「ひひっ。僕をぶっ殺せるのか? お前みたいな雑魚がさぁ!」
「うるせえ・・・・・・黙れ、ブタ野郎がッ!」
フィオナの仇だッ!
彼女が使っていたゲパードM1に装着されている鎌の刃を展開した状態で、俺は目の前のブタ野郎を睨みつけながら走り始めた。もしかしたらまたあの氷の斬撃を放ってくるかもしれないと思ったけど、あの斬撃の破壊力を目の当たりにした時の恐怖は、俺の殺意がかき消してしまっていた。
エミリアが「無茶だ! 力也、止めろ!」と後ろで叫んでいるのが聞こえたけど、俺はそのままオタクに正面から雄叫びを上げながら突っ込んでいく。
前までは装備しようとしてもエラーと表示されて装備できなかったフィオナの鎌の刃が、燃え上がる館の炎と同じ色に輝いている。
まだ鎌の刃があのブタ野郎に届く距離ではなかったけど、俺はアンチマテリアルライフルの銃身を振り上げると、炎で橙色に照らされた足元の石畳へと向かって、同じく橙色に煌めく鎌の刃を振り下ろした。
端末で生産された刃の切れ味は、やっぱり普通の鎌の刃とは全く違う。簡単に刃は石畳へと突き刺さり、ゲパードM1の銃口がニヤニヤと笑いながら俺を見ているオタクへと向けられる。
フィオナはポリアフと戦っていた時、1発も弾丸を使っていなかったらしい。まだこのアンチマテリアルライフルには、1発目の弾丸が装填されている。
俺は鎌の刃をバイボット代わりにすると、そのままオタクへと向けてゲパードM1のトリガーを引いた。
「ひひっ。雑魚が」
オタクは大剣を振り払い、簡単に俺がぶっ放した12.7mm弾を一刀両断にしてしまう。
俺は鎌の刃を石畳から引き抜くと、再装填(リロード)はせずにそのままオタクへと向かって再び走り出した。
俺の目の前で、オタクが笑いながら蒼い大剣を振り下ろし、その刀身から氷の斬撃を放ってくる。振り下ろした大剣をすぐに持ち上げて横に振り回し、あいつは突っ込んでいく俺に向かって次々に斬撃を放ってきた。
でも、俺はさっきみたいに横にジャンプして避けようとはしなかった。少しだけ体を横にずらすだけで、そのまま氷の斬撃に向かって突っ込んでいく。フィオナを殺された怒りが、恐怖をかき消し、あの恐ろしい破壊力の攻撃を回避しようという選択肢を粉砕していたんだ。
「力也ッ!」
「ぐっ・・・・・・!」
向かってきた氷の斬撃が、魔物の返り血で真っ赤になっていた制服と俺の左肩を切り裂いた。切り裂かれただけでなく、超低温の斬撃に触れてしまったせいで凍傷になったらしい。左肩の傷口から襲い掛かってくる激痛のせいで左腕から力が抜けてしまい、下がった鎌の刃が石畳の表面を削った。
次に向かってきた斬撃は、俺の右足の太腿を切り裂いていった。アンチマテリアルライフルを持ち上げ、そのまま何とかオタクへと接近するために走っていた俺の速度が、その攻撃を喰らってしまったせいで遅くなってしまう。火の粉が舞う中に、傷口から吹き上がって一瞬で凍結した俺の血が舞い上がっていく。
それでも、俺はフィオナを殺したオタクを睨みつけたまま、石畳の上を走り続けた。オタクはまだ笑ったまま、大剣を振るい続ける。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」
「はぁ・・・・・・。うるさいなぁ」
突然、オタクが笑うのをやめ、大剣を肩に担ぎながらため息をついた。突っ込んでくる俺を斬撃で迎撃するのが面倒臭くなってしまったらしい。
そしてあいつは大剣を構えると――――ポリアフを引き連れ、一瞬で俺の目の前まで接近してきた!
「ッ!?」
「これが―――僕のスピードだ。分かっただろ? お前は雑魚だ。レベルとステータスが違い過ぎるんだよぉ!」
オタクの構えた蒼い大剣の刀身が、段々とポリアフの生み出した氷に包まれていく。間違いなく、こいつが次に出そうとしている技は、さっきまで俺に向かって放っていた斬撃よりも破壊力がある大技だ。俺を一撃で殺すつもりなんだろう。
「うるせえッ!」
俺はアンチマテリアルライフルの銃身を振り上げ、接近してきたオタクの頭に鎌の刃を叩き付けてやろうとしたけど、左腕がさっきの攻撃で切り裂かれているせいで、振り上げるのが遅くなっている。あいつが大技を放つ前に攻撃できるだろうか?
