俺の友達が美少女になったから凄くマズい。   作:4kibou

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わたしはーげんきー(トトロ感)


そうかいそうてきかい。

「あら、逃げずに来ましたのね」

「まぁ、逃げても面倒なだけなんで……」

 

 ふふんと鼻を鳴らすセシリアさんとその台詞に答える俺。ちなみに試合開始の鐘は既に鳴っている。つーか逃げたら逃げたで世界最強に捕まるのが目に見えてるんですよ、察して。束さんの二の舞になりたくはない。あの細胞スペックで天才が痛みに悶えるレベルのアイアンクローなんて喰らった日には記憶が消し飛ぶ。ここはどこ? 私は誰? 一夏って誰? 感動で涙不可避の物語の匂いがする。しない?

 

「貴方の性格なら戦わないということも視野に入れていたのですが」

「確かに出来るならそうしたいっすけど」

 

 争い、ダメ、絶対。平和と日常をこよなく愛する一般市民としてはこの場に立ってるだけで酷く心がかき乱される。あかん、なんだこの周りからの視線。ISのハイパーセンサーか何かで敏感になってるところにこれは無いでしょう。よく耐えれたな原作一夏。よく平気でいられるねセシリアさん。やはりヘタレに勝ち目なんて存在しなかったか……。

 

「やる気の欠片もありませんわね」

「いやー……そういう事なんで、手加減してくれるとありがたいっすね」

 

 せ、セッシーなら手加減してくれるやろ? 油断慢心バッチ来いやろ? 最初からクライマックスに本気出されてブルー・ティアーズとか使われたら堪ったもんじゃない。なにが“しずく”だ“ティアーズ”だ。そんな怖いしずくがあってたまるかってんだこんちくしょう。使うなよ? フリじゃないからな? 使うなよ? ダチョウ倶楽部理論でもないからな?

 

「自分から言うとは案外賢いですわね。わたくしも弱者をいたぶる趣味はありませんの」

「そっか、なら──」

「ですがお断りしますわ」

「ナニッ!!」

 

 馬鹿な。いや、ヴァカな。ヴァカな? ヴァカめ! 私の伝説は12世紀から始まった! 挨拶が遅れたな……私がエ(ry

 

「わたくし、貴方みたいな弱い男が嫌いですの」

「え、あ、はい。さーせん」

 

 なんで謝ってんだろ俺。思わずいつもの癖でやっちゃったよ。別にこれ謝る必要無くね? 罵倒された側が謝るとかこの世界色々とおかしいですね。しっかりするんだ植里蒼。戦闘は既に始まっている。いくぜ! 全てライフで受ける!(死)

 

「そういうところですわっ!!」

 

 キュインと独特な音をたてて、銃口から光が走る。なるほどなるほど、これがレーザーってやつですね。凄いカッケーじゃねえか。うちの馬鹿機体とは比べ物にならないほどのロマンですよロマン。流石ですセシリアさん。略してさすせし。スターライトMKⅢやべー。……で、この迫り来るレーザーどうやって避けんの?

 

「──うおおおおおおッ!?」

 

 ギリ。超。緊急回避。無理矢理体を捻って横へ滑るように移動する。あっぶねー、冷や汗かいたわ。ISが無ければ死んでいた。しかし我ながらよく避けられたと褒めてやりたい。機体性能はまぁまぁある……のか? 一応さっきフォーマットとフィッティングは完了したからこれくらいは出来て当然か。うむ。分からん。

 

「ふ、不意打ちは卑怯だと思いまーす……」

「避けるくらいの実力はあるみたいですわね」

「人の話聞いてよ……」

「ならば踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

 決め台詞いただきましたー! いや、俺なんかに言うんじゃねえよオイ。踊る踊る。めっちゃ踊るからもう少し手加減してもらえませんかね? 手加減されたら頭に来るとかそういうの無いんで。むしろ喜んじゃって尻尾がついてたらフリフリするまである。よし、一旦落ち着こう。セシリアさんは完全に戦闘モードへ突入した。サシでまともに戦って勝てる確率は皆無。何度も言うが初心者と代表候補生なのだから当たり前だ。ならばどうするか。

 

「こっ、こえええええ!!」

「汚い悲鳴ですわねっ!!」

 

 手に握り締めたロッドで向かい来るレーザーを弾き飛ばす。恐らく構えも振り方もなってない。でたらめで適当にぶんぶんやってるだけ。当たったことさえ奇跡だ。直後に視界の端で0だった数値が12.3へと変動。あ、チャージされたって事ですかね。意外と溜まるの早いな。ぶっちゃけ冷却時間さえ無ければ連発可能じゃねえか。

