異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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タクヤの正体

 

 獰猛な破壊力を誇る.600ニトロエクスプレス弾が装填されたプファイファー・ツェリスカを我が子の頭へと向けている俺の右手は、震えていた。

 

 俺の目の前にいるのは、確かに俺の息子の筈だ。俺とエミリアの遺伝子を受け継ぎ、生まれてきてくれた大切な2人の子供の片割れ。幼少期からやけに大人びていて、姉がはしゃいでいる時はいつも静かに姉を見守っていた。ガルちゃんと遊ぶよりも魔物の図鑑を見ているような大人しい子供で、顔立ちはエミリアに似ている。

 

 顔立ちが妻に似ているせいなのか、子供だけではなく妻にも銃口を向けているような気がした。

 

 いきなり父親に銃口を向けられ、いつもとは違う声音と冷たい目を向けられたタクヤが、目を見開きながら震えている。

 

 早くこの銃を下ろしたい。だが、俺はまだこの子供の正体を聞いていない。

 

 俺たちの息子は何者なのか。なぜ、渡した覚えのないMP40を手にしていたのか。初めて狩りに行った時、なぜライフルをちゃんと構える事ができたのか。そして、なぜ触らせた覚えのない89式自動小銃のセレクターレバーが右側にあると知っていたのか。

 

 妻たちやガルちゃんから訓練を受けていたのならば知っている可能性はある。ならば、あのMP40はどこから持ってきたというのか? 端末のメニューをタッチすれば、現在装備している武器が全て表示されるようになっているんだが、あの時は確かにMP40は装備されていなかった。

 

 タクヤがMP40を持っていた理由は、おそらく他の転生者から借りたか、自分で生産し、装備したかのどちらかしかない。

 

 だが、最近は俺たちが転生者を狩り過ぎたせいで、転生者の数が激減している。信也からあのMP40を借りたわけでもないだろう。タクヤは信也と会ったことはあるが、彼から訓練を受けたことは一度もない筈だ。それに信也はタクヤに武器を貸したことは一度もないと以前に明言している。更に、あの時信也はエイナ・ドルレアンの自宅にいた筈だ。

 

 つまり、あり得るのは――――後者だ。

 

 タクヤが自分であのMP40を生産し、装備して誘拐した男たちに逆襲したとしか考えられない。

 

 当たり前だが、タクヤが銃を組み立てられるわけがない。つまり、タクヤは転生者と同じように何かしらの能力で武器を生産したということになる。

 

 だが、この仮説もあり得ない。なぜならば基本的に転生者は17歳の男女だからだ。実際に俺もあの世界で死亡した時は24歳だったんだが、この世界に転生した際には17歳に若返っていた。おそらく転生する際に、強制的に17歳まで若返るような仕組みになっているんだろう。

 

 タクヤはまだ6歳だ。その年齢になるまであと11年もかかる。

 

「お、お父さん・・・・・・何で僕に銃を向けるの・・・・・・!?」

 

「頼む・・・・・・教えてくれ。お前は何者なんだ・・・・・・?」

 

 これ以上に銃を息子に銃を向けたくない。頼む、早く答えてくれ。

 

「僕は・・・・・・お父さんの子供だよ・・・・・・?」

 

「ああ、そうだ。お前は俺たちの大切な子供だ・・・・・・。ならば、なんでMP40を持っていた? あれはどこから持ってきた?」

 

「あれは、信也おじさんが・・・・・・」

 

「嘘をつくな。信也はお前に銃を持たせたことは一度もないし、誘拐された時、信也は自宅にいた。お前にSMG(サブマシンガン)を渡すのは不可能だ」

 

「―――――そうか」

 

 タクヤを追い詰めていたその時、いきなり目の前の息子の口調が変わった。俺は下げかけていた銃口を反射的に上げ、もう一度タクヤの頭に照準を合わせる。

 

 こいつは何者なんだ? 本当に俺たちの子供なのか?

 

 それとも――――転生者なのか?

