俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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バニッシュメント・ディス・ワールド!!


爆ぜろリアル! 弾けろシナプス!

 翌日昼休み。今日も今日とて昼食をとるために食堂へと向かった俺たちなのだが、意外というか妥当というか当たり前というかそこにはどんよりとした凰鈴音がいたわけで。

 

「……なんでこっち来るのよ」

「空いてる席が無かったから……」

「一夏の言う通りだ、特に深い意味はないぞ凰」

「そういう箒の顔が凄い笑顔なんだけど」

「蒼さん。気にしてはなりませんわ」

 

 せやな。セッシーの言う通りや。こういうのを気にしていたらキリがない。小声で「ふははは絶望を味わえ」とか呟くのが聞こえても気にしない。空耳。気にしないったら気にしないんだから! てか気にしたら負けよ。勝ち負けがあるのかどうかは分かんねえけど。

 

「ま、別に良いんだけどね。……ある程度は整理もできたし」

「ああ、荷物の話?」

「一夏ちゃんはちょっと黙ってような?」

「……箒さん。なんの話ですの?」

「私たちにしか分からない話だ」

 

 こいつの鈍感さは相変わらずだよ本当。男時代はこれにいつも振り回されていた。今となっては鈍感の『ど』の字もぼくに見せてくれませんけどね! なんなの。俺限定で鋭くなるのなんでなの。恋人補正とかそういうのがあるとでも言うのか。女ってこえー。浮気とかが即バレして手痛い仕打ちをくらった世の男性の気持ちが今なら少し分かると思いました(粉ミカン)。

 

「……ねぇ、蒼。今気付いたんだけど」

「なんだよ鈴」

 

 答えればちらっちらっと視線が色んなところを行き来する。アイコンタクトか? と思ったが違うっぽい。ある一定の高さで平行移動をしているようだ。はてさて鈴はいったい何を伝えたいんだろう。俺の本能的な部分が必死にヤメロと告げてきているが。もしかしなくても貴女自ら死地へと赴いてるんじゃないっすかね。

 

「これ、狙ってんのかしら」

「は? …………」

「ん?(ばいーん)」

「……む?(ばいーん)」

「はい?(ばいーん)」

「……(ストーン)」

 

 やめっ……ヤメロォー!

 

「もういい。何も言うな、鈴」

「一夏にすら負けたあたしって……」

「私がどうかしたの?」

「一夏さん。それ以上はいけません」

「セシリアの言う通りだぞ一夏」

 

 マジでヤバイよ。主に鈴の精神が。こいつ下手しなくても箒の倍はダメージ喰らってるぞ。そう考えるとメンタル強いなオイ。俺とは段違いじゃねえか。あれ? よく考えたら俺の周りのやつ、メンタル強すぎ……?

 

「……嗚呼、今なら分かるわ」

「な、なにが?」

「──人の生きる意味が」

「鈴ちゃぁぁぁぁあん!!」

 

 あかん。鈴ちゃんが悟りの境地に達してしまう。全てを諦めたような穏やかな顔になってる。やめて。その今すぐ殺されても悔いなんてないわとかいう表情。別の意味で怖いから。若干後光が射してるように見えるのは多分俺の目の錯覚。それか中国四千年の歴史の結晶。

 

「ふっ……やっと辿り着いたか凰。……いや、鈴」

「篠ノ……いや、箒。アンタ……」

「ようこそ──絶望の淵へ」

「なんだこの茶番」

 

 もう誰も見てやしないんだけど。一夏は我関せずでずずーとお茶を啜っているしセシリアも優雅に紅茶を飲んでいる。優雅ですねぇ。……優雅? 紅茶? リン? うっ……頭がっ。つまりあれですか。倒してしまっても構わんのですか。理想を抱いて溺死しなきゃならんのですか。俺の勝ちにしなきゃ(使命感)。

 

「あぁ、忘れてたわ。一夏」

「ん? なに?」

「アタシ、クラス代表になったから」

「へぇー……あれ?」

 

 うん。一夏の言いたいことは分かるぞ。既に鈴が転入した二組のクラス代表は決まっていた。俺達のようにガチでやり合った訳でもないから当然である。つっても俺はおまけみたいなものでしたけど。二人とも代表候補生だから見劣りすることこの上ない。今思うと凄い恥ずかしいですねー。黒歴史確定ですわ。

 

「二組のクラス代表って決まってたんじゃ……」

「変わってもらったのよ。まぁ、なに」

「……?」

「私なりに、ケジメの付け方ってところよ」

 

 ……さすがは鈴。男前すぎて泣けてくるぜ。

 

「で、そちらの人は?」

「あぁ、申し遅れました。わたくし、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ。以後よろしくお願いします、……凰さん、でしたわね?」