 

「ひっ!? いやぁ!? うおっ!?」

「中距離射撃型のわたくしに近接格闘装備で挑もうだなんて、馬鹿としか言いようがありませんわね!」

 

 んなこと言われたってしゃーないでしょ。武装がこれ一つしか無いんだから。まぁ、今回に限って言えばこれで良かったかもしれない。対オルコットさんについての作戦はとにかく無様に、滑稽に、余裕なく振る舞うこと。それでいて反撃の可能性を自ら低くする。訓練された代表候補生と言えど所詮セシリ……げふんげふん十代の少女。初心者相手に油断するなと言う方が無理なんじゃないかと彼女の性格的に……げふんげふん若者の心的に考えられる。焦って、惑って、地を這いずって。セシリアさんに無理矢理油断してもらうのだ。……上手く行くかは分からないけど。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「十分か……意外と持ったな」

 

 ピットでリアルタイムモニターを見ていた千冬姉が時計をちらりと見ながらそう呟いた。うん。それには同感。

 

「蒼にしては健闘してるよね」

「あぁ、蒼にしては、な」

「さすがは私のあっくんだね!」

 

 ……蒼は束さんのモノじゃないですよ。どちらかと言うと私の蒼です。だって恋人だし。手も繋いだし。キスだってすませたし。本番は……まだやってないけど。とにかく蒼は私の彼氏であって束さんにそんなことを言われては黙ってられる筈もなく。

 

「……束さん。蒼は私の恋人です」

「冗談だよ? もう、いーちゃんは怖いなぁ」

「自分の姉と初恋の人が友人の男をめぐって争っている。この美しき残酷な世界……」

「あはは、賑やかですね……」

 

 あ、箒がなんだか死んだ魚のような目に。山田先生は苦笑いしながら見ずに助けてあげてください。やっぱり束さんがいると色々精神的にクルものがあるのだろうか。いつもは凛として格好いいのに。箒のことは心配だけれど、それよりも心配なのは蒼のことだ。操作の慣れもなにもない状態での実戦だからすぐやられる可能性だってあったのに。

 

「……まだ、持ちこたえてる」

「ふむ。あれだけの攻撃を避けるとは」

「あれは植里が凄いのではなく、オルコットが手加減しているだけだ。あれくらい初心者でも避けられる」

「頑張れあっくん! 愛してるよー!」

 

 ……私の方が絶対蒼のこと愛してます。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

「ぜぇーっ、はぁーっ……」

「十五分。随分と早いお疲れではありませんこと?」

 

 どもっ☆開始十五分で息も絶え絶えになってる植里くんです! IS使ってる割にスタミナの欠片もねぇな。持久走とかどうすんのお前と言いたい。だが侮るなかれ。勿論これは完璧な演技(・・)である。天災様特性のそれに乗っておきながらこの様なんてあり得ないでしょ。流石の俺でもあと五分はいける。多分。

 

「もうそろそろ閉幕(フィナーレ)と参りましょうか?」

「ぜぇーっ、ぜぇーっ、げほっげほっ」

 

 答えない。答えてやるもんかってんだ。未だブルー・ティアーズは使われていない。裏を返せば使われるレベルの戦闘に達していない。ただ只管ロッドでレーザー弾いてただけ。お陰でエネルギーMAXだよ。いつでもOKだよ。ずっと惨めにちょこちょこ逃げていたのでセシリアさんもかなりご機嫌な模様。流石ですねお嬢様。

 

「──喰らいなさい」

 

 カチリと構えられるライフル。警戒するよう射撃体制に入ったことを告げてくる自らのIS。こういう時こそ考えなければ。冷静に状況を分析しよう。傍目に見て疲れはてて動けない俺。余裕綽々にトドメを刺そうとするセシリアさん。武器は射撃武器。対する俺は僅かニメートル少しのただのロッド。瞬時加速(イグニッション・ブースト)なんて使おうにも使い方が分からない。普通なら絶体絶命。勝ち目なし。オワタこの瞬間。

 

「……ッ!!」

 

 戦闘中に掴んだ感覚を思い出しながら一気に地面を蹴りあげ飛翔する。とにかく迫れ。何がなんでも迫れ。最速で、最短で、真っ直ぐに! 一直線に! それシンフォギア。待て待て。なに? 歌わないといけないの? 絶唱しなくちゃなりませんの?

