伝説の使い魔   作:GAYMAX

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第26話 ハルケギニア大戦

 プリエがトリステイン領を取り戻してから三ヶ月。戦争はアルビオン、ロマリアすら巻き込み激化した。

 常にプリエの分身とルイズの分身がトリステイン全土に結界を張ることで村人は戻ってこられるようになり、トリステイン国内だけは平和になったが、ゲルマニアを覆う穢れを払うことはできず、プリエの尽力むなしく穢れは徐々に広がっていた。

 その上、サイボーグ化したゲルマニアの兵と共に悪魔がアルビオンを攻め始め、事態を重く見たロマリア教皇がアルビオンに援助を決定。その結果トリステインに攻め入ることができなくなったガリアが、何故かロマリアとも戦争を始めた。

 元々トリステインとの戦争で疲弊していたガリアだが、最強の王国の名は伊達ではなく、強国であるロマリアを押していた。

 

 そしてトリステインはアルビオンに銃士隊を、ロマリアに別の軍を送る。

ロマリア・トリステイン連合軍のトリステイン側の総大将には、戦争でゲルマニアに対し獅子奮迅の活躍を見せたルイズが抜擢(ばってき)された。

 ルイズは快諾。もちろんルイズの父親は猛反対したが、ハルケギニア最強のルイズを止められるはずもなく、ルイズが乗った戦艦がガリアを中央突破し、ロマリアへと無事たどり着いていた。

 

 プリエ、ウラヌス、ミシアの三名は黒幕を追っていろいろと動き回っているのだが、未だに進展はない。

 

 

 

「さ、行くわよ、ワルド副大将殿」

 

「ハァー…ハァー…る、ルイズ…ま、待って……」

 

「ごめんなさい。幼い女の子を見て興奮してる変態を待つことはできないの」

 

「ち、違うよ、ルイ、ズ………」

 

 ワルドの息が荒いのは興奮しているからではなく、疲労で満身創痍だからだ。三隻の戦艦を引き連れているとは言え、ルイズの全速力に独力でついてきたのだ。無理もない。

 

「違う?幼いシエスタとデルフリンガーを眺めて鼻の下を伸ばしてたのに?」

 

 ワルドは何も言い返せず、荒い息遣いのまま黙り込む。

無駄に意気込んでいたワルドに、戯れに幼くなってもらったシエスタや、人間状態のデルフリンガーを見せたら、思いの外ガン見していたので、呆れ返ってこの罰を執行したのだ。

 

 実際のところは、自分でもロリコンの()があるのか疑っていたワルドが、ソレを確かめるために(おこな)っただけなのだ。特に反応しなかったので、やはり自分はロリコンではなかったと喜んでしまったことが、ルイズに曲解されてしまったことなどは言うまでもないだろう。

 

「何か言い訳はあるかしら?そこの小鳥が飛び去るまでは聞いてあげるわ」

 

「ち、違うんだ……ぼ、僕はロリ、コンじゃ…」

 

「はい終了

行くわよ。キビキビ歩きなさい」

 

 鬼の所業である。使い魔的には悪魔の所業と言うべきかもしれないが。

ワルドは律儀にルイズに従いながら、ちょっといいかもと思っている自分を必死で否定した。

 

 ロマリア教皇庁の中に入ると、教皇の御前へと案内された。ワルドは未だに死にそうだが、体裁だけはなんとか整えている。

 

「お初にお目にかかります。トリステイン軍総大将、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールです

こちらは副大将のジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドですわ」

 

「おお!すると貴殿が数々の武勲を打ち立てた英雄、『女王様』のルイズ殿か!」

 

 ピクリとルイズの眉が動く、あの二つ名はここまで広がってしまっていたのか。とりあえず、この戦争が終わったら発端のシャルロットはお仕置きして、広めたミシアはプリエにシメてもらおうと心に誓った。

 

「なんでも、始祖の血族として恥じない程の高潔な精神を持ち、その力は一騎当千!この世に及ぶもの無しだと聞いているよ!」

 

「……それほどでもありませんわ」

 

 まさか、あの二つ名が善意全開で解釈されるとは、世の中は何が起こるかわからないものだ。わりと興奮気味で語る教皇に真相を教えることはないだろう。このまま押し通そう。

 そして、女王様で反応して心の中で必死に自分のMを否定しているワルドは気持ち悪いから、後で記憶が飛ぶくらい殴ってやる。

 

「貴殿が来てくれたのならばもう安心だ!

