艦隊は衰退しました   作:猫三昧

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episode1

 ある日、里から離れた海岸で謎の部品が発見されました。

 発見主は海岸沿いにある漁村の漁師の方。

 漁業作業中、網を引き揚げていると何やら魚と一緒に捕獲。見たところ祖父が持っていた資料に似たようなものがあったためそれが何かはすぐに判明することができました。

 それは艦載機という戦争に用いられた空を飛ぶ鉄の塊のようで、『烈風』と呼ばれるもののようです。食玩のようなサイズですが。

 

「助手さんがここにいたら狂喜乱舞でしたでしょうね」

 

 そんなことをぽつりとつぶやくも反応する人は誰もいません。だって周りにいるのは私の頭の上で飴を食べている妖精さんだけですもの。

 元々今日はVIP局長の頼み事(雑用の押し付け)で里の未だ修繕されていない部分を新しい娯楽スペースにするためにお呼ばれされていました。

 祖父はそれを私と助手さんに押し付け山に柴刈りならぬ鹿狩りに。私は突然飛び込んできたこの案件の為に億劫ながらも隣里にある漁村へ。そして助手さんは一人で屈強な叔父様達と建設に……

なんだか助手さんに申し訳ないような気がしましたがこれも仕事なんです。

 彼もまた私同様に権力に抗えぬ社会の歯車なのだと痛感させられますね。

 

「それにしても静かなところですね。閑散としているわけではなさそうですが……」

 

 実は私、漁村に訪れるのは今日が初めてなんです。なのでここに来るまでは筋肉が逞しい方々が居て、猫が魚をくわえて逃げるのを裸足で女性が追いかけている姿が見かけられるほど賑やかなところだと思っていました。

 しかし本日の漁業が終了したからといってここまでシンとなるとは……なかなかにシビアな業界なようで……現実って厳しいですね。

 ここまで案内してくださった人曰くここの村長さんとお祖父さんは古くからの付き合いのようでお祖父さんからこういったものが見つかれば連絡するようにと言伝されていたようです。

 どうやって昔の道具をあれほどまでの歴史的ガラクタを回収していたかと思えばこういった根回しをしていたんですね。

 

「にんげんさん、にんげんさん」

「ん?どうかなさいましたか?」

「これ、まだいきてるです」「いんたいひょーめーしてますがソウルはまだあるもよー」「まだまだわかいものにはまけぬかと?」

 

 先ほどまでのんびりとティータイム兼日向ぼっこをしていた妖精さんが私の頭からぴょんとはねて小さな艦載機へと飛び乗ります。

こうしてみると妖精さんのサイズとぴったしなんですよね、これ。

 ちなみに彼らは今現在の地球の現代人であり私達人類は旧人類となっていますがそこらへんは原作でもお読みになってくださいな。

 にしてもまだ生きているということはこの鉄の塊はまだ動かせるということでしょうか?ソウルといわれても……妖精さんの伝えたいことがたまに分からないのは仕様です。

 なんとなく私はその食玩に耳を当ててみます。もしかするとモーター音とかが聞こえてくるのでは?と思っての行動です。

 

 

 それがこの物語を生み出した原因になってしまうとはその時の私は思いもよりませんでした。

いや、思えという方が酷な話です。

 私はプロペラのような音を耳にしてそこでこの記憶は途絶えてしまったのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「―――!――――すか!」

 

 意識がもうろうとしている中、頭上から誰かの声が聞こえてくる。

 私はなんとかその声に答えるために上半身だけ起き上がらせるとその声の主である人物へと目を向けます。

 そこには小柄ながらも後ろ髪を束ねているせいかどことなく大人の女性のような雰囲気を漂わせる少女が立っていました。

 

 「あの、ここは一体……」

 「気が付いたのです!よかったぁ。どこか痛むところとかないのです?」

 「えぇ、少しだるいのと記憶が飛んでいますが大丈夫です」

 「はわわっ!それは大変なのです!少し待っててください!人を呼んでくるのです!」

 「は、はぁ……」

 

 少女は私を置いて先ほどから見えている大きな建造物の中へと向かっていきます。私が通ってた学校よりも大きいですね、あれ。

 いやいやいや。違うでしょうが。少しは慌てなさいな私。いくらなんでもおかしいでしょうが。色々と突っ込みたいところがあるでしょうが!

 ま、まずは情報を整理していかないと。いつもとは違った災害で幾多の珍道中を繰り広げた私でもこれは冷静でいられませんよ!

 

 「まずここは一体どこなんでしょう……?見たところ見覚えがあるようなものはない……ん?」

 

 あたりを見渡すとふと右手にゴツゴツとした硬いものがあることに気が付きました。

 

 「これは……あの時の食玩?」

 「はろー」

 「妖精さん!」

 

 これは幸運。食玩の中から現れたのは先ほど一緒に調査をしていた三人の妖精さん。どうやってこんな小さな食玩に入っていたかは謎。

 ですが三人もの妖精さんがいれば私の生還フラグは確定したようなものです。あとはなんとか妖精さんを担ぎ上げて元の場所に戻るだけ。

 なんだ、これならすぐに帰れそうですね。良かった……

 

 「これも妖精さんの仕業なんですか?」

 「そうといえばそうかも」「でもちがうといえばちがう」「しろくろはっきりつきませぬ」

 「どういうことです?」

 「ごせつめーしたほうがいいです?」

 「したほうがいいです」

 「ここかこー」

 「ちょ、ちょっと待ってください?飛躍し過ぎてます。もう少し詳しく説明してくださいな」

 「えー」「にんげんさんのためだ」「うぃきぺぎあのようにくわしくするです」

 

 妖精さんのように旧人類はすぐさま現実を突きつけられても「そっかー」と理解することはできないんです。Yぐらいになれば受け入れるやもしれませんがあれは私と種族が違いますから。

 

 「最後のは分かりませんがよろしくお願いします」

 「むかしのわれわれがこれつくった」「ふしぎなちからでかこにおもどりになりました」「げんいんはふめー」

 「えーっと。つまりあの食玩は昔の妖精さんが作ったもので、なんらかの理由によって過去にワープしてしまった」

 「ですです」「さすがにんげんさんー」「ほれてまうわー」

 「もしかして……帰れない?」

 「ですー」

 

 あぁ、なんということでしょう……バナナの皮を踏んだというわけでもないのにまたもやタイムスリップしてしまうとは。そして先ほど抱いた安心感が一気に空の彼方へと飛び去ってしまいました。カムバック安心感。代わりに不安が肥大化してしまった。

 私が頭を抱えながらこれからのことを考えていると遠くから声が聞こえてきます。どうやら少女が誰か人を連れて戻ってきたみたいです。

 

 「天龍さん、あそこなのです!」

 「おい!大丈夫か!?」

 「えぇ、身体的は異常ありませんが……」

 「そうか。だが念のため医務室に連れていった方がいいかもな」

 

 片目を眼帯で隠し、頭に見たこともないようなものを装着した黒い制服を着た女性。恐らくあの制服はセーラー服と呼ばれるものだったような気がします。あれが世の男性を魅了したと言われるセーラー服ですか。中々興味深い。

 そんなことを思いながら天龍と呼ばれた彼女に肩を貸してもらいながらあの大きな建造物へと歩き出す私達。

 にしても天龍という名前どこかで見たことがあるような……はて?思い出せない。まぁいずれ落ち着けば思い出せるでしょう。

 

 




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