やっぱり、朝方の草原は寒いものだ。転生してきたばかりの頃は春だったらしくてとても暖かかったんだけど、今はもう秋だ。朝早くに草原に出て狙撃の訓練をするならば、厚着をしなければならない。
オルトバルカ王国は北国だからな・・・・・・。
いつものオーバーコートを身に付けながらフードをかぶり、松葉杖を傍らに置きながら地面に伏せる。バイボットを展開して愛用のアンチマテリアルライフルを構え、草原の向こうに頑張って用意した木製の的を狙う。
松葉杖をつきながら 何とか400mも歩いて置いてきた的だ。
普通の射撃訓練ならば地下の設備を使えばいいんだけど、長距離を狙うための狙撃をするためには距離が足りない。だから、射程距離が長い武器で狙撃をする場合は、草原で訓練を行うようにしている。
とはいえ、草原での狙撃訓練をするのは狙撃をすることがある俺とカレンだけだった。
スコープを覗き込み、カーソルを的の胴体に合わせてトリガーを引く。聞き慣れた轟音が冷たい風を蹂躙し、スコープの向こうに見えた的を木端微塵にしてしまう。
そういえば、最近あまり狙撃をやってないな・・・・・・。このアンチマテリアルライフルを使うことはあるんだけど、マズルブレーキの下にスペツナズ・バヨネットを装備しているせいで、エリスとの戦いでは接近戦に使っていた。
次の的に照準を合わせるためにカーソルを右に動かし、照準を合わせてからトリガーを引く。再び聞き慣れた轟音が響き渡り、木製の的が12.7mm弾の猛烈な運動エネルギーで木屑に変えられてしまう。
アンチマテリアルライフルの猛烈な銃声の残響を聞きながら最後の的に照準を合わせようとしていると、日が昇り始めた薄暗い空の向こうから、銃声の残響をかき消すように別の轟音が響き渡ってきた。
その轟音も聞き慣れた音だ。昨日の夜に裏庭で聞いた覚えがある。
「スーパーハインドか・・・・・・?」
俺は狙撃補助観測レーダーのモニターを確認した。端末でアップグレードをしたため、このモニターは敵の位置だけでなく味方の位置も表示する事が出来るようになっている。
モニターには、2つの蒼い点が連なって接近しているのが表示されていた。おそらく、スーパーハインドのコクピットに座る信也とミラだろう。
空の向こうを見上げてみると、遠くにスーパーハインドの機影が見えた。円形のキャノピーと左右に突き出た翼の下の武装。機首の下から伸びているのは、センサーとターレットの砲身だ。
よく見ると、機体の下にワイヤーで何かを吊るしているのが見える。俺はアンチマテリアルライフルを地面に転がったまま持ち上げると、銃口をヘリへと向け、スコープで確認することにした。
ヘリは間違いなく信也たちのスーパーハインドだ。蒼とグレーと白の3色で塗装されているのが見える。そのまま吊るしてある物体をスコープで確認した瞬間、俺はぎょっとしてしまった。
俺はあいつらにサラマンダーの素材を持って来てくれと依頼した筈なんだが、なんと信也たちはサラマンダーの死体をワイヤーで縛りつけ、ヘリで吊るして運んできたんだ!
「おいおい・・・・・・!」
しかも、よく見ると首がない。切断したのか?