こちらに控えているのが、我ら教皇庁が出す軍の総大将、ジュリオ・チェザーレ」

 

「よろしくお願いします、ヴァリエール殿」

 

「君たちに比べればまだまだ若輩だが、幻獣を操る術に長けており腕は確かだ

すでに我が国の軍の半分は出払っていて、情けないが君たちが頼りなんだ。本当によろしく頼むよ」

 

「はい、お任せ下さい」

 

 

 

 

 

 個室に入り、総大将同士で会議を始めようとしたのだが、席につくなりジュリオに口説かれた。

 ギーシュも結構な美男子だが、ジュリオは気障(きざ)ったらしいセリフを吐いても10人が10人気障(きざ)ったらしいと感じない程の美男子である。言い寄られて嫌な顔をする女性は()()ならいないだろう。

 

「…ミスタ・チェザーレはずいぶんとお口が上手なようで

そんなことに口を動かすよりも、もっと大切なことがおありでなくて?」

 

 そう、ルイズは普通の女性ではなかった。自他共に認める美少女ということでも普通ではないのだが、彼女はプリエに多大に惹かれているのだ。

 シャルロットの任務や今回の戦争でプリエと離れ、ルイズは自分がどれだけ彼女を愛しているか悟った。黒幕を見つけるまで専守に専念しろというプリエの言い付けがなければ、とっくの昔にガリアを占領していただろう。

 

「申し訳ない。貴方のような美しい方に出会って、気が動転していたようだ」

 

「…いいでしょう。今までのことは聞かなかったことにしてあげます」

 

「これは手厳しい。いや、貴方の美を陳腐な言葉を用いて表現しようとした僕が悪いな」

 

 ダメだコイツ、全く懲りてない。いくらハンサムだろうが、知り合ったばかりの男に口説かれても嬉しくない。むしろプリエに罵倒された方がまだ嬉しいくらいだ。

 

「貴様!我慢して聞いていれば!僕のルイズを口説こうとはどういう了見だ!!」

 

 目の前のバカはこれでも総大将。どうにもできず呆れている時にバカが増えた。

普段のどこか余裕そうでウザかった表情はなく、キツネのように目を吊り上げて烈火のごとく怒っている。

 

「許せん!貴族としてき──おぼろっ!?」

 

 “僕の”とはなんだ“僕の”とは、私はプリエのものだ。こっちのバカはトリステイン側の人間で今は私の部下。とりあえず制裁を始めることにした。

 

「ちょっ!ルイ──ふべっ!!や、やめ──ぐえっ!!無表情は怖──ごえっ!!ロープ!!ローぷらぁっ!!!」

 

 マウントポジションを取り、ロリコンを一定間隔で殴りつづける。

10発を超えた辺りから声がしなくなったが、そんなに強く殴ってないので死ぬことはないだろう。

 

                                            (たぶん。)

 しばらく鈍い音だけが部屋に響き、(ほう)けていたジュリオがルイズに声をかけたことで制裁は終わった。

 

「どうしましたか?ミスタ・チェザーレ?」

 

 ニッコリと微笑みながら血まみれの右手をハンカチで拭くルイズに、ジュリオは首を横に振ることしかできず、ルイズはその勢いのまま会議の全ての議題を片付けた。

 

 そして、三日でロマリア領を全て取り返し、ルイズはプリエが戻ってくるときを、敵を撃退しながら首を長くして待っていた。

 

 

 

 

 

 

「あー…まさか三ヶ月も探して尻尾すら掴めないとは思わなかったわー……」

 

