……入りづれぇ」
「でも、ほら。シャルルを見てみなよ」
言われてチラッとシャルルさんの方を窺う。大勢の女子に囲まれて少し焦りながらもそれを巧妙に隠し、イケメン貴公子対応の真っ最中。大変そうだなぁとぼんやり考えたところ、バッチリ視線が交錯した。え、なに。やめて。その助けを求めるような目を向けるんじゃない。まるで雨の日にダンボールの中に入れられて捨てられた子犬と出会ったような気分になるから。
「……頑張れ~、シャルルさん」
「助けないの?」
「植里蒼は動かない。何故なら、その原因が女子だから」
「ちょっとは耐性も付いたんじゃない?」
馬鹿を言うな。ちょっとだちょっと。そう簡単に克服できるわけねぇだろ。もしもあの大群がガチホモの集団なら別に問題ない。いや、それはそれで色々と問題があるが。とにかくあれは女子だ。しかも一人ではない。大量の、数十もの女子なのである。くそっ。助けてあげたい。どうにかしてやりたい。けど、足が震えて思うように動かねぇんだ……ッ!! ヘタレ。
「さーせん、シャルルさん」
「諦めた……」
流石にこれは無理です。マジすいません。女に弱いヘタレですいません。少数なら良いんだ。けど、この数にもなると流石に敵に回したくはない。つーか回したら物理的にも社会的にも死ぬ。やめてくれよ。せめて死に場所くらい選ばせてくれ。学園で殺人事件発生! 被害者は男性IS操縦者とか洒落にならんぞ。
「みんなごめんね。それなら少し組んでみたい相手がいるんだ」
「えっ!! だ、誰!?」
「そこ、君たちの後ろにいるよ」
「後ろ……って」
グルンと一斉に振り向く。いやぁぁぁぁぁ視線がぁぁぁぁぁ。駄目だ。最近ちょっと慣れてきたと思って調子に乗ってたらコレだよ。ちくせう。やはり俺の女性免疫が低いのにIS世界へ転生したのは間違っている。まぁ自ら進んで転生した訳じゃありませんけど。
「ね?」
ニッコリと笑いかけてくるシャルルさん。その笑顔に隠された意思がうっすらと開かれた瞳より伝わってくる。ぐぬぬ……そういう目を向けられるのはあまり強くないんです。目をそらすという方法もあるが流石に今の状況でそんなこと出来ない。
「……そうっすね。俺もお願いして良いっすか」
「うん。こちらこそ喜んで」
とりあえずこの事態を収拾するためにもそう返しておく。横からちょっと不機嫌オーラが漏れているような気もするけど今は我慢だ。うん。一夏よ、出来ることならもっと出力を抑えてくれ。なんだか罪悪感がマッハで貯まっていくから。
「ちぇ~、男の子同士か……」
「まぁ、他の女の子よりかは……」
「むしろ男と男ってのも」
「ありね」
「ありだわ」
「あるのだろうか。いや、ある(反語)」
チッチッチ。シャルルさんは女だ。決して男同士のコンビが作られるわけではない。いやまぁ俺は正真正銘の男だけどね。てか俺が女だったら色々とヤバイだろ。男と男なんて言ってるが、本当はそれ性別違うんすよねぇ……。
「というわけで、本当ごめんね?」
「う、ううん! 別にいいって!」
「そうそう! デュノアくんの好きなように」
「まぁ、ちょっと残念ではあるけど」
「今回は仕方ないってことで……」
口々にそんなことを溢しながら、ぞろぞろと押し寄せていた女子は一人また一人と去っていく。シャルルさんと組めないのなら無駄に居座る意味もないだろう。そこからまたペア探しが開始されたようで、ドアの向こう側からは色々と話し合う声が聞こえてきた。元気なことは良いことだと思います。
「……一応なんとかなったな」
「そうだねー。で、蒼?」
「おう。なんだ一夏。怖いぞ」
「ペア、シャルルと組むんだよね?」
……ん?
「いや、別に組まないけど」
「えっ?」
「えっ?」
「えっ?」
上から順に一夏、シャルルさん、俺。どうやら俺のペア組まない宣言が結構な驚きだったみたい。そんな驚くことでも無いと思いますけど。
「シャルルと組まないの?」
「うん。シャルルさんとは組まないけど」
「じゃあ僕に何をお願いしたの?」
「え、いや、一夏をお願いしようかと」
「は?」
「ん?」
「お?」
言葉を喋れ。
「つーかあれだぞ。俺は確かにお願いしたが、一言も俺と組みましょうなんて言ってない。そして同じく、シャルルさんも組みたい相手が俺とは言ってない」
「……そう言えばたしかに」
「僕は本当に蒼なんだけど……」
「いや、遠慮しときます。一夏と組んでください」
「蒼は誰と組むの?」
「テキトーに誰か探すわ」
ぶっちゃけ俺とシャルルさんが組んだ場合、ラウラさんのVTシステムを発動できるかさえ分からない。つーか多分発動できない。ワイがフルボッコにされてしまうからな! 三分の一削った? 不意打ちでチャージブレード当てようとして掠っただけだよ。なんか文句あんのかコラ。その後は一度も当てようとすることさえ出来ませんでした。
「それになんだ。強い奴が敵にいる方が燃えるってもんだろ?」
「蒼がそんな性格じゃないのは知ってるから」
ちっ、バレてーら。
次回
「さよなら一夏! 蒼捨て身の戦法」
(大嘘)