異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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無茶なカスタマイズが多くなりますが、よろしくお願いします。


第1章 
異世界


 白い光が完全に消え去った向こうに広がっていたのは草原と青空だった。遠くの方には森も見える。そんな広い草原の中で、ジーンズとパーカー姿で突っ立つ俺。右手にはトーラス・レイジングブルを握り、左手にはパイルバンカーを装備した状態だ。

 

 それで、ここはどこなんだろうか?

 

 端末の画面に表示されていた文字には異世界って書いてあったけど、異世界っていうのはどういうことなんだ? まさか、俺の知っている世界とは違う世界だとでもいうのか?

 

 とりあえず、いつまでも突っ立っているわけにもいかない。俺は草原を見渡しながら前へと進むことにした。

 

 暖かい風が吹いている。季節は春くらいなんだろうか? このまま横になって昼寝できたら最高なんだろうな。

 

 しばらく草原の中を進んでいると、草原の中に道が見えてきた。立派に舗装されているような道ではなく、馬の足跡のようなものがいくつも刻まれている。車が通った跡はない。

 

 俺がその馬の足跡を眺めていると―――俺から見て右側から、馬の蹄のような音が聞こえてきた。

 

「ん?」

 

 くるりとそっちを向いてみると、荷台に木箱や樽を乗せた馬車が俺の方に走ってくるのが見えた。手綱を握っているのは穴の開いた帽子をかぶった中年の男性だ。

 

「あっ、すいませーん!」

 

「どうしたんだ?」

 

「えっと、道に迷っちゃって………」

 

「あんた、見慣れない武器を持ってるな。どこのギルドの所属だい?」

 

「えっ? ぎ、ギルド?」

 

 ギルドって何だよ? そういえば、レイジングブルを持ったままだった。俺は慌てて大型リボルバーをホルスターへと戻すと、おじさんを見上げながら適当に事情を話すことにした。

 

「俺、ちょっと1人で旅してて。この武器は友人から預かった護身用です」

 

「何だ、そういうことか。確かに最近は魔物が狂暴化してるって話は聞くからなぁ。この前なんか、魔物の群れが街を1つ壊滅させたらしいからな。それにしても、そんなに若いのに一人旅とは」

 

「あはは………」

 

 魔物って言ったよな、このおじさん。やっぱり端末に書いてあった通り、ここは異世界なのかもしれない。ギルドとか魔物なんて、今まで現実で聞いたことなんてなかったからな。

 

「まあ、こんなところで魔物に襲われたら危ない。今から近くにある街に行くんだが、乗っていくか?」

 

「いいんですか!?」

 

「ああ。木箱や樽と一緒でいいなら」

 

「ありがとうございます!」

 

 助かった。もしこのおじさんと会わなかったら、魔物の存在も知らず、近くに街があるってことも知らないで草原の中を彷徨うことになってたのかもしれない。俺はおじさんに感謝しながら馬車の荷台に乗り込むことにした。

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、気を付けるんだぞ」

 

「はい。ありがとうございました!」

 

 荷台から降りておじさんに礼を言った俺は、おじさんを見送ってからきょろきょろと降り立った街の様子を見渡した。

 

 青空の下に広がるレンガ造りの街並み。大きな通りには露店が広がり、買い物客で通りは混雑していた。露店では様々なものが売られているらしく、奇妙な壺や水晶を売っている店もあれば、見慣れた野菜や果物を売っている露店もある。リンゴやオレンジが並んでいるのを見た俺は、やっぱりここは俺の知っている世界なんだと安心しかけたが、その隣に並んでいた見たこともない木の実と野菜を見た瞬間、すぐにその安心を投げ捨てる羽目になった。

 

 何だよあの棘だらけの紅い大根みたいな野菜は。禍々し過ぎるだろ。

 

「それ1ついい?」

 

「はいはい、銀貨1枚ね」

 

 そのやり取りを見ていた俺は、ふとポケットに両手を突っ込んだ。パーカーのポケットだけじゃなくジーンズのポケットにもだ。

 

 ポケットに入っていたのは例の端末だけ。それ以外に入っていたものと言えば、レイジングブル用の予備弾薬とパイルバンカーの予備のマガジン。

 

 つまり、今の俺は所持金ゼロってことだ。

 

「おいおい………」

 

 金がなければ何も買えない。もちろん、露店に並んでいる美味しそうなリンゴやオレンジは買えないし、どこか宿みたいなところに宿泊しようにも金がないから泊まれない。

 

 どうすればいいんだよ。

 

 俺が金がないことに悩んでいたその時だった。突然、街のどこかから鐘を鳴らすような音が聞こえたんだ。何かの合図か?

 

 何の合図なのかと考えていると、突然露店に並んでいた人々が買い物をやめ、どこかへと向かって走り出した。まるで何かに怯えて逃げ出したかのようだ。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「魔物だ! こっちに向かってる!」

 

「騎士団にも救援要請を出した! 早く逃げるぞ!」

 

 魔物が街に向かってる? 俺はそこで、あの馬車のおじさんが言っていたことを思い出した。確か、魔物の群れが街を1つ壊滅させたって言ってたっけ。

 

「………ヤバい」

 

 俺も逃げた方がいいかも知れない。異世界に来て早々に死ぬわけにはいかないからな。逃げて行く露店のおじさんを追いかけようと思った俺は、腰のホルスターに収まっているレイジングブルと、左腕のパイルバンカーのことを思い出した。

 