 ゲルマニアのとある町の中、ミシアは姿と気配を消して腕をダランと垂らしながら、ふよふよと飛行していた。

 プリエの命令で、ウラヌスと手分けしてゲルマニア中を探っているのだが、見つかるのは悪魔ばかりで肝心の黒幕には近づけない。記憶を読んだり、おそらく幹部クラスであろう悪魔を洗脳したりしても尻尾が掴めないのだから、黒幕は相当用心深いのだろう。

 

「もうさー、自然現象なんじゃないのコレ?」

 

 ミシアはそう呟くが、心の中ではこれっぽっちも自然現象だとは思っていなかった。

自分勝手な悪魔たちが、ゲルマニアだけを洗脳し、他の国の者は殺そうとするなんてありえない、皆殺しならばまだありえるが。

 

 とにかく、これだけの数の悪魔の統率を取っているのだから、相当強大な存在であるだろう。どちらかと言えば弱い者イジメが好きなミシアは、それを考えるたびに深いため息をついていた。

 

「…一応、何度もゲルマニア中を探したし、一際強い大魔王たちは全部殺したんだけどなー…」

 

 そのとき、ミシアに襲ってきた徒労感を示すように、ぐうー…とお腹が切ない音を上げる。そういえば、三ヶ月間ずっと不眠不休で働いていて、人間の精を吸っていない。

栄養価で言えば強い存在の精に勝るものはないのだが、やはり味は人間の精が一番だ。

 

「そういえば、昔食べたルイズちゃんの淫夢…美味しかったわね…」

 

 この任務が終わったらプリエ様を焚き付けて、ルイズちゃんの精のおこぼれを貰おう。

だいたい三ヶ月ってなんだ三ヶ月って、一つの魔界の悪魔を一体ずつ皆殺しにしていってもまだ余る。

 ここまで見つからないと、異界に陣取ったままでの侵略や報復、暇つぶしも考慮に入れた方がいいのかもしれない。

 

 とりあえず、不安定な魔界ゲートを除く、ゲルマニア内の安定した空間の歪みを探したら、一つだけ見つかった。これで黒幕に近づいたとミシアは歓喜し、すぐさまその場所へと転移する。

 

「あれ?コレどっかで見たような……」

 

 それはご丁寧に扉の形をしており、中に入ると廊下の奥に黒い扉が見えた。無造作に扉を開けると、同じような黒い扉が9個並んでいて、他には朽ちた玉座があるだけの白い空間に出る。

 

「……あ!コレ、アタシが作った無限回廊じゃん!」

 

 戯れに作ったが、壊すのが面倒になって放置した無限回廊。普通は自分がいるときにしか扉は現れず、しかも強い魔力がないと反応しないはずなのだが…今回の魔界化でおかしくなってしまったのだろうか。

 

「……いや、それはないわね…空間系の魔法は暴走すると危ないし…

意図的に呪文が書き換えられてて、穢れがゲルマニアから………ガリアへ?」

 

 穢れはミシアが入ってきた扉から、ガリアに続く扉の一つ…首都へ続く扉へと流れている。

もっと探ってみると、見えないパイプのようなもので穢れの周りがコーティングされており、それはガリア王宮のとある場所でプッツリと途切れていた。恐らく、別の異世界にでも送られているのだろう。

 こりゃいくらゲルマニア中を探しても見つからない訳だ。

 

「よーし、どーせアタシより弱いだろうし……いや、それでプリエ様に殺されかけたんだっけ…あのときが6000年の魔生で一番死ぬかと思ったなー……

…まあいいや、プリエ様に任せよーっと」

 

 晴れ晴れとした気分で、ゆったりと飛行しながら無限回廊を後にするミシア。鬱屈として長々と続いていた問題が今やっと解決しそうなところまで来て、彼女はすごく上機嫌だった。

 ただ、前祝いだと言って数多の悪魔を絞り殺したため、プリエへの報告は少し遅れたそうだが。

 

 

 

 

「る…ルイズ……そろそろ、死にそう……」

 

「たったの三日間の不眠不休じゃない。それくらいなら平気よ」

 

 思わず、「君と一緒にしないでほしい」と言いそうになるが、ぐっと堪える。いくら真実だといっても、女性を化け物扱いするなんてナンセンスだ。

 特に、自分の伴侶となるかもしれない…いや、なって欲しい女性を化け物扱いなど、正気の沙汰ではない。

 