その時、今度は右肩が激痛と冷気に包まれたような気がした。一瞬で凍結してしまった俺の血が、火の粉に混じって俺の周囲を舞っているのが見える。
「・・・・・・!」
「ひひっ。いいぞ、ポリアフ」
俺の右肩に、ポリアフが放った氷の矢が突き刺さっていた。その氷の矢は俺の右側の鎖骨を粉砕して貫通している挙句、俺の右肩を氷で包み込んでしまっている。
鎌を振り下ろそうと力を込めても、帰ってくるのは冷気と激痛だけだった。
フィオナの仇を取ろうとしたのに・・・・・・。こいつには敵わないのか?
俺はこのオタクに勝てないのか? こいつよりもステータスとレベルが低いせいで、殺されてしまうのか?
「ひひひっ。お前はうざいからもう見たくない。もちろん、死体もな。だから―――」
ニヤリと笑っているオタクの持つ大剣は、もう蒼白い無数の氷の棘に覆われていた。
「―――宇宙まで飛んで行って、1人で死ね」
両腕はもう動かなくなっている。アンチマテリアルライフルでガードしようとしても、左腕一本でガードするのは無理だし、右腕は全く動かない。鎖骨が粉砕され、氷の矢で貫かれてしまっている。
オタクが振り回した大剣が俺に迫ってくる瞬間、俺の背後でエミリアが叫んだのが聞こえた。
俺の名前を呼んだんだろうか?
俺はゆっくりと後ろを振り返った。エミリアが叫びながらサーベルを構え、俺の方に向かってすさまじいスピードで走ってくるのが見える。カレンとギュンターが彼女を止めようと手を伸ばしているのも見えたけど、きっと彼女は止められないだろう。
そして、彼女も俺を殺そうとしているオタクを止めることは出来ないだろう。こいつは俺と同じ転生者で、俺よりもかなりレベルとステータスが高い。いくら剣術に自信があるエミリアでも、強力な転生者を倒すのは無理だ。
もし俺がこの一撃で死んでしまったら、彼女たちはどうするんだろうか? 町を占領していた兵士たちのリーダーを倒すことは出来なかったけど、それ以外の敵兵は殲滅する事が出来たし、ギュンターの仲間たちも救う事が出来た。フィオナが犠牲になり、俺も犠牲になろうとしているけど、ギュンターは最愛の妹と再開する事が出来たんだ。
せめて、エミリアたちもネイリンゲンまで逃げてほしい。俺とフィオナの仇を取ろうとして、ここでこいつと戦ってはいけない。このブタ野郎よりもレベルが上の転生者でなければ、こいつは倒せないんだ。
頼む、エミリア・・・・・・! 逃げてくれ!
きっと彼女は、まだこいつと戦おうとする筈だ。でも、勝てる筈がない。こいつに負けたら、処刑されるか奴隷にされてしまうだろう。
だからエミリア。みんなと一緒に逃げてくれ。頼む。
俺はジョシュアの元から一緒に逃げて来た彼女の方を見つめながら、いつの間にか微笑んでいた。まるで、さっき俺を庇って消えてしまったフィオナが微笑んでいたのと同じだ。
オタクが振り回した氷の大剣が、俺を助けようと走ってくる仲間を見つめていた俺の腹に叩き込まれた。簡単に肋骨がめきりと次々にへし折られていき、大剣の表面を覆っている無数の氷の棘が、俺の内臓を串刺しにしていく。
俺は口から血を吐きながら、火の粉の舞う空へと吹っ飛ばされていった。俺の名前を呼ぶエミリアの涙声が、段々聞こえなくなっていく。
まるでエミリアとナバウレアから逃げるために、対戦車ミサイルのワイヤーに引っ張られて空を飛んだ時のようだった。もう、燃え上がっている湿地帯の町の中の館も見えない。湿地帯と、俺たちが途中で通過した森が見えたけど、すぐに地上を真っ白な雲が覆ってしまう。
大地が見えなくなってしまったというのに、俺はまだ空に向かって吹っ飛ばされていた。腹にまだ刺さっていた氷の棘が凍り付いた俺の鮮血と一緒に抜け落ち、雲の中へと落ちていく。
呼吸が出来なくなっていく。吹っ飛ばされながら後ろを振り返ってみると、俺の背後には何と星空が広がっていた。
本当に宇宙まで吹っ飛ばされてしまったらしい。
「あ・・・・・・・・・」
もう、呼吸はできない。腹の傷口から零れ落ちる血が、次々に凍り付いていく。
俺はまだ何とか動く左腕を動かすと、背後に広がる星空へと向かってゆっくり手を伸ばした。
宇宙空間までやってきたというのに、手を伸ばしても星に触れることは出来ない。自分の左手が、宇宙の中で煌めく星の光を遮るだけだ。
俺と同じだ。レベルの低い転生者が必死にレベルを上げて挑んでも、俺よりもレベルが上の転生者には届かなかった。
星に向かって手を伸ばすのをやめた俺は、目を細めて地球を見つめた。
もし、あのオタクにあいつが挑んだら勝てただろうか?