 

「この瞬間を……」

「なっ!? 貴方、まだそんな余力が──」

「多分待ってた!」

 

 イエス。そう、多分。

 

「いくぜ、『喰らいなさい!』ってな!」

「ッ!?」

 

 トンとロッドの先をセシリアさんの胸辺りに当てる。別におっぱいに当ててる訳じゃない。セクハラちゃうよ。戦闘中だもの。はてさて、初心者の俺が三秒しか維持できない高威力チャージブレード(俺命名)を当てるのは至難の技だ。正直無理。たったの三秒で振り回してぶち当てるとかなにそれ無理ゲー状態。早々に諦めた。そこで発想の転換。解放してから当てるのが無理ならば、最初から解放されるところを相手に当てていれば良いじゃない。

 

 ──エネルギー解放、刃生成。残存時間3秒。

 

「!! ブルー……」

「遅いッ!!」

 

 捩じ込む、押し込む、突っ込む。そして糊米(のりこめ)ー! 完全にぶち当たった。このままいけばシールドエネルギーを削り取るのも時間の問題。……なんだけど、そう上手くいく筈もなく。

 

「遅いのは貴方ですわっ!!」

「うげっ!?」

 

 流石は初心者。当てただけで満足してちゃいけませんよね。上手く後ろに避けられて盛大な隙をさらしてしまった。あー……これ詰んだか? てかあれ避けられちゃうのね。結構強引に捩じ込んだんですけど……。やっぱり本気出した代表候補生には勝てないのかね?

 

「ブルー・ティアーズ!!」

「おいおいマジかよっ!?」

 

 ──残存時間0秒。解放を終了します。再使用可能まであと10分00秒。

 

「ここまでシールドエネルギーを削られるとは……予想外ですわ」

「そ、そりゃどうもですね……」

 

 こりゃもうどうしようもねーわ。

 

 

 

 ◇◆◇

 

 

 

 結果、負けました。

 

「次は織斑とオルコットだ。用意しろ」

「うん。分かったよ千冬姉」

「織斑先生だ」

 

 そりゃあねぇ、最初から分かってましたよ。ええ。俺みたいなのが土壇場でやれる訳ないじゃないっすか。相手は代表候補生ですもの。うんうん。だからこれも仕方ない。負けちゃっても仕方ないんだよ。しゃーなししゃーなし。いやー、久々に運動したね!

 

「……蒼」

「なんだ一夏」

「頑張ったね、格好良かったよ」

「……そうかよ」

 

 なんだよ、ちくしょう。ああもう、身の程わきまえろってのは分かってる。分かってるけどよ。……やっぱ悔しいっすね。なんか、ちょっと溢れ出るものがあるわ。男の子としてのアレですかね。

 

「お前も頑張れよ、一夏」

「うん。……ちゃんと見ててね、蒼」

「穴が開くほど見てやるわ」

「ふふっ、そっか。──来て、白式」

 

 呟いた一夏の体を包み込むのは白。原作同様ピーキーな性能をお持ちの白式さんである。使い辛さではうちの機体も負けていないが。

 

「……じゃあ、行ってくるよ」

「……おう」

「油断するなよ」

「勝ってこい、一夏」

「いーちゃん頑張れー」

「頑張ってくださいね、織斑さん」

 

 一夏は色んな人に愛されてるなぁ。惨めな俺とは大違い。原作主人公だから仕方ないと言えば仕方ないのだけれども。なんてつまらないことを考えていれば、隣にいた千冬さんから話し掛けられる。

 

「植里、よく見ておけよ。一夏の戦いかたは恐らくお前の機体にも適用される」

「は、はぁ……」

「オルコットが相手なら二十分持てば良い方だろうな。……そのオルコットが、だが」

「え?」

 

 そのあとの一夏とセシリアさんとの戦いは凄かった。なんかもう別次元っていうか一夏と千冬さんがダブって見えたと言うか才能の片鱗を垣間見たと言うか。なにはともあれ結果だけを見るならば。

 

 一年一組クラス代表、──織斑一夏(♀)。




当初の予定ではさっさと原作すませて休むぞオラァーと張り切っていた私でしたが、そういう訳にもいかなくなりました。はい。

今回の流れで十分あれだったと思いますけど、原作なぞるといちかわいい出来なくなるんですよね。知りました。この作品唯一の取り柄が無いってこれもうわかんねえな。

という訳なので次からは頑張って一夏ちゃんとの濃厚な絡みを多くしたい。他ヒロイン? むしろ一夏ちゃん以外のヒロインいるの?

最後になりましたが、作者はまだ元気です。更新出来てるってことはそういうことだってばっちゃが言ってた。時々立ち眩みとかでぶっ倒れるのは昔からなので大丈夫大丈夫。

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