「それに、これくらい耐えきれないなら私と結婚する資格なんてないわ」

 

 三日前、ワルドはこの戦いで自分が活躍したら結婚してほしいと、ルイズにプロポーズしていた。

 ルイズはワルドのプロポーズに対し、受けるかどうかは別としてワルドの実力と真剣さを審査すると返し、とりあえず二日以内に奪われた全領土を取り返すことを命じた。

 

 ワルドは嬉々として行動し、遍在をうまく使って一日で全領土を取り返したのだが、そこからが地獄だった。そのまま交代無しで一人だけで守りきれという無茶な命令を下され、健気にソレを実行したワルドは、満身創痍とは行かないものの相当参っていた。

 しかし、弱音を吐いたのは先程の一度だけで、町の復興や怪我人の治療、さらに他の地域の警護の強化や軍の指揮、その上自らも最前線で戦い、敵を退け続けるルイズを見ていたら、弱音なんて吐いていられないのだ。

 

「じゃあ、私は練兵に行ってくるわ」

 

 二人の仕事ぶりは、連れてきた兵がほとんどやることがないほどに素晴らしいものだったので前線にいるのに練兵ができるのだ。

 それにプリエがいつ動くか分からない。総大将がいなくても、きちんと動いてくれる兵を育成しなければ少しまずいだろう。

 トリステインの兵やメイジが強くなったとは言え、一部を除いて戦力としては平均的であり、ガリアに物量で押し切られてはどうしようもないからだ。

 

 なので練兵に行こうと、(きびす)を返し戻っていくルイズが、急に立ち止まって空を見上げた。ワルドは訝しく思い空を見上げるが、何も見えない。

しかし、すぐに黒い点が見え、すぐさまソレが線になり、こちらへ近づいて来るのが見えた。

 

「プリエ!」

 

「お待たせルイズ!」

 

 黒い線は瞬く間に見えなくなり、その代わりにプリエが降り立っていた。瞬間、閃光のような速さで、ルイズはプリエに突っ込んだ。

 

「プリエ!プリエ!」

 

 ルイズは心底嬉しそうにプリエに抱き着いている。仕種は乙女のソレであるが、思いっきり抱きしめているので普通の人間だったら即死しているだろう。その前のタックル紛いの抱き着きだって、城壁すらも一瞬で粉々にできるほどの威力はあった。

 

「やっと黒幕を見つけたわ。すぐに終わらせてくるからここの防衛を「嫌!もうプリエと離れるのは嫌!私もついていくわ!」…しょうがないわね。ワルド、気ぃ引き締めなさいよ」

 

「ああ、杖と貴族の誇りにかけて守りきると誓おう」

 

 プリエは力強い笑みを浮かべると、ルイズを抱えて飛び去っていった。

ワルドの体からは三日間の不眠不休の疲れが取れ、不思議と活力に溢れていた。今ならいくらでも戦えそうだ。

 

 プリエたちが立ち去った方角をしばらく見つめていると、慌てた様子で伝令兵がワルドへと駆け寄ってくる。

 

「ふ、副大将殿!敵襲です!」

 

「ふふ、早速か…敵は何人だ?」

 

「そ、それが…メイド一人でして…」

 

「メイド一人だと?」

 

「はい、恐ろしく強いメイドが一人です…ただ一人に兵が壊滅させられました」

 

 普通ならばホラ話として受け取られて最悪打ち首もありえる話だったが、プリエという常識外の存在を知るワルドは、厄介な敵がいたものだな。とその話を認めていた。

 だが、そんな試練を超えられないようでは、ルイズと結婚する資格などないのだろう。

 

「ふむ…そうか

しかし、ソイツも運が悪かったな。今の僕は誰にも負ける気がしない。行くぞ!」

 

 ………プリエがルイズに残ってほしいと言ったのは、途中でアネットが向かって来るのが見えたからであった。

 平民で、女で、しかもメイドのアネットは、普通なら前線に出られるはずもないのだが、国が疲弊しきっている状況だったので前線に出ることが出来たのだ。現在レベル1700のアネットに対し、ワルドはレベル200、勝てるはずがない。