 この武器ならば、やれるかもしれない。

 

 もちろん俺は銃を撃ったことなんてないし、訓練も受けたことがない。でも、上手くいけば魔物をこれで倒せるかもしれないし、もし倒せなかったとしても騎士団が到着するまで時間を稼げるかもしれない。

 

 俺は逃げる住民たちとは逆方向へと走り出した。中には魔物へと向かっていく俺を呼び止めてくれた優しい人もいたが、俺は振り返らずにそのまま真っ直ぐに走っていく。

 

 やがてレンガ造りの建物の向こうに、街の門が見えた。そこから先には俺がさっきまでいたような草原が広がっていて、その草原に何か巨大な影のようなものも見える。

 

 あれが魔物なのか? 俺はホルスターからトーラス・レイジングブルを引き抜くと、取り付けられているスコープを覗き込んだ。

 

「………何だよあれは」

 

 スコープの向こう側人に見えたのは、巨大な二足歩行の化け物だった。岩石のような外殻に全身を包まれた、ゴーレムみたいな怪物。多分4mくらいはあるかもしれない。

 

 それが草原の中に3体。真っ直ぐにこの街を目指している。

 

 俺は再びスコープを覗き込み、真ん中のゴーレムへと狙いを定める。既に街まで距離は100mもないだろう。片付けるならば早くしなければならなかった。

 

 一体どこを狙うべきなのかと俺は思ったが、まず狙うべきは頭だろう。銃身が12インチに延長されたことによって命中精度が更に向上したこのレイジングブルならば、確実にマグナム弾を顔面に叩き込んでやれる。

 

 俺は深呼吸をして呼吸を整えると、スコープの向こう側のゴーレムを睨み付けた。もしマグナム弾の狙撃で仕留めきれなかった場合は、パイルバンカーで迎撃してやるつもりだ。あんな豪腕で殴られたらひとたまりもないが、戦車の装甲を正面から貫通できるらしいこのパイルバンカーを食らえばひとたまりもないのは向こうも同じだ。

 

 あとは度胸の勝負だった。

 

 落ち着いてスコープのカーソルをゴーレムの頭へと重ね、俺はトリガーを引いた。

 

「うおぉっ!?」

 

 予想していたよりも強烈な反動に、思わず驚いてしまう俺。さすがトーラス・レイジングブルだ。

 

 スコープを覗き込み、もう一発叩き込んでやろうかと思ったが、スコープの向こうでは頭に風穴を開けられて後ろへとゴーレムが崩れ落ちるところだった。

 

「め、命中した………!?」

 

 しかも狙い通りにヘッドショット。あんな怪物を一撃で仕留めることが出来た。

 

「よし………!」

 

 次に狙うのは右側のゴーレム。咆哮を上げながら街へと接近を続けるが、動きは非常に遅い。落ち着けばまたしてもヘッドショットで倒せそうだった。

 

 カーソルを頭へと重ね、もう一度トリガーを引く。今度は反動に驚くことはなかったが、慣れたわけじゃない。連射するには慣れと訓練が必要そうだった。

 

 こっちに向かっていたゴーレムの頭にまた風穴が空く。頭を少し後ろへと揺らしながら2体目のゴーレムが倒れたのを確認すると、俺は最後の1体へと照準を合わせた。

 

 残った1体が吠える。仲間を葬られたことに対する怒りなのか、それとも簡単に仲間がやられたことに驚愕しているのかは分からない。

 

 でも、あと1発のマグナム弾で勝負がつくということは分かってる。

 

「終わりだ」

 

 トリガーを引き、俺は6発入りのシリンダーから3発目になるマグナム弾を送り出した。撃鉄(ハンマー)によって殴打された弾丸が、空になった薬莢をシリンダーの中へ残し、猛烈な反動を俺に叩きつけてからゴーレムへと襲い掛かっていく。

 

 マグナム弾がゴーレムの外殻を粉砕する。岩石の破片と肉片がスコープの向こうで一瞬だけ舞い、4mの巨体が静かに草原へと崩れ落ちていく。

 

 俺は草原へと消えていく銃声の残響を聞きながら、静かにレイジングブルをホルスターへと戻した。

 

「………やったな」

 

 1体も街へと到達することなく草原で倒れたゴーレムたちを見渡しながら、俺は静かに呟いた。さすがレイジングブル。凄い破壊力だ。

 

≪レベルが2に上がりました≫

 

「お………」

 

 端末の画面にそう表示されていた。俺はステータスのメニューをタッチし、レベルアップによってどのステータスが上がったのかを確認する。

 

 上がったステータスは攻撃力とスピード。攻撃力は200から280に上がり、スピードは100から130へと上がっている。

 

 そして武器と能力の生産に使うポイントは―――なんと2000ポイントも手に入った。これならば今度はちゃんと能力の方も生産できそうだし、他の武器も作れそうだ。

 

 今度はでかい銃でも作ってみようかな。アンチマテリアルライフルとか。

 

「―――君が奴らを倒したのか?」

 

「ん?」

 

 突然、背後から少女の声が聞こえてきた。間違いなく俺へと向けた言葉だろう。俺は慌てて端末をポケットへとしまうと、後ろを振り返った。

 

 そこに立っていたのは、蒼い髪の少女だった。金属製の防具を両腕や肩などに身に着け、腰には剣の収まった鞘を下げている。恐らく年齢は17歳くらいに見えるんだが、とても17歳とは思えない凛々しい雰囲気を身に纏った少女だった。

 

 

 


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