 

「さすがにバレちまうか・・・・・・」

 

「てめえ、何者だ?」

 

 声音はそのままだ。少年にしてはやや高い声で、まるで少女のような姿のままタクヤは右手で頭の角に触れると、冷たい目つきで銃口を向けている俺の顔を見上げた。

 

「・・・・・・俺の身に何があったのかよく分からない。飛行機の事故で死んだと思ったら――――あんたの子供として、この世界に生まれていた」

 

「なに?」

 

 俺の子供として生まれていた? 飛行機の事故?

 

 どういうことだ? 飛行機の事故で死んで、この世界に転生してきたということなのか?

 

「本当だよ。俺は高校生だった筈だ・・・・・・。だが、旅行に行く時に乗っていた飛行機が事故で墜落しちまって・・・・・・」

 

「・・・・・・俺の息子として、転生したのか?」

 

「そうらしい」

 

 俺は構えていた銃を床に落としそうになった。

 

 目の前にいるこの少年は、確かに俺たちの子供だ。だが、その正体は普通の子供ではない。俺と同じ世界の飛行機の事故で死亡した少年が、俺たちの息子としてこの世界に生まれ変わったというのだ。

 

 まるで、輪廻転生じゃないか・・・・・・。

 

 俺たちみたいにある程度成長した状態からの転生ではない。別の世界で死亡し、この異世界へと生まれ変わった本物の輪廻転生。もしかすると、このタクヤこそが本物の転生者なのかもしれない。もし本当ならば、今まで戦ってきた転生者や俺と信也は、転生者の紛い物だったということだ。

 

「・・・・・・端末は持っているのか?」

 

 転生者ならば、ポイントを消費することで兵器や武器を自由に生産できる便利な端末を持っている筈だ。タクヤにも何度か見せたことはあるからどんな端末なのかは分かっているだろう。

 

 だが、俺に質問されたタクヤは首を横に振った。

 

 端末を持っていないだと・・・・・・?

 

 俺とは転生のしかたが違うからなのか? 驚愕しながらそう思っていると、いきなりタクヤが片手を前に突き出した。自分も転生者だと明かしたタクヤを警戒して銃を向けていた俺は、何か攻撃をするつもりなのかと思って銃を構えながら、プファイファー・ツェリスカのリボルバーにしてはでっかい銃身の上に乗っているスコープを睨みつける。

 

 だが、その動作は攻撃のための動作ではなかったらしい。少し怯えるタクヤの顔をいきなり蒼白い光が照らし出したかと思うと、スコープの向こう側で蒼白い光が煌めき始めた。

 

 何が起きたのかと思って銃をゆっくりと下げると、いつの間にかタクヤの目の前には、俺の端末のようなメニューがいくつも並んだ画面が、まるで立体映像で形成された画面のように出現し、薄暗い地下室をその燐光で照らし出していた。

 

 俺の端末よりもハイテクじゃねえか・・・・・・。

 

「――――武器は、こうやって生産したんだ」

 

 立体映像のメニューを小さな指先でタッチするタクヤ。やがて彼が画面の操作を終えると、誘拐した男たちに逆襲した時に彼が持っていたあのMP40が出現していた。

 

「・・・・・・随分とハイテクだな」

 

「まあな」

 

 なるほど。俺と同じ転生者だったから89式自動小銃のセレクターレバーの位置を知っていたのか。

 

 リボルバーをホルスターに戻す。それを見たタクヤは、やっと警戒心を解いてもらえたと思って安心したのか、息を吐いてからもう一度片手を突き出してその画面を消し、俺の顔を見上げた。

 

「・・・・・・お前の本当の名前は?」

 

「―――――水無月永人(みなづきながと)だ」

 

「ナガト? 戦艦長門(ビッグセブン)か?」

 

「残念ながら、永遠の永に人って書くんだ」

 

「なるほどね・・・・・・。それで、お前の目的は?」

 

「何もない。・・・・・・このまま、この世界であんたの息子として生きていくつもりさ」

 

 永人(タクヤ)は頭の角を触りながら俺の質問に答えた。

 