あいつは昔から俺よりもひ弱だったけど、賢い奴だった。もしあいつが転生していたら、俺よりもすごい作戦を立てて、自分よりレベルの高い転生者を倒してしまうかもしれない。
結局、エミリアを泣かせちまったな。俺が死んだらエミリアが泣くってフィオナが言ってたんだけどな。
俺は地球に向かって左手を伸ばすと、車上荒らしに殺された時のように目を閉じた。
「力也ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
私は石畳の上で立ち止まり、空へと吹っ飛ばされていった力也を見上げながら絶叫していた。
彼は、吹っ飛ばされる直前に私に向かって微笑んでいた。何故だ? 何故私に向かって微笑んだのだ?
フィオナと同じだ。あの子も、消滅する前まで力也に向かって微笑んでいた。
私は、ナバウレアから私を連れ出してくれたあの転生者の少年を気に入っていた。彼はラトーニウス王国から国境を越えてネイリンゲンまで一緒に逃げて来た、私の大切な最初の仲間だったのだ。
もう、あの屋敷で出会った可愛らしい少女の幽霊も、私を連れ出してくれた転生者の少年もいなくなってしまった。
2人とも、この気持ち悪い太った男に殺されてしまったのだ。
「貴様ぁ・・・・・・・・・! よくも力也とフィオナをッ!」
「ひひひっ。君もなかなか可愛いねぇ。奴隷にしたいな」
「ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
絶対に殺してやる!
私はサーベルのグリップを思い切り握りしめると、左手でホルスターの中からMP443を引き抜き、2人の仇に向かって連続で発砲しながら突撃した。
「エミリア、逃げて! そいつを倒すのは無理よ!!」
カレンが絶叫するが、私は立ち止まらない。
男はニヤニヤと笑いながら、ずっと私の放つハンドガンの弾丸に被弾している。弾丸が命中しても、あいつの脂肪にめり込むだけだ。
でも、こいつは倒さなければならない! こいつは私の大切な仲間の仇なのだ!
「諦めろよぉ。ひひっ」
「あっ・・・・・・!」
サーベルを右手で振り下ろすが、太った男は笑いながら大剣を私のサーベルの刀身に片手で叩き付け、漆黒の刀身を簡単にへし折ってしまう。
漆黒の刀身が回転しながら吹っ飛び、無数の火の粉を切り裂きながら燃え上がる館の壁へと突き刺さる。だが、このサーベルにはまだ散弾を発射する機能がある。刀身が折れてしまっても、攻撃はできるのだ。
私はグリップの後ろにある銃口を男へと向けようとしたが、発射スイッチを押す前に、男の太い腕が私の右腕を掴み、そのまま握りしめて私の右腕の骨を粉砕してしまう。
「がぁっ・・・・・・・・・!」
「ひひひっ。可愛いなぁ・・・・・・・・・!」
「ふ、ふざけるな・・・・・・!」
「大丈夫だよ。君は可愛いから、奴隷にしたら僕が可愛がってあげるよぉ。きっと、あんな弱い転生者と一緒にいるより幸せだよ? ひひひっ」
「こ、殺せ・・・・・・!」
「ん?」
「奴隷にするくらいなら・・・・・・殺してくれ、頼む・・・・・・!」
こんな奴の奴隷になんかなりたくない。
もしかしたら、こいつに殺されればあの世で力也に会えるかもしれない。私は涙を流して俯きながら、男に向かって呟いていた。
「ダメだ。君は僕の奴隷にする」
男は私の右腕を掴んだまま、大剣を石畳の突き立ててから放すと、右手で私が被っていた迷彩模様の軍帽を奪い取ってから石畳に叩き付け、その軍帽を踏みつけた。
あの軍帽は、こいつに殺されたフィオナが湿地帯に出発する前日に作ってくれたものだ。
「や、止めろ・・・・・・!」
私は止めようとするが、男は軍帽を踏みつけ続ける。
「止めてくれ・・・・・・! それは私の仲間が・・・・・・!」
「君はもう僕の奴隷だ。仲間なんていない」
私は涙を流しながら、男に踏みつけられる軍帽を見つめていた。
「あのクソ野郎がぁ・・・・・・・・・!」
俺は両腕のPKPの銃口をブタ野郎に向けながら、エミリアの右腕を掴んでいるブタ野郎を睨み続けていた。
まだPKPの弾薬は残っているが、残っている弾薬を全部あいつに叩き込んだとしても倒すことは出来ないだろう。それに、今トリガーを引けばエミリアまで撃ってしまう。しかも、ブタ野郎の傍らにはポリアフがいるから、エミリアを助けることもできない。