端末を取り出してアンチマテリアルライフルの装備を解除した俺は、何とか起き上がると、傍らに置いてあった松葉杖を掴んで立ち上がり、屋敷の裏庭の上空で高度を落とし始めたヘリへと向かう。
何とか屋敷の門を潜って裏口へと向かうと、吊るしていたワイヤーを切り離してサラマンダーの死体を裏庭に投下してから、ゆっくりとスーパーハインドが高度を落とし、サラマンダーの死体の傍らに舞い降りる。
「こいつがサラマンダーか・・・・・・」
真っ赤な外殻と鱗で覆われていて、尻尾の先端部はまるで大剣のように鋭くなっている。足の爪や翼に生えている爪も剣のような形状だ。首が切断されているからどのような頭だったのかは分からないけど、フィオナから聞いた話だと、頭には剣のような形状の鋭い角が一本だけ生えていて、先端部に行くにつれて溶鉱炉に放り込まれた金属のような色に変色しているらしい。
火山に生息する魔物の中では最強と言われているドラゴン。火山地帯のダンジョンに挑み、命を落とした冒険者たちの半数以上の死因がこのドラゴンに襲われた事らしい。
そんな凶悪な魔物を、信也たちはあっさりと倒し、死体を持って帰ってきてしまったんだ。
「おう、お帰り」
「ただいま、兄さん」
キャノピーを開けて下りて来た信也には、全く傷が見当たらなかった。まさか、こいつを無傷で倒したんだろうか?
ミラもコクピットから下りてきて、信也の隣へとやって来る。彼女も信也と同じく無傷だ。ミラと信也は手を繋ぎながらスーパーハインドの兵員室の扉へと向かうと、その扉をスライドさせ、兵員室の中に詰め込んでいた物を俺に見せてきた。
「わぁッ!?」
兵員室の中に転がっていたのは、サラマンダーの頭だった。
頭には1本だけ大きくて鋭い剣のような角が生えていて、先端部に行くにつれて真っ赤に変色している。眼球からは血涙を流した後があるんだが、どんな殺し方をしたんだろうか?
「これで義足が作れるね、兄さん」
「あ、ああ・・・・・・。義足どころか予備の義足と腕がなくなった時のための義手まで作れそうだよ・・・・・・」
おそらく俺の両手と両足の分の義手と義足をレベッカに作ってもらっても素材はまだまだ余るだろう。こいつらはサラマンダーを丸ごと持って帰ってきたんだからな。下手したらギルド全員分の防具が作れるんじゃないか?
「とにかく、ありがとな。・・・・・・ほら、報酬だ」
俺は右手をポケットの中に突っ込むと、中に入っていた小さな袋を2人に手渡した。袋の中に入っているのは金貨が10枚ずつだ。この世界では金貨が3枚あれば家を建てる事が出来るため、かなり高額ということになる。
「ありがとね、兄さん」
「おう!」
あとは、このサラマンダーの素材を使ってレベッカに義足を作ってもらえば、俺は歩けるようになるだろう。それに、仲間たちの分の防具も作ってもらえるかもしれない。
早速彼女に依頼しに行くか。
俺は2人にもう一度礼を言ってから、裏口のドアを開けて自室へと向かった。出来るならば、またエミリアに護衛をお願いしたいところだ。レベッカの鍛冶屋に向かうには傭兵ギルドの事務所が並ぶ通りを通過していかなければならないからな。他のギルドの奴らの中には、俺たちを嫌っている連中もいるんだ。
義足を付けてもらって歩けるようになれば、松葉杖ともおさらばだ。また前みたいに数秒で階段を駆け上がる事が出来るようになるだろう。
信也とミラのおかげだな。
階段を上り切った俺は、自室のドアの前まで向かうと、ノックしてからドアを開けた。
「おい、エミリア? 頼みが――――ギャッ!?」
ドアを開けた瞬間、胸元の開いた黒いメイド服のような制服に身を包んだ蒼い髪の少女が、いきなり俺に抱き付いてきた。片足と松葉杖で踏ん張れなかった俺はそのまま後ろに押し倒され、背中を床にたたきつけてしまう。
「ああん、会いたかったよぉ・・・・・・!」
「痛てぇ・・・・・・。え、エリス、退いてくれ」
「やだぁ!」
「何で!?」
「だってぇ・・・・・・。朝起きたらソファの上から力也くんがいなくなってたんだもん・・・・・・」
今日は朝早くから狙撃の訓練をするつもりだったからな。大体4時くらいに目を覚まして外に出てから、ずっと訓練やってたぞ。
「寂しかったよぉ・・・・・・」
「い、いいから離れてくれって!」
両手で何とかエリスを引き離そうとするんだが、エリスは転生者並みの力で俺を押さえつけているからなかなか離れてくれない。しまいにはそのまま俺の頬に自分の頬を押し付けて頬ずりを始めてしまう。
た、頼むから離れてくれって!
