異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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転生者が作戦を立てるとこうなる

 

 私たちの町を支配していたあの転生者が倒された日、奴隷だった私たちは自由になった。私はあの転生者に喉を潰され、もう二度と声を出すことは出来なくなってしまったけど、もうあの暗い地下室の牢屋に閉じ込められることはない。また、最愛の兄さんと一緒に生活する事が出来るようになった。

 

 あのブタみたいな転生者を倒して私たちを解放してくれたのは、モリガンと言う傭兵ギルドを率いる速河力也という名前の転生者だった。あの人は私たちを助けてくれただけではなく、行き場所のなかった私と兄さんを自分のギルドに受け入れてくれたんだ。

 

 ハーフエルフだからと言って、あの人たちは私たちを虐げたり差別するようなことはない。

 

 でも、私は今まで剣を手にしたことは一度もない。だから、私はモリガンのメンバーになっているけど、まだ傭兵見習いということになっている。毎日エミリアさんやカレンさんに訓練をしてもらい、たまにみんなと一緒に依頼を受けたりする。

 

 そんな日々を送り始めてもう2ヵ月だ。

 

 今私たちが受けているこの依頼は、私にとって傭兵見習いを卒業するための試験のようなものだった。この依頼を終えれば、私は傭兵見習いからモリガンに所属する傭兵になる事が出来る。力也さんたちに認めてもらえるんだ。

 

 この依頼での私の役割は、森にいる魔物たちに攻撃を仕掛けて彼らを刺激し、そのまま目標の人物が潜んでいる要塞都市まで誘導する。そしてその誘導した魔物たちと要塞都市の守備隊を戦わせて目標の人物を護衛する兵士を魔物との戦いに割かせ、力也さんたちが目標の人物を攻撃しやすくする事だった。

 

 力也さんたちには武器を渡してもらったけど、この戦いでは1発も撃つことはなかった。背中に背負っているSaritch308PDWとスタームルガーMk-Ⅲの弾丸はまだ残っている。

 

 魔物たちが要塞都市の守備隊と戦い始めたのを確認してから仲間たちに無線で連絡した私は、森を通ってネイリンゲンへと戻る途中だった。

 

 

 

 

 

 

 

(大丈夫?)

 

 ゆっくりと僕の方を振り向いた銀髪の少女は、僕の顔を見つめながら言った。首から口元まで真っ赤なマフラーを巻いているんだけど、なんだか彼女が喋った時、彼女の口が動いていないように思えた。

 

 それにしても、あんなに簡単にドラゴンを倒してしまったこの少女は何者なんだろうか? 黒いオーバーコートは何かの制服のようだし、彼女の耳はエルフのように尖っている。

 

 もしかして、彼女は本当にエルフなんだろうか?

 

「あ、ああ。怪我はしてないよ。何回か肩を地面にぶつけちゃったけどね」

 

(よかった。・・・・・・ところで、こんなところで何をしてたの?)

 

「え?」

 

 彼女が僕の腰に納まっている南部大型自動拳銃を見つめながら問い掛ける。彼女も銃を持っているみたいだけど、この異世界にも銃は存在するんだろうか?

 

 とりあえず、彼女に何て言うべきか。奇妙な端末を与えられて森の中にいたって正直に言っても大丈夫かな? 

 

(・・・・・・それ、銃でしょ? 何であなたが持ってるの? この世界には存在しない筈なんだけど)

 

「え?」

 

 この世界には銃が存在しない? じゃあなんでこの少女は銃を持ってるの?

 

(―――あなた、もしかして転生者?)

 

「て、転生者?」

 

(変な端末持ってない?)

