異世界で転生者が現代兵器を使うとこうなる   作:往復ミサイル

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今回はガルちゃんが大活躍です(笑)


ガルちゃんが敵を蹂躙するとこうなる

 

 たった9人の傭兵たちに、基地を守っていた守備隊が蹂躙されていた。

 

 先ほどから突撃する俺たちを狙っている筈の銃撃は、俺たちがトリガーを引き、敵兵を撃ち殺していく度に減っていく。頼みの戦車は1発も砲弾をぶっ放す前に爆破され、迫撃砲で破壊された上に戦闘ヘリから対戦車ミサイルを撃ち込まれて壊滅状態。俺たちが格納庫から離れて敵もやっと爆発物が使えるようになったというのに、戦車部隊は既に残骸と化しているから砲撃が出来ない。

 

 しかも歩兵部隊で応戦しようとすればねじ伏せられるし、俺たちばかり狙えば格納庫の前で射撃を続けるカレンとギュンターによって瞬く間に撃ち殺される。

 

 最早、歩兵部隊だけで俺たちを迎え撃つのは不可能になりつつあった。

 

「気を付けろ、10時方向!!」

 

 Saritch308ARの銃身の下に装着したGM-94の43mmグレネード弾で戦車の残骸の陰から銃撃してくる奴らをまとめて吹っ飛ばした俺は、前方の敵に向かって射撃を続ける仲間たちに向かって叫んだ。M16A3を装備した数名の転生者が、俺たちを奇襲するために側面から射撃しようとしている。

 

 俺は正面への攻撃を中断してそちらへと銃口を向けたが、俺がトリガーを引く前に敵兵はコンテナの陰に隠れてしまった。威力の高い7.62mm弾ではコンテナを貫通する事ができないため、敵兵が姿を現すのを待つか、回り込んで仕留めるしかない。

 

 舌打ちをしていると、1発の砲弾がそのコンテナの方へと向かって放たれたのが見えた。その砲弾は銃声の轟音を纏いながら飛翔すると、敵が隠れているコンテナの脇を通過しかけたところで弾け飛び、爆風と破片をコンテナの陰に隠れていた敵兵に叩き付けた。

 

 エアバースト・グレネード弾だ。突撃している仲間たちの中で、エアバースト・グレネード弾を発射可能な武器を持っているのはエリスしかいない。

 

 俺はボルトハンドルを引いて大きな薬莢を排出するエリスをちらりと見た。彼女は俺の方を見てウインクすると、再び敵に向かって5.56mm弾のフルオート射撃を叩き込み始める。

 

 彼女が装備しているのは、韓国製のK11複合型小銃だ。5.56mm弾を使用するアサルトライフルと、20mmエアバースト・グレネード弾を発射するエアバースト・グレネードランチャーを組み合わせた武器になっている。

 

 元々エリスはアサルトライフルの下にエアバースト・グレネードランチャーを装備して戦っているため、アサルトライフルの銃撃とエアバースト・グレネード弾を併用した戦い方には慣れているんだろう。

 

 ハンドグリップを引いて43mmグレネード弾の薬莢を排出し、ドットサイトを覗き込んで銃撃を再開する。まだ銃撃してくる敵が残っているが、中には逃げ出す兵士も残っているようだ。

 

 ブースターをドットサイトの後ろに展開して中距離の敵を狙撃しようと思ったその時、格納庫の上に敵兵が伏せているのが見えた。バイポットを装備した長大なライフルのスコープを覗き込み、銃口をこちらへと向けている。

 

 おそらく、アメリカ製アンチマテリアルライフルのバレットM82A3だ。俺も転生してきたばかりの頃に使った事があるアンチマテリアルライフルで、12.7mm弾を使用するセミオートマチック式のライフルだ。

 

 こいつで狙撃できるか・・・・・・? あいつに仲間たちを狙わせるわけにはいかない・・・・・・!

