色を無くしたこの世界で   作:黒名城ユウ@クロナキ

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第10話 VSジャッジメント――試合開始

『さあ!! いよいよ、テンマーズVSジャッジメントの試合を開始します!! 試合の会場はここ、カオススタジアムから、実況者アルがおとどけしますっ!!』

 

・【テンマーズ】メンバー&ポジション・

FW:フェイ・ルーン

FW:キモロ

MF:松風天馬★

MF:アステリ

MF:マント

MF:ドリル

DF:スマイル

DF:ストロウ

DF:ウォーリー

DF:デブーン

GK:マッチョス

 

      フェイ キモロ

 マント アステリ  天馬★ ドリル

スマイル ストロウ ウォーリー デブーン

       マッチョス

 

『【テンマーズ】のポジションはこうなっております。メンバーの大半がフェイ選手の人型化身、デュプリで構成されたチーム。新加入のアステリ選手がどのような活躍を見せるのか、期待です!』

 

 

・【ジャッジメント】メンバー&ポジション・

FW:カオス★

FW:ボイド

MF:デルタ

MF:シータ

MF:リーズン

MF:リンネ

DF:ファントム

DF:マリス

DF:リグレット

DF:シェイム

GK:アビス

 

     カオス★ ボイド

 リーズン デルタ シータ  リンネ

ファントム マリス リグレット シェイム

        アビス

 

『続いてカオス選手率いる、チーム【ジャッジメント】のポジションです。カオス選手以外のメンバーが、血によって生成されたと言う前代未聞の異質で異常なチーム。果たして実力はどれ程の物なのか、必見ですっ』

 

 スタジアム中に響くアルの声を聞きながら、テンマーズはポジションにつく。

 胸に抱える不安を誤魔化す様に深呼吸をして、天馬はチームの皆に聞こえる程の大声で言う。

 

「よーしっ! 頑張ろう! 皆っ!!」

 

 天馬の声にテンマーズの皆が「おぉーっ!」と力強い声をあげる。

 その声を聞いて、天馬は「……よしっ!」と小さく呟くと、気を引き締める様に自らの頬を叩き、前を向く。

 目の前には不敵な笑みを浮かべるカオスと、不気味なガスマスクをつけた選手が立っていた。

 

――始まる。

――カオス達……ジャジメントとの試合が。

 

『両チーム、ポジションにつきました! テンマーズのキックオフで試合開始です!』

 

 アルの声と共にスタジアムに試合開始のホイッスルが鳴り響く。

 ボールを持ったフェイがFWのキモロと一緒に攻め上がる。

 相手は見た事も聞いた事も無い、謎の多すぎるチーム。

 どんな戦いをするのか、どれ程の力の持ち主なのか、皆目見当が付かない。

 そんな天馬達が取る行動はただ一つ。

 

――まずは一点だ。

――それで、こちらに追い風を吹かせる……!

 

 ボールを持ったフェイが天馬にパスを出す。

 それを受け取り、ゴール前へと走り出す。

 

「フフッ……」

「……?!」

 

 瞬間、天馬のすぐ横を笑みを浮かべたカオスが通り過ぎた。

 それも、凄まじいスピードで。

 カオスに気を取られた、その時。

 

「はぁぁぁぁ!」

「! っあっ?!」

 

 ほんの一瞬の出来事だった。

 ボールから目を離した、その瞬間を狙ったかの様に繰り出されたスライディングに足を取られ、天馬は勢いよく地面に倒れてしまう。

 

「! 天馬!」

『デルタ選手、強力なスライディングで松風選手からボールを奪った! そのまま前線へと上がっていきます!』

 

 スタジアムに響いた実況の声にハッとして後ろを見る。

 すると、先ほど自分からボールを奪った男がドリブルでゴールに向かって走っているのが見えた。

 

――しまった……っ

 

 天馬の中で焦りが生まれる。

 すぐさま立ち上がり、守備に回る為走り出す。

 デルタと呼ばれた男はデュプリ達のディフェンスを次々に交わすと、ゴール前へとパスを出す。

 パスを出した、その先にいたのは――

 

「っ……! カオスっ!」

『カオス選手、ゴールキーパーと一対一だぁ!! これはテンマーズ、大ピンチ!』

「見せてあげるね。僕のシュートを……」

 

 ボールを持ったカオスは天高く飛び上がると、周囲に赤黒いオーラを発動させる。

 ボールは、カオスから発せられたオーラを吸収し、歪に膨らんでいく。

 

「! マズイっ……!」

「!? アステリ!?」

 

 瞬間、アステリがゴール前まで走っていく。

 その間にもボールは膨らみ続け、ついにはボコボコと変形し始めた。

 変形したボールを前にシュート体勢へと入ったカオスは、何やら呪文の様なモノを唱え始める。

 