 

「こ、これ?」

 

 僕を見つめていた少女の紅い瞳が少しだけ細くなる。僕のことを警戒しているのかもしれない。もし彼女が僕を敵だと判断して戦う羽目になったら、僕に勝ち目はないだろう。彼女はドラゴンを簡単に倒してしまう実力者で、僕はこの世界の事を全く知らない初心者なんだ。

 

 僕はポケットの中からあの端末を取り出すと、彼女に見せた。きっと彼女が言っている端末と言うのはこれの事だろう。

 

(やっぱり、あなたは転生者だったのね)

 

「ねえ、転生者って何・・・・・・?」

 

(転生者っていうのは、その端末を持ってこの世界にやって来る人たちの事よ。その端末を持っているということは、あなたもその転生者なの)

 

 彼女は転生者の事を知っているようだし、もしかすると僕以外にもこの端末を持っている人がこの世界にいるということなんだろうか。ということは、僕よりもレベルが上の転生者が何人もいるということなんだよね?

 

 僕を見つめていた彼女の目つきが普通の目つきに戻った。どうやらもう僕のことを警戒していないらしい。

 

(とにかく、この森から出ましょう。ついてきて)

 

「う、うん」

 

 彼女は踵を返すと、地面から突き出た木の根を飛び越えて森の中を歩き出した。僕も彼女と同じように木の根を飛び越えると、つまずかないように気をつけながら彼女の後について行く。

 

 そういえば、彼女はさっきこの世界に銃は存在しないって言ってたけど、どうして持っているんだろうか? まさか、自分で作った? それとも他の転生者を倒して奪い取ったんだろうか? ドラゴンを簡単に倒してしまうほどの実力を持つ彼女ならばあり得るだろう。

 

「ね、ねえ。その銃はどこで手に入れたの?」

 

(私たちのリーダーが転生者なのよ。リーダーが生産した武器を貰ったの)

 

「リーダー? 何かの組織に入ってるの?」

 

(モリガンっていう傭兵ギルドよ。私はまだ傭兵見習いだけど)

 

 傭兵ギルド? 彼女は傭兵だったんだ。こんな実力を持ってるのにまだ見習いということは、そのモリガンっていう傭兵ギルドの他のメンバーはかなり強いんだろうな。しかも、リーダーが転生者らしい。

 

 木の根の上を歩きながら彼女の後をついて行っていると、頭上で再び強風が木の枝の葉を引き千切る音が聞こえた。太い木の枝が何本も揺れ始め、その音の中からドラゴンの咆哮が再び森の中に響き渡る。

 

「ま、まさか―――」

 

(2体目・・・・・・! 急いで!)

 

 間違いない。ドラゴンがもう1体近くにいる。僕は走り出した彼女の後をついて行きながら強風で揺れる頭上の木の枝の群れを見上げた。まるで金網のように頭上を覆う枝たちの向こうを、巨大な翼と長い尻尾を持つドラゴンが舞い、そのまま宙返りしようと高度を上げていくのが見えた。

 

 あの動きはさっきのドラゴンと同じだ。急降下して、僕たちを食い殺そうとしているんだ。

 

 僕たちを殺すんじゃなくて捕食するつもりらしい。

 

(急いで!)

 

「ま、待って・・・・・・! 運動苦手なんだよぉ・・・・・・!」

 

(ちょっと、頑張ってよ!)

 

「頑張ってるよぉッ!」

 

 仕方ないでしょ!? いつも体育は苦手な教科だったんだからッ! 

 

 必死に本気で走っていると、突然彼女は走るのをやめ、近くの草むらの中へと入っていった。ここに隠れるつもりなんだろうか? でも、あのドラゴンは炎を吐く事が出来る。草むらの中に隠れていたら簡単に焼き尽くされてしまう。

 

 すると、彼女は草むらの中で何かを掴み、それを草むらの外まで引っ張り始めた。もしかして、この中に何かを隠していたんだろうか?

 

 草むらの中から姿を現したのは―――モスグリーンとブラウンの2色で迷彩模様に塗装された、丸いライトを持つサイドカー付きのバイクだった。エンジンの周りには装甲版が装着されていて、サイドカーにはアメリカ製重機関銃のブローニングM1919重機関銃が装備されている。

 

 アメリカ軍で採用されていたバイクのハーレーダビットソンWLAだ。確か、端末で生産できる兵器の種類の中にバイクがあったような気がするんだけど、それで彼女の傭兵ギルドのリーダーが生産したんだろうか? 

 

(乗って! 逃げるわよ!)