 

 セレクターレバーを操作してセミオート射撃に切り替えた瞬間、俺がトリガーを引くよりも先に、格納庫の上でライフルを構えていたスナイパーのバレットM82A3の銃口が煌めいた。

 

 屋根の上に降り積もっていた雪を舞い上げ、敵味方の銃声をたった1度の銃声で蹂躙してしまう。

 

 誰が狙われた・・・・・・? 銃口の向きを確認した俺は、敵が俺を狙ったのではないということを理解した瞬間、ぞっとしてしまった。俺が狙われていたのならば、マズルフラッシュが見えた瞬間にサラマンダーの外殻を生成して硬化すれば身を守る事ができるだろう。だが、エミリアとエリスにそんな芸当は出来ないし、彼女たちは銃撃戦の最中だ。敵のスナイパーに気付いていない・・・・・・!

 

 すると、吹雪の中で真っ黒なベレー帽が舞い上がった。

 

「え・・・・・・?」

 

 逃げていく敵兵をフルオート射撃で追い詰めていた赤毛の少女の小さな体がのけ反る。かぶっていた大きめのベレー帽が落下し、吹雪の中で長い赤毛が揺れた。

 

 狙われたのは、ガルちゃんだった。

 

 アサルトライフルよりも遥かに強烈な弾丸は轟音を引き連れながら飛翔した12.7mm弾が、MG34のフルオート射撃で敵を追撃していたガルちゃんの頭に命中したらしい。彼女は火山の戦いで俺たちの攻撃を殆ど跳ね返すほど強靭な外殻を持っていたんだけど、今の彼女は幼い少女の姿だ。あの巨大なエンシェントドラゴンの姿ではないんだ。

 

 ガルちゃんがやられた・・・・・・?

 

 銃撃戦の最中だった俺たちは、ぞっとしながら撃たれたガルちゃんの方を振り向いた。

 

「――――い、痛いのう・・・・・・」

 

「おい、大丈夫かよ!?」

 

 頭を振りながら体勢を立て直すガルちゃん。俺は彼女の小さな手を引っ張ってコンテナの影へと引きずり込む。俺は片手で狙撃手のいた屋根の上に7.62mm弾のフルオート射撃をお見舞いすると、射撃を妻たちに任せてガルちゃんの様子を確認した。

 

 だが、俺の後ろで頭を振るガルちゃんに傷は見当たらなかった。出血はないし、皮膚も赤くなっていない。

 

 あれ? さっき撃たれたよな・・・・・・?

 

「が、ガルちゃん?」

 

「ふっふっふっふっ。最古の竜を舐めるなよ、人間め」

 

 ガルちゃんはにやりと笑いながら胸を張ると、俺の顔を見上げた。すると、彼女の顔の皮膚が黒く変色していき、まるでエンシェントドラゴンの姿だった時の彼女を覆っていた外殻のように変質していく。

 

 やがて、彼女の顔の一部が、紅い古代文字のような模様が浮かび上がった黒い外殻に覆われた。20mm弾や無反動砲の対戦車榴弾を散々弾き飛ばした、あのガルゴニスの外殻だ。

 

「なるほど、外殻を生成して・・・・・・」

 

「その通りじゃ。お主がやっておったから、真似させてもらったのじゃ」

 

 ガルちゃんがやったのは、俺と同じだった。

 

 俺の場合は自分の血液とサラマンダーの血液の比率を変えて意図的に身体を変異させることにより、外殻を生成して硬化する。でも、ガルちゃんは元々エンシェントドラゴンだ。魔力を失って弱っていた彼女が俺の魔力を貰い、人間の姿になっているだけなんだ。だから魔力さえあれば、自由自在にあの外殻を生成する事ができる。

 

 なるほど。あの防御力は健在というわけだ。

 

 安心した俺はガルちゃんににやりと笑い返すと、アサルトライフルを腰に下げ、背中に背負っていた得物の銃身を展開した。立ったままスコープを覗き込み、銃口を格納庫の屋根の上へと向ける。

 

 敵のスナイパーが再びトリガーを引く。だが狙いは俺ではなくエミリアたちのようだった。だが、先ほどの狙撃でスナイパーがいると知っていた2人は既にコンテナの陰に隠れていたため、12.7mm弾が命中したのは俺の妻たちではなく、雪のこびりついたコンテナだった。

 

 ふざけやがって。俺の妻をやらせてたまるか。

 

 スナイパーの野郎はまだ俺の妻たちを狙っている。悪いが、俺の妻をお前にやるつもりはない。俺は妻たちを狙う馬鹿にカーソルを合わせると、躊躇せずにトリガーを引いた。

 

 カーソルの向こうで血飛沫が吹き上がる。格納庫の上でスナイパーがバラバラになり、肉片が雪の上に降り注ぐ。

 

「スナイパー排除!」

 

「力也、戦車が来る!」

 

「なに?」

 

 まだ戦車が残ってたのか・・・・・・!?