力也まで殺されてしまった。エミリアとカレンと俺の3人で、あいつを倒せるか? まだ力也が用意してくれた火炎放射器の燃料タンクは3人分ある。それも利用すれば、もしかしたら倒せるかもしれない。
「カレン、ミラを連れてネイリンゲンまで逃げてくれ」
「はぁ!? 何言ってんのよ! エミリアを助けて、みんなで逃げるのよ!」
きっと彼女も力也とフィオナちゃんの仇を討ちたいと思っている筈だが、撤退するべきだと判断したらしい。
だが、全員では間違いなく逃げられない。エミリアも右腕を折られてしまっている。
だから、時間を稼がなければならない。
「俺が時間を稼ぐ。エミリアとミラを連れて逃げろ」
「あんた・・・・・・! 駄目よ、そんなの! 私は・・・・・・自分の民は見捨てないって決めてるの。あんたも私の民よ。だから・・・・・・見捨てるわけにはいかないわ!」
そういえば、カレンは領主の娘だったな。奴隷扱いされた俺まで自分の民だって言ってくれるなんてな。
「・・・・・・」
「ミラ・・・・・・?」
PKPの折り畳んでいた銃剣を展開し、エミリアを助けるために突撃しようとしていた俺の迷彩模様のズボンを、俺を止めようとするために抱き付いていたミラが引っ張った。
彼女は空を見上げていた。ミラが見上げているのは、真っ白な雲と火の粉だらけの空だった。
突撃しようとしていた俺を止めるためにズボンを引っ張ったのか?
その時だった。ミラと同じように空を見上げていると、俺のすぐ近くから懐かしい歌声が聞こえて来たんだ。
「!?」
「何、この歌・・・・・・?」
俺はその歌声を聴いた瞬間、ぞっとしながら俺のズボンをまだ掴んでいるミラを見下ろした。
その歌声は、もう二度と聞く事が出来なくなってしまった筈の歌声だった。エルフだった母さんが、よく俺とミラに聞かせてくれた子守唄。そしてミラは、よく母さんの真似をしてこの子守唄を口ずさんだり、俺に聞かせてくれていた。
「ま、まさか・・・・・・!」
俺が今聞いているのは、確かにミラの歌声だった。でも、彼女はあのブタ野郎に喉を潰されてしまい、二度と声を出す事が出来なくなってしまった筈だ。まさか、彼女が歌っているのか? それとも幻聴なのか?
でも、カレンにも聞こえているようだ。
俺はそっと、隣で空を見上げているミラを見た。
彼女の喉元にはブタ野郎に付けられた傷がある。それに、彼女の口は全く動いていない。
でも、確かに彼女の歌声が聞こえる。
「ミラ・・・・・・」
ミラは俺のズボンを掴んだまま、静かに右手を空へと向かって伸ばし始めた。
『―――力也さん』
「・・・・・・!」
フィオナの声が聞こえた。
宇宙空間まで吹っ飛ばされ、地球へと手を伸ばしていた俺は、消えてしまった彼女の声を聴いて微笑んでいた。
呼吸は出来ないというのに、全く苦しくない。あのオタクに大剣で斬られた傷の激痛も消えている。
もしかすると、このフィオナの声は幻聴なのかもしれない。
ごめんな、フィオナ。俺もあいつに殺されちまった。エミリアも泣かせてしまったよ。
『諦めないでください、力也さん』
「・・・・・・!」
真っ白な光が俺の目の前に集まり始め、その中から俺を庇って消えてしまった幽霊の少女が姿を現した。真っ白なワンピースに身を包んだ白髪の幼い少女が、微笑みながらゆっくりと俺に近づいて来る。
『死んじゃダメです』
小さな手を優しく俺の頬に当てながら、フィオナは俺に顔を近づけた。
でも、俺はあいつに負けたんだ。俺のレベルとステータスでは、あいつを倒すことなんてできないんだぞ? 俺は目の前に姿を現したフィオナの綺麗な蒼い瞳を見つめた。
『あいつはやっつけなきゃダメです。だから、諦めないで』
フィオナは両目を瞑りながら更に顔を近づけると、俺の右頬に静かにキスをすると、微笑みながら俺から顔を離し、俺の目を見つめる。
『・・・・・・一緒に戦いましょう、力也さん!』
一緒に、あいつと戦ってくれるのか?
あのオタクはかなり強い。俺よりもステータスとレベルが高いんだぞ? それに、あいつはお前を殺したんだぞ?
でも―――まだエミリアたちが戦っているかもしれない。彼女たちでは、あの転生者を倒すことは出来ないだろう。
助けに行かなきゃいけない。
『はい、助けに行きましょう!』
ああ。フィオナ、力を貸してくれ!
『はい、力也さん!』
俺は左手をフィオナに向かって伸ばすと、彼女の小さな左手を握りしめた。