 

「あ、ああ!」

 

 僕はすぐに彼女がエンジンをかけたバイクのサイドカーに乗り込んだ。サイドカーの座席の前の方には、ブローニングM1919重機関銃用の弾薬が用意されている。もしドラゴンが前に回り込んで来たらこれで迎撃できるだろう。

 

 少女はちらりと僕がサイドカーに乗り込んだのを確認すると、森の外に向かってバイクを走らせ始めた。

 

 地面は周りの巨木の木の根だらけだから、バイクは揺れっぱなしだった。何度もホイールが地面から突き出た木の根のせいで地面から浮き上がって叩き付けられるせいで、僕は重機関銃の弾薬が落ちないように押さえながら振り落とされないように掴まっていなければならなかった。

 

 こんなに揺れる状態でドラゴンを攻撃するのは難しいぞ!

 

「ど、ドラゴンが来るッ!」

 

(分かってる!)

 

 僕たちの後方から、ドラゴンが急降下して襲いかかって来る。僕は左手でサイドカーに掴まりながら、右手でホルスターから南部大型自動拳銃を引き抜き、急降下してくるドラゴンに向かってトリガーを引いた。

 

 この8mm弾ではドラゴンの外殻を貫通することは出来ない。さっき彼女がドラゴンの眼球を狙撃したように、眼球に弾丸を叩き込んでやる事が出来ればいいんだけど、相変わらずバイクは揺れているし、僕は振り落とされないように掴まりながら射撃しなければならない。咆哮を上げながら急降下してくるドラゴンの眼球を狙撃するのは不可能だ。

 

(掴まって!)

 

「わぁっ!」

 

 バイクを運転していた少女は、急降下してきたドラゴンの攻撃を左にカーブして回避する。攻撃を回避されたドラゴンは、唸り声を発しながら再び高度を上げ、頭上の木の枝たちを突き破って再び宙返りを開始する。

 

 あいつは僕たちを捕食するつもりだ。炎を吐くこともできるらしいけど、きっとまた急降下して僕たちを食い殺そうとしてくるだろう。

 

 どうする? この少女はバイクの運転をしなければならないから、バイクから下りなければさっきみたいにドラゴンを倒すことは出来ない。そのためにバイクから下りようとすればあの急降下でやられてしまう。

 

 あのドラゴンの攻撃方法は分かったんだけど、どうやって迎え撃つべきなのか。僕はサイドカーに掴まりながら作戦を考え始めた。

 

 落ち着け。僕は兄さんのように強くはないけど、いつも兄さんから作戦を立てるのが上手い奴だって言われてたじゃないか。

 

 相手の攻撃方法は分かっているんだ。あいつは僕たちを捕食するために、また急降下してくる。でも、ブローニングM1919重機関銃を後ろに向けるわけにはいかないし、南部大型自動拳銃ではあのドラゴンの外殻に弾かれてしまう。

 

「ねえ、何か爆発物は持ってる!?」

 

(確かC4爆弾と手榴弾が1つあった筈! ・・・・・・ほら!)

 

 彼女はハンドルから片手を離すと、オーバーコートの内ポケットからC4爆弾と起爆装置をサイドカーに乗る僕に手渡してから、腰に下げていた手榴弾を僕に手渡した。

 

(でも、それだけで倒せるの? 相手は急降下してくるんだよ!?)

 

「大丈夫。作戦は思いついた」

 

(え?)

 

 僕は森の中の木々を見つめながらニヤリと笑った。この作戦が上手くいけば、あのドラゴンを倒す事が出来るだろう。

 

「このバイクでドリフトは出来る!?」

 

(ど、どうするの!?)

 

「僕の合図でドリフトをお願い!」

 

(えっ!?)

 

「ここで、あのドラゴンを倒すッ!」

 

 僕は手榴弾とC4爆弾を準備しながら言った。ブローニングM1919重機関銃がいつでも撃てる状態か確認すると、僕は重機関銃のグリップから手を放す。

 

(分かったわ。お願いね!)