 

 スコープから目を離して敵兵たちが逃げていく方向を凝視していると、先ほど撃破したM60パットンの残骸の向こうから、更にM60パットンの車列が接近してくるのが見れた。やはり複合装甲は白とグレーの2色で塗装されている。

 

 拙い。先ほどまでは核兵器が格納されている倉庫の前で戦っていたから敵は爆発物を使えなかったが、今の俺たちは敵を追撃したせいで格納庫から離れてしまっている。このままではM60パットンが搭載している105mmライフル砲で砲撃されちまう!

 

 慌てて迫撃砲の準備を始めようとしていると、俺の後ろに立っていたガルちゃんが俺のコートの裾を引っ張り始めた。

 

「何だ?」

 

「あの戦車は私に任せてほしいのじゃ」

 

「ん? お前が仕留めるってか?」

 

「そう言うことじゃ。――――人間共に、最古の竜の力を思い知らせてやらんとのう」

 

 MG34を肩に担ぎながら笑うガルちゃん。俺は腰に下げていた仕込み杖を取り出すと、コンテナから飛び出そうとしているガルちゃんに渡した。

 

「持って行け。こいつはサラマンダーの素材で作られてる」

 

「ふむ・・・・・・仕込み杖か」

 

「ああ。きっとサラマンダーが力を貸してくれるぜ」

 

「分かった。では、お主らは隠れておれ」

 

 MG34を背中に背負い、ガルちゃんは杖の柄頭を掴んで刀身を杖の中から引き抜いた。剣にしては刀身は細身だったが、先端部に行くにつれてその細い刀身は真っ赤になっている。サラマンダーの外殻の中で最も硬い角を素材に使った証だ。

 

「すまないな、同胞よ。・・・・・・少しだけ力を貸しておくれ」

 

 柄頭を自分の額に当てながらそう呟いたガルちゃんは、砲撃を開始しようとしている敵の戦車を睨みつけながら、剣を構えてコンテナの陰から飛び出した。

 

 いきなりコンテナの陰から姿を現したガルちゃんを狙い始める敵兵たち。俺はアンチマテリアルライフルを構え、突撃するガルちゃんを援護し始める。

 

 転生者を凌駕する速度で走り続けるガルちゃんは、小さな体で仕込み杖の刀身を振るい続け、自分に向かって飛来してくる銃弾を全て叩き落としていた。5.56mm弾や5.45mm弾を剣で弾きながら、絶叫して銃を乱射している敵兵を次々に両断しながら前に進んでいく。

 

 彼女の前に立ちふさがった愚か者たちは、彼女に接近された瞬間に両断され、血飛沫を噴き上げながら雪の中に崩れ落ちていた。

 

「ガルちゃん、すごい・・・・・・!」

 

 K11複合型小銃で援護射撃をしていたエリスが、銃声の中でそう呟いた。

 

 俺でもあんな集中砲火の中を、たった1本の仕込み杖で突破するのは無理だろう。だがガルちゃんは何十人もの敵兵が一斉にフルオート射撃で放つ銃弾をたった1本の剣で弾き飛ばし、接近した転生者を一撃で仕留めながら前進している!

 

 すると、奥で砲塔を旋回させていたM60パットンの105mmライフル砲が轟音を発した。砲口から吹き上がった炎を纏いながら、巨大な砲弾が飛び出す。

 

 狙いはもちろん、たった1人で歩兵部隊を蹂躙しているガルちゃんだった。

 

「ガルゴニス!」

 

 避けろと叫ぼうとしたが、その前に戦車が放った105mmライフル砲の砲弾がガルちゃんの小さな体に直撃した。敵兵たちの銃声が止み、剣を振るい続けていたガルちゃんが爆風に呑み込まれる。

 

 12.7mm弾ならばあの外殻で弾けるが、さすがに戦車砲は弾けなかったかもしれない。

 

「――――舐めるなよ、人間共め」

 

 その時、爆音の残響の中から彼女の強気な声が聞こえてきた。

 

 冷たい風が黒煙を吹き飛ばした中から姿を現したのは、俺の制服にそっくりなデザインの制服を身に纏い、少し大きめの黒いベレー帽をかぶった赤毛の幼女だった。

 

 やはり彼女の身体には、傷一つついていない。

 

 なんてこった。火山で戦った時よりも防御力が上がってるのか!?

