異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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プロローグ2

  確かに俺は死んだ筈だった。胸に突き刺されたナイフの激痛も、俺の車の窓ガラスを割って俺の事を殺しやがった車上荒らしの野郎の顔もしっかりと覚えている。それに、あの身体に力が入らなくなっていく感覚も。

 

 全部、確かに覚えていた。

 

「ここは………?」

 

 俺は死んだんだよな……? 駐車場で死んだ記憶が確かにあることを確認しながら、俺は死因となった胸の傷へと手を伸ばした。だが、確かに刺された筈なのに、全く傷らしきものが見たらない。それに、何故か今の俺が身に着けているのはお気に入りのジーンズと黒いフード付きのパーカーだった。

 

 何でこの恰好をしてるんだ? 確かにこれは俺のパーカーだよな? どうしてこんな恰好をしているのかと思っていた俺は、あの時駐車場で聞いた男の低い声が言っていたことを思い出した。

 

 確か、ポケットの中身を確認してみろって言ってたっけ。あの時は車の鍵くらいしか入ってなかったけど、今はいったい何が入っているんだろうか? 俺はパーカーのポケットへと右手を突っ込んでみた。

 

「何だこれ?」

 

 やはり、ポケットの中に何かが入っていた。でもそこにあったのは車の鍵ではなく、携帯電話くらいの大きさの端末だった。明らかに俺の私物ではない。

 

 電源らしきボタンを見つけた俺は、試しにそこを押してみることにした。

 

≪速河力也様、異世界へようこそ!≫

 

 やっぱり俺が押したボタンは電源だったらしい。画面が起動したかと思うと、いきなり青白い文字が表示され、そんな一言が画面に浮き上がっていた。

 

 異世界へようこそ? どういうこと?

 

≪この端末では、様々な武器や能力を生み出し、それらを装備したりすることができます。これから力也様が向かう異世界では必需品となるでしょう。なお、バッテリーが切れることはないのでご安心ください≫

 

 バッテリーが切れないって凄くないか? この端末。

 

 それと、武器や能力を生み出せるってどういうことなんだろうか? 画面に出ていた文字が消えると、蒼い背景の前に『武器と能力の生産』、『武器と能力の装備』、『ステータス』の3つのメニューが表示された。

 

 ステータスって何だ? 気になった俺は、3つのメニューの中で一番下にあったそれを人差し指でタッチしてみた。すると、蒼い背景の前に俺の名前とレベルとステータスの数値がずらりと表示された。

 

「攻撃力と防御力が200で、他は全部100か………。ん?」

 

 ステータスの中に年齢って項目があったんだが、よく見るとその脇にある数字が17って書いてあるんだけど……? あれ? もしかして若返った?

 

 よく見ると俺の両手もちょっと白いし。

 

 それにしても、ラグビー部で結構走ってた記憶があるんだが、それでもスピードのステータスは100なんだな。それにしてもこれは何なんだろうか?

 

≪レベルが上がるとポイントを手に入れることが出来ます。ポイントは武器と能力の生産に使用することが出来ます≫

 

 なるほどな。説明文が消えるのを待つと、俺は画面の下にあったボタンを押してさっきのメニューに戻り、今度は『武器と能力の生産』のメニューをタッチした。

 

 今度は『武器の生産』と『能力の生産』の2つのメニューが出現する。能力よりも武器の方が気になった俺は、とりあえず先にそっちをタッチする。

 

「おお」

 

 ずらりと並んだ武器の項目を見て、俺は少しはしゃいだ。剣や斧や槍だけじゃなくて、ナイフとか弓とか杖もある。でも俺が特に目を奪われたのは、下の方にあった銃とパイルバンカーの2つだった。

 

 まず銃から確認する。タッチすると、今度はハンドガンやアサルトライフルなどの武器の種類が表示された。

 

≪現在、ポイントは1000ポイントあります。そのポイントで初期装備を決めてください≫

 

 初期装備か。最初から用意されてるわけじゃないんだな。

 

 とりあえず、最初はハンドガンから。

 

 ハンドガンの項目をタッチすると、ずらりと縦にいろんなハンドガンの名前が並んだ。一番上にあるのはコルトM1911。45口径の弾丸を発射するハンドガンの傑作の1つだ。その下には旧ソ連製ハンドガンのトカレフTT-33。その下にはルガーP08があり、更にその下には旧日本軍で使用されていた南部大型自動拳銃が。

 

 友人にミリオタがいたせいで、俺も銃には詳しい。上にあった4つのハンドガンはどれも200ポイントくらいで製造できる。

 

 下の方へ行ってみると、段々と新しいハンドガンの名前が出てくる。ベレッタM92Fにデザートイーグル。その下にはリボルバーのコルト・パイソンもあるな。

 

 どれにしようか考えていると、俺はある銃を見つけてそこで止まった。

 

「レイジングブルがある………!」

 