もうドアから部屋に入るの止めようかな・・・・・・。ドアを開けた瞬間にこいつに押し倒されるし。
「はぁ・・・・・・」
ため息をつきながら、俺は松葉杖をついてレベッカの鍛冶屋へと続く通りを進んでいた。今から義足の製造をレベッカに依頼しに行くところだ。既にサラマンダーの死体は、ギュンターが液体金属ブレードで解体してからトラックで彼女の鍛冶屋に送ってあるらしい。
きっと、レベッカはびっくりしただろうな。
死体を丸ごと持って帰って来たわけだから、大量の素材が手に入ったらしい。もしかしたら全員分の防具を作ってもらったとしても、素材が余ってしまうかもしれない。
もし素材が余ったら、フランツさんのギルドにもおすそ分けしようかな。
「これでもう少しで歩けるようになるわね!」
「あ、ああ」
俺の隣を歩くエリスが、俺の近くでそう言った。
今日はエミリアだけでなく、エリスまで俺の護衛についてくれている。さっきエミリアに護衛をお願いしに行ったんだが、ドアを開けた瞬間に彼女に押し倒されてしまい、エミリアが彼女を引き離すのに手を貸してくれるまでずっと彼女に抱き付かれたままだった。
その後にエミリアに護衛をお願いしたんだが、エリスもついて来たというわけだ。
ラトーニウス王国騎士団では絶対零度と呼ばれるほどの騎士だったエリスの戦闘力は非常に高く、転生者も簡単に倒してしまうほどなんだけど、彼女は変態だからなぁ・・・・・・。
何で変態になっちゃったんだろう?
「だが、義足を付けてもすぐに歩けないんだろう?」
「ああ。確か、毎日その魔物の血を投与しながらリハビリをして馴染ませないと歩けないらしい」
「そうなの? なら、まだ歩けない力也くんを可愛がってあげられるわね。ふふふっ・・・・・・!」
ヤバい。早く歩けるようにならないとマジで危ないぞ。
冷や汗を拭っていると、通りの向こうに見慣れた店が見えてきた。レベッカの鍛冶屋だ。
ドアを開けて中に入ると、工房にある窯が生み出す熱気が、店内に俺たちと一緒に入り込もうとしていた冷たい風を追い払った。既にレベッカはサラマンダーの素材を加工する準備を進めているらしく、工房の向こうには加工に使う道具がどっさりと入った木箱を抱えながら慌ただしく準備をしている小柄なハイエルフの少女の姿が見えた。
「レベッカ?」
「あっ、力也さん! いらっしゃいませ!」
「こ、ここにも可愛い幼女が・・・・・・!」
おい、エリス。レベッカまで狙うな。
「素材はもう届いてますよ。・・・・・・あ、そうだ。ちょっと来てくれますか?」
「ん?」
彼女に手招きされた俺たちは、作業着姿で工房の方へと向かっていく彼女の後を追った。カウンターの向こうにある工房へと足を踏み入れ、工房の中を見渡してみる。
鍛えたばかりの剣や斧が並ぶ棚の隣には、サラマンダーの素材がぎっしりと入った木箱がいくつも並んでいる。明らかに、俺の義足を作るには素材が多すぎるだろう。
解体されたサラマンダーの素材を見下ろしていると、工房の向こうからレベッカが布で包まれた何かを持って戻ってきた。何が入ってるんだろうか? ロングソードくらいのサイズだ。
「それは?」
「サラマンダーの角の一部です」
布の中から、レベッカはサラマンダーの頭に生えていた剣のような角を取り出した。根元の方は赤黒いんだけど、先端部の方は真っ赤になっている。
「普通のサラマンダーよりも立派な角ですよ。色も美しいですし。普通のサラマンダーの角よりも硬かったので、解体するのに時間がかかっちゃいましたぁ・・・・・・」