 

「了解!」

 

 頭上で響き渡るドラゴンの咆哮。あのドラゴンは木の枝を突き破って上昇し、宙返りを終えて、再び僕たちに向かって急降下しようとしている。

 

 おそらく再び木の枝を突き破り、襲い掛かってくるまで10秒くらいだ。僕はC4爆弾を右手に持つと、左手で起爆装置を持ち、いつでも爆弾を起爆できるように準備する。

 

 咆哮が段々近くなってくる。さっきドラゴンを倒したこの少女はバイクを運転していなければならないから、次にこのドラゴンを倒すのは僕の役目だ。

 

(来る!)

 

「!」

 

 外殻に荷を包んだドラゴンに突き破られ、頭上で木の枝が次々にへし折られる音が聞こえた。僕は揺れるサイドカーの上で前方の左側に見えた少し細い木の幹を睨みつけると――――そのツタだらけの幹に向かって、右手のC4爆弾を投げつけていた。

 

(えっ!? ちょっと、どこに向かって投げて―――)

 

 運転しながら少女が驚いている。多分、僕がこのC4爆弾をドラゴンに向かって投げつけて起爆すると思っていたんだろう。でも、僕がこの爆弾の餌食にしようとして放り投げた目標は、背後から急降下しようとしている獰猛なドラゴンではなく、目の前にあった巨木のうちの1本だった。

 

 放り投げた爆弾が木の幹にぶつかる直前に、僕は左手の起爆装置のスイッチを押す。

 

 放り投げたC4爆弾が爆発を起こし、その猛烈な爆風で木の幹の表面を覆っていたツタを焼き尽くすと、そのまま木の幹の表面を爆風と爆炎で抉り取る。ツタの切れ端や木の幹の破片が、燃えながら地面へと飛び散った。

 

 きっとバイクを運転している彼女は、僕がC4爆弾を無駄にしてしまったと思っているだろう。でも、これは僕が立てた作戦だ。運動が苦手な僕が考え出した、あのドラゴンを倒すための作戦なんだ。

 

 C4爆弾が生み出した黒煙の中を通過しながら、僕は今度は彼女から受け取った手榴弾を準備する。いつでも安全ピンを引き抜けるように準備しながら、僕は通過したばかりの黒煙の中を睨みつけた。

 

 あのドラゴンはまだ僕たちを追ってきている。爆弾の爆発で追い払えるかもしれないと思ったんだけど、やっぱり逃げなかったみたいだ。もしあのまま追い払う事が出来たら、この手榴弾の出番はなかったんだけどね。

 

 その黒煙の向こうからドラゴンの咆哮が聞こえてくる。薄れ始めた黒煙の向こう側に、外殻に身を包んだドラゴンの頭が見えた。急降下のコースは変えていない。今までと同じようにあいつは急降下してくる。

 

(ど、どうするの!?)

 

「大丈夫だよ」

 

 さっきまであのドラゴンは恐ろしいと思っていたけど、その恐怖は完全に消し飛んでいた。

 

「―――もう、勝てるから」

 

(えっ?)

 

 僕はニヤリと笑った。

 

 背後からはさっきからドラゴンの咆哮が聞こえていたんだけど、段々そのドラゴンの恐ろしい咆哮の中に、まるで太い木の枝が段々と折れ始めるような音が混じり始めたんだ。

 

 ドラゴンはまだ気付いていない。

 

(ま、まさか、さっきのC4爆弾は・・・・・・!)

 

「その通り」

 

 僕が木に向かってC4爆弾を放り投げて爆発させたのは、このためだ。

 

 僕たちをまだ追ってくるドラゴン。その目の前に、突然左側から黒煙を纏った巨大な木の幹が倒れてきたんだ。ドラゴンはそのまま倒れる途中の木の幹に激突し、咆哮を上げながら空中で回転を始める。

 

 でも、これだけじゃドラゴンは倒せないだろう。僕は背後でドラゴンと巨木の幹が激突したのを確認すると、ニヤリと笑いながら手榴弾の安全ピンを引き抜き、後ろに向かって放り投げた。

 

 ドラゴンが墜落する前に体勢を立て直し、そのまま僕たちに向かって急降下を再開しようとする。でも、ドラゴンのすぐ目の前には、僕が安全ピンを抜いて放り投げたばかりの手榴弾があった。

 

 目の前で、今度は手榴弾が爆発を起こす。破片と爆風がドラゴンの顔面に襲い掛かり、手榴弾の破片が外殻に突き刺さる。

 

「―――今だッ!」

 

(了解!)