 他の転生者のように人々を虐げるつもりが無いのならば問題はないだろう。それに、彼はエミリアが生んでくれた大切な子供でもある。彼の正体を知ったら妻たちはかなり驚愕するだろうから、この子の正体は内緒にしておこう。実際にSMGを使っているところを目撃したエリスとガルちゃんには、転生者の子供だから武器や能力を生み出す能力まで受け継いだと説明しておけばいいだろう。

 

「・・・・・・俺の息子でいいのか?」

 

「構わねえよ。・・・・・・・・・俺の前の親父はクズでさ。自分勝手で、よく母さんや俺に暴力を振るってた。気に入らないことがあればすぐに殴ってくるし、反論すればもっと殴ってくる。そのせいで母さんは病気になって死んじまってさ、俺はその糞親父(クズ)と2人暮らしをする羽目になった」

 

「・・・・・・」

 

「殺してやろうかと何度も思ったよ。父親っていうのは、自分勝手なクズばっかりなんだと思ってた。―――――でも、あんたは何だか違う。ちゃんと話も聞いてくれるし、家族を大切にしてるし・・・・・・」

 

 当たり前だろう。妻や子供を大切にするのは、父親として当たり前だ。自分勝手で暴力を振るうような奴は、父親としてありえない。

 

 そんな奴が俺の親父だったら、とっくにリンチして家から追い出してるところだ。

 

「・・・・・・安心しろ。6年前から、お前はもう水無月永人じゃない。お前はもう、タクヤ・ハヤカワだ」

 

「・・・・・・」

 

「正体が転生者でも関係ない。これがお前にとって2回目の人生だっていうのなら、思い切り楽しめ。いいな? つまらん人生を送って死ぬのは許さんからな」

 

 俺だってこれが2回目の人生だ。本当ならば、車上荒らしに殺された俺は、たった24年の人生をあのアスファルトの上で終えていた筈なんだ。

 

 だから一度死んでしまったこいつにも、人生を楽しんでほしい。そのための世界は俺たちが整えよう。

 

「・・・・・・あんた、最高の父親だ」

 

「それはどうも。・・・・・・さて、そろそろ部屋に戻ろうぜ。夜更かししてるとお母さん(エミリア)に怒られちまう」

 

「ああ、そうだな」

 

 エミリアを怒らせるわけにはいかないからな。

 

 それにしても、子供が生まれた時の妻たちは滅茶苦茶嬉しそうだったなぁ・・・・・・。生まれたばかりの赤ん坊を抱いて幸せそうに微笑んでいた妻たちの顔を思い出した俺は、ニヤニヤ笑いながら地下室のドアを開ける。

 

 そのまま階段を上って行こうとした俺は、あることを思い出していきなり立ち止まった。

 

 そういえば、タクヤとラウラは赤ん坊の頃は母乳を・・・・・・。

 

「親父、どうした?」

 

「―――――そう言えば、お前は赤ん坊の頃の事は覚えているのか?」

 

「ああ、ちゃんと覚えてるぜ?」

 

「そうか・・・・・・」

 

 右手でホルスターの中のプファイファー・ツェリスカのグリップを掴み、ゆっくりとホルスターの中から引き抜きながら後ろを振り返る。俺の後ろで冷や汗を流し、苦笑いしながら後ずさりするタクヤを睨みつけた俺は、再び引き抜いたリボルバーの銃口をタクヤへと向けた。

 

「――――そういえば、お前とラウラは粉ミルクじゃなくて母乳だったよなぁ?」

 

「え? ああ・・・・・・ちょ、ちょっと、親父・・・・・・?」

 

「―――――――よくも人の妻をッ!! このクソガキぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」

 

「ぎゃあああああああああ!? お、親父、落ち着けッ!!」

 

 このクソガキ、絶対に許さん! よくも俺の妻を!!