 ただ、ワルドの意気込みは素直に評価されたのでプリエは笑顔を返し、時間稼ぎとして頼ったわけだ。一時間以上持てば万々歳だが、アネットが本気なら10秒とかからずにワルドは倒されるだろう。

 アネットならば敵を生け捕りにできるから被害は少ないだろうし、第一ロマリアがいくら占領されようがプリエには知ったことではない。

 

 つまり、ワルドの三日間の頑張りは全て水泡に()すこととなる。どこまでも哀れな男である。

 

 

 

 

 

 

                ―――ガリア 旧オルレアン邸

 

 シャルロットは元々王家の血筋だが、叔父の現ガリア王のジョゼフにより父を暗殺され、王家の名を剥奪されていた。

 そして母まで狂わされ、“タバサ”は憎しみのみで生き長らえてきたが、プリエと出会い、母を救われたことによって、“シャルロット”は憎しみを忘れることができた。

 ジョゼフを許した訳ではないが、今は彼女の親友であり、プリエの主人でもあるルイズの境遇を見てきたから、ジョゼフの気持ちもある程度は理解できている。

 魔法が使えない貴族、貴族の名が金で買えるゲルマニアなら問題はなかったのかもしれないが、ジョゼフはガリアの王族である。優秀な兄弟がいたところまでルイズに似ているが、ルイズより更に悪かったことが、自分の弟が魔法に関して天才的な才能があったことだろう。王位第一継承者が魔法を使えない無能、ことあるごとに優秀な弟と比べられ彼は歪んでいったのだろう。

 当然、ジョゼフをよく思わない貴族も多く、ガリアはシャルロットが生きていることで分裂せずに済んでいたのだが、突然反ジョゼフ派の貴族が寝返りだし、ガリアの意思が統一されたことで戦争が起こった。

 そのタイミングでシャルロットらの抹殺命令が下されたのだが、刺客は全てプリエの分身に始末され、現在オルレアン邸は空中要塞と化していた。

 

 いちいち刺客の相手をしてやるのも面倒な為、プリエが領地ごと空中に浮かべ、魔界に咲いた一輪の妖花とも例えられる悪魔植物の種を植えたので、領地を囲む死のバラ園が完成しており、アネットを除いたガリア全戦力を投入しても攻め落とすことは不可能だろう。

 そのため戦時中であり、国境付近であり、定期的に刺客を送り込まれているにも関わらず、シャルロットの暮らしは平穏そのものだった。

 

「やるわねシャルロット」

 

「貴方の教え方が上手いから」

 

 そして、プリエは暇潰しも兼ねて、シャルロットに魔法の授業をしていた。おかげでシャルロットはスクウェアクラスにまで成長し、その力は長く研鑽を積んだメイジに劣らないほどである。

 

「この調子な……」

 

 プリエは急に黙り込み、顎に手を当てて何かを考えるような仕種をする。突然の行動にシャルロットは心配になるが、それを口に出す前にプリエの口が動いていた。

 

「シャルロット、全ての黒幕が分かったわ。ガリア王、ジョゼフよ」

 

「!!!」

 

 プリエから告げられる衝撃の事実。悪魔すらも使ってハルケギニア全土を巻き込んだ大混戦を引き起こした犯人が、まさか叔父だとはいくらなんでも微塵も思わなかった。

 

「…プリエ、連れていってほしい」

 

 因縁に決着をつける為にも、叔父に直接会わなければならない。プリエは少し渋ったが、シャルロットのまっすぐで真摯な視線に負けてしまった。

 

 それに、これは“タバサ”がやり残した最後の問題だ。どうにかして解決させてやりたい。嫌な胸騒ぎはするが、たとえ悪魔の巣窟になっていようが、自分が守り通せばいいのだ。

 これが終わったら、きっと世界は平和に戻るだろう。あまり戻らなかったとしても、もうこれ以上悪魔の介入などさせるものか。

 

 

 

 …はたして、プリエは気づいていたのだろうか。自らも悪魔だということに。

 


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