 

 手榴弾の爆風が、ドラゴンを一瞬だけ怯ませてくれた。あの手榴弾はドラゴンを倒すための攻撃ではなくて、彼女にドリフトをする隙を作るための攻撃だった。

 

 止めは―――これにお願いしよう。

 

 僕は彼女のドリフトで振り落とされないように、サイドカーに搭載されていたブローニングM1919重機関銃のグリップを握った。

 

 バイクのエンジン音が、ドラゴンの咆哮を一瞬だけ掻き消す。ホイールが地面から突き出た木の根を次々に抉り取り、土の付いた木の根の残骸たちが舞い上がる中で、彼女が操るハーレーダビットソンWLAがいきなり向きを変えた。

 

 重機関銃の照準器を睨みつける僕の目の前には、顔面に手榴弾の破片が突き刺さっているドラゴンがいた。僕と彼女を睨みつけ、咆哮を上げながら襲い掛かってくる。

 

 僕はこっちに向かってくるドラゴンに向かって、サイドカーに搭載されていたブローニングM1919重機関銃のトリガーを引いた。

 

 南部大型自動拳銃の8mm弾ならばドラゴンの外殻に弾かれてしまうけど、このブローニングM1919重機関銃がフルオート射撃で次々に放つ7.62mm弾ならば、あの外殻を貫通することは可能だ!

 

 僕は照準器の向こう側を睨みつけながら、ドラゴンに向かって次々に7.62mm弾を叩き込んだ。今度はさっきの8mm弾のように弾かれず、ドラゴンの外殻に突き刺さると、そのまま8mm弾を弾いた外殻を突き破り、ドラゴンの頭を食い破っていく。

 

 重機関銃のフルオート射撃を次々に叩き込まれ、ドラゴンが高度を上げて逃げようとする。僕は高度を上げ始めたドラゴンにマズルフラッシュの輝きと弾丸を放ち続ける銃口を向け、ドラゴンに向かって7.62mm弾を撃ち続けていた。

 

 トリガーから指を離し、僕は後ろを振り返る。今の射撃で仕留められただろうか? 作戦通りに木の幹を倒してドラゴンと激突させ、手榴弾で怯ませてから大量の弾丸をお見舞いすることには成功した。これで倒せるはずだ。

 

「!」

 

(あっ・・・・・・!)

 

 僕たちの頭上を血を流しながら通過していったドラゴンは、再び高度を上げようとするんだけど、さっきまで何度も襲い掛かってきた時のように高度は上がらなくなっていた。そのまま右側の翼を巨木の幹に叩き付けると、外殻に包まれた巨体を木の幹に擦り付けながらその巨木の根元に墜落していく。

 

 もう、ドラゴンの咆哮は聞こえなかった。

 

(た、倒した・・・・・・!?)

 

「や、やった・・・・・・! た、倒したぞ!!」

 

 やったぞ! ドラゴンを倒した!

 

 バイクを運転してくれていた彼女は、驚きながらドラゴンの墜落して行った方向を見つめている。僕は重機関銃のグリップから手を放すと、左手で眼鏡をかけ直した。

 

(すごい・・・・・・! やっぱり、転生者ってすごい!)

 

「いや、君のおかげで作戦が成功したんだ。ありがとう」

 

(いえ、あなたのおかげよ。あんなすごい作戦を立ててドラゴンをやっつけたんだから!)

 

「あはははっ。・・・・・・そういえば、君の名前は? 僕は信也っていうんだけど」

 

(私はミラ。モリガンっていう傭兵ギルドの傭兵見習いよ。・・・・・・さあ、森から出ましょう)

 

 この子の名前はミラっていうのか。

 

 ミラは微笑むと、再びバイクを森の外へと向かって走らせた。

 

 

 


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