 俺の指の先にあったその銃の名前は、トーラス・レイジングブル。強力なマグナム弾を使用する大型リボルバーだ。一度に装填できる弾丸の数は6発のみだが、その分破壊力は圧倒的だ。間違いなく、ハンドガンやリボルバーの中ではトップクラスの攻撃力を持っているだろう。

 

 生産に使うポイントは400。上の方にあったハンドガンよりもポイントを倍使うが、1000ポイントもあるんだから大丈夫だろう。俺はレイジングブルをタッチし、その先にあった生産のメニューをタッチした。

 

≪武器は生産するだけでなく、自由にカスタマイズすることが可能です。カスタマイズにも少量のポイントを使用します≫

 

 しかもカスタマイズまでできるのか。最高じゃないか!

 

 俺は生産したばかりのレイジングブルをさっそくカスタマイズすることにした。カスタマイズのメニューをタッチし、どのようなカスタマイズができるのか確認する。

 

 自由にカスタマイズできると説明文に書いていたのは本当らしい。ドットサイトを取り付けるようなカスタマイズから、銃身を延長したり、本来はダブルアクションのリボルバーをシングルアクションに戻したりといった特殊なカスタマイズまで可能らしかった。ひとまず俺は銃身を8インチから12インチまで伸ばし、スコープを装着することにした。これで消費したポイントの合計は100。残ったポイントは500ポイントだ。

 

 拙いな。銃のカスタマイズをやってたらすぐにポイントがなくなってしまいそうだ。それにいくら強力なリボルバーとはいえ、初期装備がそれだけというのも拙い。接近戦用の武器も作っておかないといけない。

 

 俺は銃のメニューから戻ると、また武器の種類が並ぶ画面へと戻った。もう、どの接近戦用の武器を作るべきか、目はつけていたんだ。

 

「やっぱり、パイルバンカーだよなぁ」

 

 パイルバンカーとは、巨大な杭で攻撃を行う非常に強力な近距離武器だ。射程距離や攻撃範囲は非常に狭いが、攻撃力は間違いなく近距離武器の中では最強だろう。

 

 パイルバンカーをタッチし、どんな武器があるのか確認する。

 

「種類が少ないな。しかもポイントが高いし………」

 

 ぐっ………どれも400ポイント以上も使うぞ。もし仮に一番ポイントが少ない奴を作ったとしても、残されるポイントは100ポイント。これじゃ能力のほうに使えるポイントがなくなってしまう。

 

「でも、作ろう」

 

 能力がなくてもリボルバーとパイルバンカーがあれば多分最初のうちは補えるだろうし、レベルを上げればポイントは手に入るんだ。何とかなるだろう。

 

 俺はパイルバンカーの中でも一番ポイントが低く、一番上にあった『タイラント』という名称のパイルバンカーを生産することにした。腕に装着するタイプらしい。

 

≪タイラントは、ボルトアクション式のパイルバンカーです。射程距離は僅か30㎝程度ですが、戦車の装甲を正面から貫通できるだけの破壊力を秘めています。弾数は5発です≫

 

 ボルトアクション式っていうのは、ボルトハンドルと呼ばれるハンドルを引く作業が必要な武器の方式のことだ。第二次世界大戦の時はこの方式のライフルが多かったが、アサルトライフルが主流になった現在ではスナイパーライフルなどにこの方式が見られる。まさかその方式がパイルバンカーに利用されるなんてな。ちゃんとボルトハンドルらしき部分もあるし。

 

 カスタマイズでは、どうやら照準をつけるためのアイアンサイトの取り付けと、マガジンの拡張くらいしかできそうになかった。できればリーチも延長してほしかったんだけどその項目がない。さすがに30㎝は短過ぎじゃないですかね? 

 

 とにかく、これで丁度1000ポイントを使い果たしてしまったわけだ。今の俺の初期装備は、トーラス・レイジングブルの12インチとボルトアクション式のパイルバンカー。こっちはアイアンサイトを取り付け、マガジンを拡張して7発まで増やしている。

 

 画面を一番最初のメニューまで戻してみると、いつの間にか俺の左腕と腰に生産したばかりの武器が装備されていた。初期装備にしては攻撃力が高い2つの武器だ。俺は静かにホルスターからこの大型のリボルバーを引き抜き、スコープの取り付けられたそれを眺めてみた。

 

≪では、これより異世界へと向かいます≫

 

「ちょっと待て。異世界ってどういうことだ?」

 

 端末の画面に浮かんだ文字へと思わず俺は聞いてしまう。当然ながら返事などなかった。

 

≪速河力也様、頑張ってください!≫

 

「頑張ってくださいじゃねーって!」

 

 本当にどういう事なんだよ? 異世界って何だ?

 

 俺はいくつも疑問を浮かべたが、突然現れた真っ白な光が、俺のその疑問たちを一気に薙ぎ払うかのように広がり、俺の事を呑み込んだ。

 

 


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