 

「拒否できるわけないじゃん! 当時の俺は赤ちゃんだったんだぜ!? 赤ちゃんがお母さんに『母乳じゃなくて粉ミルクが欲しい』って言えるわけねえだろ!?」

 

「黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!」

 

 絶叫しながらリボルバーの銃身を振り下ろそうとしたその時だった。いきなり背後から階段を駆け下りてくる聞き覚えのある足音が聞こえてきたかと思うと、一瞬だけその足音が消え――――何かが強烈な衝撃と共に、俺の後頭部にめり込んだ。

 

「うふんッ!?」

 

 どうやら俺は、後頭部にドロップキックを叩き込まれたらしい。猛烈な勢いの乗ったドロップキックを後頭部に喰らっちまった俺は、タクヤの頭に振り下ろす筈だったリボルバーを空振りした上に、そのまま地下室の中へと再び押し戻され、顔面を硬い床に叩き付ける羽目になった。

 

 鼻血が早くも垂れ始めた鼻を押さえながら後ろを振り向くと、パジャマ姿の妻(エミリア)が、タクヤを抱き締めながら俺の事を睨みつけていた。

 

「夜中に大声を出すな、馬鹿者ッ!」

 

「す、すいません・・・・・・」

 

「まったく・・・・・・。さあ、タクヤ。今日はもう寝よう」

 

「うん、お母さん」

 

 そういえば、もう夜中だった。いつもならばもうエミリアたちも寝ている時間だ。確かにあんなに絶叫すれば迷惑だったな・・・・・・。

 

 すまない、エミリア。

 

 鼻血を手で拭っていると、タクヤが母親(エミリア)にしがみつきながら、俺の方を見てにやりと笑ったのが見えた。

 

 このクソガキめ・・・・・・!

 

「ほら」

 

「ん?」

 

 ニヤニヤ笑うタクヤを睨みつけていると、笑いながらため息をついたエミリアが、パジャマのポケットの中からハンカチを取り出し、鼻血を流し続けている俺に渡してくれた。

 

「その・・・・・・すまなかった。いきなり背後から・・・・・・」

 

「き、気にするな。俺が悪かったんだ・・・・・・」

 

 妻からハンカチを受け取り、鼻血を拭き取る。

 

 鼻血を拭い終えると同時に、俺に近付いてきたエミリアが、そっと俺の唇に自分の唇を押し付けてきた。久しぶりにいきなりキスをされて驚いていると、エミリアにしがみついてニヤニヤ笑っていたタクヤが顔を真っ赤にしながら、目を見開いて俺たちを見上げている。エミリアにそっくりな顔立ちの息子の頭に生えている蒼い角は、いきなりキスを見せられたからなのか少しずつ伸び始めていた。

 

 なるほど。感情が昂ると角が伸びるという体質は俺と同じなんだな。

 

「――――ぷはっ! ・・・・・・おいおい、タクヤが見てるんだぜ?」

 

「ふふっ、そうだな。・・・・・・ほら、部屋に戻るぞ」

 

 俺の鼻血で真っ赤になってしまったハンカチをポケットに戻した俺は、妻と手を繋ぎながら階段を上り、1階の廊下へと向かう。そこから自室へと向かって階段を上り始めた俺は、悔しそうな顔をしているタクヤを見下ろしてニヤニヤ笑ってやった。

 

 どうやらこいつは、前の世界で彼女がいなかったらしいな。

 

 ざまあみろ、クソガキめ。

 

 

 

 

 

 

 

 王都の朝は、ネイリンゲンの朝と比べると閉鎖的で重々しい。この大都市を取り囲む分厚い防壁のせいなんだろうか? どれだけ高い建物から外を眺めても草原を見ることは出来ず、灰色の分厚い防壁とにらめっこをする羽目になる。閉鎖的で殺風景な光景にうんざりしながら家の裏庭へとやって来た俺は、仕込み杖を2つに分離させて刀身を展開し、素振りを始めた。

 

 ずっと愛用しているこの仕込み杖も、いろいろとカスタマイズを続けている。まず、刀身を両刃からサバイバルナイフの刀身を捕捉して伸ばしたような形状に変更した。隠密行動の際に刀身が反射しないように、ちゃんと漆黒に塗装してある。刀身の裏側にノコギリのような刃が追加されたせいなのか、威圧感が増したような気がする。

 