 

 彼女がにやりと笑った瞬間、再び敵兵たちに恐怖が襲いかかった。弾丸を全て弾き飛ばし、戦車砲が直撃しても傷一つつかない幼女。そんな怪物に狙われた転生者たちは、絶叫しながら再び銃を連射するが、ガルちゃんは俺のように全く容赦がなかった。一番近くにいた敵兵に接近して喉元に仕込み杖の剣を突き刺し、そのままその転生者の死体を盾にすると、穴だらけになった転生者の死体を蹴飛ばして後ろにいた転生者と激突させ、その死体もろとも剣で貫く。

 

 すぐに2人分の死体から剣を引き抜くと、返り血を振り払わずに再び突進を再開。右側でM16A3をフルオート射撃でぶっ放していた転生者の右腕を両断し、宙を舞う腕からアサルトライフルを奪い取ると、そのまま左手でM16A3をぶっ放して次々に転生者たちの頭を撃ち抜き、弾切れすると同時にライフルを拝借した転生者に止めを刺す。

 

 その時、再びM60パットンの戦車砲が火を噴いた。だが、ガルちゃんは今度は外殻を生成して防御するのではなく、なんと左手をあの黒い外殻で覆って強化すると、飛来してきた砲弾を小さな手の平で受け止めた!

 

「あ、あらあら・・・・・・!」

 

「何だと・・・・・・!?」

 

 戦車砲の砲弾を掴み取ったガルちゃんを見守っていたエミリアとエリスが驚愕する。俺も彼女の戦いを見守りながら、静かに銃を下げた。

 

 もう援護は必要ないだろう。あの敵部隊は、最古の竜に蹂躙されるのだ。

 

 ガルちゃんは砲弾を掴み取ったままにやりと笑うと、その砲弾をM60パットンに向かって投げ返した。戦車からぶっ放された時よりも弾速は遅かったが、ガルちゃんが投げ返したその砲弾は再び砲口に飛び込み、中に刻まれていたライフリングを滅茶苦茶にしながら突き進んでいった。

 

 その直後、M60パットンの砲塔が内部で生まれた火柱に押し上げられ、吹雪の中に打ち上げられた。どうやらガルちゃんが投げ返した砲弾が次に装填されていた砲弾と衝突して爆発したらしい。2発分の戦車砲の砲弾の爆発で、M60パットンは一瞬で木端微塵になってしまった。

 

「ははははっ! リキヤ、やったぞ!」

 

 戦車が吹き上げる火柱の前で、ガルちゃんは笑いながら親指を立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『司令塔、聞こえるか!? 救援を! 敵の幼女が―――――ギャアアアアアアアア!!』

 

『おい、あの幼女を何とかしろッ!』

 

『無理だ! 銃弾を剣で弾いてるッ! 何なんだよ、あの幼女はッ!?』

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

 何と不甲斐ない・・・・・・!

 

 現代兵器を装備した転生者の部隊が、たった1人の幼女に蹂躙されているだと!?

 

「おい、どうする? 救援を要請するか!?」

 

「馬鹿野郎ッ! 幼女に蹂躙されているから救援をよこせなどと言えるわけがないだろうがッ!!」

 

 部下を怒鳴りつけながら双眼鏡から目を離し、俺は左手で頭を押さえた。敵はおそらく、俺たちの核兵器を封印するつもりだ。すぐに強奪しなければならないのだが、戦車部隊は壊滅している上に歩兵部隊は幼女に蹂躙されている。

 

 しかも上空には敵の戦闘ヘリがいるため、迂闊に増援部隊を出せばターレットやロケットランチャーでやられてしまうだろう。

 

 俺が行くしかないのかもしれない。

 

「迎撃部隊の再編成を急げ! 俺も出撃するッ!」

 

 おのれ、転生者ハンターめ・・・・・・!

 

 俺が相手になってやる。そして、お前を狩ってやる・・・・・・!

 

 


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