「ああ、レベッカ。実はな、俺の義足だけでなく、仲間たちの分の防具とか武器も作って欲しいんだが・・・・・・頼めるか?」
「ええ、構いませんよ! こんなにいっぱい素材があるのに、加工しないのはもったいないです! 喜んで加工させていただきますっ!」
「助かるよ。ありがとな」
あの角は、もしかするとエミリアが使う剣や大剣の素材にぴったりかもしれない。ハイエルフの鍛冶の技術はドワーフと並ぶほど高いらしいんだが、ハイエルフのレベッカが手こずるほどの強度を持つ角ならば、それで剣を作れば強力な武器になるかもしれない。
他の仲間たちにも聞いてみよう。
俺はレベッカに礼を言うと、彼女にもう一つ義足について頼んでおくことにした。
「それと、俺の義足なんだけどさ」
「はい、何でしょうか!?」
「もし良ければ、あるものを追加してほしいんだよね」
街で買ってきたマンガを読むのを止めた俺は、ソファの上にマンガを置いてから窓の外を眺めた。
レベッカは今日の夜ごろには義足が完成するから屋敷まで届けると言ってた。その時に代金を渡し、仲間たちの分の武器や防具も注文しておくつもりだ。
エミリアはサラマンダーの角と外殻で大剣のクレイモアを作って欲しいらしい。それと、今の防具もサラマンダーの素材を使ったものに変更して欲しいと言ってた。エリスは氷属性の魔術を多用するから、炎属性のサラマンダーとは相性が悪いため、防具や武器は必要ないらしい。
カレンとギュンターは外殻を使った籠手が欲しいって言ってたな。信也はナイフが欲しいって言ってたし、ミラはサラマンダーの素材で柳葉刀を作って欲しいらしい。
でも、仲間たちの分を作ってもらっても絶対に素材余るぞ。どうしよう。
とりあえず、フランツさんや他のギルドにも素材をおすそ分けしよう。
そんなことを考えていると、誰かが階段を上って来るような足音が聞こえた。階段を上り終えたその足音は、段々とこの部屋の方へと近付いて来る。誰だろうか? 聞き覚えのない足音だった。
「力也?」
「ん? エミリアか?」
「ああ。レベッカが義足を持って来てくれたぞ」
「失礼します!」
部屋のドアが開き、長方形の木箱を抱えたハイエルフの少女がエミリアと一緒に部屋の中へと入ってくる。おそらく、あの木箱の中に彼女に頼んだ義足が入ってるんだろう。
レベッカはソファに腰を下ろしている俺の傍らまでやって来ると、楽しそうに笑いながら抱えていた木箱の蓋を開けた。
「おお・・・・・・!」
「どうです?」
「最高だよ・・・・・・!」
中に入っていたのは、サラマンダーの外殻で作られた赤黒い義足だった。太さは俺の右足と同じくらいだけど、指先から生えている爪は真っ黒で、人間の爪よりも少しだけ長い。ドラゴンの足と人間の足を融合させた感じの義足だ。
サラマンダーの素材を使っているから、当然ながら外殻の中身は機械ではなく筋肉や骨だ。断面を見てみると、真ん中には真っ黒な骨があり、その骨を赤い肉が包み込んでいる。
「では、失礼しますね」
「おう」
レベッカは俺のズボンの左側を捲ると、木箱の中から義足を取り出し、切断した際にフィオナに塞いでもらった左足の断面へと義足を近づけた。そして断面に義足をくっつけると、そのまま魔術の詠唱を始める。
「―――ヒール」
「お・・・・・・」
彼女がヒールを使った瞬間、義足の中に詰まっていた筋肉が蠢いたような感じがした。