「神に抗いし者よ、死をもってその罪を償え! インフェルノ!!」

 

 そう叫ぶとパンパンに膨れ上がったボールを蹴り落とす。

 カオスの蹴りによって破裂したボールは、溜めていたオーラを一気に吐きだすと、キーパーのマッチョスに向かって降り注ぐ。

 

『カオス選手、必殺技を発動!! 凶悪な光線と化したシュートがマッチョス選手へと突き進んでいきます!!』

「入れさせないっ!」

「!」

『おっと!? アステリ選手、なんとゴール前まで戻ってきていた!! まさか、あの凶悪なシュートを止めるつもりなのかぁ!?』

 

 アステリは意を決して飛び上がると、その身体で光線と化したカオスのシュートを受け止めた。

 シュートはアステリの身体にぶち当たると、一瞬は動きを止めた様に見えた。

が。

 

「っっ……!! っ……うわぁっ!?」

「! アステリ!」

 

 キーパーでも無い丸腰の人間が止められるはずも無く、アステリは黒い光線と化したシュートに吹き飛ばされ勢い良く地面に叩きつけられた。

 シュートはアステリの制止の甲斐なく、そのままの勢いでゴールへと突き進む。

ゴールキーパー、マッチョスは大きく息を吸い込み、胸を張りシュートを受け止める。だが…

 

「ぐわぁっ!!」

 

 デュプリ……しかも目で見て分かる程力の差があるシュートを止める事は出来ず、シュートはマッチョスの身体ごと、ゴールへと突き刺さる。

 瞬間、スタジアム内に甲高い笛の音が鳴り響いた。

 

『ゴォォォォォルッ!! カオス選手の必殺技《インフェルノ》が見事、テンマーズのゴールを揺らしたぁぁ!』

 

 興奮した様子のアルの声がスピーカーから聞こえてくる。

 天馬は慌てて、先ほど落下したアステリの傍に駆け寄る。

 傍まで行くと、彼は苦しそうな表情で蹲っていた。

 

「アステリ、大丈夫か?!」

「天馬……。ごめん……シュート、止められなかった……」

 

 そう弱弱しい声で呟くアステリに、「アステリのせいじゃないよ」と励ましの言葉をかける。

 天馬の言葉を聞いたアステリは俯いていた顔を上げ、彼を見る。

 

「点を取られたなら取り返せばいいんだ! 時間はある。まだまだこれからだよ」

「……うん……そうだね」

「それより怪我は無い? 凄い高さから叩き落とされてたけど……」

 

 天馬の問いに頷くとアステリは「ありがとう」と微笑んだ。

 アステリの答えにホッと胸を撫で下ろす。と、突然目の前が薄暗くなる。

 何かと思い上を向くと、笑みを浮かべたカオスが二人を覗き込んでいた。

 

「! カオス!」

 

 天馬達を見下げるカオスに、アステリは噛み付く様な視線でそう叫んだ。

 それを見てカオスはクスクスと楽しそうに笑う。

 

「どう? 僕のシュートは。君も無茶な事するんだね。技も使わず僕のシュートを止めようとするなんて」

 

 「あぁそれとも使えないのかな」と憎たらしい態度で続ける。

 その態度にアステリ、それに天馬も、睨み付ける力を強くする。

 

「試合はまだまだこれから。ま、せいぜい楽しませてよね。裏切り君」

 

 そう笑うとカオスは自分のポジションに戻っていった。

 

「気にしない方が良いよ」

「! フェイ……」

 

 カオスが去ってすぐ、後ろからフェイの声が聞こえ、二人は振り返る。

 

「聞いてたのか……」

「うん。言いたい奴には言わせておけば良いよ。ボク等はボク等のサッカーをすれば良いんだから」

 

 フェイの言葉に「そうだね」と頷くと、天馬は自らのポジションに向けて歩きだした。

 ふとスタジアム内に設置されたスコアボードを見る。

 そこには0-1の文字。

 その数字を見ると、トゲの様な鋭い痛みがズキリと天馬の胸を襲う。

 

――……アステリには「大丈夫だ」なんて言ったけれども、さっきのゴールはハッキリ言って俺のせいだ。

――俺があの時、カオスに気を取られずにいたら、ボールを奪われる事も……シュートを決められる事も無かった。

 

 罪悪感にも似た痛みが、天馬の胸をキリキリと締め付ける。

 

(っ…………今度こそ……しっかりしなきゃ……)

 




《インフェルノ》
カオスの必殺技。
ボールと共に飛び上がり、赤黒いオーラを発動。
オーラを吸収して膨らんだボールを蹴りで破裂させ、中に溜まったオーラを一気に解放するシュート技。

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