 そして杖についていたドラゴンの頭を模した装飾は、リボルバーのシリンダーへと変更されていた。シリンダーの後ろにはちゃんと弾丸をぶっ放すための撃鉄(ハンマー)もあるし、装飾の付け根の部分には小さなトリガーもある。装填されているのはトーラス・レイジングブルやスタームルガー・スーパーブラックホークと同じく、大口径の.44マグナム弾だ。ただし、銃身が存在しないため命中精度は最悪だ。しかも射程距離も短い。

 

 まるで銃身のないリボルバーが杖の先端部にくっついているような奇妙なフォルムの仕込み杖になっている。

 

 余談だが、実際にベルギーで開発されたアパッチ・リボルバーという銃身が無いリボルバーがある。7mm弾を使用する小型のリボルバーで、指を入れてナックルダスターとしても利用できる穴の開いた折り畳み式のグリップと、折り畳み式の小型ナイフも装着されている変わったリボルバーだ。

 

 使った事は一度もないが、護身用にと2丁ほど生産している。

 

 刀身を展開した仕込み杖で素振りを繰り返した俺は、左右へと何度も刀身を振り払うと、素早くスイッチを押して刀身を格納し、柄を連結させてから杖をハンマーのように振り回す。この杖は大口径のマグナム弾を使用するために大型のシリンダーが搭載されており、重量も増えているため、ハンマーのように相手を殴りつけることも可能になっている。打撃と斬撃と銃撃を使い分ける事ができるというわけだ。

 

 国王に貰った仕込み杖よりもこっちの方が便利だな。ざまあみろ、ガルちゃん。

 

「パパ」

 

「ん? ラウラか。おはよう」

 

「うん、おはよう。・・・・・・今、訓練中なの?」

 

「ああ。最近はあまり訓練してないからなぁ。パパも歳を取ったし」

 

 もう27歳だからなぁ。転生してきたのは10年前か。

 

 スタミナは端末のステータスの中に含まれないから、こうやって自分で訓練し、鍛え上げなければならない。能力とステータスに頼りっきりの転生者でも、レベルが高くてもよく息切れしているんだ。

 

 苦笑いしながら昔の事を思い出していると、あくびをしながらラウラが俺の近くへとやって来た。救出されたばかりの時は顔が痣だらけだったんだけど、今はもうフィオナの治療のおかげで元通りになっている。

 

「ねえ、パパ。私にも戦い方を教えて」

 

「ん? どうして?」

 

「あのね。私たちが誘拐された時、タクヤは私の事を守ってくれたの。でも、私は何もできなくて・・・・・・。だから、強くなってタクヤを守りたいの」

 

 なるほどな・・・・・・。お姉ちゃんとして、大切な弟を守りたいというわけか。

 

「剣術なら、ママかエミリアのほうがパパよりも上手だよ?」

 

「でも、パパに教えてほしいの」

 

「何で?」

 

「なんだか、パパの戦い方が真似しやすそうな気がするの」

 

 マジかよ。

 

 俺の容赦のない戦い方を真似するつもりか。俺の剣術は少しだけエミリアに教わった部分があるが、基本的に我流だぞ?

 

 だが、断るわけにはいかない。ラウラは姉として、弟を守るために強くなりたがっている。ならば俺は、彼女に俺の戦い方を教えて彼女に力を貸すべきだ。

 

「分かった。・・・・・・ただし、タクヤも連れて来なさい」

 

「え?」

 

 杖を地面に置いてから、俺はラウラの頭にそっと手を置いた。

 

「強くなるなら、姉弟(2人)で一緒に強くなれ。お前たちは一心同体なんだ。いいな?」

 

「うんっ! じゃあ、タクヤも呼んでくるっ!」

 

 嬉しそうに笑ったラウラは、にこにこ笑いながら裏口のドアから再び家の中へと入って行った。きっと今頃はタクヤは寝ているだろう。数秒後に同い年の姉に叩き起こされるに違いない。

 

 ざまあみろ、クソガキめ。

 

 にやりと笑った俺は、ラウラが眠そうなタクヤを連れて来るまでの間、素振りを続けることにした。

 

 

 

 


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