ヒールを使い終えたレベッカは、そっと義足から手を離す。サラマンダーの素材で作られた赤黒い義足は、レベッカが手を離しているにもかかわらず、俺の左足にくっついたままだった。その様子を見ていたエミリアは、面白そうに「ほう・・・・・・!」と言いながら俺の左足を見下ろしている。
「指は動かせます?」
「えっと・・・・・・」
かつて左足を動かしていたように、左足に力を入れてみる。すると、赤黒い指が痙攣しながらぴくりと動いた。力をもっと入れてみるけど、これ以上は動かないみたいだ。
「まあ、くっついたばかりですからね。では・・・・・・あとはこの血を毎日投与して、リハビリをしてください。1週間くらいで歩けるようになると思います」
レベッカはそう言うと、木箱の中に入っていた注射器と血の入った容器を取り出した。
サラマンダーの血だ。遺伝子的に全く違う生物の義足を体にくっつけたため、拒否反応を防いで馴染ませるために、少しずつその血を投与する必要がある。サラマンダーの血が投与されるわけなんだけど、少量だからすぐに俺の血液に取り込まれてしまうらしい。
「ありがとな、レベッカ。・・・・・・ところで、例の機能は?」
彼女に頼んでおいた機能だ。俺はにやりと笑いながら彼女に尋ねた。
「ええ、ちゃんと搭載してますよ・・・・・・?」
彼女もにやりと笑いながら、俺の義足の脹脛の辺りを軽く叩いた。
よく見ると、脹脛の辺りがカバーのようになっていて、スリットも刻まれている。
「左足に力を入れてみてください」
「おう」
とりあえず、まだ全く馴染んでいない義足に力を入れてみることにする。でも、力を入れてみても義足が痙攣するだけで何も起きないぞ?
その時だった。脹脛の辺りのカバーとスリットの方から、まるで金属板がスライドするような音が聞こえてきたかと思うと、そのカバーの中からいきなり真っ赤なブレードが飛び出したんだ。
先端部は真っ赤になっていて、根元に行くにつれて赤黒くなっている。サラマンダーの角と同じだ。両刃のブレードで、長さは大体小太刀くらいだろうか。
「ぶ、ブレードを仕込んだのか!?」
「ああ。あのままだと素材が余っちゃうからさ」
それに、これで攻撃できるしな。
これが、彼女に搭載してくれと頼んでおいた機能だった。元々サラマンダーの義足には何も武器は搭載されていないんだけど、俺はレベッカにブレードを仕込んでおいてくれと頼んでおいたんだ。これならばもし銃を使っている最中に敵に接近されても、このブレードと近距離射撃で応戦できるし、反動の強い武器を使うならばこのブレードをスパイク代わりに地面に突き刺すことも出来る。
「あ、でも試し斬りはまだやらないでくださいね。馴染んでませんから」
「ああ、ありがとう。はい、代金」
「ありがとうございます!」
彼女に金貨の入っている袋を手渡す。もちろんこのブレードは追加してもらった機能だから、義足代にブレード代を上乗せしてある。
「ところで、他の素材はどうします? かなり余ってるんですが・・・・・・」
「ああ。出来るならば、それで武器と防具を作ってもらいたい」
「はい、喜んで!」
俺は彼女に仲間たちから欲しいと頼まれた防具や武器をメモしておいた紙を渡す。
まだ前みたいに歩けそうにないからリハビリが終わるまでは松葉杖は必需品だろう。でも、サラマンダーの血を投与しながらリハビリを続ければ、また戦えるようになる筈だ。
もう少しで復帰できるぞ。
俺はもう一度彼女に礼を言うと、左足にくっついている赤黒い義足を見下ろした。