「鈴でいいわよ。あたしは中国代表候補生ね。よろしくセシリアー」

「……蒼さんとは違った意味で適当ですわね」

 

 いや、許してあげてください。別に俺みたいにやる気がない訳じゃないと思うんです。ただ心に致命的な致命傷(誤り)を負ってしまってるだけなんです。これも全部天災ってやつのせいなんだ。篠ノ之束許すまじ。やはり一回くらいはその罪を数えた方が良いと思うの。

 

「……あ、蒼。口元にソースついてる」

「マジか、やべ……ちょ、馬鹿やめろ。自分で出来るわ」

「いいからほら。動かない」

「ああもうなんなのお前のその強引さ」

 

 子供じゃねえっつーのに。

 

「ふむ。いつも通りだな」

「箒。アンタ凄いわね。尊敬するわ」

「ふふっ、微笑ましいですわね」

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 ぼふんとベッドに倒れ込む。ああ、気持ちいい。一日の疲れが全て吹き飛んでいくようだ。ここが天国か。いやオアシスかもしれない。ぶっちゃけ最近の代表候補生二人との訓練がキツすぎてきちんと休まないとまともにやってらんねーわ。なんなのあの人ら。本当頭おかしいんじゃないかなって。二人で対戦してる時とか動きがもう付いていけない。こんなんじゃ俺、ISを使いたくなくなっちまうよ……。対するこっちの成果と言えば精々瞬時加速(イグニッション・ブースト)の成功率が七割にまで達したくらいだよ。

 

「蒼、制服がしわになるよ」

「うーい……」

「……はぁ。全くもう……」

 

 仕方ねーっすよ。一般人の俺には耐えきれない色々な辛さがこの学園には存在しているのです。本当一夏がいなかったら死んでるぞ俺。もしくは逃走をはかって千冬さんに監禁されてるかもしれん。やだ、なにそれ千冬ルート突入ですかね。尋問と拷問待ったなし(白目)。

 

「まぁ、訓練で疲れるのは仕方ないけど」

「ならお前はなんでそうピンピンしてんだ」

「去年から似たようなことやってるし」

「流石は織斑の血筋……」

 

 射撃型のセシリアさんとやりあってごく自然と間合いに捉えるだけはある。初見の時は凄いビビってたなーあの人。一夏曰く千冬姉から教えてもらったらしい。そりゃあ世界最強と同じ特性の武器で同じ戦闘方法を教えて貰えば強くもなりますわ。千冬さんのことだから丁寧に教え込んだのが容易に想像できる。

 

「そういや一夏。暇になったらで良いんだけどさ、弾とか数馬も誘ってどっか行こうぜ」

「え? 別に良いけど……どうして?」

「鈴のやつ落ち込んでるだろ。あいつらと馬鹿やったら少しは楽になるかと思って」

 

 とは言ったものの先ずその鈴とも予定を合わせなきゃならんのですけどね。今ぼーっと考えてて思い付いたから仕方ない。完全に立ち直るまではいかなくても気を紛らわすくらいにはなってくれる……筈。なってくれると良いんだけどなぁ。どうも鈴のテンションが低いってのは中学時代に付き合っていた身として調子が狂う。その原因のひとつに俺自身関係してるけど。

 

「……蒼はそういうところだよね」

「は? いや、なにが?」

「別に。優しいなって思っただけ」

「ばっかお前俺が優しかったら世界中の誰もが優しいカテゴリに入るわ」

 

 あ、それだと束さんも優しいってことになっちゃう。それはいかん。うん。天災は全くもって優しくない。俺の人権とかそこら辺を守ってくれたのは優しいけど普段は本当優しくない。冷たいって訳でも無いんだけどあれを優しいとも言えないだろ。結論。束さんは果てしなく優しくない。極限化ジンオウガとか獰猛金レイアほどには優しくない。特に前者。頭弾かれるってなんなん。

 

「ねぇ、なんで私が蒼を好きになったのか知ってる?」

「え? ……い、いや、知らないけど」

「単純に優しいからってのがひとつ。あと」

「……あ、あと?」

 

 少し悩むような仕種をしたあとに、にこっと笑って此方を向く一夏。

 

「……やっぱり何でもない。あとは内緒」

「ちょ、何だよそれ。気になるじゃねえか」

「いいから、ほら。さっさとお風呂入って」

 

 背中を押されてシャワー室へと押し込まれる。本当に強引な奴だ。あとのことが気になって仕方ない。ほら、俺ってそんな優しい訳でも無いからあとの方が本命なんじゃないかと思うわけですよ。全く予想もつきませんがね。そもそも俺がこうして恋人作れてること自体予想出来なかったから。




モッピー「──ついて来れるか」
鈴ちゃん「ついて来れるか、 じゃ(ry」



五月も終わりかと思うと早いですね……(しみじみ)

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